女性自身・家屋周辺の土から2560万Bq/㎡のセシウムを検出する汚染地域に返される住民の不安

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除染の完了や農業など生活基盤再建を後回しにして政府が避難指示解除に踏み切ったことが、大きな問題をもたらしている。

7月12日午前零時、福島県南相馬市の小高区(旧小高町)では、原発事故から5年4カ月にわたって続いてきた政府による避難指示が解除された。早朝にはJR常磐線の原ノ町駅-小高駅間の運転が再開され、桜井勝延・南相馬市長自らが始発列車に乗り込んだ後、小高駅前での式典で復興への誓いを述べた。原発事故前に約1万3000人が暮らしていた町に再び住民が戻れるようになった。

出典:福島第一原発事故、拙速すぎた避難指示解除

震災と復興 東洋経済オンライン
自宅前で、そう訴えるのは、7月12日に避難指示が解除された南相馬市小高区・川房(かわぶさ)地区の行政区長、佐藤定男さん(60)。

 佐藤さんは現在、家族とともに宮城県内の借り上げ住宅に住んでいる。今回、福島第一原発事故の影響による避難指示が解除になるのは、福島県南相馬市の小高区と原町区の「避難指示解除準備区域」(年間被ばく量が20ミリシーベルトを下回る地域)と、小高区の居住制限区域(同20~50ミリシーベルトを越えるおそれがある地域)。

出典:福島県南相馬市 法令の640倍の汚染地に戻される住民の悲痛(地震・災害) - 女性自身[光文社女性週刊誌]

	

佐藤さん宅の裏には、地上1mで毎時2マイクロシーベルトを越える。

			
小高区は、福島第一原発から20km圏内にあり、有名な祭礼のひとつ“相馬野馬追”が行われる町として知られている。この町は、太平洋を臨む沿岸部と、阿武隈山地に囲まれた山間部に分かれているのだが、空間の放射線量だけ見ると、相対的に山間部のほうが高い。佐藤さんの住居がある川房地区は、後者の山間部にあり、「帰還困難区域」(年間被ばく量が50ミリシーベルトを超えるおそれがあり長期にわたって居住が制限される地域)の浪江町と隣接しており、とりわけ放射線量が高いのだ。

出典:福島県南相馬市 法令の640倍の汚染地に戻される住民の悲痛(地震・災害) - 女性自身[光文社女性週刊誌]

	

除染が始まったばかりで芝を剥ぎ取った庭の空間線量は1マイクロシーベルトを超えるところもあり、木製のウッドデッキには放射能が染み込んでいた。

記者がウッドデッキ周辺を測定してみると、空間線量は毎時0.9マイクロシーベルト。ウッドデッキの表面汚染密度度は、約10万ベクレルを超えた。この数値は、(※)放射線管理区域にあたる4万ベクレル/平米より、はるかに高い。玄関周辺では、毎時0.7マイクロシーベルト前後だったが、自宅裏庭を測定してみると、すでに表土をはぎとった場所でさえも、地表から約1メートルで毎時2マイクロシーベルト越える場所があった。周辺の土を測定すると、2,560万ベクレル/平米という、放射線管理区域4万ベクレル/平米の約640倍にも及ぶ放射性セシウム(セシウム134とセシウム137の合算値)が検出された。

出典:福島県南相馬市 法令の640倍の汚染地に戻される住民の悲痛

	

除染が始まったばかりの庭の芝をはぎとっても地上1mで1マイクロシーベルト越える場所も。

			

一般公衆の年間被ばく限度は、ICRP(国際放射線防護委員会)により「年間1ミリシーベルト」とされている。

住民たちの不安は国には届かない。原子力推進側の国際的な専門機関でさえ年間1ミリシーベルトという基準を定めているのに、国は「国際的な知見では、100ミリシーベルト以下の被ばくでは、喫煙などほかの要因にまぎれて明らかな健康リスクの増加は証明できない」として、避難支持解除の基準を年間20ミリシーベルトに設定。事故前の基準、年間1ミリシーベルトより高いが、100ミリシーベルトより低いから問題ない、というダブルスタンダードを認めたままだ。

出典:福島県南相馬市 法令の640倍の汚染地に戻される住民の悲痛

	
小高区の民家の軒先の地表面の放射線量は2.3〜3.4と周辺より高くホットスポットとなっていた(2012年11月)。

住民は「2020年の東京オリンピックまでに、避難指示をすべて解除して原発事故を“なかったこと”にしたいんだ。われわれは忘れられていくだけ」と憤る。

国は昨年6月、2017年3月末までに、帰還困難区域を除く避難指示区域をすべて解除すると閣議決定し、そのシナリオどおり着々と進めようとしている。

川房地区と同じく“居住制限区域”に指定されている川俣町山木屋(福島県伊達郡)や、浪江町(福島県双葉郡)の一部についても、国は解除しようと躍起になっているが、いまだ放射線量は高く、住民から強い反発があり、話し合いが進んでいない。

これだけの惨禍を“なかったこと”にすれば、いずれ、また同じ過ちを繰り返してしまう。そうしないためにも、国がやろうとしていることを、しっかり見つめ、声をあげていく必要がある。

取材・文/和田秀子

出典:福島県南相馬市 法令の640倍の汚染地に戻される住民の悲痛

	




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