記憶と睡眠の関係性を解明。やはり適度な睡眠は記憶上昇を促す結果に
寝ている間に記憶が定着する仕組みの一端を解明したと、広川信隆・東京大特任教授(細胞生物学)らのチームが米科学誌ニューロンに発表した。睡眠中やリラックスしている時ほど、記憶の保存に関わっていると考えられる脳の神経細胞の接合部(シナプス)に接着分子が多く運ばれ、神経細胞同士の結合が強まっていたという。生物には、生命活動に必要な物質を体のあちこちに運ぶ役割のたんぱく質が数十種類あり、「分子モーター」と呼ばれる。チームは、細胞同士を接着する分子「Nカドヘリン」をシナプスへ運ぶ分子モーター「KIF3A」に注目。培養した神経細胞を使った実験などで、KIF3Aの構造の一部が変化するとNカドヘリンを運べる量が2・5倍になることを突き止めた。
また、神経活動が抑えられると、KIF3Aの構造が変化して輸送能力が上がることも実験で確かめた。シナプスでのNカドヘリンの増加が、情報を取捨選択して記憶として定着させることにつながっていると考えられるという。広川特任教授は「生体での分子モーターの働きを確認したい」と話す。
免疫がウィルスを覚える仕組み
彼らによれば免疫システムはウィルスやバクテリアと遭遇した場合、その断片やパーツを収集することによってメモリーT細胞(攻撃相手を記憶する細胞)を形作るという。そして数年間も情報を保有し、似たような感染を認識すると素早く体が反応するそうだ。このメモリーT細胞は病原体などの情報を取捨選択し簡単なものに要約することで、ウィルスなどに感染した時、以前と似たものか、それとも特定できない未知のものかを感知するとされている。
ノンレム睡眠で免疫細胞内の記憶が増加
そして今回、ワクチン接種したあとに深い眠りの状態、ノンレム睡眠に陥った場合、メモリーT細胞内で情報が増加していることが明らかとなった。この発見は、特にメモリー細胞による情報の一般化や要約を通した長期記憶の形成にノンレム睡眠の力が作用していることを裏付けるものであり、それは睡眠遮断が身体の健康を危険にさらすことでも明らかだという。
調査に携わったJan Born氏は報告の中で「ウィルスは免疫システムから逃れるため、自分のタンパク質を簡単に変異させてしまう。もし人が眠らなければ免疫細胞は誤った病原体のパーツに焦点を当て、(略)戦いを止めるかもしれない」とコメント。
質のよい睡眠が記憶を作る
勉強をしているときには「よし、英単語を覚えたぞ!」と感覚的に思うこともあるでしょう。しかしながら、記憶が定着するのは睡眠時です。
出典:質のよい睡眠が記憶を作る
睡眠している間に、脳内で情報を整理し、重要な事柄をを定着させ、また、記憶として検索しやすいように情報処理しているとされています。この情報処理をしているときに見ているのが夢という説もあります。また、睡眠のゴールデンタイムがあり、午後10時から深夜2時の時間帯に眠ると記憶の整理が円滑になり、より記憶が定着しやすくなります。
学生さんはこの時間帯に寝ないで勉強していることが多いですが、脳にとってのチャンスを逃していることになりますね。また、早朝4時から午前10時頃が、脳科学的には記憶しやすい時間帯だと言われています。
したがって、「早寝早起きの勉強」こそが記憶の定着には最高です。
出典:質のよい睡眠が記憶を作る
睡眠時間は、最低でも6時間以上。
睡眠は、最低でも6時間以上は、しっかり寝ましょう。短すぎると脳によくありませんが、長すぎるのも脳に悪影響を与えるという報告があります。理想は、7時間以上・9時間以下です。十分な睡眠時間は、記憶力に重要な意味を持ちます。さて、そんな睡眠ですが、なぜ記憶のために有効なのでしょうか。
理由は2つあります。
・脳をしっかり休ませるため・記憶を定着させるため
出典:睡眠時間は、最低でも6時間以上。 記憶力を高める30の方法