【洒落怖】山中の雪道で(山・中編)

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『山中の雪道で』

380 :玉露 :02/02/06 12:47 

俺は霊を信じていたのだが、今まで一度も見たことがなかった。

今から1年半前までは・・・


俺らは、俺の彼女と友達2人、

計4人で湯沢のスキー場にスノボをしに行った。

湯沢にはSのリゾートマンションがあって、そこに2泊3日の予定で行った。

その時期は吹雪がすごく、2泊3日のうち2日が吹雪のせいで

まともに滑れなかった。


382 :玉露 :02/02/06 13:08

最終日もあいにくの吹雪。

午前中はそれでも気合を入れて滑っていたが、

午後になるとますます吹雪は強くなり、夕方前に切り上げた。


マンションに帰り一息をつけた僕らは、帰る支度をして一路家路へと向かった。

みんな東京に住んでいるので、帰りは湯沢から関越自動車道にのり、

外環に出る予定だった。

しかし、吹雪のために湯沢のインターが通行止めになっていて、

しばらくインター前で様子を見ていた。

しかし復興するめどが立たないので、下の道で帰る事にした。

思えばそんなに急いでもいなかったから、

いったんマンションに帰り、復旧してから上で帰ればよかったと思う。


383 :玉露 :02/02/06 13:30

下の道で行くことにした僕らは順調に進んでいった。

しかし次第に車の出入りが少なくなっていく。


山道にさし当たった時に、車の異常な動きに気づいた。

俺は後方のシートに彼女と座っていたが、

どうも車の動きと友達のハンドルの動きがあっていない。

あまりの雪道でタイヤが滑っているのだと思っていた。

しかし、尋常じゃないタイヤの滑りにおかしいなと思った俺は、

友達に「かなりタイヤが滑るね、

遅くなってもかまわないから安全運転でいこーぜ」と言った。

いつもの彼ならドミノピザのデリバリ風に

『安全運転でいってきまーす』って言うはずが、何も返答はなかった。

どうしたんだろうと思った僕と同じように、

助手席にいた友達もそう思ったらしく、

二人で顔を見合わせて、その友達の顔を見た。


384 :玉露 :02/02/06 13:48

その友達は、今まで付き合ってきた9年間の中で、

一度も見せたことのないような怯えた顔をしていた。

彼は俺らの返事には答えず、バックミラーを何度も見るばかり。

不審に思った助手席の友達が後ろを振り返ったと同時に、

俺もそいつにつられて後ろを振り向いた。

そこにあったのは、車にしがみついていた女だった。

しがみついているというか、車を止めようとして、

車のウィングにしがみつき足でブレーキをかけているようだった。

驚いた僕は、彼女に「後ろを振り向くなよ」と言い、

運転している友達に「もっとスピード上げろ!」と叫ぶように言い放った。

今まで俺等の言葉には反応していなかった友達が、ふと我に返ったのか、

「分かった」と、恐怖をこらえ弱い声で返事をした。


385 :玉露 :02/02/06 13:57

車は滑る雪道をものともせず、猛スピードで山道を駆け抜けた。

普通、スピードを上げると余計にタイヤが滑るものだが、

不思議と安定し始めた。

恐る恐る後ろを振り返ってみると、

ウィングにしがみついていた女は振り下ろされたか、その場にはいなかった。

と、安心しきっていた俺等を、彼女の「キャー」と言う声が眼を覚まさせた。

彼女の横の窓ガラスにその女が映っていた。

女は走っていたのだ。

時速60キロは出ている車に、走って追いついてきたのだ。

一瞬ちらっとこちらを向いたその顔は、にたにたと笑っていたのを覚えている。


386 :玉露 :02/02/06 14:03

俺達はどうなるんだろうと思っていた矢先、

あまりの恐怖に友達が車のブレーキをかけた。

雪道でスピードを出し急ブレーキをかけたんだ。普通は車が滑る。

しかしABSを搭載していたせいもあり、車は安全に止まった。

気が付くと女は僕等の目の前にいた。

友達は「うわー」っと言いながら、

アクセルを目いっぱい踏み女に向かっていった。

女に車が接触する!と思った瞬間、女はまたにたにた笑っていた。

しかも、当たった感触も轢いた感触もなかった。


387 :玉露 :02/02/06 14:10

僕等はずっと続く恐怖に耐え車を走らせた。

どれくらいだっただろうか?車は市街地に着いた。

僕は「はじめに見つけたコンビニに入ろう」と友達に言うと、

ほどなく一軒目を発見し、コンビニに入ろうと右折をした。

しかし、右折をしようと車を減速しようとしたその瞬間、バツンと音がした。

チェーンが外れたのだと思い、コンビニに着くと僕等はタイヤを見た。

そこには女性と思われる大量の髪の毛が、ゴム製のチェーンに絡まっていた。


その後、僕等は何ともない。

スノボに行ったメンバーに、霊感がある人も一人もいなかった。

二度とあの三○峠には近づきたくない。

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