イギリスの階級社会ってどんなもんなの?調べてみた
日本でもよく漫画なのでイギリスの貴族が出てくるじゃないですかでも、その呼称やどの程度偉い人なのかわからずに読んじゃっていて
少しモヤモヤしていたので調べてみました。
英国貴族の呼びかけ方一覧
イギリスは”階級社会”か?
答えは絶対的に”YES” である.しかし,その”階級社会”とは一体どういうものであるかは,一般の日本人は認識していないし,もしくはかなり誤解していると思う.こちらに来ることが決まり,かなり情報収集したつもりの私でさえ,ときおり愕然とすることもあるのである.定義
”階級社会”とは数種類の階級がかなりはっきり分かれており,階級間の移動は稀であり(←これは当たり前だが),かつ,その階級以外の社会的な交流が非常に限定されている社会である.まあ,前半は当たり前なんだが,日本人にとって,後半はかなり想像し難い.まあ,実例を挙げて,理解していくしかないだろう.また,この情報化時代,興味があれば,インターネットを通じてかなりの事例を集めることが可能である.
しかし,階級社会の話を始める前に,もうひとつ,日本人にとって,誤解を生みかねない事情をひとつ,強調しておきたい.これは定義の後半にも通じるところがある.
”階級社会”では,異なる階級と交流することは稀なので,知人の体験談,入手した情報などは全てその”個人”の階級によって限定されてしまう.ゆえに例えその体験談などが”知人の階級階層内”において”真実”だとしても,”一般的”かどうかは定かでない.
さらに事情を複雑にしているのは,日本人が居住する地域はたいていロンドン市内であり,また,その”階級”ももちろん上に位置している事実である.ご存知のとおり,ロンドンは日本の東京に相当する大都会であるので,イギリスを代表する都市であったとしても,イギリス文化を代表する都市ではないということである.
しかし,上記の文は非常に自己矛盾に満ちた文である.イギリス階級社会の実情を紹介する 私の文も所詮,とても”一般的”とはいえないのである.しかし,それでは,一体誰が真の階級社会の実情を語れるのか?全階級の実情を把握し,表面的ではなく,世界観,生活観,異なる階級への思いを総合的に把握できているのは誰なのか?
私の意見では,
”そんなやつぁ いやしねえ!”
補足するなら,何十年とここに住んでも,たぶん分からないのである.もちろんイギリス人も分からないのである.ただ,”階級社会”が厳然と存在することは,万人が認める事実なのである.
というわけで,以下の私の文も含めて,ありとあらゆるイギリスの情報は,各階級の”偏った”情報であることを認識していただきたい.そして,これが”階級社会”の一側面であるのだ.
階級社会の分類
UPPER CLASS (上流階級)MIDDLE CLASS (中産階級,中流階級)
WORKING CLASS (労働者階級)
となる.そしてMIDDLE CLASSはさらに
UPPER MIDDLE CLASS (上位中流階級)
MIDDLE MIDDLE CLASS (中位中流階級)
LOWER MIDDLE CLASS (下位中流階級)
と細分類されるがこの階層間は移動可能である..
ここで日本人がおちいりやすい大きな落とし穴がある.
それぞれの日本人がもつ日本語訳のイメージと実情がかなり,かけ離れているのである.
ここでは,現在 ”私”がもっている知識,常識(独断と偏見ともいう)でこれらを階級を説明してみたい.全ての文のはじめにに”私の意見では”,最後に”だと思う”を付け加えて読んでください.
UPPER CLASS (上流階級)
日本語で言う ”上流階級”より ずっとずっと格が上で,上流階級というより,むしろ”貴族階級,華族階級”といったほうがしっくりくる.金を持っているのはもちろんだが,相応の社会的地位(会社的地位ではない!)が必要である.イギリスで一般的なUPPER CLASSとは,先祖代代の莫大な土地を持つ諸侯(日本でいう大名)であり,自分の財産の管理が彼らの”仕事”である.UPPER MIDDLE CLASS (上位中流階級)
日本語でいう”お金持ち”がここに分類される.とても”中流階級”とはいえないような人たちがここにいる.誤解を恐れず言えば,MIDDLE CLASSで出世をし,金を得て左うちわで充実した生活をおくれるCLASSである.MIDDLE MIDDLE CLASS (中位中流階級)
LOWER MIDDLE CLASS (下位中流階級)
中程度の社会的地位はあるものの,金に困って始終意識しなければいけないのがLOWER,そこまでいかないのがMIDDLE.MIDDLE内を分類するのは金銭的な生活レベルであって,はっきりした境界線は無い.WORKING CLASS (労働者階級)
単純労働で安い賃金.服装に無頓着.と書くと誤解をまねくかもしれないが,事実である.さて,分類が終わったところで,私が出会った人々をそれぞれの階級に分類してみよう.かなり,失礼なのは承知だが,やむを得ない.
私のフラットの大家さん---UPPER MIDDLE
家賃が高いせいか,細かいところでもあまり金銭的な話にならず,全て無料で対応してくれる.いつも,背広とネクタイ.私のフラットは名義上は彼の奥さんのもので税金対策だとか.対応は全て彼が行っている.車はジャガー.KUK(英国コマツ)の副社長---UPPER MIDDLE
Iさんであるが,実は私の元上司だったりなんかする.たった3ヶ月だったけど(笑).本人によると,KUKの副社長は日本の部長相当くらいだといっていたが,イギリスの平均所得からみれば確実にこのクラスであろう.大学の担当教授---UPPER MIDDLE ~ MIDDLE MIDDLE
イギリスの所得水準から照らして,かなりの額をもらっているであろう.でも服装はあまりきれいとはいえないが,まあ,大学内のご愛嬌ということで.ちなみに車は古かったが,イギリス人は古いものを大事に使うので,こんなところで判断するのはどうかな?頻繁に日本,欧米を訪問している.語学学校(大学)の講師---MIDDLE MIDDLE
教授でなければこのクラスではないかと思う.対応してくれた銀行員---MIDDLE MIDDLE
口座を開くのに対応してくれた年配の女性は,非常に丁寧で(早口だったけど),仕事もはやかった.以下はWORKING CLASS
大学の掃除のおばさん,ケーブルテレビをセッティングしにきてくれた人,配管工,郵便局(ロイヤルメール)の配達人,市内を掃除している人(公務員),消防士...はもちろんだけれども,スーパーのレジや各種ショッピングセンターの店員,レジもここに入るんではなかろうか?
なお,研究室の学生(博士課程)はまだ社会人になっていないが,おそらく,MIDDLE MIDDLE クラスに属するのではなかろうか.親に直接会ってないんで分からないんだが.もちろん,彼らが出世したら,UPPER MIDDLEになれるかもしれない.
階級と敬称
○王族
○上流階級
・貴族
公爵(卿) 長男(親の第二称号+卿) 次男以降(名+卿) 長女以降(名+レディ)侯爵(卿) 長男(親の第二称号+卿) 次男以降(名+卿) 長女以降(名+レディ)
伯爵(卿) 長男(親の第二称号+卿) 長女(名+レディ) 次男&次女以降(オノラブル=爵子&爵女)
子爵(卿) 長男&長女以降(オノラブル=爵子&爵女)
男爵(卿) 長男&長女以降(オノラブル=爵子&爵女)
※公爵と侯爵の長男は一つ下の爵位を授かる。家督を継げば親と同じ爵位になる。
※夫人は爵位に関係なく、レディ+姓。
・ジェントリ
准男爵(サー+名) 長男&長女以降(ミスター&ミス) 夫人(レディ+姓)士爵(サー+名・世襲無) 長男&長女以降(ミスター&ミス)
郷士(ミスター)
○中流階級
アッパー・ミドル…親や兄が貴族等の上流階級に属する人もいる。法廷弁護士・上級官吏・内科医・聖職者・将校など。ミドル・ミドル…使用人が複数人雇えるレベルの財力。専門職・外科医・事務弁護士・中小商会の経営者など。
ロウ・ミドル…使用人ひとり雇えるレベルの財力(雇っていない場合も有)。教師・事務員など。
※ミドルとロウの境界が曖昧なため、財力を基準に分けています。職業は目安程度。貧乏な事務弁護士とかもいたようですし……。
○労働者階級
労働貴族…使用人ひとり雇えるレベルの財力。生活はロウ・ミドルより上のことも。パブや商店の主・熟練した職人など。その下にはその日暮らしの労働者・職人・農民・使用人・移民などさまざまです。
○下層貧民
ストリートチルドレン・売春婦・浮浪者・不法移民・犯罪者など。教会で洗礼を受けてないため、教区に籍のない者もいます。
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資料によっては准男爵が貴族扱いだったり、労働貴族がロウ・ミドルだったりと厳密な線引きが難しい状況です。あと、貴族の敬称については、父親の第二敬称など本格的にしてしまうと、読み手が混乱してしまうため、あえて作品中は簡素にしています。
ただ爵位のある貴族の場合、卿だけでは混乱するので○○伯爵と名目爵をつけて呼ばせています。
……ああ、やっぱりややっこしい(汗)
出典:階級と敬称 もちろん、現代社会においては、労働者階級出身者も学業成績次第では、オックスフォード大学やケンブリッジブリッジ大学に入学することができ、それを踏み台に、自分の階級を上げていくことができます。 上流階級、または上位中流階級出身者は、子どもの頃から親元を離れ、授業料の高い私立の寄宿学校に学びます。 そこで、上流階級にふさわしい英語のアクセント、立ち振る舞い、ものの考え方を身につけます。 イートン校などの有名パブリックスクールでは、卒業生の子息には、学業成績にかかわらず、座席が確保されているといいます。 優秀な成績を修めた公立学校出身の労働者階級出身者が、オックスフォード大学やケンブリッジ大学に進学した場合、階級意識という見えない壁にぶち当たるのは、想像に難くありません。 上流階級出身者には、彼らの間にだけ通じる流儀があり、それを身につけていない者は排除されてしまうのです。 階級を上がっていくことは、並大抵のことではありません。 階級意識が根付いてしまう社会的背景
しかし、イギリスの社会制度、階級意識が、立身出世を困難なものにしている事実もあります。
話し方で分かる階級
階級差は、その人がしゃべる英語のアクセントに現れます。ロンドンの労働者階級の人々は、コックニーとよばれる強いなまりのある英語を話します。
映画「マイ・フェア・レディー」の中で、主人公の花売り娘、イライザが話していた英語がコックニーです。
上流階級の人々は、クイーンズ・イングリッシュを使い、標準とされているのは、BBCイングリッシュです。
オックスフォードやケンブリッジなどの有名大学では、独特の言いまわしやアクセントがあり、他と差別化を図っています。
それぞれの階級に流儀がある
サッカー選手として大成したデビッド・ベッカムの英語は、コックニーです。彼は、大金を稼ぎ、豪邸に住んでいますが、労働者階級に属します。
階級とお金の有無は関係ありません。
どれだけお金を持っていても、労働者階級の生活習慣を維持する人は多いのです。
上流階級にはその流儀があるように、労働者階級にも同じことがいえます。
慣れ親しんだアクセント、生活習慣、ものの考え方。
どの階級に属する人々も、自分の階級を誇りに思っているのです。
日本人には階級意識はない
格差社会といわれて久しい日本ですが、我々の社会には、階級意識は存在しません。格差は貧富の差であり、身分を隔てるものではありません。
一億総中流という言葉が存在するように、日本人の多くは、自分が中流階級に属していると考えています。
しかし、この中流意識とは、金持ちでもなく貧乏でもなくその中間に位置するという考え方で、イギリス人の考える中流階級とは異なります。
イギリス人は立身出世物語に興味を示さない
日本では、貧しい家庭に生まれても、努力を重ねれば立身出世を成し遂げることができます。私達は立身出世を美談として尊びますが、イギリスには、小説の世界にもそのような物語は多くありません。
イギリス人はよく「労働者階級からのし上がるためには、サッカー選手かミュージシャンになるしかない」と言います。
この言葉からも分かるように、労働者階級の人々が、社会的上位に登りつめるのは非常に難しいことなのです。
イギリス人が、立身出世物語には興味を示さないのにもうなずけます。
現在の階級意識
18世紀に起こった産業革命により、中流階級が出現して以来、イギリスには3つの階級が定まりました。上流階級、中流階級、労働者階級。
階級制度という言葉は、各階級間の上下関係を連想させますが、階級に優劣はありません。
1980年代には、労働者階級出身者の大学進学率はごくわずかでしたが、現在では、学業成績が優秀な生徒は、大学まで進学するのは当たり前になりつつあります。
それだけ中流階級と労働者階級との境目は、曖昧になってきているということです。
しゃべり方や生活習慣の違いで人を区別する階級制度。
時代に逆行する、排他的で差別的ともいえる習慣です。
若い人々の間では、階級意識は薄れつつあります。
しかし、自分の生活習慣を大切にする保守的なイギリス人、特にその傾向は労働者階級の人々の間に根強いといえます。
彼らにとって、アイデンティティーともいえる階級意識は、完全に消えてしまうことはないでしょう。