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小劇場の世界に巣食う悪しき風潮と闘う

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小劇場の世界に巣食う悪しき風潮と闘う

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小劇場の世界に巣食う悪しき風潮と闘う
タイトル「現実と向き合う」

「お知らせしちゃうパンダ」をお読み下さっている皆様、脚本・演出担当の大塩です。
朗読パンダは手前味噌ですが、この業界にあってはまずまず異例の(といって良いと思われる)スピードで動員数を伸ばし、旗揚げ1年8ヶ月、それも4日間の公演期間で700人の動員を目指す団体となりましたが、最終的には関わる人すべてが朗読を「仕事」と呼べるようになることを目指しています。といって決して夢想家の集団ではありません。朗読パンダは徹底した現実主義に貫かれた団体です。今回はその現実主義についてお話ししたいと思います。
小劇場の世界に巣食う悪しき風潮に「食えなくて当然」というものがあります。そしてやっかいなことにこの風潮を内面化した人は自分では「現実を見ている」つもりになっています。しかしこれほど現実から目を背けた態度はありません。それは表現者にとって非常に大切な「考えること」を放棄した態度だからです。どうしたら芝居で食えるようになるか。どうしたらお客さんを増やせるか。どうしたら評判が立つか。そういうことを常に考え、自信の芝居や営業に活かす。それをせずに「食えないのは当然」とか、「金のためにやっているんじゃない」という人は、慣習に取り込まれて流されているだけであり、そんな人の芝居は面白くありません。考えないから工夫もなにもないのです。それがリアリストのすることでしょうか。リアリストなら食えない現状を受け入れた上で、どうしたら食えるようになるか考えるのがあるべきかたちのはずです。
私は30年以上広島カープのファンをやってますが、12球団一の練習量と言われながら毎年あの成績です。練習量と勝率は比例しないのです。世の中の多くはそういうものです。努力と結果が簡単に結びつくのは学校の定期試験までです。そこから先に行くためには考えて工夫するしかない。だから朗読パンダに関わる人には、「この世界はこういうものだから」という慣習を素直に受け入れない精神を持ってもらいたいと思っています。
これは春風亭昇太師が話されていたことですが、「(師匠の)柳昇は、“師匠の家の掃除なんかしても藝は上手くならない。そんな時間があったら小説を読んだり映画を見て勉強しろ”、という教えだった」そうです。80歳を過ぎても「新作派」を貫いた柳昇師匠らしい教えですが、これが本当の現実主義です。全く仰る通り。師匠の家を掃除しても噺は面白くなりません。また、売れることとも無関係です。それよりも根多に繋がるものを模索する方が有益です。また、そうしなければ新しいものは生み出せません。現に柳昇一門からは、瀧川鯉昇師・春風亭昇太師といった面白い噺家が輩出しています。
私が演出を担当するときの稽古場はたいてい緩い雰囲気です。それはだらけているとか、適当にやっているのとは違います。必要だと思って緩い雰囲気にしているのです。妙な緊張感がある場では特に若手や経験の少ない役者は萎縮してしまいがちです。演出家の仕事は役者の持ち味を引き出すことにあるのですから、その味が出ないようにするのは非現実的な態度です。よく「怖い演出家」といわれる人がいますが、演出家が怒鳴って芝居が上手くなるならこんなに楽なことはありません。しかし現実は違います。私は月に10回前後は劇場に足を運びます。いわゆる「怖い演出家」の作品もたくさん観ました。でも下手な役者は下手であり、面白くない芝居は面白くありませんでした。演出家の怒声と芝居の出来も比例しないのです。これが現実です。また、下手でも売れている人がいることも現実です。苦労と結果に相関関係がないのが「仕事」の世界です。
誤解のないように申し添えておきますが、私は努力を無益だと言っているのではありません。努力の方向を間違えた無駄な苦労や緊張感は百害あって一利なしだと申し上げているのです。むしろ実力で生き残っている人はたいへんな努力をしています。妄信的にハードトレーニングをするのではなく、自分が業界で生き残るためにすべきことを考えて、そこに向かって努力する。結局は考えることに尽きるということになります。
最後に平田オリザ氏の有名な言葉を書き記して今回のお話を終わりにしたいと思います。私はこの言葉に全面的に賛同するわけではないのですが(私は役者を「駒」とは表現できません)、皆様に考えて頂くきっかけになることを期して引用する次第です。
私にしては珍しく何のボケも猥褻な表現もない文章ですみません。たまには思っていることをストレートに書いてみたかったのです。一緒に仕事をしていくことになる方には知っておいて欲しい事柄でしたので。それでは、またの機会にお会いしましょう。そのときはちゃんと猥褻なことを書きます。
                                    
大塩竜也
「役者は考える駒である」平田オリザ

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