ウクライナ内戦避難民が住むチェルノブイリ原発事故の影響で建設中断の廃墟の町

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チェルノブイリの幻影・廃墟の町に住む内戦難民、ウクライナ

【5月27日 AFP】チェルノブイリ(Chernobyl)原子力発電所の事故後に見捨てられ、地図にも載っていないウクライナ中部のゴーストタウンに、同国東部の内戦から逃れてきた人々が住み着いている。

 オルビタ(Orbita)という名のこの町は、旧ソ連時代には一度も登録されることはなかった。この町には原発が建設され、2万人の労働者が住む予定だったが、1986年4月のチェルノブイリ事故後に原発計画は破棄された。

 林を抜け、かつての原発建設予定地に向かう道はぼろぼろで、町の入り口を示す標識はさびに覆われている。ただ、廃墟となった建物の隣にある2つの小さな遊び場は清潔で整っている。10歳の金髪の少女、アリーナちゃんが心配ごとなどほとんどなさそうな笑顔で、祖父のウラジミール・リマルチェンコさんの傍らで遊んでいる。

出典:チェルノブイリの幻影・廃墟の町に住む内戦難民、ウクライナ 写真9枚 国際ニュース:AFPBB News

	

オルビタの変遷は、チェルノブイリと密接に絡み合っている。

 オルビタの開発計画は、建設が予定されていたチヒリン(Chygyryn)原発のために、1970年に立案された。チェルノブイリ原発の技術者たちが住んだ町プリピャチ(Pripyat)と同様の機能を果たすことが期待され、1980年代に9階建てアパート2棟、5階建てアパート2棟と、インフラや百貨店も建設された。しかしチェルノブイリ事故後、チヒリン原発建設計画は即座に破棄され、町もたちまち見捨てられた。

 リマルチェンコさんは「ここはチェルノブイリと似ている。放射能がないことを除いて。代わりに美しい森と空気がある」と話す。

 オルビタでは現在、5階建てアパート2棟に約50家族が居住している。住人のほとんどが高齢者で、暖房設備やガスなしで生活している。近隣の村まで行かなければ水は手に入らない。生活の糧はわずかな年金と庭で育てた野菜だ。だが、彼らをいっそう悩ませているのは、奇妙な町とその住人の写真を撮ろうとやって来る、好奇心旺盛な観光客の存在だ。

出典:チェルノブイリの幻影・廃墟の町に住む内戦難民、ウクライナ 写真9枚 国際ニュース:AFPBB News

	

「チェルノブイリに行きたかったけれど、値段が高かった。ここは無料だし、放射線もない」

19歳の学生、クリスティーナさんは、スロバキア国境に近いウクライナ西部の町ウージュホロド(Uzhgorod)から友人らと、スリルを求めてオルビタにやって来た。「チェルノブイリに行きたかったけれど、値段が高かった。ここは無料だし、放射線もない」と話す彼女は「このゴーストタウンの雰囲気に引かれた」ことを認める。「世界の終末を描いた映画の中にいるみたい」

 だが、リマルチェンコさんは「私たちが幽霊みたいだと言いたいのか?」と苦い表情。「本物のゴーストタウンならば、われわれが逃げてきた東部の親ロシア派地域にある」とつぶやいた。(c)AFP/Yulia SILINA

出典:チェルノブイリの幻影・廃墟の町に住む内戦難民、ウクライナ 写真9枚 国際ニュース:AFPBB News

	




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