米原汚水タンク殺人事件の「森田繁成」とは
米原汚水タンク殺人事件
米原汚水タンク殺人事件(まいばらおすいタンクさつじんじけん)とは2009年6月に発生した殺人事件。
米原汚水タンク殺人事件
概要
2009年6月12日午前6時頃に滋賀県米原市の屎尿処理用タンク槽内から女性会社員(当時28歳)の死体が作業員によって発見された。被害者の女性は6月10日午後8時頃に退社する姿が目撃されたのを最後に消息不明になっていた。司法解剖によると死亡推定時刻は6月11日午後8時頃で女性の死因はタンク内の汚泥を吸引したことによる窒息死だったが、頭を殴られたような痕があった。警察は女性の交友関係や携帯電話の履歴などから、女性と同じ会社に勤務している交際相手の男性(当時40歳)が浮上。女性は男と交際をしていたが、男には妻子ある身だったため、不倫関係となっていた。最近は男の暴力に怯えていたため女性は同僚に相談していた。男は6月10日は出勤していたが、午後には退社をしておりアリバイがなかった。
男は女性の遺体が発見された翌日の13日に窓が割れたりルームミラーが折れたりしていた自家用車の修理を自動車販売会社に依頼していたことが判明(15日に依頼を取りやめ)。男の自家用車を調べていると車内から血痕が見つかり、女性のDNAと一致。
男は6月19日に逮捕されたが、男は否認をしたまま7月9日に殺人罪で起訴された。初公判は大津地裁101号大法廷にて2010年11月4日に開廷し、裁判員裁判の対象となった。公判回数は計11回にのぼり、検察側は無期懲役を求刑する一方で、弁護側は無罪を主張した。
12月2日に大津地裁は不倫関係から動機が存在することや現場の血痕などの状況証拠について男の弁明は極めて不自然・不合理であり、男が犯人であることは明らかとした上で、計画性が低いことから検察の無期懲役の求刑を退けて懲役17年の有罪判決が下された。
殺人被害者:滋賀県長浜市 会社員<日本電気硝子 滋賀高月事業場>小川典子さん(28) 窒息死(汚泥吸引)左後頭部:陥没骨折
死亡推定 2009/06/11 20:00[滋賀県警捜査本部(米原署)]
頭の傷は、先端が鋭い工具のようなものでひっかいたような傷、左後頭部は陥没骨折...
小川さんは知人用+家族連絡用に2台の携帯電話...家族用は自宅、知人用携帯なし.
遺体発見現場近く大量の血痕反応.
タンクから金づち発見.
現場付近:茶髪の固まり+血の付いた靴+マスカラなどが散乱.
10日夕から11日朝まで米原市内で雨.
2009/06/10 19:45 残業終了.工場からワゴン車で同僚5、6人と一緒に800m離れた請負会社営業所に移動後、退社.
仕事を通じて交際
森田容疑者は、大津市に本社を置く大手特殊ガラスメーカーの社員で、県北部にある高月町の工場に勤務していた。小川さんは約7年前からこの工場に派遣され、加工業務の取りまとめを担当する森田容疑者と同じラインで働いていた。
捜査関係者によると、森田容疑者には妻子がいるが、数年前から小川さんと交際していたという。
同社は森田容疑者が逮捕された直後の記者会見で、
「(森田容疑者は)仕事ぶりはまじめ。2人の関係については把握していなかった」と説明した。
しかし、一部の社員の間では、2人が交際していることはうわさになっていたという。
森田容疑者がよく利用していた自動車修理会社の従業員も、
「2年ほど前から小川さんと2人でよく一緒に店に来ていたので、交際していると思っていた」と話している。
待ち合わせ後にトラブル?
小川さんは10日午後8時ごろ、工場に近い派遣もとの会社の前で、だれかを待っているかのようなそぶりで立っているのが目撃された後、行方不明になった。小川さんはこの日朝、ふだん通り車で通勤したが、途中で故障。
母親に会社まで送ってもらったという。
路肩に停めたままにした車は、森田容疑者を通じて、修理会社に引き取ってもらうよう連絡。
小川さんの車の修理などは、森田容疑者が窓口になっていたという。
また捜査本部によると、小川さんの携帯電話は、最後に森田容疑者と通信した記録が残っていた。
一方、森田容疑者はその日、午後から年休を取り、昼ごろ退社していた。
捜査本部は、小川さんの退社後に2人が何らかのトラブルになったと判断。
森田容疑者の10日昼以降の詳しい行動を調べている。
司法解剖の結果などによると、小川さんの遺体は、左後頭部が陥没骨折していたほか、顔や頭を鈍器のようなもので執拗(しつよう)に殴られていた。
特に頭部は工具のようなもので、何度も殴打され、骨が見えるほどのすさまじい傷だったという。
小川さんの手には暴行を防ごうとした際の傷が残っており、捜査関係者は
「顔や頭を狙って、あんなに激しい暴行を加えていることから考えると、相当強い殺意があったのだろう」という。
捜査本部が事情聴取を待たずに押収した森田容疑者の車は、助手席側のフロントガラスに内側からひびが入っており、ルームミラーも根元から折れていた。
また、車内から小川さんの血液反応も確認されており、事件に使用された可能性は高い。
事件の謎
「まじめな人」「子供の送り迎えをしている姿をよく見た。仲のいい家族だった」
近所の人たちに、森田容疑者はごく普通の“マイホームパパ”に映っていたようだ。
逮捕前、記者の質問に対し、森田容疑者は小川さんの死亡について「ショックだ」などと話していた。
しかし、「犯人に言いたいことは」と問うと、
「何でそんなん言わなあかんねん」と語気を強めた。
面倒見がよく明るい性格で、仕事熱心と評判だった小川さん。
周囲からマイホームパパとみられていた森田容疑者。
捜査本部は、交際をめぐるトラブルがあったとみている。
しかし、頭や顔を鈍器で繰り返し殴り、瀕死の状態で汚水タンクに投げ入れるという凶行に至った動機や経過はまだ明らかになっていない。
動機不明のまま裁判員裁判
汚水タンク殺人事件は、森田繁成被告が全面否認を貫き、動機が不明のまま、裁判員裁判に真相解明が委ねられる。捜査関係者によると、「決定的な直接証拠があるとは言い難い状況」という。地検側が公判で、森田被告の破損した車や車内から検出した小川典子さんの血液痕などの証拠を積み上げ、客観的に犯行を立証できるかどうかがポイントとなる。大津地検の白髭博文次席検事は9日の記者会見で「客観的証拠も物的証拠も十分にある」と繰り返した。
起訴状では、逮捕容疑で6月10日から12日の間と幅を持たせていた殺害の時間帯を、10日午後9時ごろから11日午前1時ごろまでの4時間に絞り込み、殺害現場も現場の汚水タンク付近と特定。白髭次席検事は「証拠により特定した」と強調する一方、凶器や具体的な動機については「公判立証の問題がある」として詳細は明らかにしなかった。
一方、森田被告は6月19日の逮捕段階から「殺害していません」と容疑を否認。取り調べに対し、ほとんど黙秘を通し、雑談にも応じなくなったという。
今月3日に大津地裁で行われた勾留(こうりゅう)理由開示の手続きでも「やっていないものは本当にやっていない」「取り調べで『人間の面をした鬼』などと侮辱され、精神的にも肉体的にも疲れ切っている」と述べた。
懲役17年
その後、男は無罪を求めて最高裁まで争ったが、2013年2月2日に上告を棄却されて、懲役17年の判決が確定した。
冤罪を疑う声
有罪確定までに新聞、テレビなどでは冤罪の可能性を検証したような報道は皆無だが、実は公判では、男が事件以前に女性に暴力をふるっていたとか、男の車のフロントガラスに犯行時に生じたとみられるヒビがあったなどという、男が「クロ」だと世間に広く印象づける初期報道の多くが誤報だったことが明らかになっている。被害者は男の車の横で頭部を鈍器で乱打されており、遺体の状況からすると犯人が返り血を相当量浴びている可能性がきわめて高いにも関わらず、男が犯行時に乗っていたとされる車の中から血液反応が一切出ていないことなどから冤罪の可能性を指摘する報道も一部にある。
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