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古典落語「一眼国(いちがんこく)」

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古典落語「一眼国(いちがんこく)」

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起承転結起承転結
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Update date:2018年08月30日
古典落語「一眼国(いちがんこく)」

登場人物

 香具師(見世物小屋商売人)
 六十六部(修行僧)
 ひとつ眼の子供
 一眼国の皆様

宿に一泊(起)

 両国にて見世物小屋を運営している香具師(やし)、「お代は見てのお帰り(後払い)だよ!」と威勢のいい謳い文句とともに本日も客引きに熱が入る。そこへ全国各地を巡礼し旅を続けている信心深い僧侶、六十六部。江戸の両国に至ったところで陽も傾き始めて宿をさがしている最中で、ふらっと見世物小屋の横を通りかかる。香具師に声をかけられ世間話をしていると「もてなしはできませんがね」と前置きをされつつも、ありがたいことに泊まる部屋を都合してもらえることとなる。部屋を案内しながらもあくまで商売人の香具師はたずねる、「各地を旅して色んなものを見たんだろうな、なにか見世物になりそうなものはあったかい?」と金儲けのネタ探し。「あちらこちらと回りましたがなかなか話題にできそうなものは思い出せませんね、あくまで巡礼の旅ですので。」と返されるも、「腹減ってるだろう、たっぷり食っておゆきよ。…そうは言っても何かしら珍しいものあっただろう、ひとつやふたつくらいはさ。」と根気よく問い続ける。

ひとつだけ(承)

 あきらめる様子のない香具師に押し切られた六十六部、「思い返してみればばひとつ、おっかない目にあった事が…」と話し始める。雷にでもうたれたのかと思った香具師に向かって「実は、ひとつ眼に出会ったんです。」と続ける。「今日のように宿にありつける日ばかりというわけではなくて、野宿せざるを得ないような日ももちろんあって、森に入り仕方なく木に腰を下ろしていたんです。すると耳元で年齢が六歳、七歳くらいの子供の声がして…おじさんおじさん、と」…互いの呼吸にうっすらと緊張感が漂う。「振り返って声の主の顔をみてみると、信じられないことに眼がひとつだけしかない。」と引きつった表情で話す六十六部。「へぇ〜驚いたね…それで、どこらへんで見たんだ?ほう…江戸から百三十里ほど行って、それから?それから?」と詳しい話を根掘り葉掘り聞き出して、「こいつをうまいこと捕まえられれば、しばらくの間ひと儲けできるな」とご機嫌になる香具師。

捕獲(転)

 翌朝、「先を急ぐから」という六十六部にお賽銭代わりにいくらか包んで渡し見送りを済ませる香具師。そそくさと自分自身も旅支度を始めて、捕り物へと出かける。せっせと歩いて話に聞いた場所の近くまで来たはいいものの、目印らしい目印もなく道に迷う。「鐘の音が聞こえた辺りと言ってたっけか…話の通りならこの辺で合ってるはず」とウロウロ。「さてはでまかせ並べやがったかあの野郎、一杯食わされたかなこれ」と愚痴りながら周囲を見渡す。仕方なくとりあえず木陰で休もうかと足を踏み出すと、何やら子供の声がする「…おじさんおじさん」。呼ばれるまま振り向く香具師、驚くと同時に喜びを噛みしめながら口走る「…出た」。「いい子だから、ほらこっちへおいで…さぁ」と言いながら子供をかかえ上げ走り始める。突然の出来事に泣き喚く子供、その声を聞きつけて「人さらいが出た!」と大人が集まり、後を追いかけ始める。

行き着く先(結)

 子供を連れたまま走り逃げ切れるわけもなく、途中やむなく連れ帰るのを諦めて放り出すも…土地勘のない場所では追跡からは逃れられず、最終的にぬかるみに足をとられて転倒する香具師。無事に、現行犯でお縄となる。目隠しをされ拘束されて役所へと連れていかれる香具師、申し開きの場において愕然とする。顔を上げた先には右も左も、ひとつ眼の顔ばかりが並んでいる。老若男女、役人も聴衆も、目に入ってくる人間は一人残らず顔に眼はひとつ。「こんなに何人もいるのか、ひとりいてくれればそれで良かったんだけどなぁこれじゃ珍しくもなんともないや…あぁそうか、ここはひとつ眼の国だったのか」と事態を察する。香具師以上に驚きを隠せないでいるのが役人達、「???…この者は眼がふたつもあるのか!なんと珍しい事だ!」と顔を見合わせて口にし、裁きの場の空気は一変する。「もはや裁定どころではない、はやくこの者を連れて参れ!見世物小屋に連れて参るのだ!」

※参考

香具師(やし)
縁日や祭礼における商売人。的屋、露天商、曲芸などの興行を生業とする者。

六十六部
法華経の写経を六十六部行い、それを六十六ヶ所の霊場に納める巡礼。正確には、日本回国大乗妙典六十六部経聖(にほんかいこくだいじょうみょうてんろくじゅうろくぶきょうひじり)というらしい…、功徳を積むのが目的とされている。

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起承転結

古典落語の大まかなあらすじを覚え書きとしてまとめていきます。ネタバレ有り、オチ記載有りなので注意されたし。