【閲覧注意】人影・きゅう、じゅう・ばんそうこうちょうだい【怖い話】

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人影

「ナムアミダブツ、南無阿弥陀仏」

と、俺は震えながらとなえ続けた。


東北自動車道と並行して伸びる122号線を、俺は自宅へと車を走らせていた。

時刻は午前4時だ。


ステアリングをあやつりながら突然、奇妙な違和感に捕らわれた。

「あれっ、車がいなくなったな。さっきまで後ろにぴったりトラックがくっついていたのに。

あのトラックはどこへ行ったんだ?」


ルームミラーで後を確認した。

後ろに人影がある!

そんなばかな。俺はアセった。

「落ち着け、落ち着け!対向車のライトでできた俺の影がリアウインドウに写ってるんだ!」

しかし、前方にそんな強い光はない。

ステアリングを左右どちらに軽く切っても影はリアウインドウに ぴったりと貼りついたように動かない。

「一体なんなんだ?」

恐怖に怯えながらも、俺は俺自身の影だと自分に言い聞かせた。


そのうち、ふとあることに気づいたのだ。

後を走っている車のヘッドライトが、車線変更で影に当たると光量がガクッと落ちる。

「影」は光を通しにくい半透明の物体なんだ!


うわっ、これはヤバい!!

俺はステアリングをかたく握り、一瞬目をつぶって

「ナムアミダブツ、南無阿弥陀仏」ととなえた。

目を開けると、そいつは消えていた。

ばんそうこうちょうだい

「ママがケガしちゃったから、ばんそうこうちょうだい」

突然インターホンが鳴り、モニターを見てみると黄色い学帽をかぶった小学生低学年の男の子がランドセルを背負って立っている。

見覚えのない子だ。


主人の仕事は朝早い。だいたい5時には一緒に起きて、私は朝食の、主人は出勤の支度をする。

インターホンが鳴ったのは、私が眠い目を擦って台所に立ったときだった。

主人が洗面所で顔を洗っている音も聞こえた。


「誰?どうしたの?」

「ママがケガしちゃったから、ばんそうこうちょうだい」

近所の子かもしれないと思いながら、救急箱からばんそうこうを取り出し、玄関に向かった。

ドアを開ける前に、もう一度「おうちはどこ?」と聞いてみた。

「僕のママ、血がいっぱい出ているの」

もしかした救急車を呼んだほうがいいのかも…と思いながら

「ママはどうしてケガしたの?」と聞いてみた。

「ママ、血がいっぱい出て動かなくなっちゃったの。早く開けてよ」


突然、恐怖感にとらわれた。このドアを開けてはいけない!

「うちはだめ!どっかよそに行って!」

そう言った直後に、すごい勢いでドアが蹴られた音がして、ふっと静かになった。

ドキドキしながらモニターを見ると、男の子は私と目線を合わせるようにモニター画面のなかでニヤニヤしている。

私はぞっとしてモニターから顔をそむけた。


「あれ?また寝てたの?」

主人が歯ブラシを片手に、私に声をかけてきた。

夢?私は目を覚ましたが、心臓がまだドキドキしている。

朝食の準備をしなきゃと思って起き上がったとき、右手にばんそうこうを持っていた。

これは一体!?

「さっきお前、玄関でなんか騒いでいただろ。

どうしたのか聞こうと思ってたんだよ。ドアが蹴られてたみたいだし」

きゅう、じゅう

彼女は丘の上で飛びはねていた。とっても幸せそうな顔をして。

跳ねるたびに「きゅっ、きゅっ、きゅっ…」と言っている。


朝6時半、部活に急ぐアキコは登校途中で彼女を見かけた。

飛びはねていたのは、アキコと同じクラスの生徒だった。

いつもいじめられている女の子だ。クラス全員が彼女をいじめていた。

教師もそのことを知りながら、見て見ぬふりをしていた。

アキコは特別彼女を憎らしいと思ったことはなかったが、いじめに加担しないと今度は自分がいじめられるんじゃないかと思って、無視やひどいことを言ってまわりにあわせていた。


「何してんの?」

彼女が飛びはねていたのはマンホールの上だった。彼女の返事はない。

「きゅっ、きゅっ、きゅっ…」と言いながら、幸せそうな笑顔で飛び跳ねている。


「なんで無視するの!」イライラしながら、口調を強めて言ってみた。

しかし、彼女の返事はなく相変わらず飛び跳ねている。


腹立たしい思いで彼女を見つめながら、アキコはなぜだか不思議な感情にとらわれた。

もしかしたら、数字を言いながらマンホールの上で飛び跳ねるのは意外と楽しいことかもしれない、そんなふうに感じたのだ。

バカらしいと心のどこかで思いつつも、わずかにそんな思いが頭の中をよぎった。


「なんで、そんなことしてるの?」もう一度彼女にたずねた。

彼女はそれに答えず、何も聞こえないみたいに笑顔で飛び跳ねている。

アキコのなかに意地悪な感情が生まれ、マンホールの上で跳ねる彼女の邪魔をしたくなった。

いじめられっ子が、理由もなくこんな楽しそうにしているのが、見ていてイライラする。

「ちょっとどいてよ。私がやる!」

そう言って、アキコは強引に彼女を押しのけてマンホールの上に立った。

わずかに足を曲げ、少し腰を低くして思いっきりジャンプした。

次の瞬間、彼女は素早くマンホールのフタを取り去った。

アキコは声を出す間もなく、真っ直ぐマンホールの穴に吸い込まれた。


彼女はフタを閉め、ふたたび幸せそうな顔で飛び跳ねた。

今度は「じゅう、じゅう…」と言いながら。







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Sharetube