家庭環境が子どものIQを押し上げることが研究で明らかに

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家庭環境が子どもにさまざまな影響を与えることは周知の事実ですが、教育熱心な家族の家庭で育った子どもは、そうでない家庭の子どもよりも高い認知能力を持っていることが新しい研究で判明しました。

Family environment and the malleability of cognitive ability: A Swedish national home-reared and adopted-away cosibling control study

http://www.pnas.org/content/early/2015/03/18/1417106112


Kids who are adopted get a boost in IQ

http://arstechnica.com/science/2015/03/kids-who-are-adopted-get-a-boost-in-iq/

アメリカのバージニア・コモンウェルス大学、バージニア大学とスウェーデンのルンド大学による合同研究チームは、軍事訓練義務の徴兵制において入隊試験の一環で行われたIQテストを18~20歳の間に受けた成人男子のうち、同じ家庭に生まれながらにして1人は養子として別の家族に、1人はもとの家族に育てられたという、少し特殊なケースに当たる436人に対して調査を実施しました。

調査では、それぞれが育った家庭の教育レベルを数値化し、その結果を組み込んだ上で養子と実子のIQテストの結果を比較。調査の結果では、養子だった男性のIQテストの平均スコアが、実子の男性よりも4.4ポイント高いことが判明しました。4.4ポイントの差が付いたことの原因は、育った家庭が教育熱心だったことにある、研究者は結論づけています。


調査対象になった養子のほとんどは教育熱心な家庭で育っており、そういった家庭で過ごした時間が長いほどIQのスコアが高い傾向にあるとのこと。また、少ないながらも養子の中にも教育にあまり関心がない家庭で育った人もおり、そういった人は実の家庭に残った実子よりもIQのスコアが低くなっていました。

研究チームは、同じ家庭に生まれながら養子と実子で育った環境が違う2431人の男性を対象に追加調査を実施。追加調査でも、最初の調査と同じく養子の方が実施よりIQテストで高い平均スコアを出し、その差は前回の調査より低くなったものの3.18ポイントありました。


イギリスのエディンバラ大学で心理学の教授を務めながら、脳と知能の関係を長年研究し、研究チームの調査に参加しなかったStuart Ritchie教授は「IQが育った環境によって影響されるというのは新しい発見ではありませんが、今回の調査は養子をもらった家庭が、養子の認知能力に良い影響を与えられるという素晴らしい実演になったと思います。今までの調査では対象者の母数が少なかったという問題がありました」と述べており、今回の調査は以前から議論されていた理論を実証するのに大きく貢献する可能性があるそうです。

今後は、調査結果を踏まえて子どもの認知能力を向上させるために親ができることに焦点を当てて、研究が進められていくとのことです。

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Sharetube