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古典落語「禁酒番屋(きんしゅばんや)」

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古典落語「禁酒番屋(きんしゅばんや)」

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起承転結起承転結
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古典落語「禁酒番屋(きんしゅばんや)」

登場人物

 酒屋(禁酒令で最近売上が減っている)
 門番(宿舎に酒を持ち込まれぬよう監視中)
 近藤(大酒飲みの侍)

小競り合い(起)

 宴席が開かれて集まった男達、互いに酒を酌み交わす。月見という大義名分のもとに上機嫌で呑み始めたはいいが、誰しも少なからず酒癖という厄介な物を抱えている。酔いが回った末の表情というのは、これはもはや十人十色異なっているのも仕方がない。…急に泣き言を言い始める者、すっかり意識が遠のき眠り始める者、ご機嫌になって歌い始める者、脱ぎ始める者。そんな中ひとりの酔っぱらいが隣の者に絡み始める、言ってみればどこにでもある光景。酒が入っているため、互いに頭に血が上りやすくなっているせいか睨み合いに発展。単なる喧嘩で済めば良かったのだがこの二人侍同士である、腰には刃物をぶら下げている。引くに引けなくなり泥酔状態で刀を抜いて向き合い始めると、不運な事にはずみで一方に致命傷を与えてしまい、死者がひとり出る始末となる。楽しかったはずの宴席は一転、刀傷沙汰の舞台と化す。

禁酒令(承)

 事件を伝え聞いた殿様、処分を下された加害者と被害者、計ふたりの家臣を同時に失う事となり衝撃を受ける。同じ悲劇を繰り返さぬ為には一体どうしたらいいかと考えた末に、「我が藩においては今後、飲酒の一切を禁ずる」と禁酒令を定める事となる。これに困ったのは家臣の酒呑み達であるが、上の指示であれば黙って従わざるを得ない。表向きは断酒を誓いながら、重役の目を盗み隠れてこっそりと一杯やるのが新たな日常となる。一方で家臣の宿舎でも取り締まりを強化する動きが始まり、入口に番屋が開設され、酒の持ち込みや酩酊状態の者を厳しく確認する検問が常設される。この禁酒令のおかげで商売が上がったりなのが、他ならぬ近所の酒屋である。客足が遠のき「醤油でも売って過ごすしか道はないのか…」と嘆いているところにひとりの藩士、大酒飲みの近藤が一杯ひっかけにやって来る。

追加注文(転)

 近藤は一升、二升…と軽快に飲み干し、まだ呑み足りない様子で「ごちそうさん、あとで追加で酒を一升拙者の小屋に運んでくれよ」と言って立ち去る。入口に門番がいる事を知りながらも、売上になるならと仕方なく承諾する酒屋。どうやって取り締まりをくぐり抜けようかと思案した挙げ句、菓子折の箱に五合のトックリを2本隠して近藤の部屋まで運ぶ事を計画する。酒の支度を済ませて宿舎までやって来た酒屋、敷地に入ろうとした所で門番に呼び止められる。「はて、誰を訪ねてきた?…近藤の所か、何の用事だ?」と問われ「菓子折を届けに」と応える酒屋。酒好きの近藤に向けて菓子折とは怪しいと「中身を確認させてもらうぞ」と言う門番、箱を開けて中からトックリが出てくる。「これは何だ」と追及され「か…カステラです、水カステラという新商品で…もう一本はただの油です。」と苦しい言い訳をする酒屋。「ほぅなるほど…本当だな?」と言いトックリの中身をゴクゴクと飲む門番、「ふぅ…美味しい、じゃなかった!酒じゃないかこれは…この嘘つきめ!」と怒り酒屋を追い返す。

包み隠さず(結)

 逃げ帰ってきた酒屋、少し計画が甘かったなと反省をする。しかしながら、門番にタダ酒を飲まれてしまったのが悔しくて仕方がない。「役得じゃないか、奴は。」何か仕返しをしてやりたいと考えるが、トックリの中身に関して嘘をついたこの点については自分にも落ち度がある。次は嘘偽りのない対応をしなくてはと心に誓いながら、トックリを手にする。再び宿舎の入口、「うぃ〜、またおまえか」と少し顔の赤い門番が酒屋へと振り向く。すると、酒屋の手にはなんとむき出しのトックリが握られている「懲りない奴だな、なんだこれは!」。「お気になさらずに、これは単なる小便です」と応える酒屋に「…小便だとぉ、またとぼけた事を」と疑いの眼差しを向ける門番。「確認させてもらうぞ…今度は熱燗か、揺すっただろう泡がたっているな」と言って再びゴクゴク…。驚いた表情の門番はニヤつく酒屋を見て叫ぶ、「この正直者めが !!」。

※参考

禁酒令(きんしゅれい)
日本においては、もっとも古くは西暦646年に禁酒令が存在したと伝えられている。世界的にもっとも最近の禁酒令としては、アメリカ合衆国にて禁酒法(ボルステッド法とも)が1920年に施行されたが、密売や密輸入、酒を求めて海外への人口流出等が相次ぎ、1933年には廃止されている。

升(しょう)
容積の単位、およそ1.8リットル(ちなみに一合は一升の1/10で、0.18リットルとなる)。

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著者プロフィール
起承転結

古典落語の大まかなあらすじを覚え書きとしてまとめていきます。ネタバレ有り、オチ記載有りなので注意されたし。