宇治学習塾小6女児殺害事件(萩野裕)まとめ
宇治学習塾小6女児殺害事件(うじがくしゅうじゅくしょうろくじょじさつがいじけん)は、京都府宇治市の学習塾「京進」宇治神明校で2005年12月10日に発生した殺人事件。小学6年生の女児(当時12歳)が通っていた塾の講師(男・犯行当時23歳)に刺殺された。
2005年(平成17年)12月10日午前9時ころ、京都府宇治市の学習塾「京進宇治神明校」(事件後、閉鎖)の106教室で、当時アルバイト講師で同志社大学4年(現・退学処分)だった萩野裕(はぎのゆう/当時23歳)が出入り口を施錠した上で、椅子に座った市立神明小学校6年生の堀本紗也乃(さやの)ちゃん(12歳)に背後から近づき、出刃包丁で紗也乃ちゃんの首、頭、顔などを十数回にわたり切りつけた。紗也乃ちゃんは教室の奥に逃げたが、萩野は紗也乃ちゃんを突き飛ばして首を突き刺し、紗也乃ちゃんは失血死した。萩野はその直後に自ら110番し、京都府警に現行犯逮捕されたが、遺体の周りは血の海。床には指2本と凶器に使われた包丁が落ちていた。血しぶきを吹きかけたように真っ赤に染まった壁。首の左右にほぼ同じ幅の傷があり、左から突き刺さった包丁が頚動脈を切ってそのまま貫通したと見られている。
出典:塾講師小6女児刺殺事件
女児が刺された、学習塾「京進宇治神明校」がある建物
凄惨な殺人現場は、ベテランの捜査官も直視に耐えなかったという。
萩野裕
12歳小6女児刺殺の塾バイト講師、萩野裕(はぎのゆう)容疑者(23)、同志社大学4年生、法学部でゼミでは「犯罪と刑罰」を専攻、「子供と遊ぶサークル」に所属、執行猶予中。府警によると、萩野容疑者は殺害の目的を果たすために講師が少なくなる日を選んだ上で時間を繰り上げて出勤し犯行に及んだことがわかった。犯行当日の朝、 学力テストのため集まった12人の生徒を犯行現場となった教室から 別の教室へ移動させていた。
この際、教室を移動するよう書いた張り紙を 事前に自分で作り、教室の扉に貼り付けていた。萩野容疑者は、校内アナウンスを使って、生徒らに移動するよう 呼びかけていた。また、児童が逃げないように部屋に鍵をかけていた。教室内の映像を映す事務室のモニターの電源コードのプラグを事前に抜いていた。 包丁2本は自宅近くのホームセンターで今月2日に購入し、さらに事件前日には、ハンマーを買い足しており、いずれも新品で、 自宅からかばんに入れて持参し、教室に持ち込んでいたこともわかった。
出刃包丁は刃渡り17センチ。府警の調べでは、首を貫通するほどの深手の傷が致命傷になったとみている。また、司法解剖の結果、児童の死因は首の右側を切りつけられたことによる失血死と判明した。顔や手にも十数カ所の切り傷があった。
犯行は約5分間だったと断定した。萩野容疑者は逮捕当初、「口論になった」「日頃から相性が悪く、2人きりになって 『あっちへ行って』と言われてかっとなった」などと供述。しかし事前に、包丁を購入したり、 自作のアンケートを用意したり、プラグを抜いたりしていることから府警は、供述内容に 矛盾があるとみていた。
府警は事件翌日の11日、萩野容疑者宅などを家宅捜索。自宅から、 パソコンや塾の出勤簿など6点を押収した。パソコンはノート形で、萩野容疑者が使っていた。また、萩野容疑者は、「通院歴があり、 薬を飲んでいる」と供述しているため、警察は、犯行当時の精神状態を 調べるための鑑定留置を検察と検討。しかし、犯行の計画性がさらに強まっていることで、警察は「責任能力を十分問える」 とみている。
ハギティ
中学の成績はトップクラス
中学はテニス部に所属。1年後輩の男性(22)は小学時代に同容疑者とケンカした際、 同容疑者の母から「うちの子は悪くない」と言われ、謝罪させられたこともあった。塾関係者は「明るく指導熱心だった」と口をそろえる一方で〝陰の顔〟を指摘する声も多い。萩野容疑者は両親と3人で90年、宇治市寺山台の新興住宅街の新築2階建てに引っ越してきた。同容疑者の母は「30歳を過ぎて出来た1人息子」と話していたというが、小学時代から自宅で奇声を上げて騒いだり「登校前に母親にののしるような言葉を浴びせた」「皿が割れる音が聞こえた」「父母のもうやめてと叫ぶ声がした」(近所の主婦)ことも。
家庭内暴力もあったようで「家庭では王様のように振る舞っていたようだ」と近所の男性。「母親が救急車で運ばれた」とする証言もあった。一家と親しく付き合う人は少なかったという。
同志社香里高時代は全国の過疎の村を巡り調査・研究をして報告書をまとめる「地歴部」に3年間所属。同志社香里高から学内推薦により2001年4月に同志社大学法学部に入学、2年生のときゼミでは学部内で屈指の人気の「犯罪と刑罰」を専攻、「子供と遊ぶサークル」に所属していた。
大学では窃盗常習犯
京都府宇治市の小6女児刺殺事件で、殺人容疑で送検された元学習塾アルバイト講師の同志社大4年萩野裕容疑者(23)が2003年ごろ、大学構内で学生のかばんを盗むなど20数件の盗みを繰り返していたことが2005年12月14日、分かった。萩野容疑者は同年6月、学内の図書館で女子学生の財布を盗み、警備員を殴りけがをさせたとして京都府警に現行犯逮捕された。府警が当時の捜査で余罪として裏付けていた。
府警によると、萩野容疑者は2003年6月までに、京都市上京区と京都府京田辺市の同志社大キャンパスで、机などに置かれていた学生のかばんや財布などを盗んでいたという。被害は計数十万円相当に上った。当時、動機について「自分も窃盗の被害に遭ったから」と供述していたという。
萩野容疑者は逮捕された事件で窃盗と傷害の罪に問われ、2004年3月に懲役2年6月、執行猶予3年の有罪判決を受けて刑が確定、現在も執行猶予中。2003年10月には大学から1年6カ月の停学処分も受けた。翌月から学習塾、京進宇治神明校でアルバイトを始めた。
この事件の時、9月に「大学に迷惑をかけた」として、母親を通じて「休学願い」を提出したが、大学側は受理せず、同年10月に教授会で1年半の停学処分を決めた。復学後は、教職課程科目の単位も取っていた。約1000人いる同大法学部の中でも、上位1~2割に入る成績。卒業まであと8単位を残すだけだった。
当時の塾は解雇されたが、5か月後の2003年11月に アルバイト講師として京進に採用。萩野容疑者の「京進宇治神明校」での紹介文は「人生は一回ポッキリ!」とピースサインの笑顔付き。小学生に国語を、中学生に英語を教えていた。同社に提出した履歴書には逮捕事実はなかったが、2004年3月に京都地裁で懲役2年6カ月執行猶予3年の有罪判決を受けており、刑は確定し今回の事件は執行猶予期間中だった。
「目立った印象感じなかった」 萩野容疑者のゼミ指導教授が記者会見
京都府宇治市の学習塾「京進宇治神明校」で、同市立神明小学校6年の堀本紗也乃(さやの)さん(12)が刺殺された事件で、逮捕された同塾講師の同志社法学部4年、萩野裕(ゆう)容疑者(23)をゼミで指導していた同学部の瀬川晃教授らが12月12日、今出川キャンパスで記者会見を開いた。瀬川教授は事件について、「最初に知ったときは驚いたというのが一番だった。遺族の方にはご冥福をお祈りしたい」と述べた。記者会見には瀬川教授のほか、同学部の佐伯影洋、西村安博両教授、谷口隆秀・同学部法学研究科事務長も同席した。萩野容疑者は2年生だった2002年10月、瀬川教授が担当するゼミ演習授業の前段階となる「法学演習」を選択。クラスの中では「ごく普通で、目立った印象を感じられなかった。ゼミのコンパや合宿でもトラブルはなかった」と同教授は説明した。
3年生になった翌年、萩野容疑者は瀬川教授の「刑法」をテーマにしたゼミに所属した。この年の6月、同容疑者は今出川キャンパスの図書館で、女子学生の財布を盗んだところを見つけた警備員ともめあってけがを負わせ、同年10月から今年3月までの停学処分を受けた。停学が明けた4月、同教授は萩野容疑者と大学で出会った。「傷害事件から更生したい気持ちが見受けられた」と振り返った。
その後10月にも萩野容疑者に会った。同容疑者は礼儀正しい態度だった。停学中に卒業したほかの学生に後れをとっていることを気にしていた様子だったため、「しっかり勉強して、卒業するように」と励ましたという。
事件後初めて授業が行われたこの日、瀬川教授は自分が教える講義の授業で学生たちに事件について発言。「事実は事実として、法律家として冷静に受け止めてほしいと訴えた」と話した。
堀本紗也乃さん通夜に600人、山田知事も参列
京都府宇治市の学習塾「京進」宇治神明校の教室で、市立神明小6年、堀本紗也乃(さやの)さん(12)が刺殺された事件で、紗也乃さんの通夜が12日午後7時から、京都府宇治市内の葬祭場で営まれ、同級生や保護者、父の京都府職員恒秀さん(42)の同僚ら約600人が冥福(めいふく)を祈った。花で埋まった祭壇には、左手でVサインし、明るい笑顔の遺影が飾られ、参列者の涙を誘った。山田啓二・京都府知事は「子どもの命を奪うやつらがいる限り、私たちは力を合わせて闘い続けなければならない」と厳しい表情。小学6年の男児の母親(43)は「同い年の子を持つ親として、ご両親の無念はいかばかりか」と涙ぐんだ。府職員の男性(55)は「憔悴(しょうすい)しているご両親の顔は悲しくて見られなかった」と話していた。
一方、同志社大の佐藤鉄男・法学部長ら2人も姿を見せたが、遺族に参列を断られ、受付前で手を合わせた。佐藤学部長は「改めて事件の影響の大きさを思い知らされた」と言葉少な。「京進」の立木貞昭社長(61)ら塾側の8人も焼香を断られたため、会場の外から祭壇に向かって合掌して頭を下げた。立木社長は「尊い人命を亡くし、申し訳ございませんと心からおわびしました」と話していた。
動機
京都地裁公判
2006年(平成18年)2月20日、京都地裁(氷室眞裁判長)で初公判が開かれた。萩野は罪状認否で「すべて間違いありません」と起訴事実を認め、謝罪した。検察側は冒頭陳述で、学習塾での指導をめぐり2人の関係が事件前年の2004年(平成16年)夏ころから悪化していたことをあげ、「紗也乃さんの言動などから一方的に不信感と憎しみを募らせた」と動機を指摘。凶器の包丁を購入した2005年(平成17年)12月2日(事件8日前)の直前に明確な殺意が芽生えたとし、「紗也乃さんの『キモイ』という言葉が頭から離れず、裏切られ、恩をあだで返されたと思いこんだ」などと事件当時の精神状態を明らかにした。その上で、計画的な犯行と具体的な供述内容などから、萩野に完全責任能力があったと主張した。
これに対して弁護側も冒頭陳述し、「萩野被告は前年11月下旬から『(紗也乃さんが)両手で剣を持って突き上げてくる』という妄想に支配されており、犯行はそれに突き動かされた結果」などと反論。萩野が事件当時、心神喪失か心神耗弱状態だったと指摘し、無罪または減刑を求めた。
2007年(平成19年)3月6日、京都地裁で判決公判が開かれた。氷室真裁判長は、萩野の完全な責任能力を認めた上で「本来生徒を守るべき講師が教え子を殺害した特異な事件で、社会的影響の大きさは看過できないが、犯行直後に自ら110番し、自首が成立する」と述べ、懲役18年(求刑・無期懲役)を言い渡した。
裁判長は弁護側の求めで地裁が実施した精神鑑定に基づき、被告が「精神病様状態」にあった局面はあったと認定。また、一時的な精神状態の悪化により、事件の8日前に自宅で被害者の像が見えたことから、像を消すために犯行を思いついたとした。 一方、萩野が犯行直前まで大学の授業を受け、塾での仕事も支障なくこなしていた。凶器を用意し、監視カメラのコンセントを抜くなど周到な準備をしていたことなどを挙げ、「非常に計画性の高い犯行」と指摘。「精神病様状態」は恒常的なものではないとし、「犯行当時、心神耗弱だった」とする弁護側の主張を退けた。その上で犯行について「余りに残忍で執拗。凄惨さは筆舌に尽くしがたく、極めて悪質」と述べた。
量刑の理由については、アスペルガー症候群でストレスに弱い被告が、「精神病様状態」もあったという経緯の中で犯行に及んだ。自ら犯行直後に110番通報しており、自首が成立する。殺害の事実を認め、被告なりに反省を深めようとしているなどと説明した。
3月19日、京都地検は懲役18年を言い渡した京都地裁判決を不服として控訴した。翌20日、弁護側も京都地裁判決を不服として控訴した。
大阪高裁
2009年(平成21年)3月24日、大阪高裁は萩野裕に対し、懲役18年とした1審・京都地裁判決を破棄し、懲役15年を言い渡した。的場純男裁判長は「犯行当時、被告は心神耗弱の状態だったとみるのが相当で、完全責任能力を認定した1審判決は是認できない」と述べた。控訴審では「犯行時、幻覚妄想状態に陥っていた」とする再鑑定を踏まえ、「アスペルガー症候群と著しい幻覚妄想の影響により、善悪を判断して行動を制御する能力が著しく減退した心神耗弱の状態だった」と認定し、量刑理由で「塾講師として塾生を保護すべき立場にあった被告が殺人者にひょう変した凶悪犯罪」と指弾する一方、「反省も深めている」などと述べた。
4月7日、上告期限となるこの日までに検察側、被告側ともに上告しなかったため、大阪高裁での懲役15年が確定した。
アスペルガー症候群とは
アスペルガー症候群(アスペルガーしょうこうぐん、Asperger Syndrome, AS)は、興味・コミュニケーションについて特異性が認められる広汎性発達障害である。興味の面では、特定の分野については驚異的なまでの集中力と知識を持ち、会話の面では、聞かれたことに対して素直に答える(「空気を読む」などの行為を苦手とする)、といった特徴を持つ。 日本語ではしばしばアスペルガー, アスペとも略して呼ばれる。
京進に9900万円の支払命令
平成17年12月、京都府宇治市の学習塾「京進」で塾生の小学生(当時12歳)がアルバイト講師の男に刺殺された事件があり、当時、ショッキングな事件が起きたと記憶しています。塾生の両親が京進に慰謝料など計約1億3000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が本日、京都地裁であり、「営業時間中に講師が生徒を殺害した事案」として京進の使用者責任を認め、約9900万円の支払いを命じました。
被害者(遺族)の救済を考えれば、「営業時間中に講師が生徒を殺害した事案」として京進の使用者責任を認めたのは、妥当な判決だと思います。
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