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古典落語「紀州(きしゅう)」

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古典落語「紀州(きしゅう)」

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起承転結起承転結
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古典落語「紀州(きしゅう)」

登場人物

 徳川継友(とくがわつぐとも、尾張藩主)
 徳川吉宗(とくがわよしむね、紀州藩主)
 鍛冶職人

将軍不在(起)

 七代将軍家継が幼くして亡くなり、急遽跡目を決めなければならなくなる。家継は7歳の誕生日を待たずして病死したため当然子はおらず、近縁の徳川御三家(尾張、紀州、水戸)の中から後継者となる人間をみつけねばならない必要が出てくる。意見を交わした幕臣達、その支持を集めた本命候補として尾張藩主の徳川継友と紀州藩主の徳川吉宗、この二人のどちらかに将軍を任せようと絞り込む。両候補どちらの勢力も譲らず、候補者各個人の力量も甲乙つけがたくなかなか決まらない。仕方なく城に閣僚を集めた大評定にて最終的な結論を出す事になる。この段階において、候補者の一方である継友は考える…「是非やります!などと言って飛びついてはそれは下品だな、のちのち将軍として失敗をした時に責任転嫁もできなくなってしまう。ここは一度断ってから、周りにのぞまれ説得されてから引き受ける、これが都合が良い。それなら本当の意味で主導権を握る事もできるし、新将軍の門出としても美しかろう。」と。

縁起が良い(承)

 将軍へ就任するにあたって、理想的な流れを頭に思い描きながら、城へと向かう継友。城下では額に汗を流しながら働く庶民達の姿、鍛冶職人が鉄を叩いて加工している。「カンカンキン…テンカトル!コンキンコン…テンカトル!」将軍候補となった継友の耳には、鉄を叩く音がどうしても「天下取る」という言葉に聞こえてしまって仕方がない。「こいつは演技がいいな」とご機嫌になり、吉兆があったのだからきっと将軍選びはうまくいくに違いないなと確信する。城にたどり着いて幕臣達を目の前にする継友、あらかじめ計画していた通り「余は徳薄い故、任にあらず」と将軍就任を拒否する。継友の姿勢は確認できた、ではもう一方の候補者ははたしてどんな意気込みでいるのかと吉宗に向けて視線が集まる。継友も吉宗に向きながら「天下の将軍就任を、まさか二つ返事で引き受ける恥さらしな真似はしないだろう」と思いつつ、若干の不安を抱える。

万人のため(転)

 注目が集まる中で重い口を開き「余はその徳薄くして、将軍の任にあたらず…」と継友同様に断る吉宗、ほっとする継友。ところがそれで終わらずに「…しかし、」と続ける。「しかし万人のために御三家の責任を果たすべきとの意見ももっともである、固辞するわけにはいかぬ。」とまさかの就任宣言。誰よりも驚いたのは継友、自分が最後に言おうとしていたセリフ、頭に思い描いていた言葉を目の前で先に言われてしまって呆然とする。万人の事を考えてくれる時期将軍が誕生するならこれはめでたい、この世は安泰だと、トントン拍子で後継者は徳川吉宗にと結論が出る。先に断ってしまった立場上、いまさら口をはさめるはずもなく為す術もない継友。

蒸発(結)

 将軍になる野望を打ち砕かれ城を後にする継友。帰り道にて先程と同じく鍛冶屋の作業風景を目にする、「カンカンキン…テンカトル!コンキンコン…テンカトル!」。「たしかにテンカトル(天下取る)と聞こえたんだが、ただの思い違いにすぎなかったかな」と肩を落とす継友、力の抜けた瞳で鍛冶職人の仕事ぶりを見つめる。「鉄は熱い内にうたなくちゃダメだったのかな」と後悔の念をにじませる。熱々になって柔らかくなった鉄を叩いて「カンカンキン…テンカトル(天下取る)!コンキンコン…テンカトル(天下取る)!」…形を整え終わったのち、温度を下げるために水に浸す鍛冶職人。100度をこえる鉄に触れて、勢いよく水が蒸発していく「キシューー(紀州)!」

※参考

徳川家継(とくがわいえつぐ)
第七代征夷大将軍。六代将軍の父の死を受け、満年齢4歳にして任官する。自身は6歳にして病により死去。任官も死去も征夷大将軍としては最年少。

徳川吉宗(とくがわよしむね)
第八代征夷大将軍。享保の改革(裁判制度の一新、目安箱の開設、火消しの設置、増税等)を行ったことで知られている。

紀州(きしゅう)
かつて存在した地方行政区分のひとつ。現在の和歌山県にあたる地域、紀伊国とも呼ばれる。

尾張(おわり)
かつて存在した地方行政区分のひとつ。現在の愛知県にあたる地域。

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起承転結

古典落語の大まかなあらすじを覚え書きとしてまとめていきます。ネタバレ有り、オチ記載有りなので注意されたし。