名作の怖い話 長編の傑作選⑤
傑作の怖い話「リアル」
そこまで面白いことでもないし、長くしないように気をつけるが多少は目をつぶって欲しい。では書きます。
何かに取り憑かれたり狙われたり付きまとわれたりしたら、マジで洒落にならんことを最初に言っておく。
もう一つ、俺の経験から言わせてもらうと、一度や二度のお祓いをすれば何とかなるって事はまず無い。
長い時間かけてゆっくり蝕まれるからね。祓えないって事の方が多いみたいだな。
俺の場合は大体2年半位。
一応、断っておくと、五体満足だし人並みに生活できてる。
ただ、残念ながら、終わったかどうかって点は定かじゃない。
まずは始まりから書くことにする。
当時俺は23才。社会人一年目って事で、新しい生活を過ごすのに精一杯な頃だな。
会社が小さかったから、当然同期も少ない。必然的に仲が良くなる。
その同期に東北地方出身の○○って奴がいて、こいつがまた色んな事を知ってたり、やけに知り合いが多かっりした訳。
で、よく『これをしたら××になる』とか、『△△が来る』とかって話あるじゃない?
あれ系の話はほとんどガセだと思うんだけど、幾つかは本当にそうなってもおかしくないのがあるらしいのよ。
そいつが言うには、何か条件が幾つかあって、偶々揃っちゃうと起きるんじゃないかって。
俺の時は、まぁ悪ふざけが原因だろうな。
当時は車を買ってすぐだったし、一人暮らし始めて間もないし、何よりバイトとは比べ物にならない給料が入るんで、週末は遊び呆けてた。
8月の頭に、ナンパして仲良くなった子達と○○、そして俺の計4人で、所謂心霊スポットなる場所に、肝試しに行ったわけさ。
その場は確かに怖かったし、寒気もしたし、何かいるような気がしたりとかあったけども、特に何も起こらず、まぁスリルを満喫して帰った訳だ。
3日後だった。
当時の会社は上司が帰るまで新人は帰れないって暗黙のルールがあって、毎日遅くなってた。
疲れて家に帰って来て、ほんと今思い出しても理解出来ないのだが、部屋の入口にある姿見の前で、『してはいけないこと』をやったんだ。
試そうとか考えた訳ではなく、ふと思い付いただけだったと思う。
少し細かな説明をする。
当時の俺の部屋は、駅から徒歩15分、八畳1R、玄関から入ると細い廊下があり、その先に八畳分の部屋がある。
姿見は部屋の入口、つまり廊下と部屋の境目に置いていた。
俺が○○から聞いていたのは、『鏡の前で△をしたまま右を見ると◆が来る』とか言う話だった。
体勢的に、ちょっとお辞儀をしているような格好になる。
「来るわけねぇよな」なんて呟きながら、お辞儀のまま右向いた時だった。
部屋の真ん中辺りに何かいた。見た目は明らかに異常。
多分160センチ位だったと思う。髪はバッサバサで腰まであって、簾みたいに顔にかかってた。
っつーか、顔にはお札みたいなのが何枚も貼ってあって見えなかった。
なんて呼ぶのか分からないけど、亡くなった人に着せる白い和服を来て、小さい振り幅で左右に揺れてた。
俺はと言うと…、固まった。
声も出なかったし、一切体は動かなかったけど、頭の中では物凄い回転数で、起きていることを理解しようとしてたと思う。
想像して欲しい。
狭い1Rに、音もない部屋の真ん中辺りに何かいるって状態を。
頭の中では原因は解りきっているのに、起きてる事象を理解出来ないって混乱が渦を巻いてる。
とにかく異常だぞ?灯りをつけてたけど、逆にそれが怖いんだ。いきなり出てきたそいつが見えるから。
そいつの周りだけ青みがかって見えた。
時間が止まったと錯覚するくらい静かだったな。
とりあえず俺が出した結論は、『部屋から出る』だった。
足元にある鞄を、何故かゆっくりと慎重に手に取った。
そいつからは目が離せなかった。目を離したらヤバいと思った。
後退りしながら廊下の半分(普通に歩いたら三歩くらいなのに、かなり時間がかかった)を過ぎた辺りで、そいつが体を左右に振る動きが、少しずつ大きくなり始めた。
と同時に、何か呻き声みたいなのを出し始めた。
そこから先は、実はあんまり覚えてない。気が付くと駅前のコンビニに入ってた。
兎にも角にも、人のいるコンビニに着いて安心した。
ただ頭の中は相変わらず混乱してて、
『何だよアレ』って怒りにも似た気持ちと、『鍵閉め忘れた』って変なとこだけ冷静な自分がいた。
結局、その日は部屋に戻る勇気は無くて、一晩中ファミレスで朝を待った。
空が白み始めた頃、恐る恐る部屋のドアを開けた。良かった。消えてた。
部屋に入る前にもっかい外に出て、缶コーヒーを飲みながら一服した。
実は何もいなかったんじゃないかって思い始めてた。本当にあんなん有り得ないしね。
明るくなったってのと、もういないってので、少し余裕出来たんだろうね。
さっきよりはやや大胆に部屋に入った。
『よし、いない』なんて思いながら、カーテンが閉まってるせいで、薄暗い部屋の電気を点けた。
昨晩の出来事を裏付ける光景が目に入ってきた。
昨日、アイツがいた辺りの床に、物凄く臭いを放つ泥(多分ヘドロだと思う)が、それも足跡ってレベルを超えた量で残ってた。
起きた事を事実と再認識するまで、時間はかからなかった。
ハッと気付いてますますパニックになったんだけど、…俺、電気消してねーよ…ははっ。
スイッチ押した左手見たら、こっちにも泥がついてんの。
しばらくはどんよりした気持ちから抜けられなかったが、出ちまったもんは仕方ねーなと思えてきた。
まぁここら辺が俺がAB型である典型的なとこなんだけど、そんな状態にありながら、泥を掃除してシャワー浴びて出社した。
臭いが消えなくてかなりむかついたし、こっちはこっちで大問題だが、会社を休むことも一大事だったからね。
会社に着くと、いつもと変わらない日常が待っていた。俺は何とか○○と話す時間を探った。
事の発端に関係する○○から、何とか情報を得ようとしたのだ。
昼休み、やっと捕まえる事に成功した。
以下、俺と○○の会話の抜粋。
「前にさぁ、話してた『△すると◆が来る』とかって話あったじゃん。昨日アレやったら来たんだけど」
「は?何それ?」
「だからぁ、マジ何か出たんだって!」
「あー、はいはい。カウパー出たのね」
「おま、ふざけんなよ。やっべーのが出たってんだよ」
「何言ってんのかわかんねーよ!」
「俺だってわかんねーよ!!」
駄目だ、埒があかない。
○○を信用させないと何も進まなかったため、俺は淡々と昨日の出来事を説明した。
最初はネタだと思っていた○○も、やっと半信半疑の状態になった。
仕事終わり、俺の部屋に来て確かめる事になった。
夜10時、幸いにも早めに会社を出られた○○と俺は部屋に着いた。
扉を開けた瞬間に、今朝嗅いだ悪臭が鼻を突いた。
締め切った部屋から熱気とともに、まさしく臭いが襲ってきた。
帰りの道でもしつこいくらいの説明を俺から受けていた○○は、「・・・マジ?」と一言呟いた。信じたようだ。
問題は、○○が何かしら解決案を出してくれるかどうかだったが、望むべきではなかった。
とりあえず、お祓いに行った方がいいことと、知り合いに聞いてみるって言葉を残し、奴は逃げるように帰って行った。
予想通りとしか言いようがなかったが、奴の顔の広さだけに期待した。
臭いとこに居たくない気持ちから、その日はカプセルホテルに泊まった。
今夜も出たら終わりかもしれないと思ったのが本音。
翌日、とりあえず近所の寺に行く。さすがに会社どころじゃなかった。
お坊さんに訳を説明すると、
「専門じゃないから分からないですね~。しばらくゆっくりしてはいかがでしょう。きっと気のせいですよ」
なんて呑気な答えが返ってきた。世の中こんなもんだ。
その日は都内では有名な寺や神社を何軒か回ったが、どこも大して変わらなかった。
疲れはてた俺は、埼玉の実家を頼った。
正確には、母方の祖母がお世話になっている、S先生なる尼僧に相談したかった。
っつーか、その人以外でまともに取り合ってくれそうな人が思い浮かばなかった。
ここでS先生なる人を紹介する。
母は長崎県出身で当然祖母も長崎にいる。
祖母は、戦争経験からか熱心な仏教徒だ。 S先生はその祖母が週一度通っている自宅兼寺の住職さんだ。
俺も何度か会ったことがある。 俺は詳しくはないが、宗派の名前は教科書に乗ってるくらいだから似非者の霊能者などとは比較にならないほどしっかりと仏様に仕えてきた方なのだ。
人柄は温厚、落ち着いた優しい話し方をする。
俺が中学に上がる頃親父が土地を買い家を建てることになった。 地鎮祭とでも言うんだっけ? 兎に角その土地をお祓いした。
その一週間後に長崎の祖母から「土地が良くないからS先生がお祓いに行く」という内容の電話があった。当然、母親的にも「もう終わってるのに何で?」ってことでそれを言ったらしい。 そしたら祖母から「でもS先生がまだ残ってるって言うたったい」って。
つまり、俺が知る限り唯一頼れる人物である可能性が高いのがS先生だった。
日も暮れてきて、埼玉の実家があるバス停に着いた頃には、夜9時を回る少し前だった。
都内と違い工場ばかりの町なので、夜9時でも人気は少ない。
バス停から実家までの約20分を足早に歩いた。人気の無い暗い道に街灯が規則的に並んでいる。
内心、一昨日の事がフラッシュバックしてきてかなり怯えてたが、幸いにも奴は現れなかった。
が、夜になり涼しくなったからか、俺は自分の身体の異変に気が付いた。
どうも首の付け根辺りが熱い。
伝わりにくいかと思うが、例えるなら、首に紐を巻き付けられて、左右にずらされているような感じだ。
首に手をやって寒気がした。熱い。首だけ熱い。しかもヒリヒリしはじめた。
どうも発疹のようなモノがあるようだった。
歩いてられなくなり、実家まで全力で走った。
息を切らせながら実家の玄関を開けると、母が電話を切るところだった。
そして俺の顔を見るなりこう言ったんだ。
「あぁ、あんた。長崎のお婆ちゃんから電話来て、心配だって。S先生が、あんたが良くない事になってるからこっちおいでって言われたて。あんたなんかしたの?あらやだ。あんた首の回りどうしたの!!?」
答える前に玄関の鏡を見た。奴が来るかもとか考えなかったな…、何故か。
首の回り付け根の部分は、縄でも巻かれているかのように見事に赤い線が出来ていた。
近づいてみると、細かな発疹がびっしり浮き上がっていた。
さすがに小刻みに身体が震えてきた。
何も考えずに、母にも一言も返事をせずに階段を駈け上がり、母の部屋の小さな仏像の前で、南無阿弥陀仏を繰り返した。
そうする他、何も出来なかった。
心配して親父が、「どうした!!」と怒鳴りながら走って来た。
母は異常を察知して祖母に電話している。母の声が聞こえた。泣き声だ。
逃げ場はないと、恐ろしい事になってしまっていると、この時やっと理解した…。
実家に帰り、自分が置かれている状況を理解して3日が過ぎた。
精神的に参ったからか、それが何かしらアイツが起こしたものなのかは分からなかったが、2日間高熱に悩まされた。
首から異常なほど汗をかき、2日目の昼には血が滲み始めた。
3日目の朝には首からの血は止まっていた。元々滲む程度だったしね。
熱も微熱くらいまで下がり、少しは落ち着いた。
ただ、首の回りに異常な痒さが感じられた。
チクチクと痛くて痒い。枕や布団、タオルなどが触れると、鋭い小さな痛みが走る。
血が出ていたから、瘡蓋が出来て痒いのかと思い、意識して触らないようにした。
布団にもぐり、夕方まで気にしないように心掛けたが、便所に行った時にどうしても気になって鏡を見た。
鏡なんて見たくもないのに、どうしても自分に起きてる事を、この目で確認しないと気が済まなかった。
鏡は見たこともない状況を写していた。
首の赤みは完全に引いていた。その代わり、発疹が大きくなっていた。
今でも思い出す度に鳥肌が立つほど気持ち悪いが、敢えて細かな描写をさせて欲しい。気を悪くしないでくれ。
元々首の回りの線は、太さが1cmくらいだった。
そこが真っ赤になり、元々かなり色白な俺の肌との対比で、正しく赤い紐が巻かれているように見えていた。
これが3日前の事。
目の前の鏡に映るその部分には、膿が溜まっていた。
…いや、正確じゃないな。
正確には、赤い線を作っていた発疹には膿が溜まっていて、まるで特大のニキビがひしめき合っているようだった。
そのほとんどが膿を滲ませていて、あまりにおぞましくて気持ちが悪くなり、その場で吐いた。
真水で首を洗い、軟膏を母から借り、塗り、泣きながら布団に戻った。
何も考えられなかった。唯一、『何で俺なんだ』って憤りだけだった。
泣きつかれた頃、携帯がなった。○○からだった。
こういう時、ほんの僅かでも、希望って物凄いエネルギーになるぞ?正直、こんなに嬉しい着信はなかった。
「もしもし」
『おぉ~!大丈夫~!?』
「ぃや…大丈夫な訳ねーだろ…」
『ぁー、やっぱヤバい?』
「やべーなんてもんじゃねーよ。はぁ…。っつーか何かないんかよ?」
『ぅん、地元の友達に聞いてみたんだけどさ~、ちょっと分かる奴居なくて…、申し訳ない』
「ぁー、で?」
正直、○○なりに色々してくれたとは思うが、この時の俺に相手を思いやる余裕なんてなかったから、かなり自己中な話し方に聞こえただろう。
『いや、その代わり、友達の知り合いにそーいうの強い人がいてさー。紹介してもいいんだけど、金かかるって…』
「!? 金とんの?」
『うん、みたい…。どーする?』
「どんくらい?」
『知り合いの話だと、とりあえず五十万くらいらしい…』
「五十万~!?」
当時の俺からすると、働いているとはいえ五十万なんて払えるわけ無い額だった。
金が惜しかったが、恐怖と苦しみから解放されるなら…。選択肢は無かった。
「…分かった。いつ紹介してくれる?」
『その人今群馬にいるらしいんだわ。知り合いに聞いてみるから、ちょっと待ってて』
話が前後するが、俺が仏像の前で南無阿弥陀仏を繰り返していた時、母は祖母に電話をかけていた。
祖母からすぐにS先生に相談が行き、(相談と言うよりも、助けて下さいってお願いだったらしいが)最終的には、S先生がいらしてくれる事になっていた。
ただし、S先生もご多忙だし、何より高齢だ。こっちに来れるのは三週間先に決まった。
つまり、三週間は不安と恐怖と、何か起きてもおかしか無い状況に居なければならなかった。
そんな状況だから、少しでも出来るだけの事をしてないと、気持ちが落ち着かなかった。
○○が電話を折り返してきたのは、夜11時を過ぎた頃だった。
『待たせて悪いね。知り合いに相談したら連絡入れてくれて、明日行けるって』
「明日?」
『ほら、明日日曜じゃん?』
そうか、いつの間にか奴を見てから五日も経つのか。不思議と会社の事を忘れてたな。
「分かった。ありがと。ウチまで来てくれるの?」
『家まで行くって。車で行くらしいから、住所メールしといて』
「お前はどーすんの?来て欲しいんだけど」
『行く行く』
「金、後でも大丈夫かな?」
『多分大丈夫じゃね?』
「分かった。近くまで来たら電話して」
何とも段取りの悪い話だが、若僧だった俺には仕方の無い事だった。
その晩、夢を見た。
寝てる俺の脇に、白い和服をきた若い女性が正座していた。
俺が気付くと、三指をつき深々と頭を下げた後、部屋から出ていった。
部屋から出る前に、もう一度深々と頭を下げていた。
この夢がアイツと関係しているのかは分からなかったが。
翌日、昼過ぎに○○から連絡が来た。電話で誘導し出迎えた。
来たのは○○とその友達、そして三十代後半くらいだろう男が来た。
普通の人だと思えなかったな。チンピラみたいな感じだったし、何の仕事をしてるのか想像もつかなかった。
俺がちゃんと説明していなかったから、両親が訝しんだ。
まず間違いなく偽名だと思うが、男は林と名乗った。
林「T君の話は彼から聞いてましてね。まー厄介な事になってるんです」
(今さらですまん。Tとは俺、会話中の彼は○○だと思って読んでくれ)
父「それで、林さんはどういった関係でいらしていただいたんですか?」
林「いやね、これもう素人さんじゃどーしようもなぃんですよ。お父さん、いいですか?信じられないかも知れませんが、このままだとT君、危ないですよ?で、彼が友達のT君が危ないから助けて欲しいって言うんでね、ここまで来たって訳なんですよ」
母「Tは危ないんでしょうか?」
林「いやね、私も結構こういうのは経験してますけど、こんなに酷いのは初めてですね。この部屋いっぱいに悪い気が充満してます」
父「…失礼ですが、林さんのご職業をお聞きしても良いですか?」
林「あー、気になりますか?ま、そりゃ急に来てこんな話したら怪しいですもんねぇ でもね、ちゃんと除霊して、辺りを清めないと、T君、ほんとに連れて行かれますよ?」
母「あの、林さんにお願いできるでしょうか?」
林「それはもう、任せていただければ。こーいうのは、私みたいな専門の者じゃないと駄目ですからね。 ただね、お母さん。こっちとしとも危険があるんでね、少しばかりは包んでいただかないと。
ね、分かるでしょ?」
父「いくらあればいいんです?」
林「そうですね~、まぁ二百はいただかないと…」
父「えらい高いな!?」
林「これでも彼が友達助けて欲しいって言うから、わざわざ時間かけて来てるんですよ? 嫌だって言うなら、こっちは別に関係無いですからね~。 でも、たった二百万でT君助かるなら、安いもんだと思いますけどね」
林「それに、T君もお寺に行って相手にされなかったんでしょう?分かる人なんて一握りなんですわ。また一から探すんですか?」
俺は黙って聞いてた。
さすがに二百万って聞いた時は○○を見たが、○○もばつの悪そうな顔をしていた。
結局、父も母も分からないことにそれ以上の意見を言える筈もなく、渋々任せることになった。
林は、早速今夜に除霊をすると言い出した。
準備をすると言い、一度出掛けた。(出がけに、両親に準備にかかる金をもらって行った)
夕方に戻ってくると、蝋燭を立て、御札のような紙を部屋中に貼り、膝元に水晶玉を置き数珠を持ち、日本酒だと思うが、それを杯に注いだ。何となくそれっぽくなって来た。
林「T君。これからお祓いするから。これでもう大丈夫だから。お父さん、お母さん。すみませんが、一旦家から出ていってもらえますかね?もしかしたら、霊がそっちに行く事も無い訳じゃないですから」
両親は不本意ながら、外の車で待機する事になった。
日も暮れて辺りが暗くなった頃、お祓いは始まった。
林はお経のようなものを唱えながら、一定のタイミングで杯に指をつけ、俺にその滴を飛ばした。
俺は半信半疑のまま、布団に横たわり目を閉じていた。林からそうするように言われたからだ。
お祓いが始まってから大分たった。
お経を唱える声が途切れ途切れになりはじめた。
目を閉じていたから、嫌な雰囲気と、少しずつおかしくなってゆくお経だけが俺に分かることだった。
最初こそ気付かなかったが、首がやけに痛い。痒さを通り越して、明らかに痛みを感じていた。
目を開けまいと、痛みに耐えようと歯を食いしばっていると、お経が止まった。
しかしおかしい。
良く分からないが、区切りが悪い終り方だったし、終わったにしては何も声をかけてこない。
何より、首の痛みは一向に引かず、寧ろ増しているのだ。
寒気も感じるし、何かが布団の上に跨がっているような気がする。
目を開けたらいけない。それだけは絶対にしてはいけない。
分かってはいたが…。開けてしまった。
目を開けると、恐ろしい光景が飛び込んできた。
林は、布団で寝ている俺の右手側に座りお祓いをしていた。
林と向き合うように、俺を挟んでアイツが正座していた。
膝の上に手を置き、上半身だけを伸ばして林の顔を覗き込んでいる。
林の顔とアイツの顔の間には、拳一つ分くらいの隙間しかなかった。
不思議そうに、顔を斜めにして、梟のように小刻みに顔を動かしながら、聞き取れないがぼそぼそと呟きながら、林の顔を覗き込んでいた。
今思うと、林に何かを囁いていたのかもしれない。
林は少し俯き気味に、目線を下に落としたまま瞬きもせず、口はだらしなく開いたまま涎を垂らしていた。
少し顔が笑っていたように見えた。時々小さく頷いていた。
俺は瞬きも忘れ凝視していた。
不意にアイツの首が動きを止めた。次の瞬間、顔を俺に向けた。
俺は慌てて目をギュッと閉じ、布団を被り、ひたすら南無阿弥陀仏と唱えていた。
俺の顔の間近で、アイツが梟のように顔を動かしている光景が瞼に浮かんできた。恐ろしかった。
ガタガタと音が聞こえ、階段を駈け降りる音が聞こえた。林が逃げ出したようだ。
俺は怖くて怖くて布団に潜り続けていた。
両親が来て、電気を点けて布団を剥いだとき、丸まって身体が固まった俺がいたそうだ。
林は両親に見向きもせず車に乗り込み、待っていた○○、○○の友達と供に何処かへ消えていった。
後から○○に聞いた話では、「車を出せ」以外は言わなかったらしい。
解決するどころか、ますます悪いことになってしまった俺には、三週間先のS先生を待っている余裕など残っていなかった。
アイツを再び目にしてから、さらに4日が経った。
当たり前かも知れないが、首は随分良くなり、まだ痕が残るとは言え、明らかに体力は回復していた。
熱も下がり、身体はもう問題が無かった。
ただ、それは身体的な話でしかなくて、朝だろうが夜だろうが関係無く怯えていた。
何時どこでアイツが姿を現すかと思うと、怖くて仕方無かった。
眠れない夜が続き、食事もほとんど受け付けられず、常に辺りの気配を気にしていた。
たった10日足らずで、俺の顔は随分変わったと思う。
精神的に追い詰められていた俺には、時間が無かった。
当然、まともな社会生活なんて送れる訳も無く、親から連絡を入れてもらい会社を辞めた。
(これも後から聞いた話でしかないのだが…、連絡を入れた時は随分嫌味を言われたらしい)
とにかく何もかもが怖くて、洗濯物や家の窓から見える柿の木が揺れただけでも、もしかしたらアイツじゃないかと一人怯えていた。
S先生が来るまでには、まだ二週間あまりが残っていた。俺には長すぎた。
見かねた両親は、強引に怯える俺を車に押し込み、何処かへ向かった。
父が何度も「心配するな」「大丈夫だ」と声をかけた。
車の後部座席で、母は俺の肩を抱き頭を撫でていた。母に頭を撫でられるなんて何年ぶりだったろう。
時間の感覚も無く(当時の俺にはだが)、車で移動しながら夜を迎えた。
二十歳も過ぎて恥ずかしい話だが、母に寄り添われ安心したのか、久方ぶりに深い眠りに落ちた。
目が覚めるとすでに陽は登っていて、久しぶりに眠れてすっきりした。
実際には丸1日半眠っていたらしい。多分、あんなに長く眠るなんてもうないだろうな。
外を見ると、車は見慣れない景色の中を進んでいた。
少しずつ、見覚えのある景色が目に入り始めた。道路の中央に電車が走っている。
車は長崎に着いていた。これには俺も流石に驚いた。
怯え続ける俺を気遣い、飛行機や新幹線は避け車での移動にしてくれたらしい。
途中で休憩は何度も入れたらしいが、それでもろくに眠らず車を走らせ続けた父と、俺が怖がらないようにずっと寄り添ってくれた母への恩は、一生かけても返しきれそうもない。
祖父母の住む所は、長崎の柳川という。柳川に着くと坂道の下に車を停め、両親が祖父母を呼びに行った。
(祖父母の家は、坂道から脇に入った石段を登った先にある)
その間、俺は車の中に一人きりの状態になった。
両親が二人で出ていったのは、足腰の悪い祖母や、S先生の家に持っていく荷物を運ぶのを手伝うためだったのだが、自分で「大丈夫、行って来て」なんて言ったのは、本当に舐めてた証拠だと思う。
久しぶりに眠れた事や、今いる場所が東京・埼玉と随分離れた長崎だった事が、気を弛めたのかもしれない。
車の後部座席に足をまるめて座り(体育座りね)、外をぼーっと眺めていると、急に首に痛みが走った。
今までの痛みと比較にならないほど、言い過ぎかも知れないが激痛が走った。
首に手をやると滑りがあった。…血が出てた。指先に付いた血が、否応なしに俺を現実に引き戻した。
この時、怖いとか、アイツが近くにいるかもって考える前に、「またかよ…」ってなげやりな気持ちが先に来たな。
もう何か嫌になって泣けてきた。
分かってもらえれば嬉しいけど、嫌な事が少しの間をおいて続けて起きるのって、もうどうしようも無いくらい落ち込むんだよね。
気持ちの整理が着き始めると嫌な事が起きるっては辛いよね。
この時は少し気が弛んでいたから尚更で、「どーしろっつーんだよ!!」とか、「いい加減にしてくれよ」とか独り言をぶつぶつ言いながら泣いてた。
車に両親が祖父母を連れて戻って来たんだけど、すぐにパニックになった。
何しろ問題の俺が、首から血を流しながら、後部座席で項垂れて泣いてるからね。何も無い訳がないよな。
「どうした?」とか、「何とか言え!」とか、「もぅやだー」とか、「Tちゃん、しっかりせんか!!」とか、「どげんしたと!?」とか、「あなたどうしよう」とか。
この時は思わず、「てめぇらぅるっせーんだよ!!」って怒鳴ってしまった。
こんな時に説明なんか出来るわけねーだろって、てめぇらじゃ何も出来ねぇ癖に…黙ってろよ!とか思ってたな。
勝手に悪い事になって仕事は辞めるわ、騙されそうになるわ…
こんな俺みたいな駄目な奴のために、走り回ってくれてる人達なのに…。
今考えると本当に恥ずかしい。
で、人生で一度きりなんだけどさ、親父がいきなり俺の左頬に平手打ちをしてきた。
物凄い痛かったね。親父、滅茶苦茶厳しくて何度も口喧嘩はしたけど、多分生まれてから一回も打たれた事無かったからな。
(父のポリシーで、子供は絶対殴らないってのは昔から耳タコだったしね)
で、一言だけ「お祖父さんとお祖母さんに謝れ」って、静かだけど厳しい口調で言ったんだ。
それで、何故か落ち着いた。ってかびっくりし過ぎて、それまでの絶望感がどっかに行ってしまったよ。
冷静さを取り戻して皆に謝ったら、急に腹が据わってきた気がした。
走り始めた車の中で、励ましてくれる祖父母の言葉に感極まってまた泣いた。
自分で思ってるよか全然心が弱かったんだな、俺は。
S先生の家(寺でもあるが)に着くと、ふっと軽くなった気がした。
何か起きたっていうよりは、俺が勝手に安心したって方が正しいだろうな。
門をくぐり、石畳が敷かれた細い道を抜けると、初老の男性が迎え入れてくれた。
そう言えば、S先生の家にはいつもお客さんがいたような気がする。
きっと、祖母のように通っている人が多いんだろう。
奥に通され裏手の玄関から入り進んでいくと、十畳くらいの仏間がある。
S先生は俺の記憶の通り、仏像の前に敷かれた座布団の上に正座していて、ゆっくりと振り向いたんだ。
(下手な長崎弁を記憶に頼って書くが見逃してな)
祖母「Tちゃん、もうよかけんね。S先生が見てくれなさるけん」
S先生「久しぶりねぇ。随分立派になって。早いわねぇ」
祖母「S先生、Tちゃんば大丈夫でしょかね?」
祖父「大丈夫って。そげん言うたかてまだ来たばかりやけん、S先生かてよう分からんてさ」
祖母「あんたさんは黙っときなさんてさ。もうあたし心配で心配で仕方なかってさ」
何でだろう…ただS先生の前に来ただけなの、にそれまで慌ていた祖父母が落ち着いていた。
それは両親にも俺にも伝わってきて、深く息を吐いたら身体から悪いものが出ていった気がした。
両親はもう体力的にも精神的にも限界に近かったらしく、
「疲れちゃったやろ?後はS先生が良くしてくれるけん、隣ば行って休んでたらよか」
と、人懐こい祖父の言葉に甘えて隣の部屋へ。
S先生「じゃあTちゃん、こっちにいらっしゃい」
S先生に呼ばれ、向かい合わせで正座した。
S先生「それじゃIさん達も隣の部屋で寛いでらして下さい。Tちゃんと話をしますからね。後は任せて、こっちの部屋には良いと言うまで戻って来ては駄目ですよ?」
祖父「S先生、Tちゃんばよろしくお願いします!」
祖母「Tちゃん、心配なかけんね。S先生がうまいことしてくれるけん。あんたさんはよく言うこと聞いといたらよかけんね。ね?」
しきりにS先生にお願いして、俺に声をかけてくれる祖父母の姿にまた涙が出てきた。泣きっぱなしだな俺。
S先生はもっと近づくように言い、膝と膝を付け合わせるように座った。
俺の手を取り、暫くは何も言わず優しい顔で俺を見ていた。
俺は何故か、悪さをして怒られるじゃないかと親の顔色を伺っていた、子供の頃のような気持ちになっていた。
目の前の、敢えて書くが、自分よりも小さくて明らかに力の弱いお婆ちゃんの、威圧的でもなんでもない雰囲気に呑まれていた。
あんな人本当にいるんだな。
S先生「…どうしようかしらね」
俺「…」
S先生「Tちゃん、怖い?」
俺「…はい」
S先生「そうよねぇ。このままって訳には行かないわよねぇ」
俺「えっと…」
S先生「あぁ、いいの。こっちの話だから」
何がいいんだ!?ちっともよかねーだろなんて気持ちが溢れて来て、耐えきれずついにブチ撒けた。
本当に人として未熟だなぁ、俺は。
俺「あの、俺どーなるんすか? もう早いとこ何とかして欲しいんです。大体何なんですか?何でアイツ俺に付きまとうんですか?もう勘弁してくれって感じですよ。S先生、何とかならないんですか?」
S先生「Tちゃ…」
俺「大体、俺別に悪いこと何もしてないっすよ!?確かに□□(心霊スポットね)には行ったけど、俺だけじゃないし、何で俺だけこんな目に会わなきゃいけないんすか? 鏡の前で△しちゃだめだってのも関係あるんですか?ホント訳わかんねぇ!!あーっ!苛つくぅぁー!!」
「ドォ~ドォルルシッテ」
「ドォ~ドォルル」
「チルシッテ」
…何が何だか解らなかった。(ホントに訳解んないので、取り敢えずそのまま書く)
「ドォ~。 シッテドォ~シッテ」
左耳に鸚鵡か鸚哥みたいな、甲高くて抑揚の無い声が聞こえてきた。
それが「ドーシテ」と繰り返していると理解するまで少し時間がかかった。
俺はS先生の目を見ていたし、S先生は俺の目を見ていた。
ただ優しかったS先生の顔は、無表情になっているように見えた…。
左側の視界には何かいるってのは分かってた。チラチラと見えちゃうからね。
よせば良いのに、左を向いてしまった。首から生暖かい血が流れてるのを感じながら。
アイツが立ってた。体をくの字に曲げて、俺の顔を覗き込んでいた。
くどいけど…訳が解らなかった。起きてることを認められなかった。
此処は寺なのに、目の前にはS先生がいるのに…何でなんで何で…。
一週間前に見たまんまだった。アイツの顔が目の前にあった。
梟のように小刻みに顔を動かしながら、俺を不思議そうに覗き込んでいた。
「ドォシッテ?ドォシッテ?ドォシッテ?ドォシッテ?」
鸚鵡のような声でずっと質問され続けた。
きっと…林も同じようにこの声を聞いていたんだろう。俺と同じ言葉を囁かれていたのかは分からないが…。
俺は息する事を忘れてしまって、目と口を大きく開いたままだった。
いや、息が上手く出来なかったって方が正しいな。
たまに「コヒュッ」って感じで、息を吸い込む事に失敗してた気がするし。
そうこうしているうちに、アイツが手を動かして、顔に貼り付けてあるお札みたいなのを、ゆっくりめくり始めたんだ。
見ちゃ駄目だ!! 絶対駄目だって分かってるし逃げたかったんだけど、動けないんだよ!!
もう顎の辺りが見えてしまいそうなくらいまで来ていた。
心の中では「ヤメロ!それ以上めくんな!!」って叫んでるのに、口からは「ァ…ァカハッ…」みたいな情けない息しか出ないんだ。
もうやばい!!ヤバい!ヤバい!ってところで、「パンッ!!」って。
例えとか誇張でもなく“跳び上がった。心臓が破裂するかと思った。
「パン!!」
その音で俺は跳び上がった。
正座してたから、体が倒れそうになりながら後に振り向いて、すぐ走り出した。
何か考えてた訳じゃなく、体が勝手に動いたんだよね。
でも慣れない正座のせいで、足が痺れてまともに走れないのよ。
痺れて足が縺れた事と、あんまりにも前を見てないせいで、頭から壁に突っ込んだが、ちっとも痛くなかった。
額から血がだらだら出てたのに…、それだけテンパって周りが見えてなかったって事だな。
血が目に入って何も見えない。
手をブン回して出口を探した。けど、的外れの方ばっかり探してたみたい。
「まだいけません!」
いきなりS先生が大きい声を出した。
障子の向こうにいる両親や祖父母に言ったのか、俺に言ったのか分からなかった。
分からなかったが、その声は俺の動きを止めるには十分だった。
ビクってなってその場で硬直。またもや頭の中では、物凄い回転で事態を把握しようとしていた。
っつーか把握なんて出来る筈もなく、S先生の言うことに従っただけなんだけどね。
俺の動きが止まり、仏間に入ろうとする両親と祖父母の動きが止まった事を確認するかのように、少しの間を置いてからS先生が話し始めた。
S先生「Tちゃんごめんなさいね。怖かったわね。もう大丈夫だからこっちに戻ってらっしゃい。Iさん、大丈夫ですからもう少し待ってて下さいね」
障子(襖だったかも)の向こうから、しきりに何か言ってのは聞こえてたけど、覚えてない。
血を拭いながらS先生の前に戻ると、手拭いを貸してくれた。お香なのかしんないけど、いい匂いがしたな。
ここに来てやっと、あの音はS先生が手を叩いた音だって気付いた。(質問出来る余裕は無かったけど)
「Tちゃん、見えたわね?聞こえた?」
「見えました…どーして?って繰り返してました」
この時にはもう、S先生の顔はいつもの優しい顔になってたんだ。
俺も今度はゆっくりと、出来るだけ落ち着いて答える事だけに集中した。
まぁ…考えるのを諦めたんだけどね。
「そうね。どうして?って聞いてたわね。何だと思った?」
さっぱり分からなかった。考えようなんて思わなかったしね。
「?? …いや…、ぅぅん?…分かりません」
「Tちゃんはさっきの怖い?」
「怖い…です」
「何が怖いの?」
「いや…、だって普通じゃないし。幽霊だし…」
ここらへんで、俺の脳は思考能力の限界を越えてたな。S先生が何を言いたいのかさっぱりだった。
「でも何もされてないわよねぇ?」
「いや…首から血が出たし、それに何かお札みたいなの捲ろうとしてたし。明らかに普通じゃないし…」
「そうよねぇ。でも、それ以外は無いわよねぇ」
「…」
「難しいわねぇ」
「あの、よく分からなくて…すいません」
「いいのよ」
S先生は、俺にも分かるように話してくれた。諭すっていった方がいいかもしれない。
まず、アイツは幽霊とかお化けって呼ばれるもので間違いない。
じゃあ所謂悪霊ってヤツかって言うと、そう言いきっていいかS先生には難しいらしかった。
明らかにタチが悪い部類に入るらしいけど、S先生には悪意は感じられなかったって言っていた。
俺に起きた事は何なのかに対してはこう答えた。
「悪気は無くても強すぎるとこうなっちゃうのよ。あの人ずっと寂しかったのね。『話したい、触れたい、見て欲しい、気付いて気付いてー』って、ずっと思ってたのね。Tちゃんはね、分からないかもしれないけど、暖かいのよ。色んな人によく思われてて、それがきっと『いいな~。優しそうだな~』って思ったのね。だから、自分に気付いてくれた事が、嬉しくて仕方なかったんじゃないかしら。でもね、Tちゃんはあの人と比べると全然弱いのね。だから、近くに居るだけでも怖くなっちゃって、体が反応しちゃうのね」
S先生は、まるで子供に話すようにゆっくりと、難しい言葉を使わないように話してくれた。
俺はどうすればいいのか分からなくなったよ。
アイツは絶対に悪霊とかタチの悪いヤツだと決めつけてたから。
S先生にお祓いしてもらえばそれで終ると思ってたから…。
それなのに、S先生がアイツを庇うように話してたから…。
「さて、それじゃあ今度は何とかしないといけないわね。Tちゃん、時間かかりますけど、何とかしてあげますからね」
この一言には本当に救われたよ。あぁ、もういいんだ。終るんだって思った。やっと安心したんだ。
S先生に教えられたことを書きます。俺にとって一生忘れたくない言葉です。
「見た目が怖くても、自分が知らないものでも、自分と同じように苦しんでると思いなさい。救いの手を差し伸べてくれるのを待っていると思いなさい」
S先生はお経をあげ始めた。お祓いのためじゃ無く、アイツが成仏出来るように。
その晩、額は裂けてたし、よくよく見れば首の痕が大きく破けて痛かったけど、本当にぐっすり眠れた。
(お経終わってもキョドってた俺のために、笑いながらその日は泊めてくれた)
翌日、朝早く起きたつもりが、S先生はすでに朝のお祈りを終らしてた。
「おはよう、Tちゃん。さ、顔洗って朝御飯食べてらっしゃい。食べ終わったら本山に向かいますからね」
関係者でも何でもないんで、あまり書くのはどうかと思うが少しだけ。
S先生が属している宗派は、前にも書いた通り教科書に載るくらい歴史があって、信者の方も修行されてる方も、日本全国にいらっしゃるのね。
教えは一緒なんだけど、地理的な問題から東と西それぞれに本山があるんだって。
俺が連れていってもらったのが西の本山。
本山に暫くお世話になって、
自分が元々持っている徳(未だにどんなものか説明できないけど)を高める事と、アイツが少しでも早く成仏出来るように、本山で供養してあげられるためってS先生は言ってた。
その話を聞いて一番喜んだのが祖母。まだ信じられなそうだったのが親父。
最後は、俺が「もう大丈夫。行ってくる」って言ったから反対しなかったけど。
本山に着くと迎えの若い方が待っていて、S先生に丁寧に挨拶してた。
本堂の横奥にある小屋(小屋って呼ぶのが憚れるほど広くて立派だったが)で本山の方々にご挨拶。
ここでもS先生にはかなりの低姿勢だったな。
S先生、実は凄い人らしく、望めばかなりの地位にいても不思議じゃないんだって後から聞いた。
(「寂しいけど序列ができちゃうのね」ってS先生は言ってた)
俺は本山に暫く厄介になり、まぁ客人扱いではあったけど、皆さんと同じような生活をした。
多分、S先生の言葉添えがあったからだろうな。
その中で、自分が本当に幸運なんだなって実感したよ。
もう四十年間ずっと蛇の怨霊に苦しめられている女性や、家族親族まで祟りで没落してしまって、身寄りが無くなってしまったけど、家系を辿れば立派な士族の末裔の人とか…
俺なんかよりよっぽど辛い思いしてる人が、こんなにいるなんて知らなかったから…。
厳しい生活の中にいたからなのか、場所がそうだからなのか、あるいはS先生の話があったからなのか、恐怖は大分薄れた。(とは言うものの、ふと瞬間にアイツがそばに来てる気がしてかなり怯えたけど)
本山に預けてもらって一ヶ月経った頃、S先生がいらっしゃった。
「あらあら、随分良くなったみたいね」
「えぇ、S先生のおかげですね」
「あれから見えたりした?」
「いや…一回も。多分成仏したかどっかにいったんじゃないですか?ここ、本山だし」
「そんな事ないわよ?」
顔がひきつった。
「あら、ごめんなさい。また怖くなっちゃうわよね。でもねTちゃん、ここには沢山の苦しんでる人がいるの。その人達を少しでも多く助けてあげるのが、私達の仕事なのよ」
多分だけど、S先生の言葉にはアイツも含まれてたんだと思う。
「Tちゃん、もう少しここにいて勉強しなさい。折角なんだから」
俺はS先生の言葉に従った。あの時の事がまだまだ尾を引いていて、まだここにいたいって思ってたからね。
それに、一日はあっという間なんだけど…何て言うか、時間がゆっくり流れてような感じが好きだったな。
(何か矛盾してるけどね)
そんなこんなが続いて、結局三ヶ月も居座ってしまった。
その間S先生は、こっちには顔を出さなかった。(二ヶ月前に来たきり)
やっぱりS先生の言葉がないと不安だからね。
でも、哀しいかな、流石に三ヶ月もそれまで自分がいた騒々しい世界から隔離されると、物足りない気持ちが強くなってた。
実に二ヶ月ぶりにS先生がやって来て、やっと本山での生活は終りを迎えようとしていた。
身支度を整え、兎に角お世話になった皆さんに一人ずつ御礼を言い、S先生と帰ろうとしたんだ。
でも気付くと、横にいたはずのS先生がいない。
あれ?と思って振り向いたら、少し後にいたんだ。
歩くの速すぎたかな?って思って戻ったら、優しい顔で「Tちゃん、帰るのやめてここに居たら?」って言われた。
実はS先生に認められた気がして少し嬉しかった。
「いや、僕にはここの人達みたいには出来ないです。本当に皆さん凄いと思います。真似出来そうもないですよ」
照れながら答えたら、
「そうじゃなくて、帰っちゃ駄目みたいなのよ」
「え?」
「だってまだ残ってるから」
また顔がひきつった。
結局、本山を降りる事が出来たのは、それから二ヶ月後だった。実に五ヶ月も居座ってしまった。
多分、こんなに長く、家族でも無い誰かに生活の面倒を見てもらう事は、この先ないだろう。
S先生から、「多分もう大丈夫だと思うけど、しばらくの間は月に一度おいでなさい」と言われた。
アイツが消えたのか、それとも隠れてれのか、本当のところは分からないからだそうだ。
長かった本山の生活も終って、やっと日常に戻って来た。
借りてたアパートは母が退去手続きを済ましてくれていて、実家には俺の荷物が運び込まれてた。
アパートの部屋を開けた時、何かを燻したような臭いと、部屋の真ん中辺りの床に小さな虫が集まってたらしい。
怖すぎたらしく、その日はなにもしないで帰って来たんだってさ。
翌日、仕方無いんで、意を決してまた部屋を開けたら、臭いは残ってたけど虫は消えてたらしい。
母には申し訳ないが、俺が見なくて良かった。
実家に戻り、実に約半年ぶりくらいに携帯を見ると、(そーいや、それまでは気にならなかったな)
物凄い件数の着信とメールがあった。中でも一番多かったのが○○。
メールから、奴は奴なりに自分のせいでこんな事になったって自責の念があったらしく、謝罪とか、こうすればいいとか、こんな人が見つかったとか、まめに連絡が入ってた。
母から○○が家まで来た事も聞いた。
戻って二日目の夜、○○に電話を入れた。
電話口が騒がしい。○○は呂律が回らず何を言っているか分からなかった。
…コンパしてやがった。
とりあえず電話をきり、『殺すぞ』とメールを送っておいた。所詮世の中他人は他人だ。
翌日、○○から『謝りたいから時間くれないか?』とメールが来た。
電話じゃなかったのは、気まずかったからだろう。
夜になると、家まで○○が来た。
わざわざ遠いところまで来るくらいだ。相当後悔と反省をしていたのだろう。
(夜に出歩くのを俺が嫌ったからってのが、一番の理由である事は言うまでもない)
玄関を開け○○を見るなり、二発ぶん殴ってやった。
一発は奴の自責の念を和らげるため、一発はコンパなんぞに行ってて俺を苛つかせた事への贖罪のめに。
言葉で許されるよりも、殴られた方がすっきりする事もあるしね。まぁ、二発目は俺の個人的な怒りだが。
○○に経緯を細かく話し、その晩は二人して興奮したり怖がったり…今思うと当たり前の日常だなぁ。
○○からは、あの晩のそれからを聞いた。
あの晩、逃げたした時には、林は明らかにおかしくなっていた。
林の車の中で友達と待っていた○○には、まず間違いなくヤバい事になっているって事がすぐに分かったそうだ。
でも、後部座席に飛び乗ってきた林の焦り方は尋常じゃ無かったらしく、車を出さざるを得なかったらしい。
「反抗したりもたついたりしたら、何されっか分かんなかったんだよ」
○○の言葉が状況を物語っていた。
○○は、車が俺の家から離れ高速の入り口近くの信号に捕まった時に、逃げ出したらしい。
「だってあいつ、途中から笑い出したり、震えたり、『俺は違う』とか『そんな事しません』とか言い出して怖いんだもんよ」
アイツが何か囁いてる姿が甦ってきて、頭の中の映像を消すのに苦労した。
俺の家に戻って来なかったのは、単純に怖すぎたからだって。
「根性無しですみませんでした」って謝ってたから許した。俺が○○でも勘弁だしね。
その後、林がどうなったかは誰も知らない。
さすがに今回の件では○○も頭に来たらしく、林を紹介した友達を問い詰めたらしい。
結局、林は詐欺師まがいにも成りきれないようなどうしようも無いヤツだったらしく、唆されて軽い気持ち(小遣い稼ぎだってさ…)で紹介したんだと。○○曰く、「ちゃんとボコボコにしといたから勘弁してくれ!」との事。
でも、こんな状況を招いたのが自分の情報だってのには参ったから、今度は持てる人脈を総動員したが…
こんなことに首を突っ込んだり聞いた事がある奴が回りにいるはずもなく、多分とか~だろうとかってレベルの情報しか無かったんだ。
だから、『何か条件が幾つかあって、偶々揃っちゃうと起きるんじゃないか』としか言えなかった。
その後、俺はS先生の言い付けを守って、毎月一度S先生を訪ねた。
最初の一年は毎月、次の一年は三か月に一度。
○○も俺への謝罪からか、何も無くても家まで来ることが増えたし、S先生のところに行く前と帰ってきた時には、必ず連絡が来た。
アイツを見てから二年が経った頃、S先生から、
「もう心配いらなそうね。Tちゃん、これからはたまに顔出せばいいわよ。でも、変な事しちゃだめよ」
って言ってもらえた。
本当に終ったのか…俺には分からない。
S先生はその三ヶ月後、他界されてしまった。
敬愛すべきS先生、もっと多くの事を教えて欲しかった。
ただ、今は終ったと思いたい。
S先生のお葬式から二ヶ月が経った。
寂しさと、大切な人を亡くした喪失感も薄れ始め、俺は日常に戻っていた。
慌ただしい毎日の隙間に、ふとあの頃を思い出す時がある。
あまりにも日常からかけ離れ過ぎていて、本当に起きた事だったのか分からなくこともある。
こんな話を誰かにするわけもなく、またする必要もなく、ただ毎日を懸命に生きてくだけだ。
祖母から一通の手紙が来たのは、そんなごくごく当たり前の日常の中だった。
封を切ると、祖母からの手紙と、もう一つ手紙が出てきた。
祖母の手紙には、俺への言葉と共にこう書いてあった。
『S先生から渡されていた手紙です。 四十九日も終わりましたので、S先生との約束通りTちゃんにお渡しします。』
S先生の手紙。
今となってはそこに書かれている言葉の真偽が確かめられないし、そのままで書く事は俺には憚られるので、崩して書く。
Tちゃんへ
ご無沙汰しています。Sです。あれから大分経ったわねぇ。
もう大丈夫?怖い思いをしてなければいいのだけど…。
いけませんね、年をとると回りくどくなっちゃって。
今日はね、Tちゃんに謝りたくてお手紙を書いたの。
でも悪い事をした訳じゃ無いのよ。あの時はしょうがなかったの。でも…、ごめんなさいね。
あの日、Tちゃんがウチに来た時、先生本当は凄く怖かったの。
だってTちゃんが連れていたのは、とてもじゃ無いけど先生の手に負えなかったから。
だけどTちゃん怯えてたでしょう?だから先生が怖がっちゃいけないって、そう思ったの。
本当の事を言うとね、いくら手を差し伸べても見向きもされないって事もあるの。あの時は、運が良かったのね。
Tちゃん、本山での生活はどうだった? 少しでも気が紛れたかしら?
Tちゃんと会う度に、先生まだ駄目よって言ったでしょう?覚えてる?
このまま帰ったら酷い事になるって思ったの。
だから、Tちゃんみたいな若い子には退屈だとは分かってたんだけど、帰らせられなかったのね。
先生、毎日お祈りしたんだけど、中々何処かへ行ってくれなくて。
でも、もう大丈夫なはずよ。近くにいなくなったみたいだから。
でもねTちゃん、もし…もしもまた辛い思いをしたら、すぐに本山に行きなさい。
あそこなら多分Tちゃんの方が強くなれるから、中々手を出せないはずよ。
S先生の手紙の続き
最後にね、ちゃんと教えておかないといけない事があるの。
あまりにも辛かったら、仏様に身を委ねなさい。
もう辛い事しか無くなってしまった時には、心を決めなさい。
決してTちゃんを死なせたい訳じゃないのよ。
でもね、もしもまだ終っていないとしたら、Tちゃんにとっては辛い時間が終らないって事なの。
Tちゃんも本山で何人もお会いしたでしょう?
本当に悪いモノはね、ゆっくりと時間をかけて苦しめるの。決して終らせないの。
苦しんでる姿を見て、ニンマリとほくそ笑みたいのね。
悔しいけど、先生達の力が及ばなくて、目の前で苦しんでいても何もしてあげられない事もあるの。
あの人達も助けてあげたいけど…、どうにも出来ない事が多くて…。
先生何とかTちゃんだけは助けたくて手を尽くしたんだけど、正直自信が持てないの。
気配は感じないし、いなくなったとも思うけど、まだ安心しちゃ駄目。
安心して気を弛めるのを待っているかも知れないから。
いい?Tちゃん。決して安心しきっては駄目よ。
いつも気を付けて、怪しい場所には近付かず、余計な事はしないでおきなさい。
先生を信じて。ね?
嘘ばかりついてごめんなさい。
信じてって言う方が虫が良すぎるのは分かっています。
それでも、最後まで仏様にお願いしていた事は信じてね。
Tちゃんが健やかに毎日を過ごせるよう、いつも祈ってます。
読みながら、手紙を持つ手が震えているのが分かる。
気持ちの悪い汗もかいている。鼓動が早まる一方だ。
一体、どうすればいい?まだ…、終っていないのか?
急にアイツが何処かから見ているような気がしてきた。
もう、逃れられないんじゃないか?
もしかしたら、隠れてただけで、その気になればいつでも俺の目の前に現れる事が出来るんじゃないか?
一度疑い始めたらもうどうしようもない。全てが疑わしく思えてくる。
S先生は、ひょっとしたらアイツに苦しめられたんじゃないか?
だから、こんな手紙を遺してくれたんじゃないか?
結局…、何も変わっていないんじゃないか?
林は、ひょっとしたらアイツに付きまとわれてしまったんじゃないか?
一体アイツに何を囁かれたんだ。
俺とは違うもっと直接的な事を言われて…、おかしくなったんじゃないか?
S先生は、俺を心配させないように嘘をついてくれたけど、
『嘘をつかなければならないほど』の事だったのか…。
結局、それが分かってるから、S先生は最後まで心配してたんじゃないのか?
疑えば疑うほど混乱してくる。どうしたらいいのかまるで分からない。
ここまでしか…俺が知っている事はない。
二年半に渡り、今でも終ったかどうか定かではない話の全てだ。
結局、理由も分からないし、都合よく解決できたり、何かを知ってる人がすぐそばにいるなんて事は無かった。
何処から得たか定かではない知識が招いたものなのか、あるいは、それが何かしらの因果関係にあったのか…。
俺には全く理解できないし、偶々としか言えない。
でも、偶々にしてはあまりにも辛すぎる。
果たして、ここまで苦しむような罪を犯したのだろうか?犯していないだろう?
だとしたら…何でなんだ?不公平過ぎるだろう。それが正直な気持ちだ。
俺に言える事があるとしたらこれだけだ。
「何かに取り憑かれたり狙われたり付きまとわれたりしたら、マジで洒落にならんことを改めて言っておく。 最後まで、誰かが終ったって言ったとしても、気を抜いちゃ駄目だ」
そして…、最後の最後で申し訳ないが、俺には謝らなければいけない事があるんだ。
この話の中には小さな嘘が幾つもある。
これは多少なりとも分かり易くするためだったり、俺には分からない事もあっての事なので目をつぶって欲しい。
おかげで意味がよく分からない箇所も多かったと思う。合わせてお詫びとさせて欲しい。
ただ…、謝りたいのはそこじゃあない。
もっと、この話の成り立ちに関わる根本的な部分で俺は嘘をついている。
気付かなかったと思うし、気付かれないように気を付けた。
そうしなければ伝わらないと思ったから。
矛盾を感じる事もあるだろう。がっかりされてしまうかもしれない…。
でも、この話を誰かに知って欲しかった。
俺は○○だよ。
…今更悔やんでも悔やみきれない。
読んだ方の声
傑作の怖い話「マネキン」
私には霊感がありません。ですから、幽霊の姿を見たことはないし、声を聞いたこともありません。
それでも、ものすごく怖い思いをたった一度だけ、中学生の時に体験しました。
その話を聞いていただきたいと思います。
14歳のころ父を亡くした私は、母の実家に引っ越すことになりました。
母方の祖父はとうに亡くなっていたので、祖母、母、私と、女3人だけの暮らしとなります。
私は、親が死んだショックから立ち直れないまま、新しい環境に早急に馴染まなくてはいけませんでした。
不安はあったのですが、私の身の上に同情してか、転校先の級友も優しく接してくれました。
特にS子という女の子は、転校してきたばかりの私に大変親切にしてくれ、教科書を見せてくれたり、話相手になってくれたりしました。
彼女と親友になった私は、自然に周囲に心を開いてゆき、2ヶ月もたつころには、みんなでふざけあったり、楽しく笑いあったりもできるようになりました。
さて、そのクラスには、F美という可愛らしい女の子がいました。
私は彼女に、何となく心惹かれていました。
もちろん変な意味ではなく、女の子が見ても可愛いなと思えるような、小柄できゃしゃな感じの子だったので、同性として好意を持っていたのです。
(私はちょっと地黒で背も高いので、今考えると、多少の羨望もおそらくあったのだと思います)
好かれようとしていると効果はあるもので、席替えで同じ班になったことから、だんだん話すようになり、彼女が母子家庭であることがわかって、余計に親しくするようになりました。
もっともF美の場合は、死に別れたのではなくて、父親が別の女性と逃げたとか、そういうことだったように聞きました。
彼女も女だけで生活しているということを知ったとき、この子と友達になってよかったな、と心底思いました。
ただそれも、彼女の家に遊びにいくまでの短い間でしたが・・・
その日、私が何故F美の家を訪ねることになったのか、私は覚えていません。
ずいぶん昔の話だからというのもありますが、それよりも、彼女の家で見たものがあまりに強い印象を残したので、そういった些細なことが、あやふやになっているのでしょう。
その時はS子もいました。
それまでも、S子はF美のことをあまり好いておらず、私が彼女と仲良くすることを、好ましくは思っていないようでした。
それなのに、何で彼女がついて来たのか、私には思い出せません。
しかしとにかく、学校の帰り、家が全然別の方向なのにもかかわらず、私とS子は、何かの用事でF美の家に寄ったのでした。
彼女の家は、正直古さの目立つ平屋で、木造の壁板は反り返り、庭はほとんどなく、隣家との間が50センチもないような狭苦しい場所にありました。
私はちょっと驚きましたが、おばあちゃんの家も年季は入っていますし、家計が苦しいのはしょうがないだろう、と思って自分を恥ずかしく思いました。
「おかあさん」
F美が呼ぶと、少ししわは目立つものの、奥からにこやかな顔をしたきれいなおばさんが出てきて、
私とS子に、こちらが恐縮するほどの、深々としたおじぎをしました。
洗濯物をとりこんでいたらしく、手にタオルや下着を下げていました。
「お飲み物もっていってあげる」
随分と楽しそうに言うのは、家に遊びに来る娘の友達が少ないからかもしれない。と私は思いました。
実際にF美も、「家にはあんまり人は呼ばない」と言ってましたから。
もしF美の部屋があんまり女の子らしくなくても驚くまい、と私は自分に命じました。
そんなことで優越感を持ってしまうのは嫌だったからです。
しかし、彼女の部屋の戸が開いたとき、目にとびこんできたのは、予想もつかないものでした。
F美がきれいだということはお話ししましたが、そのぶんやはりお洒落には気を使っているということです。
明るい色のカーテンが下がり、机の上にぬいぐるみが座っているなど、予想以上に女の子らしい部屋でした。
たった一点を除いては。
部屋の隅に立っていて、こっちを見ていたもの。
マネキン。
それは間違いなく男のマネキンでした。
その姿は今でも忘れられません。
両手を曲げて縮め、Wのかたちにして、こちらをまっすぐ見つめているようでした。
マネキンの例にもれず、顔はとても整っているのですが、
そのぶんだけその視線がよけい生気のない、うつろなものに見えました。
マネキンは、真っ赤なトレーナーを着て、帽子を被っていました。
不謹慎ですが、さっきみたおばさんが身につけていたものより、よほど上等なもののように思えました。
「これ・・・」
S子と私は唖然としてF美を見ましたが、彼女は別段意外なふうでもなく、マネキンに近寄ると、帽子の角度をちょっと触って調節しました。
その手つきを見ていて私は、鳥肌が立ちました。
「かっこいいでしょう」
F美が言いましたが、何だか抑揚のない口調でした。
その大して嬉しそうでもない言い方が、よけいにぞっと感じました。
「ようこそいらっしゃい」
といいながら、トレーにケーキと紅茶を乗せたおばさんが入ってきて、空気が救われた感じになりました。
私と同じく場をもてあましていたのでしょう、S子が手を伸ばし、お皿を座卓の上に並べました。
私も手伝おうとしたのですが、お皿が全部で4つありました。
あれ、おばさんも食べるのかなと思い、ふと手が止まりました。
その時、おばさんがケーキと紅茶のお皿を取ると、にこにこと笑ったままF美の机の上におきました。
そこは、マネキンのすぐそばでした。
とんでもないところに来た、と私は思いました。
服の中を、自分ではっきりそれとわかる冷たい汗が流れ続け、止まりませんでした。
F美はじっと、マネキンのそばに置かれた紅茶の方を凝視していました。
こちらからは、彼女の髪の毛しか見えません。
しかし突然前を向いて、何事もなかったかのようにフォークでケーキをつつき、お砂糖つぼを私たちに回してきました。
私は、マネキンについて聞こうと思いました。
彼女たちは、あれを人間扱いしているようです。
しかもケーキを出したり、服を着せたりと上等な扱いようです。
ですが、F美もおばさんも、マネキンに話しかけたりはしていません。
彼女たちはあれを何だと思っているのだろう?と考えました。
マネキンの扱いでは断じてありません。
しかし、完全に人だと思って、思い込んでいるのだとしたら、「彼」とか「あの人」とか呼んで、私たちに説明するとかしそうなものです。
でもそうはしない。
その、どっちともとれない中途半端な感じが、ひどく私を不快にさせました。
私がマネキンのことについて尋ねたら、F美は何と答えるだろう。
どういう返事が返ってきても、私は叫びだしてしまいそうな予感がしました。
どう考えても普通じゃない。
何か話題を探しました。
部屋の隅に鳥かごがありました。
マネキンのこと以外なら何でもいい。
普通の、学校で見るようなF美を見さえすれば、安心できるような気がしました。
「トリ、飼ってるの?」
「いなくなっちゃった」
「そう・・・かわいそうね」
「いらなくなったから」
まるで無機質な言い方でした。
飼っていた鳥に対する愛着などみじんも感じられない。
もう出たい、と思いました。
帰りたい、帰りたい。ここはやばい。長くいたらおかしくなってしまう。
その時「トイレどこかな?」と、S子が立ち上がりました。
「廊下の向こう、外でてすぐ」とF美が答えると、S子はそそくさと出ていってしまいました。
そのとき正直、私は彼女を呪いました。
私はずっと下を向いたままでした。
もう、たとえ何を話しても、F美と意思の疎通は無理だろう、ということを確信していました。
ぱたぱたと足音がするまで、とても長い時間がすぎたように思いましたが、実際にはほんの数分だったでしょう。
S子が顔を出して、「ごめん、帰ろう」と私に言いました。
S子の顔は青ざめていました。
F美の方には、絶対に目を向けようとしないのでした。
「そう、おかえりなさい」とF美は言いました。
そのずれた言い方に、卒倒しそうでした。
S子が私の手をぐいぐい引っ張って、外に連れ出そうとします。
私はそれでもまだ、形だけでも、おばさんにおいとまを言っておくべきだと思っていました。
顔を合わせる勇気はありませんでしたが、奥に声をかけようとしたのです。
F美の部屋の向こうにあるふすまが、20センチほど開いていました。
「すいません失礼します」
よく声が出たものです。
その時、隙間から手が伸びてきて、ピシャッ!といきおいよくふすまが閉じられました。
私たちは逃げるように、F美の家を出ていきました。
帰り道、私たちは夢中で自転車をこぎ続けました。
S子が終始私の前を走り、1メートルでも遠くへいきたい、とでもいうかのように、何も喋らないまま、自分たちのいつもの帰り道まで戻っていきました。
やっと安心できると思える場所につくと、私たちは飲み物を買って、一心不乱にのどの渇きをいやしました。
「もう付き合うのはやめろ」とS子が言いました。
それは言われるまでもないことでした。
「あの家、やばい。F美もやばい。でもおばさんがおかしい。あれは完全に・・・」
「おばさん?」
トイレに行った時のことをS子は話しました。
S子がF美の部屋を出たとき、隣のふすまは開いていました。
彼女は何気なしに通りすぎようとして、その部屋の中を見てしまったそうです。
マネキンの腕、腕が、畳の上に4本も5本もごろごろ転がっていたそうです。
そして、傍らで座布団に座ったおばさんが、その腕の一本を、狂ったように嘗めていたのです。
S子は震えながら用を足し、帰りにおそるおそるふすまの前を通りました。
ちらと目をやると、こちらをじっと凝視しているおばさんと目が合ってしまいました。
つい先刻の笑顔はそのかけらもなくて、目が完全にすわっています。
マネキンの腕があったところには、たたんだ洗濯物が積まれてありました。
その中に、男もののパンツが混じっていました。
「マ、マネキンは・・・?」
S子はついそう言って、しまったと思ったのですが、
おばさんは何も言わないまま、S子にむかって、またにっこりと笑顔を見せたのでした。
彼女が慌てて私を連れ出したのは、その直後のことでした。
あまりにも不気味だったので、私たちはF美が喋って来ない限り、彼女とは話をしなくなりました。
そして、だんだん疎遠になっていきました。
この話をみんなに広めようか、と考えたのですが、とうてい信じてくれるとは思えません。
F美と親しい子にこの話をしても、
傍目からは、私たちが彼女を孤立させようとしているとしか思われないに決まっています。
特に、S子がF美とあんまり仲がよくなかったことは、みんな知っていますから・・・。
F美の家にいったという子に、こっそり話を聞いてみました。
でも一様に、おかしなものは見ていないと言います。
だから余計に、私たちに状況は不利だったのです。
ただ一人だけ、これは男の子ですが、そういえば妙な体験をしたという子がいました。
F美の家に言ってベルを押したが、誰も出てこない。
あらかじめ連絡してあるはずなのに・・・と困ったが、とにかく待つことにした。
もしかして奥にいて聞こえないのかと思って、戸に手をかけたら、ガラガラと開く。
そこで彼は中を覗き込んだ。
ふすまが開いていて(S子が見た部屋がどうかはわかりません)、部屋の様子が見えた。
浴衣を着た男の背中が見えた。向こうに向いてあぐらをかいている。
音声は聞こえないが、テレビでもついているのだろう。
背中にブラウン管かららしい、青い光がさして、ときおり点滅している。
だが何度呼びかけても、男は振り返りもしないどころか、身動き一つしない・・・
気味が悪くなったので、そのまま家に帰った。
F美の家に男はいないはずです。
たとえ親戚や、おばさんの知り合いであったところで、テレビに背中をむけてじっと何をしていたのでしょう?
それとも、男のパンツは彼のだったのでしょうか。
もしかして、それはマネキンではないか、と私は思いました。
しかし、あぐらをかいているマネキンなど、いったいあるものでしょうか。
もしあったとすれば、F美の部屋にあったのとは別のものだということになります。
あの家には、もっと他に何体もマネキンがある・・・?
私はこれ以上考えるのはやめにしました。
あれから14年がたったので、今では少し冷静に振り返ることができます。
私は時折、地元とはまったく関係ない所でこの話をします。
いったいあれが何だったのかは、正直今でもわかりません。
もしF美たちがあれを内緒にしておきたかったとして、仲の良かった私だけならまだしも、なぜS子にも見せたのか、どう考えても、納得のいく答が出ないように思うのです。
そういえば、腕をWの形にしているマネキンも見たことがありません。
それだと、服を着せられないではないですか。
しかし、あの赤い服は、マネキンの身体にピッタリと合っていました。
まるで自分で着たとでもいうふうに・・・
これが私の体験のすべてです。
読んだ方の声
傑作の怖い話「タコ部屋から逃亡してきました」
※ この話は、オカルトとは関係ない現実的な恐怖です。暴力シーンもあり、動物が死んでしまうシーンがありますので、人によっては不快に思われてしまうかもしれません。その点、ご注意ください。
貴方はタコ部屋ご存知ですか?安い賃金で無理矢理強制労働を、言う事を聞かないと殴る蹴るの暴行
そこで 当時の事を再現して書きます
私が上野でブラブラしてた時の事です(当時無職)
おじさんがニコニコ笑いながら
「君仕事してるのか?」
僕「してません」
おじさん「良い仕事があるんだけどどうかな?軽作業だよ
給料は3月契約で100万だすよ。但し住み込みが条件だけど」
僕「お願いします」
おじさん「明日の14時に北千住の駅に迎えに行くから」
この後に地獄が待って居るとは、誰が想像できただろう
北千住で落合った後は おじさんが家で美味い者を御馳走するとの事でした
飲んで食べた後に猛烈な眠気に・・・・・・・
気がついたら車の中でした
僕「何処まで行くのですか?」
おじさん「心配いらないよ 住み込む仕事場に直行してるんだ。まあ コーヒーでも飲めよ」
・・・今思えばコーヒーになんらかの薬が 気が付くのが遅過ぎた・・・
もうここまできたら仕方ないので流れのままに
再び眠りから覚めると 見た事も無いような 山の中に案内されたところは 重機が置いてある工事現場だった
まず監督と現場責任者を紹介される「どこから見てもヤ〇ザだ」
監督「お前等明日から仕事だが 能率が悪いやつは鉄拳制裁だからな。その前に お前等が今日から寝泊りする所を案内する」
寮という所を見て愕然とした 半分腐りかけた家で 斜めに傾いてるし 床の隙間から不気味な虫が這いずり回る
気がつくとトイレが無いので聞いてみたが・・・・・・
監督「トイレは外に穴を掘ってるだろ それと布団だ」
・・・布団は半分腐りかけみたいに真っ黒で 異臭がした・・・
監督「お前等明日は4:30分起床だからゆっくり寝ろ」
10畳程のほったて小屋に6人のおじさん達が居た
僕はこれからどうなるんだろう?やがて不安は現実に
次の日にそれは起こった。監督に案内されて連れて行かれた部屋には、見たこともないような機材が沢山あり、床には何かの計画書のようなものがあった
目に付いた物を拾って見てみようとしたのですが、監督に止められました。
なんかあまり眠れないままに朝の4:30分になりました
突然ドアを蹴る音が…
ヤ「お前等何時まで寝てるんだ 早く仕度しろ」
怒号と共に頑強な男が3人玄関に 手には金属バットを持ってます
お前等ついて来い もたもたするな
暫らく歩くと 結構小奇麗な小屋の前に到着
ヤ「中に入れ もたもたするな」
そこには朝食らしき物が用意されていた
タイ米と麦をミックスしたみたいな不味いご飯
大根の葉っぱが入ってる薄い味噌汁と 得体の知れない魚の身
ヤ「食事の時間は15分とする お前等は日没まで働くから食え」
そして 現場に到着した
主な仕事は 穴を掘ったり 木を伐採 石を運ぶ重労働だ(体が心配だ)
仕事は休み無く午後14:00迄続けられた・・・・
そしてヤ〇ザの怒号が響きわたる
ヤ「おいお前等食事の時間だ」
食事をみて愕然とする なにも入ってないパンとお碗にスープみたいな物が
透明なスープに その辺で生えてるような草が入ってる
一口飲んでみた ペッ塩辛くて飲めた代物ではない
どうやら海水を素のまま温めたみたいだ(海の近くみたいだ)
変な物を飲んだら無性に喉が渇いて仕方がない
僕「すいません お水貰えますか」
ヤ「あんちゃん水か? 水は一杯500円だ 饅頭もあるぞ2000円だ タバコ、酒、、ティッシュなどオール1000円だ」
僕「それって高いですね」
ヤ「これは買物手数料込みだ 文句あるか」
仕方ないので水を1杯頼んで飲んだ
そして作業は日没まで続いて行く 辺りが見えなくなると終了です
夕食はカレーらしい?カレー粉を溶かしたヤツに 山菜と魚の切り身が入ってる
一口食べてみたが 不味くて食えた代物じゃない
でも 生延びる為に食べるしかないのか・・・
そうだ 回りのおじさんに話しを聞いてみるか
僕「すいませんが聞きたい事があります」
おじさん「なんだね」
僕「ここはどんな所なんですか?」
おじさん「・・・・・・・」
僕「教えてくださいよ」
おじさん「ここはタコ部屋じゃよ」
僕「タコ部屋ってなんですか?」
おじさん「知らない事が幸福な時もある」
聞きたい事は山程あるけど 聞いても無駄みたいだ
そして僕は辺りを見回した
みんな死んだみたいに動かない「疲れ果てて動けないのか?」
その中で一人の男が唸ってた。 見てみると顔面が血だらけだ。
作業の途中に逃亡未遂で半殺しにされたみたいだ
突然ドアを蹴る音と共に 例のDQNが現れた
DQN「お前等 仕事さぼったり逃亡すると そこのヤツみたいになるぞ」
DQN「おい田島(殴られたヤツの名前)忘れ物だ」
投げ捨てた物を見てみると なんと歯が3本だった
大変な場所に連れてこられたみたいだ とりあえず横になるが
不安と絶望でなかなか寝れない・・・・・・・
横になってると猛烈に腹痛が昼間食べた物が悪いのか?
仕方ないのでトイレに行く事にする
そうだ トイレに行く序に辺りを探検するか
外に出てみたが 回りは木が生い茂り回り なにも見えない
そうしたら僕の後ろで一人の男が声をかけてきた
男「夜中に出歩くと野犬に襲われるぞ」
男「それにヤツ等に見つかると半殺しにされる」
男「俺も逃亡経路を探ってみたんだが」
男「北は崖 南は藪の中 東は見張りが居る時がある」
男「唯一西はなにも無いが 鉄線が張り巡らしてるぞ」
男「ここで生延びるには 決められた期間我慢する事だ」
男「まぁ給料は期待しない方が良いぞ」
男「給料が-になるヤツがほとんどだからな」
今夜は仕方なく寝るとするか・・・・
部屋に戻ると 田島さんが苦しそうに唸ってる
でも 僕にはどうする事もできない
部屋に戻り30分程経過した頃だろう 突然ドアを激しく蹴る音が
DQN「おい お前等 酒とタバコとエロ本だ」
DQN[酒とタバコ等は1000円 エロ本は3000円だ」
DQN「それとカップラーメンもあるぞ 2000円だ」
カップラーメン 唯一まともな食事だ
栄養価値も高いし 生延びるには必要かもしれない
でも 2000円 迷う・・・・・・・
そのうちの2人が酒を購入した。ラーメンも一人
僕も辛抱できないで ラーメンと水を購入した
これで本日の出費は3000円か どうなる事だろう
そして深い眠りについた このまま永遠に眠りたい気分だ
みんなは起床したのだが 田島さんがまだ起きてこない
DQNが田島さんの方へ歩寄り 頭をガンガン蹴る
DQN「こらお前何時まで寝てるんだ 蹴り殺されたいのか」
そして食事の為に 別室に連行される僕達
今日の朝ご飯はワカメの味噌汁とタマゴだった
口の中が切れて食事をまともに食べれない田島さんに
容赦なく蹴りが入る 泣いて謝る田島さん
そして仕事開始だ・・・・・・・
仕事を始めたのは良いけれど 午後2時までの時間が長い
結構暑いので喉が渇き 水を2杯購入した
高いけれど大ジョッキ位あるのが救いだ
過酷な仕事をなんとかこなして そして午後2時に
お昼の食事はカツみたいだ なんのカツだろうか?
油が多過ぎで美味しくない 食べた事がある味だから少し安心
スープといえば昨日の海水みたいなスープだ 辺りを見回してそっと捨てた
重労働のせいか喉が渇く 仕方ないので水を購入した(水X2=1000円)
甘い物を食べないと体がもたないので 饅頭も購入した
嬉しい事に饅頭は2個セットだったので助かる
この計算なら1日4000円位の出費だ
100万を3ヶ月で割ると充分にお釣りがくる計算だが・・・・・・
その計算方法が大誤算だったと言う事が給料日にわかる
(これは後ほど書きたいと思う)
さて 食事も終了した事だし 仕事再開だが アクシデント発生
田島さんが倒れた 駆け寄る監督
監督「なにさぼってんだ お 殴られたいのか」
暫らくの沈黙の後に「お前等ちょっと来いよ」と怒号が
監督「このおっさんを運ぶから手伝え」
顔面蒼白の田島さんの顔が ハアハア肩で呼吸してる
監督「死なれたら金にならねぇしな 保険もかけてないし」
一人来いと言うので僕が行くと お前は仕事しろと
監督「おい 鈴木 お前田島を寮まで運ぶの手伝え」
監督がDQNに田島さんを引き渡す 無事なら良いけど
人が死ぬ所なんて見たくないものだ
やがて日没になり仕事も終わりに・・・・・・・
寮に帰ると田島さんが寝てた 昼間の時に比べたら大分良いみたいだ
田島さんどうですか?僕が側に行くと お願があるんだが
痛みで寝れないので 酒を御馳走してくれと言う
酒か 1000円の出費だけど・・・・一瞬考えこんだ僕だけど
僕「うん 良いですよ 飲んで早く元気になってくださいね」
田島さんの目から 涙がぼろぼろとこぼれる
やがてドアを蹴る音がした(なにも蹴る事ないのにと心で思う)
DQN「お前等飯の時間だ 今日の飯は鍋だ 喜べ」
1・8リットルの水と 具が入ってる袋を投げ捨てる
DQN「鍋は押入れの中にあるだろ」
押入れの中から鍋を取り出すと 黒い変な物体がこびり付いてた
僕「鍋は洗うところないのですか?」
DQN「食えるだけ有難いと思え ぶっ殺すぞ」
仕方なく水を少し入れて鍋を濯いだ
袋を開けて見ると 春菊 蓬 などと見た事もない野菜が(全部青物だ)
一応肉が入っていたけれど よくトラックで運搬してる
油脂に使うような油だらけの肉だ(それに臭い)
それでも生きる為に食べないといけないのか・・・・
なんか自分が情けなくなり 泣きたくなってきた
無性に怒りが込み上げてきたが 今更どうする事もできない
聞いた話だが 行方不明のほとんどは こんな飯場に連行されたり
女性なら外国へ売られたりすると聞いた事がある
単なる都市伝説かもしれないが 有り得ない事はないと思った
アメリカ辺りは日常茶飯事だし 日本でも迷宮入りの死体も
食事も終わりゆったりしてるところに またドアを蹴る音が
今度はドンドンドンドンと激しく蹴り続けてる あわててドアを開けると
DQN「俺様が来てるのに早くドア開けろや ボンクラ共」
DQN:お前等買物の時間だ 好きな物買えよ」
僕「すいません酒を1つ貰えますか」
DQN「おっ あんちゃん酒飲めるのか わははははは」
DQN「10本でも100本でも買えよ 今日はツマミもあるぞ」
僕「いえ 酒だけで結構ですよ」
DQN「遠慮するなよ がはははは 他になんか買えや」
僕「では 水をお願いします」
DQN「あんちゃん ケチ臭い事言うなよ ツマミ2000円を1000円にするから買え」
断ると機嫌が悪くなりそうなので 仕方なくツマミを購入
パチンコの余りの景品みたいな ツマミだった
次の日の仕事の事ですが・・・・・・
田島さんはまだ無理そうだが どうなるのだろう
朝からまた DQNはドアを蹴りまくりやって来た
また だるい1日が続くと思うと気が重い
田島さんは今日は仕事に出ないみたいだ(出れないのかも?)
そして次の日も田島さんは休みに
田島さんは連続で休みなのか これで体が完治してくれたら
僕はさりげなく他の人に尋ねてみた(名前は山ちゃんと呼ばれてるらしい)
僕「二日休んで良く無事ですね」
山「ああ 休みたいなら休ませてくれるぞ」
僕「本当ですか?僕も明日休みたいな」
山「お前知らないのか?休むとどうなるのか」
僕「ハァ?どうなるんですか」
山「早退は -5万円 欠勤は-10万円だぞ」
山「給料は-になるぞ -には利子が付くからな」
翌日田島さんが消えた・・・・・・・
DQNと話し合ったらしい(後から聞いた話だが)
それを再現してみるとする(あくまでも予想だけど)
DQN「おう田島 お前この仕事に向いてないよな」
田島「そうかもしれません 力仕事は苦手なんです」
DQN:お前さ 身元はしっかりしてるのかよ」
田島「身元と言うと?なんですか」
DQN「住民票とかあるのか?」
田島「はい あります」
DQN「お前の給料は-50万?に膨れ上がったぞ」
田島「はい 頑張ります」
DQN「お前さ 結婚してるのか?」
田島「独身ですが」
DQN「お前中国とか行く気ないか」
と こんな感じかも 詳しい事はわかりませんが
つまり 外国人と偽結婚 戸籍を売られる 腎臓を片方売られるなど
一応聞いたのですよDQNに
田島は旅行の仕事に飛ばしたと
・・・田島さんが翌日消えた・・・
話しの途中で 田島さんは死んだと思う人もいますね
普通に予想すればそうですが・・・・
田島さんは 顔面血だらけで 歯が3本程折れました
殴られて確かにダメージはあるのですが 死に至るまでのダメージではない
もしも 余力を貯める為に 死んだふりしてたとしたら・・・・・・
仮病を使い 昼間だれも居なくなるのを待って逃亡したとしたら
本当の所は 僕もわからないのですよ
でも 旅行の仕事に出たと言うのが 負け惜しみかも そんな可能性もあります
DQNがその後に言ってた言葉が思いだされます
DQN「お前等 もしも逃亡が発覚したら 足の親指切断するぞ」
DQN「教えてやるよ。足の親指を切断したらバランスが取れなくて走っても転ぶぞ」
本当のところは 田島さんはどうなったのか知らないが
何処かで生きていると信じたい
そして相変わらずの日々が続く・・・そして・・・
明日は待ちに待った給料日だが ほとんど期待はしてないけど
-がないように祈るばかりだ そして日没で仕事も終わる
何時ものようにドアをドンドンと蹴る音がする
何時もは大嫌いな音も 期待と不安が入り混じる
DQN「お~し お前等 今日は楽しい日だ そして明日休みにする」
寮の中から歓声があがる DQNは袋の中から封筒を取り出す
DQN「お前等の給料だ 順番に取りに来い」
話しの前に給料の明細をお知らせします
給料330000円
税金10%-33000=297000円
部屋代2000X30=60000円
食事代2000X30=60000円
作業道具及び作業着レンタル500x26=13000
寮雑費10000円
購入費105000円
給料残 49000円
以外に残ってるので驚いた 同時に安堵感が
でも 僕はまだ良い方だが 酒を飲んでる鈴木さんは-60000円の給料だった
給料がある人間は現金で貰い「-の人間は借用書を書かされる」
-の人間は利子が付いて10日で1割だそうだ
それだけで月に-18000円になる 恐ろしいシステムだ
それでは話しを戻します
今日は何故か?DQNは機嫌が大変良いみたいだ
DQN「君達ぃ~ 給料が-の人間も居るが 諦めるな」
DQN「今日は楽しい日だ 俺も鬼じゃないからな わはは」
DQN「君達の為に 特上のカルビと生ビールを用意した」
DQN「序に 女も用意してるぞ 料金は全部込みで4万だ」
僕は嫌な予感がするので 丁重に断るが
DQNの顔色が変化 みるみる怒りの顔になり
DQN「聞えない もう1度言え 殺されたいなら」
僕は回りの人間の事も考慮して しぶしぶお金を払う
鈴木さんとか 給料-の為に借用書を書いていた
肉はそこそこの肉だが ビールは缶入りの生だった
DQN「お前等の為に女を用意した 好きにしろ」
DQN[そして 明後日からまた仕事に励め 以上」
そこで鈴木さんが口を開く
鈴木「俺はもう人生捨ててるわい 好きな酒を飲めて月に1度女を抱けれたら思い残す事はない」
月に1度酒を飲めて 肉と女 これだけでこの地に
踏みとどまるヤツが居るみたいだ 信じられない話しだが
そして女が登場する この後僕は絶句する事になる
年の頃は40代後半から50才位だろうか?
もっと行ってるかもしれない 自分の母親よりも上かもしれない
そんな事は夢にも考えられない 悪夢をみてるみたいだ
僕はたまらず絶句した しかもガリガリに痩せて(40キロ無いかも)
目だけが異常にギラギラとしてる
意味不明な言葉を口にして ニヤリと笑う
笑った口元を見ると歯がボロボロで黒い しかも顔に無数のイボみたいな物が
女が口を開く・・・・・・
女「あんた達 極楽浄土にいきんしゃい」
どこの方言だろうか?かなりの鈍りだ
女「若い兄ちゃん あんたから」
僕「あ あの僕は腹痛でトイレに行ってきます」
女「遠慮せんと ほらほら 手をぐいぐい引張られます」
僕「ほ 本当に腹が痛いのです(なんとかごまかすが)」
そこで一人の志願者が現れた
鈴木「わしがお先にお願いします」
とりあえず助かったみたいだ 鈴木さんに感謝する
鈴木「お前達 気をきかせて外にでろ」
これからおこるであろう地獄の様な光景を想像すると・・・・
それはそうだ 自分の母より年の女の人と経験する人なんて
全体の1%も居ないであろう
鈴木さんに続いて他の人達も次々と・・・・・・
1時間位経過しただろうか 女の人は部屋からでてきた
部屋に1歩足を踏み入れたら この世の物とも思えない異臭が
僕はえずくのを我慢して外に飛び出した
来月もこんな事が続くのであろうか 僕の精神は破壊寸前だった
みんなが酔って寝てる間に 付近を探索してみるか
逃亡するにしても 付近の事を知らないとどうにもならないし
みんなが寝静まった頃に 付近を探索してみた
辺りは暗くてなにも見えない
手探りで少し歩いてみたけど ただ一面の森みたいな感じだ
1時間程探索したがなにも成果がない
明日は休みなのでゆっくり寝るとするか
そして翌朝・・・・・ここからまた地獄が始まるとは
今日は休みのはずなのにドアを激しく蹴る音がした
DQN「おい お前等起きろ」
山「なんですか?今日は仕事休みのはずです」
DQN「お前等退屈だろ 今日は休みだから金を増やす方法を伝授だ」
山「はぁ またですか もう勘弁してくださいよ」
DQN「あ なんだ その口のきき方は 半殺しにされたいのか」
山「もう博打は勘弁してくださいよ」
DQN「お前等根性がないな 金を増やしたくないのか」
庄田「あんたの博打はおかしいよ」
DQN[うるせぇ黙ってろよ 」
そしてDQNはサイコロを・・・・・・・
みんな同じ条件なのにDQNがサイコロを振るとよくピンゾロとかでる
DQN「がははは 今日も俺の一人勝ちだな お前等弱いよ実際」
庄田「そりゃインチキサイコロだから強いはずだ」
DQN「てめぇ もう一度言ってみろよ」
DQNは側にあったビール瓶で 庄田さんの頭を殴る
(DQNは朝からビールを飲んでいた もちろん僕たちは無い)
グェ~と転げ回る庄田さん むふおぐご~(意味不明の雄叫びをあげる庄田さん)
庄田さんは狂ったようにDQNに殴りかかる ボコボコに殴られるDQN
しかしDQNが持ってきた鉄パイプで一撃を食らう
結局 庄田さんはボコボコにされた・・・・・・
DQN「庄田 てめぇ覚悟しとけよ 首洗って待ってろ」
そして1時間後・・・・・・・
180cm100キロはある男と再び部屋に 青ざめて震えてる庄田さん
DQN「よ~し これから余興の始まりだ 今後の為にお前等もよ~く見てろ」
庄田さんの手をヒモみたいな物で縛るDQN
DQN「お前等ついてこい」
みんなは外へ出る 大きな男は手にロープみたいな物を持ってる
これからなにが起こるのだろう まさか・・・・・・・
そして大きな木の前でロープを解く
庄田さんは手を後にされて木に括り付けられた
(内心ほっとした もしかして首吊りを想像してたからだ)
そして足は揃えたままで グルグル巻きにされる庄田さん
DQNは笑いながらバックの中をごぞごそと ナイフを取り出す
そして庄田さんの服を切る
DQN「お前の粗末な物を切り落とすか ははは」
庄田「そ それだけは許してください なんでもします」
DQN「なんでもするのか ならこれを耐えろ」
DQNはバックからチャッカマンを取り出すと
笑いながら庄田さんの陰毛と脇毛を燃やす
庄田「あちちち 助けてください」
DQN「お前なんでもするんだろ これくらい耐えろよ」
DQN「熱いか なら止めてやるよ 火あぶりはな」
庄田「あうううう~もう止めろ」
そして・・・・・・
DQN[こんな物で済むと思うなよ 俺様に手をあげた罪は大きいぞ」
今度はバックからペンチを取り出した
DQN「俺は親切な男だ お前に虫歯があるから俺が抜いてやる」
そしてそのペンチで庄田さんの前歯を抜く
グェェェェ~~庄田さんの叫びがあたり一面に響く
庄田さんは失禁して 気絶した
DQN「お前等誰か 風呂に貯めてる水をバケツでもってこい」
それを庄田さんにぶっかける 庄田さんは目を覚ました
今度はバックから味醂と蜂蜜を取り出した
(味醂「みりん」一体なんに使うのだろう?)
(季節は書いてないが 今は初夏だ)
DQNは笑いながら味醂を庄田さんにぶっかけて 蜂蜜を下半身に垂らした
DQN「お前等3時間後に集合 面白い物がみれるぞ」
そして3時間後・・・・・・
目の前に信じられない光景が そこにはこの世の地獄のような光景が
庄田さんの全身を這い回る無数の虫が どうしてこんなに虫がくるのだろう?
あっそうだ 味醂だ 味醂と蜂蜜の甘い香りに誘われてきたのだ
そして・・・・・・・・・
今日は日曜日だ DQNの親方も暇つぶしと称してやってきた
親方「おい なんだこの光景は」
DQN「はい こいつが生意気にも俺を殴ったからみせしめに」
親方「お前素人に殴られたのかよ」
DQN「つい油断してました」
親方は持っていたステッキでDQNをバンバン殴る
ひたすら謝るDQN
親方「お前やり過ぎだ 怪我させたら使い物にならなくなるだろ」
DQN「すいません すいません」
親方「こいつ等は商品なんだぞ 商品になるべく傷つけるな」
親方「それと 人が少なくなったから 2人程手配するように言え」
余談ですが・・・・・
一人につき40万程の予算を貰ったとする
全部搾り取る計算だとして 6人だと
最低限の食事とか経費1万X6=6万円
全部で240万ー6万円 残金234万
かなり儲かる理由です
そして・・・・・・・・・
開放された庄田さんですが その状態は悲惨なものでした
水をかけられたら ほとんどの虫は逃げましたが
体にへばり付いてる虫も 雀蜂に刺されないだけ良かったのかも
蚊の大群と蜂 おまけに百足みたいな虫に刺されて
全身ブツブツで 目なんて開けれない状態でした
開放されてからの庄田さんの様子が少しおかしい?
ぶつぶつ言ってみたり 突然笑い 泣いたり
人は極限状態に追い詰められると 精神に異常をきたすらしい
話しを戻す前に 少し説明すると
(どうして 庄田さんはDQNに殴りかかったのか?)
普通に考えると無謀な事かもしれないが
現場で働く人は以外と 無謀な人が多いかもしれない
普段は大人しいのに 酒が入ると暴れたりする人も
なにをりも博打になると 後先考えないで暴走する人も居る
イカサマで自分の金を巻き上げられたら 殴りたい気持もわかるが・・・
それにしても酷い仕打ちだ 同じ人間と思えない
でも最近の事件は 笑いながら殺したり 自分の子供までも殺す事件が
本当に痛ましい世の中だ
やってる人間は感覚が麻痺してるのだろうか?
やってる方の人間は 同じ事をされたらどうするんだろう
話しは少し横道に反れましたが
でも庄田さんには悪いが 得たものは大きい
それはDQNが結構弱いと言う事実が これだけでも大きい収穫
庄田さんは160cmあるかないか 結構痩せ型で弱そうな雰囲気
(実際には肉体労働で鍛えてるから そこそこ強いのかも)
その庄田さんに一瞬でも のされたDQN 鉄パイプがないと
形勢的に 庄田さんの勝利だったかもしれない
そして・・・・・・・
庄田さんが唸ってる 僕はそっと庄田さんを見てみた
全身を掻きむしり 体から水みたいな物が出てた
一応DQNは 虫刺されの軟膏みたいな物を置いて行く
時間が短時間なのがせめてもの救いだろう
もしも半日放置してたら・・・・・・
翌日 庄田さんは全身痒くて仕事はできないと言う
そして朝・・・何時ものようにドアを激しく蹴る音が
DQN「お前等仕度したのかよ ちんたらするなよ」
庄田「すいません すいません 今日は痒くて仕事無理です」
DQNは庄田さんを睨み ペッと唾を吐いた
DQN「休むのは勝手だが-5万円と 軟膏代1万円払えよ」
なんと言う鬼畜だろう 自分で原因作ったのに軟膏代はないだろう
あまりにも庄田さんが可哀相なので みんなで5千円ずつカンパする提案を
僕「みんなで庄田さんの為に寄付しませんか」
山「ああええよ」
6人目の男「いいさ」
鈴木「わしは嫌だ 自分の事で精一杯だ」
鈴木「人に寄付する金があるなら酒を飲む」
この人になにを言っても無駄だろう 放っとく事にした
これは余談だが・・・・・
なんか 鈴木さんが困った顔をしてる
鈴木「陰部がなんか変なんだわ」
僕「変って?どうしたんですか」
鈴木「よくわからないが 痛痒いんだわ」
僕は絶対に見たくないと思ったけれど 仕方なく見た
赤くただれて 白いボツボツが陰部に多数ある
僕「それは病気ですよ」
鈴木「はぁん?病気・・・・・・・」
恐らく極楽浄土の女の人に貰ったんだろう
他の人はコンドームを 購入してたから大丈夫みたいだ
鈴木さんはそんな金を払うなら酒を飲むと言ってた
鈴木さんは自分勝手で 本当に頼りにならない人だ
この時点で脱走を企てたらどうなるんだろうか シュミレートしてみる
まず 庄田さん 結構頼りになると思うが 心の傷が問題
鈴木さん まるで頼りにならない 問題外だ
山ちゃん 小心者でとても脱走の話しなど持ち掛けられない
6人目の男 居るのか居ないのかわからない存在感の人 期待できない
脱走を決行するにしても 情報が少な過ぎる
でも行動を起さないと 一生こんな所で埋もれる理由にいかない
結局単独行動か 庄田さんの回復待ちになる
鈴木さんは頼りになるどころか 要注意人物かもしれない
田島さんの脱走を密告したのも彼らしい(のちに酒を3本貰ったらしい)
山さんんがそんな事を呟いていた
そして・・・・・・・
田島さんの穴を埋めるべく あらたに2人が
一人は1週間後にきたが これが全く使えない
現状を理解しないで 帰りたい帰りたいの繰り帰しだ
結構お金持ちのぼんぼんみたいな感じがする
連絡しないとママが心配するよ お金払うから帰れないかと呟く
その一部のやりとりを再現すると
青木「ごめんなさい もうう体が動きません 帰してください」
DQN「はぁ?お前なに寝ぼけた事を言ってんだ」
青木「家は金持ちだから お金は払います」
DQN「そんな問題じゃねぇよ 一人を帰したら士気が下がるだろ」
青木「今日は調子が悪いので 休みに」
DQN「そうか わかった お前は金持ちだろ -15万だな」
青木「そんなの聞いてませんよ」
DQN「うるせぇぶっ殺すぞ つべこべ言うな」
青木さんはその場で叩きのめされた そして唾をペッと吐かれて
驚くことにDQNは 叩きのめされて地面にうずくまる青木さんに
頭から小便をかけた
DQN「俺はお前みたいな野郎が 一番嫌いなんだよ」
そして全ての虐めの対象は 青木さんに移る
誰かがストレス発散の犠牲になる それが青木さんに
不謹慎だと思うが 内心喜んだ(自分に矛先が向かないので)
人間としていけない事かもしれないが 誰でも心にあると
そう言って無理に自分を納得させたが・・・・・
そしてもう一人 1週間後にやってきた
結構使えそうな人物だ(後に脱走のキーマンになる男)名前は川口さんだ
青木さんは20代後半 川口さんは30前半みたいだ
川口さんはありとあらゆる薬を経験して 普通の薬は効かないそうだ
出された物を飲んだら 変な薬と気がついたと言う
僕は熟睡したけど 川口さんは半分寝たふりをしてたらしい
川口さんの場合は借金が100万あり 3月働けばチャラにすると言われて来た
川口さんは色んな飯場とか経験済みみたいで なんとも心強い
送迎人から(引き渡す人)DQN2人組に引き渡し
そのままここに直行したらしい 都合が良い事に 今日は休みの日だ
僕の場合は監督の所に直接案内され 荷物検査を受けたからだ
川口さんは到着してから 直ぐにトイレと外に出た
重要な荷物を隠す為に(なんと頭がきれる人だろう)
僕「川口さん 半分起きてたんですか?」
川口「寝てたけど途中で目が覚めて 寝たふりしてたよ」
僕「そうなんですか 1つ質問して良いですか?」
川口「ああ なんだ」
僕「ここは海の近くでしょうか」
川口「ん?海ではないぞ 多分な 潮の香りはしないし」
僕「どこなんですかね」
川口「俺の予想だと 南関東辺りだな」
僕「南関東って何処の辺りですか?」
川口「長野 山梨 静岡辺りだろ」
僕「ありがとうございます」
僕は何処か海の近くだと思ってたが どうやら違うらしい
では あの生臭い海水みたいなスープは あのワカメと魚はなんだろう
もしかして 海の近くに居るみたいな偽造工作なのか?
南関東・・・・そう遠くはないな 南関東なら以外と簡単に脱出できるかも
僕は関東だからと楽観してたが・・・・
聞いた話では相当厳しいらしい まず冬は絶対山越えは無理らしい
話しを聞いたら決断が鈍る・・・・・・
僕「正直脱出の可能性はどれくらいですか 難しいのでしょうか」
川口「簡単と言えば簡単だ 難しいと言えば難しい」
僕「ハァ?どう言う事ですか」
川口「道に沿って迷わないで辿りついたら直ぐだ」
川口「しかし・・・・・・・・」
僕「しかし?なんですか」
川口「例えばここが静岡とか長野だとする 道を間違わないなら良いが
方向を少しでも間違うと死に直結するんだ なぜかと言えば
山は本当に怖い所だ よく遭難とか聞くだろ 山を登って下れば
町に出ると思ったら大間違いだ 登って下ってもまた山が果てしなく続く
景色も同じだし 険しくて方向転換を余儀なくされる
富士の樹海に迷いこんだら 出てなくなるのと同じだ
それに蛇に噛まれたり 怪我をする可能生もあるんだ
夜になればもっと危険だ 最低限たいまつと 食糧 寝袋は必要だ
それとサバイバルを生き抜く道具と 精神力だ
生半可な気持で山を下りるなら 野垂れ死にする」
僕「ありがとうございます 勉強になりました」
本当にこの人はすごい 僕は何度か脱出を考えたけれど
もしも聞いてなければ この世にいないかもしれない
それでは話しを戻すと・・・・・・
庄田さんは一命は取りとめたみたいだ でも精神的におかしい
一応山の中なので 虫はたまに飛んでくるが
虫を見ると庄田さんは叫び声をあげて 部屋の片隅で震える
可哀相だけど 夜中に何度も叫び声をあげられたらたまらないが
庄田さんの全身の腫れも大分引いたみたいだが かさぶたになり
後は残るみたいだ これからの人生は大変みたいだ
そして次の朝が・・・・・・
相変わらずDQNはドアをドンドンと叩く
DQN「お前等仕度はできたのかよ」
DQN「庄田 今日は大丈夫だろうな それと青木 一寸こっちに来い」
青木「なんですか?」
DQN「お前この前トイレに行って 15分も帰って来なかったそうだな」
青木「あれは腹が痛くて」
DQN「いいわけするな 今度からトイレは5分以内にしろ」
青木「そ それは無理ですよ」
DQN「うるせぇ言われた事を黙って実行しろ」
青木さんに DQNの往復ビンタと蹴りが飛ぶ
川口「おいおい その辺にしといてやれよ」
DQN「あ てめえはなんだよ 俺に意見するのか」
川口「そうじゃない やり過ぎなんだよボケ」
DQN「お前殴られたいのか ぶっ殺すぞ」
川口「やれるもんなら やってみろよ」
川口「俺は天涯孤独の身だ 生きるも死ぬも関係ない」
川口「失う物など何も無い お前と刺し違えて死んでやるさ」
DQN:・・・・・・・・・・」
そして翌日からDQNは 金属バットを常に携帯するようになる
なんという小心者なんだろう 道具がないとなにも出来ないのか
それとも 川口さんを怖がってるのだろうか
暫らく一触即発の状態が続いたが 何事もなく過ぎていく
なんか青木さんが妙にウキウキしてる どうしたんだろう?
そうだ 今日は給料日だ (青木さんは給料の実体をまだ知らない)
僕「青木さん 妙に浮かれてますね」
青木「そりゃそうだ 今日で借金がチャラになるから帰れる」
青木「1ヶ月の約束だからね お前も精々頑張れよ」
青木さんは帰れると思ってるのだろうか?
それでは どうして青木さんが この飯場に来たのか経緯を書こう
みなさんは驚くかもしれないが 裏の世界では当たり前のような話しだ
青木さんは33歳 今まで仕事の経験は全くないそうだ
なんでも親が金持ちで 毎日小遣いを貰ってふらふらしてるらしい
3万円持ってパチンコに行ったそうだが 1時間足らずで-2万円
(自称パチプロ&マージャンプロ)
この-はマージャンで取り戻すと 雀荘へ行く青木さん
何気に入った雀荘は 人の良さそうなおじさん達が・・・・・・
雀荘のおじさん「おっ君 いまここが空くからどうぞ」
しかし1万円は20分足らずで消えることになる
青木「もう持ち合わせがないから帰ります」
男「折角来たんだからツケでも なんなら俺が貸してやる」
青木「えっ 良いんですか 助かります」
しかし青木さんは-10万の負債を背負う事になる
青木「すいません お金を取りに戻ってきます」
男「君の家は近くなのかい」
青木「いえ 結構遠いです」
男「そんなのは何時でも良いよ 折角親しくなれたんだから」
青木「ありがとうございます 明日持ってきます」
青木さんは家に10万円を取りに帰る 生憎親は 海外旅行に行ってたが
息子の為に半月分のお金を10万円残してた
青木「これを全部払ったら明日からキツイな でも仕方ないな」
そして男達が待つ雀荘へ向う青木さん
青木「すいません 約束の10万を持ってきました」
男「序の時で良いのに・・・・・・・・・・・・」
そして10万円返却する青木さん
男「どうせ勝った金だから 半分返すから遊んでいくかい」
青木「半分って5万円ですか」
男「勿論だよ」
(この前はついてなかったから挽回のチャンスかも)
そして半日が過ぎた・・・・・・・・・・・・
イカサマでもしてるのだろうか?青木さんの負けは再び15万の負け
手持ちの5万と合わせて15万の負けだ
青木「すいません 今手持ちがないから1週間程待って貰えますか」
男「あ、1週間とはなんだよ そんなに待てないな」
青木「なら明日中に持ってきます」
男「だめだめ 今日中に持って来い 11時まで待つから」
今はもう夜の9時だ 勿論サラ金も銀行も閉ってる
友達に借りるにしても 2時間では不可能だ
青木「そんなの無理ですよ」
青木「だって何時でも良いと言ってたじゃないですか」
男「お前が1週間とか言うからだ ずうずうしいにも程がある」
男「俺が待ってやると言えば別だがな」
男「おう お前なめとんのか とりあえず借用書を書けや」
なんと青木さんは 脅されて借用書を書いたらしい
男「この借用書を何処に回すかな 場合によっては お前腎臓を1つ取られるぞ」
青木「そんな勘弁してくださいよ」
男「なら俺の知合いの所で1月働けや 借金はチャラで+20万だ」
そんな理由で青木さんは来たのだった
結局青木さんの給料は
給料330000円
税金10%-33000=297000円
部屋代2000X30=60000円
食事代2000X30=60000円
作業道具及び作業着レンタル500x27=13500
寮雑費10000円
残153500円
購入費150000円
給料残 3500円
欠勤-150000円
貸し付け金-100000円
貸し付け金利子 10日X3=30000円
パーティ費用-40000円
トータル-316500円
これはあくまでも予想金額ですが 詳しくは見てません
ちらっと見せて貰いましたが・・・・・・・・
青木さんは自分の借金-10万と購入費-15万円でも5万は残ると思ったらしい
そして給料日当日 また紛らわしいパーティの日でもあるのだ
そしてパーティが始まる・・・・・・・・・
なんと今日は寿司&焼酎を持ってきたらしい(あてにはしてないが)
そして 驚く事に女性は20代の女性が来るそうだ
極楽浄土おばさんで痛い目にあったので 信用できないが・・・・・
聞く所によるとFカップだそうだ(聞いてはないがDQNが勝手に喋る)
Fカップと聞いたらみんなの目の色が違う(やっぱりみんな男なんだ)
そしてDQNと女が登場 みんな一同におお~と歓喜をあげる
そこには 今くるよを20歳位若くした女が立っていた
みんなの目はFカップに釘つけだ
僕は思ったがFで若いならなんでも良いのだろうか
そして・・・・・・・
DQNが吐き捨てる おまえ等高級寿司だ 感謝しろよ
でも 寿司を見れば 変色した回る寿司よりお粗末な代物だ
でもみんな 久々の御馳走に心が踊るみたいでした
ここで事件発生(事件と言う程大袈裟なものでもないが)笑
ウニとイクラが3個ずつあったのだが 鈴木さんがウニを2個一気に食べた
そして鈴木さんがイクラに手をかけた瞬間に
山「おい鈴木 お前だけ美味しい物を食べるな」
鈴木「ば~か 早いもの勝ちだ 遅い癖にガタガタ言うなよ」
山さんが 飲んでた焼酎を鈴木さんにぶっ掛ける
鈴木「山 お前表に出ろ」
川口「お前等 いい加減にしろよ 今日は楽しい宴会だろ」
川口さんの一言でみんな大人しくなる
宴も後半に突入した 飲んだ後の次の感心は女だ
鈴木さんが先陣を切ったのですが・・・・・・・・5分後
女「きゃ~なにこれ あんたダメダメできないよ」
鈴木「そんな事言うな 付けるから」
女「ダメなものはダメ 気持悪い」
鈴木「なんだと 気持悪いだと・・・・・」
女「誰か来てよ」
僕が行ってみると 陰部を丸出しにした鈴木さんが・・・・・
その陰部を見て天を仰いだ・・・おおぉなんと言う事だ
その陰部を見てみると(紅天狗茸とマイタケをMIX)したみたいな代物が・・・
その後にみんなにボロクソに
一同「お前病気 無理 お前やったら俺達まで移るだろ」
そして宴は過ぎていく ・・・・・そして
久々の女にみんな獣のように雄叫びを ぐぉぅ はうっ んが~
デラ・ベッピンンンン(←これはネタだがまた叩きの材料になるか)笑
流石に若い巨乳の女だ みんなは秒殺された
青木さんは侵入の前に暴発したみたいだ
みんなが秒殺されたので女は 此方の方へ
Fカップの女「お兄さんも来てよ」
僕「ぼ、僕は遠慮します」
Fカップの女「あら どうして 好きにしていいのよ」
うう・・ 好きにしてといわれても 動揺を隠せない僕
平常を装ってたが 目の前でプルプルとたわわに揺れるのを見ていたら
僕は心の中でこれは緊急非難だから・・・と 心に言い聞かせる
これこからの事はご想像にまかせるが・・・・・・・・・・・・・
行為の前と その時は良いのだが 後ですごい後悔が残るし 覚める
これは男の永遠の課題だろう
宴は終了したが 庄田さんが元気ない 20代の女も抱かなかったみたいだ
山さんに聞い話しだと この前のパーティは極楽浄土おばさんと
2回戦頑張ったそうだ
部類の女好きだった庄田さんが 何故?
そう言えば最近 突然笑い出したり ボソボソ一人事を言う
そして夜中に 絶対許さんと 寝言を
僕は気になったので直接聞いてみる事にした
僕「庄田さん どうしたんですか?女も抱かなったそうですね」
庄田「ああ」
僕「聞かせてもらえませんか 力になれるかも」
庄田さんは半泣きの顔になり 語りはじめた
庄田「この体を見てくれ これで女が抱けるか?気持悪いと言われるだけだ」
見てみると無数に刺された傷跡がある
普通は月日が経過すると消える筈なんだが?
稀に消えない体質の人 刺された虫により消えない事もあるのか
庄田「笑ってくれよ こんな体に もう俺の人生は終わりだろ」
庄田「だから俺は 毎日復讐をするのを楽しみに生きている」
庄田「近じか小林(DQN)を殺る」
庄田「その時はおまえさんも自由だ」
その方法を 庄田さんは熱く語りはじめた
庄田「ボウガンみないな物を作るんだ」
僕「はぁ?なんですかそれ」
庄田「引きがねを引くと刺さるヤツ 竹とゴムで作るんだ」
庄田「それであいつの股間を狙う 見事に命中したら玉が潰れる
庄田「それがダメならば もう1つの方法を考えてる」
僕「もう1つですか」
庄田「今度鍋を要望する 有料だが餅も頼む」
僕「はぁ?餅を頼んでどうするんですか」
一体何を考えてるんだろうか?餅をなんに使う さっきのボウガンも無理な話だ
庄田「鍋を始めたら 鈴木が暴れてる等と 適当な事を言って小林を呼ぶ」
庄田小林が入ってきたと同時に この鍋を小林の頭からぶっ掛ける」
庄田「ヤツはまともに目も開けられない筈だ」
庄田「溶けた餅は熱を含んで 体に張りつく
庄田「怯んだところで鉄パイプでメッタ打ちだ その後で木に括る」
庄田「そして油をかけて火をつけるんだ ははははは」
庄田「丸焼きだぞ 丸焼き くくくっ」
なんと言う恐ろしい事を 人間は復讐の為なら鬼になれるのか
庄田さんは DQNを殴ってこんな事態になったのだが
あれだけの事をされたのだから 気持はわかるが・・・・・・・
(現場で働く人間は気が荒い 犯罪に手を染めるのも珍しくない)
(よく現場で刃傷沙汰が多いのも実態だ)
その後・・・・・・・・・・・
川口さんが来てから少し 待遇が良くなった気がする
以前は塩湯に葉っぱを入れただけのスープも 普通の味噌汁に
(どうして塩湯なのか?飯場では塩分補強の必要があるからだそうだ)
本当に塩だけの湯は勘弁して欲しい すごく不味い
(どんな味なのか?試してみて欲しい)
女も極楽みたいなおばさんではないし なにかがかわりつつある
(極楽おばさんは倒れたらしい 聞いた話では)
僕は川口さんに意見を求めてみる
僕「最近待遇が 少し良くなったみたいなんですよ」
川口「その他に変化はあるか?」
僕「そう言えば100キロの男はみないし 監督も交代しました」
僕「以前はヤクザ風の男だったが 普通のおじさんみたいな人です」
なにかがかわる・・・・・・・・・・
川口「そうか人が代り そして居なくなるのか」
川口「それは上層部変化があるのかもしれないな」
僕「上層部に変化ですか?」
川口「そうだ 多分組織の勢力が弱くなってるのかも知れない」
聞いた話だと 上の組の引退とか 破門で力は弱くなるらしい
丁度この頃に バブル崩壊 暴対法ができたみたいだ
(その頃はそんな話とか知らないが 今思えば納得できる)
川口「出るなら今か 最低でも10月の半ば頃までに決行しないとな」
僕「そうですね 冬がくる前になんとかしたいです」
明日休みと言う事もあり 川口さんと語り明かした
そして休みの日だ・・・・・・・
1日寝ていたい所だが 朝からDQNがやってきた
DQN「お前等 変な相談してるんじゃねえぞ」
DQN「今後変な動きをしたら お前等の小屋の前に監視所を作る」
DQN「勿論お前等が 日曜日に制作する」
川口「くっ無駄な事をさせるんだな 俺等が逃げるとでも言うのか」
DQN「文句を言うな お前態度悪いから よし今から作れ 午後にくる」
川口「仕方ねぇ おまえ等はまず木を伐採してくれ」
川口「それと 鈴木はどうした?」
山「あの糞馬鹿 飲んだくれて寝てるぞ」
第6の男「奴さんはいい気なもんさ 小林から酒を貰ってたし」
第6の男「2人でニコニコ話してたからな」
川口「俺達の事をチクリ入れたのはヤツだろう」
山「俺もそう思う」
川口「今日ヤキを入れるか」
山「俺も手伝うぞ」
みんなもピンときてるみたいだ 鈴木さんだ 間違いない
最近まわりの人とも喋らないし 毎日酒を貰ってる
お金が無い鈴木さんがどうして酒を毎日?
密告の報酬として毎日酒を20本貰ってるらしい
この人は酒20本で 仲間を売るのか 常識と人間性が欠落してる
そして午後・・・・・・・・・・
DQN「おう お前等 もう小屋は作らないでいいぞ」
DQN[もう必要ないからな クククッ」
川口「どうしてだ わざわざ木まで伐採させてるのに」
DQN「それは来週になればわかる クククッ」
人にこんな作業をさせていきなり中止とは しかも来週になれば?
なんの事だろうか 理解に苦しむが どうせろくな事じゃないだろう
そして夜・・・・・・・
川口さんに起された
川口「今から鈴木を吊るしあげるぞ」
川口「おい 鈴木起きろ」
鈴木「なんか用か?」
川口「とぼけるなよ お前俺達の事を密告しただろ」
鈴木「さぁ?なんの事だか」
川口「その酒はどうしたんだ」
鈴木「買ったんだ 文句あるか」
川口「お前にそんな金ないだろう」
鈴木「大きなお世話だ」
川口「お前知らないと言うのか」
鈴木「ああ 知らんね」
川口さんが鈴木さんの金玉をガッシリ掴む
鈴木「痛い痛い止めてくれ」
川口「正直に話せば止めてやる」
鈴木「お 俺が密告した」
山さんが飛んできて 鈴木さんの顔に唾を吐いた
山「お前ただじゃ済まんぞ 覚悟しろよ」
鼻を摘んで口を無理矢理開けさせた そしてタオルを口にねじ込む
僕「どうしてタオルを?」
川口「声が出せないようにさ」
川口さんが前からみぞおちを殴る 山さんが後から腎臓の所を殴る
なんと 壮絶なリンチなんだろう
気持はわかるが ここまでする必要があるのか
僕が心で思ってたら 川口さんが
川口「2度と変な気持を起さないように 徹底的にやる」
川口「中途半端に終らしたら また密告するからな」
僕はここが飯場なんだと痛感した
鈴木「わ わかった もう許してくれ」
川口「お前の為に 木の伐採までやらされたのに お前は寝てただろ」
鈴木「あれは調子が悪くて寝てた」
山「嘘つけ お前が酒を飲む所を見てた」
山「こいつを朝までいたぶるか」
山「庄田もこいよ」
庄田「俺はめんどくさいからいいよ」
山さんは 鈴木さんに相当な怨みを抱いていたみたいだ
そして 壮絶なリンチは続いた
寝てたら 体の上を歩く タオルで鼻と口を塞ぐ
寝てる側から頭を蹴るなど 山さんが執拗にからむ
鈴木「いい加減にしてくれよ」
山「なにを~お前待ってろ」
山さんが外に出て 濡れたタオルを持ってきた
そのタオルで鈴木さんをパシパシと叩く
部屋の中で悲鳴がこだまする よくこんな事を考え付くもんだ
所で外に水はないはずなんだが?
僕もやられた経験があるが 濡れたタオルで叩かれるとめちゃくちゃ痛い
制裁は明け方迄も続く 一般の社会ならもう終ってるだろうが
あれから鈴木さんは大人しくなったみたいだ
まだ色々反抗的な態度だったが 川口さんの一言が効いたみたいだ
(おい鈴木 お前明日の朝は永遠に目覚めないかもな)
そして翌日の仕事が・・・・・・・・・
今日は鈴木さんの朝までリンチ事件で みんな寝不足みたいだ
仕事に精彩がなくて 小林が苛立ってる 相変わらず青木さんが殴られてる
ほとんど殴られ役の青木さん 気の毒だが みんな心の中で感謝してるであろう
殴られ続けて どちらかと言えば大木凡人似だった青木さんの顔が
瞼が腫れてすごい強面の顔になってる(前歯が無いのも怖い)
多分普通に道を歩いてたら 誰も寄りつかないだろう と言うか避けて歩くと思う
その後は事件もらしい事件はない・・・・・・・・
そしてまた1週間が過ぎようとしてる 飯は相変わらず豚のエサ以下だ
仕事と言えば相変わらずキツイ 本格的に暑くて大変
本来なら水代がバカにならないのだが こっそり水を補給する方法を見つけた
(水道みたいな物は有るのだが 捻る所に鍵を入れないと出ない)
その鍵は小林が所有してるが 以外と単純な構造なので 水を出す事ができた
これも川口さんの知恵だ 川口さんが居ないと本当に地獄だったかもしれない
水は良いのだが 甘い物と 塩分をとらないとまずい
小林から購入すると高い でも仕方ないので購入する
今日は掘りだし物の 茹で玉子が500円(塩付け放題が嬉しい)
500円は痛い出費だが 塩湯を飲む事を考えたらマシだ
そして週末になり 待望の日曜日が来たけれど・・・・・・・・・
また朝から小林がくるのか 最近日曜日は必ずくる
嫌な予感は的中した それどころか最悪の日曜日に
朝の8時位にお約束のドンドンドアを叩く音(最近あまり蹴らないが)
小林「お前等に楽しいお知らせが有ります この前の小屋作り中止に関係がある」
小林「楽しみに待ってたよいこも居るかな」
完全に人をバカにしたみたいな喋りだが すぐに生意気口調にかわり
小林「おい お前等付いて来い もたもたするな」
小林「それでは新しい管理人さんを紹介する 岡さんと前田君だ」
小林「岡さんと 前田君がお前等の新しい管理人様だ」
小林「とくに前田君は狂暴変な動きしたら 喉元を食い千切る」
はぁ?言ってる意味がわからない ???
小林「それでは 部屋の中に入れ 前田君の機嫌を損うなよ」
部屋に入ってみたら 60才位のしょぼくれたじいさんと 犬
どこで拾ってきたのだろうか 犬の名前はわからないが
ドーベルマンみたいな犬だ もしかして前田君は犬か?
小林「前田君と言う名前は冗談だ 謙太君だ お前等忠誠を誓え」
小林「あっそれと 俺は4日程留守にするから 岡さんと謙太君の言う事を聞けよ」
小林「謙太君は人を一撃で噛み殺せるからな」
なんと言う事だろう どうして犬に忠誠を誓わないといけないんだ
そこでじいさんが立ちあがる
岡「謙太エサだ」
目の前に肉を放りなげる 唸りながら上等そうな肉を食らう
隣りで第6の男が吐き捨てるみたいに呟く
第6の男「人間様より 良い物を食べやがって」
小林「お前等もこの肉の様になりたくないなら 変な考えは持つな」
第6の男「100キロの男を見ないと思ったら 補充で犬とおっさんか」
山「逃げ出さないように監視のつもりか」
第6の男「この飯場ももう終りだな」
そして・・・ふと隣りを見ると青木さんがカタガタ震えてる
青木「うわ~怖いよ 助けて」
小林「ん どうした さては犬が怖いのか」
青木「・・・・・・・・・・・・・・・・」
小林は岡の所に駈け寄り なにやら耳元でボソボソと
岡「はっはは そりゃいいな」
そして岡が言葉を放つ
岡「謙太go 」
岡が言葉を放つと 犬はすごい勢いで僕達の方へ飛び掛ってきた
岡「謙太rest」
寸前の所で犬は止まるが 青木さんの様子が変だ
青木さんは半分気絶して 尿を漏らす
小林「こいつ汚ねぇな 漏らしてやがる」
小林「俺様の部屋の中で 許せねえ」
小林は2度3度と青木さんを蹴り上げた
その1発が青木さんのお腹に炸裂 途端にブリブリっと音がした
小林「お前は本当に最低なヤツだな もう殴る気も起きない」
小林「誰かこいつを風呂場へ連れていけ 臭くてかなわん」
小林「さて 俺は出掛けるから お前等よい子にしてろよ」
小林「帰ってきたら 楽しいお知らせがあるかもしれないからな」
楽しいお知らせ?なんだろうか どうせ変な事だろう
小林「じゃぁ岡さん よろしく頼むわ 岡さんの好きにしていいから」
岡「おう 気をつけてな こいつ等と遊ばして貰うよ」
そして小林は IBXカーに乗り出掛けたのだが
岡「おい お前等に自己紹介だ 俺は 「岡 正徳」様だ ただしいとくと書く」
岡「俺様の名前を呼ぶ時は 様つけで呼べよ」
岡「言っとくが俺は空手の達人だ 謙太は人を食い殺した事がある」
岡「死対を埋めるのは大変だっだぞ ぐはははは」
(絶対にはったりに決まってると思うが)
岡「あと お前等の自己紹介はいらないぞ タコの名前なんて覚えたくもないからな」
なんか頭が痛くなってきた このじいさんは完全に逝かれてる
身長は160cmあるかないか 体重は45キロ位だろうか
いざとなったら余裕で勝てそうだけど 犬が問題だ
岡「お前等 はよいね(早く去ねの意味)」
岡「タコが長く部屋に居たら 臭くてかなわんからな」
なんと言う傲慢な男だろうか 仕方ないので小屋に戻る事にする
今日は休みなので、川口、俺、庄田、山さんの4人でミーティングを開く事に
弟6の男、青木、鈴木は参加せず
川口「今後の事について話をしたいと思う 誰か意見とかあるか」
山「ジジーは良いが あの犬をどうするかだな」
庄田「関係ねぇ殺っちまえ 人間様に勝てるかよ」
川口「しかしな 噛みつかれたら面倒な事になるぞ」
庄田「・・・・・・・くくくっ」
庄田さんが意味不明な笑いを その目を見たら背筋が凍りそうだった
そして翌日・・・・・・・・・・・・
今日は小林が不在なので 岡が来る予定だ
何時もより1時間も早く来た(年寄は早起きで困る)
ステッキみたいな物でドアを叩く音と 犬の雄叫びで目が覚めた
岡「おい お前等何時まで寝てるんだ 目が腐るぞ」
すいません まだ4時前なんですが・・・・・・
岡「すいませんじゃないだろう 岡様だろうが」
岡「飯の仕度してるから 直ぐに来い」
そして部屋に入る
岡「今日は 岡特製チャーハンだ 美味いぞ」
相変わらずの葉っぱと ひとかけらの肉が入ってる
1つは葉っぱが少なくて 肉が半分以上だ なぜ1つだけ?
そして1つはドックフードが1つ並んでる
岡「早く低位置につけよ」
鈴木さんが一番肉が多い所に座るが
岡「バカ野郎 そこはお前の席じゃない この肉の大盛りは謙太の分だ」
ドックフードは誰のですか?
岡「うんこ漏らしに決まってるだろ ドックフードも勿体無いわい」
青木さんは泣きながら食べてた
そして・・・・・・・・・・・
3日目の夜に 事件は起きた
ぎゃー助けて 夜中に突然の悲鳴が聞えた
みんなは飛び起き辺りを見回す
山「おい 青木が居ないぞ」
外に出てみると 犬に襲われてる青木さんがいる
川口「あのジジー 放し飼いにしてるのか」
山「俺達が逃げ出さないように放し飼いだろ」
それにしても青木さん どうして夜中に外にでたのだろうか?
川口さんは鉄パイプと タオルを2枚 山さんは鍋を持って青木さんの元へ
(どうして山さんは鍋を?)
犬は青木さんの足に食いついてる(幸い長靴みたいなのを履いてるが)
その上からでも相当な痛さだろう
川口さんが蹴ったけど 放す気配はない
川口さんはタオル2枚を 左手にグルグル巻きにした
そして犬を激しく蹴る 犬は川口さんのタオルを巻いた手に噛みつく
そこで山さんが鍋で殴る ドラの音色みたいな音がした
川口「おい そこの鉄パイプで犬を殴れ 思いっきりだぞ」
僕「え 僕がですか」
川口「早くしろ かみ殺されるぞ」
僕はおもいっきり鉄パイプを振り下ろす
犬はギャンギャンと泣き声をあげて 右に左に転げ回る
川口「そんなんじゃ効かない 貸せ」
鉄パイプで犬を滅多打ちの川口さん 横から庄田さんが大きな石で頭を殴る
しばらくするとピクピクと痙攣してる 犬は半分目の玉が飛び出て絶命した
川口「この犬をどう処理するか」
山「穴を掘って埋めるしかないだろ」
山「それは良いが 岡が騒ぐぞ」
川口「みんなしらを切りとうすんだ」
犬の事件は終ったけれど 青木さんが噛まれた傷が酷いみたいだ
傷口はかなり深い このままでは足は役にたたないかも
川口「青木 お前の足をこの鉄パイプを熱して焼くからな」
青木「嫌だ嫌だ 許してください」
川口「お前 足が腐って落ちても良いのかよ」
青木「それは困るけど 熱いのとか痛いのは一寸」
川口「男なら我慢するんだ その我慢が将来につながる」
青木「どうしても焼かないとダメですか」
川口「このままでは 足が腐るし ここは山の中だ」
川口「当然虫とか蝿も多い 卵を植付けられたなら 足に蛆が涌くぞ」
青木「わかりました」
川口「山さん 青木の口にタオルを噛ませろ」
押し殺した叫び声が小屋中に響き渡る
そして人間を焼く匂いが 辺り一面に漂う
僕は外にでて えずきまくった
これは番外の話しですが 僕は今でも青木さんから連絡がくる
結局青木さんは 足を引き摺るようになる そして精神が不安定で
未だに入院と退院を繰り返してます
入院中に親が亡くなり『親に結構財産があったのですが』
入院中に姉と話しをして1000万で財産放棄のサインをした
その1000万も3年位で使いきり 障害認定を獲得
今は生活保護で細々と暮してる
あれから10年以上歳月が流れたが 未だに就職経験は無い
その壊れっぷリを 機会があれば書きたいと思います
翌日 岡がもの凄い剣幕で聞きにきた
岡「お前等謙太君を知らないか?」
川口「さあ 散歩でも出てるんじゃないのか」
川口「それとも熊でも食われたのか 鎖は付けてなかったのかよ」
岡「うるせぇ そんな理由ないだろうが」
岡「正直に答えないとお前等をぶっ殺す」
川口「しらねぇよ やれるもんならやってみろや」
川口「ここは今 俺達しか居ないんだぞ」
岡「ちっ覚えてろよ」
意外にも岡はあっさり退散した
そして翌日・・・・・・・・・
犬が居なくなった岡はどんな対処するのだろうか?
翌日の岡の様子
岡「おい おまえ等開けろ 俺は手が離せないから」
無視してみたが・・・・しつこくドアを叩く
仕方ないので開けると なんと手に日本刀を持ってる
岡「俺に逆らうヤツはぶった切るからな」
岡「俺はこれでも元剣道部だ 試合で優勝した事も」
どこまでハッタリじいさんなんだろうか
前は空手の達人と言っていたが・・・・・・・・
山「ほぅ 剣道も達人なのか 少林寺拳法もだよな」
岡「おう そうだ少林寺拳法3段だ」
理由わからないじいさんだ 少林寺じゃなく空手と言ってたような
もうボケが来てるのかと 山さんが小声で言う
とにかく切られでもしたら大変なので みんな大人しくなった
岡とは気まずい状態が続いたが なんとか収まる
そして翌日になり小林が戻る
小林「お前等 本当に犬は知らないんだろうな」
小林「まさか鍋にして食べたのか ぎゃはは」
小林「タコはなんでも食べるからな 飢えたらクソでも食うだろ ははは」
庄田「あの~ 鍋の事考えてくれましたか」
小林「ああ 餅は3000円な」
庄田「・・・・・・・・」
今度の日曜日にするそうだが みんな3000円取られた
そして鍋パーティ当日に
庄田さんがなにやら そわそわしてる あの作戦を決行するのだろうか
鍋も煮えてきた 餅も程よく溶けている
庄田「悪いけど小林を呼んできてくれ」
僕「わかりました」
しばらくするとドアを激しく蹴る音がする
小林「なんの用だ とっとと開けろ」
庄田「用意はいいぞ」
庄田さんは目で合図をする 僕はドアを開けたが
小林は入り口の1メートル手前に居て 中に入らない
悪い事に岡まで一緒に同行してる
岡の手には日本刀 小林の手には金属バットが
犬を殺された事で相当警戒してるみたいだ
中に入らない事には 鍋をぶっ掛ける事も不可能だ
小林「用件を早く言え お前等と違い忙しいんだぞ」
庄田「あの~ポン酢ありますか」
小林「そんな物あるかよ 用件はそれだけか」
危険を察知したのだろうか 用心深いヤツだ
仕方ないが 庄田さんの作戦は失敗に終る可能性が大きい
庄田「はぁ・・・・・・・・・・・・・・・・」
僕「庄田さん元気を出してくださいよ またチャンス有りますよ」
庄田「そうだな・・・・・・・・・・」
【最終宴】
いよいよ待望の?給料日だ そして最後の宴でもある
水とか節約できたので なんとか+-0位になりそう
今日は焼肉パーティだそうだ ビールは飲み放題と嬉事を言う
驚く事に 普通の肉だ(前はなんの理由わからない肉)
焼いて食べてみたが 実に美味い(ちゃんとタレ付き)
女の子は素人っぽい30才前後の女 スタイルも普通
久々のヒットにみんなの顔も緩みっぱなしだ
庄田「俺は今回チャレンジするぞ がははは」
庄田さんの場合 傷も大分目立たなくなってきたから
鈴木さんの場合は もう役にたたない状況に追いこまれてる
多分病気を放置してるからか?本当に病気は怖いものだ
勃起のメカニズムは 脳の指令でペニスに血液が送り込まれるからだそうだ
あれだけブツブツとボコボコなら 血液の循環も悪くなるのだろうか
どんな状態になるのか?参考をアップする事も検討したが 止めておく
宴の途中で小林から 重大な知らせがあると告げられた
小林「お前等に嬉しいお知らせがあります」
小林「ここの現場は 卒業する事になります」
山「はぁ?卒業って言い方変だろ」
小林「みなさんに労いの意味を込めて 焼肉及び女です」
小林「楽しいひとときを堪能してください」
川口「なんだそりゃ 俺達は自由って事か」
山「そうだそうだ 俺達は自由だろ」
小林「話しは最後迄聞けよ」
小林「みなさんはリゾート開発プロジェクトに選ばれました
自然とふれあい 動物とふれあう事ができる島です
島のみなさんはとってもやさしいし 食べ物も美味しい
開発に役にたつ事で 島のみなさんも美味しい差入れをする事でしょう
休みはのんびりと釣りでもできる 全て自由に・・・・・・・
勿論 休みの日は女性をチャーターできる 勿論格安で
酒も日用雑貨も半額にする予定です
更に 島民が住宅を提供してくれるので 寮費もほとんど無料に近い
鈴木「うひょ~これで酒飲み放題か 楽しみだ」
本当にそんな事があると思うのか?鈴木さんは相当のバカかも
あれこれ考えても仕方ないので 今夜は宴で盛りあがるとするか
そして翌日・・・・・・
川口「小林が言ってたリゾートは相当怪しいな」
山「俺もそう思う そんなに待遇が良い理由ないわな」
僕「島って八丈島とかですか?」
川口「それはわからないが 生きて島を出れないな」
川口「島なら簡単に逃げ出せないし 泳ぐのも無理だろう」
川口「とにかく 移動する前になんとかしないとな」
山「やさしい島民とか女なんて嘘だろうな」
僕「それこそ 毎日塩汁を飲まされますよ」
山「今は100キロの男が居ないから なんとかなるかもな」
庄田「どさくさに紛れて 殺してやるさ」
川口「相手は小林、岡、監督のおっさんの3人だな」
山「鈴木、青木は使えないけどな 第6の男は微妙だ」
川口「3対3になると思うが」
山「青木になにかやらせるか」
僕「気を引くというか 囮になるかも」
川口「このまま山を下りても危険だから 移動中がチャンスだな」
川口「ある程度走った所で決行するしかない」
山「そうだな 島に行ったらニ度と戻れないからな」
川口「どっちにしても動かないと始まらないぞ」
川口「危険を犯して自由を勝ち取るか それとも死ぬまで島で暮すか」
山「作戦を練らないとな」
川口「青木 おまえ移動中にクソを漏らせ」
川口「もしくはクソが漏れそうだと言えよ」
山「お前なら ヤツ等も安心して外に出すと思う」
川口「そして逃げろ ヤツ等の誰かが追いかける
川口「そうしたらヤツ等は2人だけだ」
僕「一人は運転してるとして 後の2人は武装してるかも」
川口「そうかもな 最悪の場合は車を横転させる」
みんなで協議の結果 全員が協力するとの事だ
そして【脱出】
小型のマイクロバスで移動開始だ
後の席では監督が金属バット 前は岡が日本刀を持ってる
1時間か2時間位走行しただろうか
ここで作戦を決行する事に 川口さんが青木に目で合図を送る
青木「すいません うんこ漏れそうなんですが」
小林「しるかよ 漏らせ」
監督「漏らされたら臭くてかなわんぞ」
岡「そんなクソ お前が食べろ」
青木「うるせぇクソジジー」
岡が後の席の青木に すごい勢いで飛んできて殴る
チャンスは一瞬 岡が前に居ない
川口さんが立ちあがり 小林の頭を蹴り上げる
車は軌道を外れ林の中に突っ込む
立ってた岡はバランスを崩して倒れる 日本刀を落とした
そこで庄田さんが岡の日本刀を取り 小林に切りつける
小林の左腕をザックリと さらに死ねと日本刀を振り上げた
助けてくれ~と 絶叫する小林
川口「もうその辺で良いだろう 殺人者になるぞ」
庄田「お願いだから殺させてください もう俺はどうなっても構わない」
川口「そんなバカを殺してから 刑務所に入るのもくだらないだろう」
庄田「わかりました 我慢します」
次に岡を殴ったら 呆れるほど弱い 川口さんが頭を蹴ると気絶した
僕は監督の所に行く そして蹴ったり殴ったりしたが・・・・・・・
これが以外に強い 僕は吹き飛ばされてしまう
(僕は結構体格が良い方で あまりやられた経験は無いのだが)
次に山さんが飛び掛るが 山さんも呆気なくダウンした
山さんにマウントポジションで殴りまくる監督
そこで川口さんが来て 後から後頭部を蹴る 監督は立ちあがりパンチを
川口さんも倒れこんだ 最大のピンチだ このままやられてしまうのか
そこに第6の男が 監督の尻に日本刀を突き刺す
監督「ぐわわわわ~おまえ等卑怯だぞ」
川口「命がかかってるのに 卑怯も糞もあるかよ」
怯んだ所でみんなで袋叩きに 勿論小林と岡も 10分程経過しただろうか
3人を縛り付けて さあ脱出だ
道沿いを3時間~5時間程歩いただろうか 町みたいなのが見えてきた
僕等を見た町の人は 驚いたような顔をしてる
そりゃそうだ 汚い姿をしたおっさんとかが集団で歩いてるから
どうやらここは長野県みたいだ そこで温泉に入り 服を買う
最後にみんなで連絡先を教えあうけれど みんなは帰る所は無いと言う
青木さんの連絡先だけだった 川口さんに僕の連絡先を教えて解散する
後日 どうしても腹の虫が納まらなくて 北千住に行く決心をするが
僕は一応 護身の為にナイフを購入した
そして当日 朝からドアをノックするが人が居る気配が全くない
仕方ないので出直しだ また翌日に・・・・・・
まだ応答がない 電気のメーターも回ってないか
そこに半日ほど居ると(座りこんでた)
おばさん「あんた昨日からいるわね」
僕「ここの人はどうしましたか?」
おばさん「それがね~あんた聞いて頂戴よ」
おばさん「強盗かなんかわからないけど 金属の棒みたいな物で」
おばさん「メッタ打ちにされたのよ 救急車がきたわよ」
おばさん「たぶん死んでると思うわ 物騒な世の中よね~まったく」
僕「どんな人ですか?」
おばさん「50才位かな 私も見た理由じゃないからね」
僕「それはひょっとして田島さんかもしれない」
他にも恨んでる人も多いみたいだし 真相はわからないが
きっと田島さんが復讐の為に・・・・・・・・・・
あの頃は復讐を考えてたが 今になり 思う
復讐とか憎しみからは なにもうまれないと言う事を
3年位前かな?西東京の公園でホームレスが殺された事件があった
その人の名前が 同姓同名だったのだか たんに同じ名前だけかもしれないが
他の人の消息はわからないけれど どこかで生きてるのかな
あの逆境を乗り越えたのだから 立派に生きてると信じたい
辛いときも苦しい時も人間には 有ります
でも現状に甘んじてたら なにもかわりません
思い立ったら行動を起す事が大事なのです
(僕もあのまま島に行ってたら ここでネットしてないかも)
少しの勇気を振り絞ったら なにかがかわるかもしれません
ここを見てる人達は 若い人も多いと思いますが
自分自身の未来の為に頑張ってください
自分を不幸と思う方も居ると思いますが 挫けずに
こんな世界もあると言う事を 伝えたかったので書きました
この物語は実話を元に構成しましたので
では・・・・・・・・・fin
読んだ方の声
傑作の怖い話「診療所のバイト」
数年前、大学生だった俺は先輩の紹介で小さな診療所で宿直のバイトをしていた。業務は見回り一回と電話番。あとは何をしても自由という、夢のようなバイトだった。
診療所は三階建てで、一階に受付・待合室・診察室兼処置室、二階に事務室・会議室・炊事場、 三階に宿直室があった。宿直室は和室で,襖がドア代わり。階段はひとつ。
小さいとは言っても患者のカルテやなんかは扱ってるわけで、診療所はALS●Kで警備されていた。
宿直の大まかな流れは以下の通り。
夜9時に診療所に着き、裏玄関(表玄関は7時半には完全に施錠される)の外からALS●Kの警備モードを解除する。
入って見回りをして、三階の宿直室に入る。
宿直室にもALS●Kの管理パネルがあるので、入ったら再びALS●Kを警備モードにする。
警備のセンサーは一階、二階はほぼ隈なく網羅しているが、宿直室にはないため、宿直室内では自由に動ける。
管理パネルにはランプがついており、異常がないときは緑が点灯している。
センサーが何かを感知するとランプが赤く変わり、ALS●Kと責任者である所長に連絡がいくことになっている。ドアや窓が開けられると警報が鳴る。
部屋に着いて警備モードに切り替えれば、あとは電話がない限り何をしてもいい。
電話も、夜中にかかってくることなんて一年に一回あるかないかくらいだった。
だからいつもテレビ見たり勉強したり、好き勝手に過ごしていた。
ある日の夜。いつものように見回りをして部屋に入って警備モードをつけてまったりしてた。
ドラマを見て、コンビニで買ってきた弁当を食べて、本を読んで、肘を枕にうつらうつらしていた。
テレビはブロードキャスターが終わって、チューボーですよのフラッシュCMが入ったところだった。
何気なく目をやった管理パネルを見て、目を疑った。ランプが、赤い。
今まで、ランプが赤かったことなんて一度もない。
え?なんで?と思ってパネルを見てると、赤が消えて緑が点灯した。
まともに考えて、診療所の中に人がいるはずがない。
所長や医師が急用で来所するなら、まず裏玄関の外からALS●Kの警備を解除するはずだ。
また外部からの侵入者なら、窓なりドアなりが開いた瞬間に警報が鳴るはずだ。
故障だ。
俺はそう思うことにした。だいたい、もし本当に赤ランプがついたなら、所長とALS●Kに連絡がいって、この宿直室に電話がかかってこないとおかしい。それがないということは、故障だということだ。
そう思いながらも、俺はパネルから目を離せずにいた。緑が心強く点灯している。
しかし次の瞬間、俺は再び凍りついた。また、赤が点灯した。
今度は消えない。誰かが、何かが、診療所内にいる。
俺は、わけのわからないものが次第にこの宿直室に向かっているような妄想に取りつかれた。
慌てて携帯を探して、所長に電話した。数コールで所長が出た。
所「どうした?」
俺「ランプが!赤ランプがついてます!」
所「本当か?こっちには何も連絡ないぞ」
俺「だけど、今もついてて、さっきはすぐ消えたんだけど、今回はずっとついてます!」
所「わかった。ALS●Kに確認するから、しばらく待機していてくれ。また連絡する」
所長の声を聞いて少し安心したが、相変わらず赤が点灯していて、恐怖心は拭い去れない。
2分ほどして、所長から折り返しの電話があった。
所「ALS●Kに確認したが、異常は報告されてないそうだ」
俺「そんな!だって現に赤ランプが点灯してるんですよ!どうしたらいいですか?」
所「わかった。故障なら故障で見てもらわなきゃいけないし、今から向かう。待ってろ」
何という頼りになる所長だ。俺は感激した。
赤ランプはそのままだが、特に物音が聞こえるとか気配を感じるということもないので、俺は少しずつ安心してきた。
赤ランプがついただけで所長呼び出してたら、バイトの意味ねえなwとか思って自嘲してた。
しばらくすると車の音が聞こえて、診療所の下を歩く足音が聞こえてきた。
三階の窓からは表玄関と裏玄関そのものは見えないが、表から裏に通じる壁際の道が見下ろせるようになっている。
見ると、電気を煌々とつけて所長が裏玄関に向かっている。
見えなくなるまで所長を目で追ってから数秒後、「ピーーーーーッ」という音とともにALS●Kの電源が落ちた。
所長が裏玄関の外から警備モードを解除したのだ。
俺は早く所長と合流したい一心で、襖を開けて廊下へ出た。廊下へ出た瞬間、俺は違和感を感じた。
生臭いのだ。何とも言えない、イヤな匂いがたちこめていた。
また恐怖が頭をもたげてきたが、さっき確かにこちらへ向かう所長を見たし、1階に所長が来てるのは間違いないので、 俺は廊下の電気をつけて、階段へ向かった。
診療所の階段は各階に踊り場があって、3階から見下ろすと1階の一番下まで見える構造になっている。
階段の上まで来て、1階を見降ろした。
1階はまだ電気がついておらず、俺がつけた3階の電気が1階をうす暗く照らし出している。
生臭さが強くなった。1階の電気のスイッチは裏玄関を入ってすぐのところにある。
所長は、なんで電気をつけない?早く電気をつけて、姿を見せてくれ!
さらに生臭くなった時、不意に一階の廊下の奥から音?声?が聞こえてきた。
それは無理やり文字化すれば、
「ん゛ん゛~ん゛~~う゛う゛う゛~゛ん゛」
という感じで、 唄とも、お経とも取れるような声だった。
ここに来て俺は確信した。1階にいるのは、所長じゃない。
頭が混乱して、全身から冷たい汗が噴き出してきた。しかし、1階から目が離せない。
生臭さがさらに強まり、「ん゛ん゛~ん゛~」という唄も大きくなってきた。
何かが、確実に階段の方へ向ってきている。
見たくない見たくない見たくない!!
頭は必死に逃げろと命令を出しているのに、体がまったく動かない。
ついに、ソイツが姿を現した。
身長は2メートル近くありそうで、全身肌色,というか白に近い。
毛がなく、手足が異常に長い、全身の関節を動かしながら,踊るようにゆっくりと動いている。
ソイツは「ん゛~ん゛~~う゛う゛~」と唄いながら階段の下まで来ると、上り始めた。
こっちへ来る!!逃げなきゃいけない!逃げなきゃいけない!と思うが、体が動かない。
ソイツが1階から2階への階段の半分くらいまで来たとき、宿直室に置いてあった俺の携帯が鳴った。
俺は「まずい!!」と思ったが遅かった。
ソイツは一瞬動きを止めた後、体中の関節を動かしてぐるんと全身をこちらに向けた。
まともに目が合った。濁った眼玉が目の中で動いているのがわかった。
ソイツは口を大きくゆがませて「ヒェ~~ヒェ~~~」と音を出した。
不気味に笑っているように見えた。
次の瞬間,ソイツはこっちを見たまま、すごい勢いで階段を上りはじめた!
俺は弾かれたように動けるようになった。とは言え逃げる場所などない。
俺はとにかく宿直室に飛び込んで襖を閉めて、押さえつけた。
しばらくすると階段の方から「ん゛~~ん゛~う゛~」という唄が聞こえてきて、生臭さが強烈になった。
来た!来た!来た!俺は泣きながら襖を押さえつける。頭がおかしくなりそうだった。
「ん゛~~ん゛~ん゛~~」もう、襖の向こう側までソイツは来ていた。
「ドンッ!」
襖の上の方に何かがぶつかった。俺は、ソイツのつるつるの頭が襖にぶつかっている様子がありありと頭に浮かんだ。
「ドンッ!」
今度は俺の腰のあたり。ソイツの膝だ。
「ややややめろーーー!!!!」
俺は思い切り叫んだ。泣き叫んだと言ってもいい。
すると、ピタリと衝撃がなくなった。「ん゛~ん゛~」という唄も聞こえなくなった。
俺は腰を落として、襖から目を離すことなく後ずさった。
後ろの壁まで後ずさると、俺は壁を頼りに立ち上がった。窓がある。
衝撃がやみ、唄も聞こえなくなったが、俺はソイツが襖の真後ろにいるのを確信していた。
生臭さは、先ほどよりもさらに強烈になっているのだ。
俺はソイツが、次の衝撃で襖をぶち破るつもりだということが、なぜかはっきりとわかった。
俺は襖をにらみつけながら、後ろ手で窓を開けた。
「バターーン!!」
襖が破られる音とほぼ同時に俺は窓から身を躍らせた。
窓から下へ落ちる瞬間部屋の方を見ると、俺の目と鼻の先に、ソイツの大きく歪んだ口があった。
気がついたときは、病院だった。
俺は両手足を骨折して、頭蓋骨にもひびが入って生死の境をさまよっていたらしい。
家族は大層喜んでくれたが、担当の看護師の態度がおかしいことに俺は気づいた。
なんというか、俺を怖がっているように見えた。
怪我が回復して転院(完全退院はもっと先)するとき、俺はその看護師に聞いた。
すると看護師は言った。
「だってあなた、怪我してうなされてる日が続いていたのに、深夜になると、目を開けて、口を開けて、楽しそうに唄を歌うんだから。
『ん゛ん゛~ん゛~~う゛う゛う゛~ん゛』て」。
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