【閲覧注意】トイレの鏡・このさきのへや・霊の通り道【怖い話】
霊の通り道
僕たちはベッドで激しく愛し合ったあと、心地よい眠りにつきました。僕が21で、彼女は20でした。
僕は彼女のマンションで週末を過ごすことがとても楽しみでした。
マンションは港区にあり、青山通りから少し入った白い建物です。
わずか5畳ほどの狭い部屋で、玄関を入ると左側にキッチン、 右側にはユニットバスがある、よくある間取りです。
狭い割には家賃が高い部屋でしたが、
「憧れの都会暮らしだもんね」
なんて笑って話しながら、狭さも楽しんでいました。
部屋には窓が大小ふたつ。ひとつはバルコニーに面した大きな窓。
そしてもうひとつの小さな窓は左側の壁面、エアコンの真下に、ちょうど人の胸の高さのところにありました。
そのとき僕たちは、大きな窓に添うように置いたベッドで寝ていました。
時間は覚えていませんが、小窓とエアコンの辺りからパシン、パシンと音が聞こえて僕はふと目がさめたのです。
12月の寒い時期だったので、部屋の乾燥による音だと思って、僕はぼんやりエアコンを見つめていました。
それが起きたのは次の音が鳴り響いたときでした。
突然、隣に寝ていた彼女が
「ううぇ、ううぇぇぇ~」と唸り、 体を硬直させ全身震え始めたのでした。
僕は驚いて彼女の体を揺り動かしました。
彼女は、どこにも焦点のあっていないうつろな目で天井を見つめたまま、こう言い始めたのです。
「中年の女の声が…。『お前の子どもが6才になったら、海で溺れ死にさせてやる』」
僕はとっさに、さっき聞いた音は建材の乾燥による音ではなくラップ音なのだと感じました。
僕は彼女を抱き寄せて、お腹の中で叫びました。
思い出していたのは、テレビで聞いた『声魂』でした。
霊に襲われそうになったら、声にならずとも腹の底から叫べば霊を追い払えるというものでした。
「彼女のところに来るな!来るのなら俺のところへ来い!」
僕はもう一度、腹の中で叫びました。
パシンッ!
そのとき、最後のラップ音が同じ窓から響いて彼女がこう言ったのです。
「女が『チクショウ』って言った…」
彼女は霊感の強い子で、変な音を聞いたり、おかしな人影を見たり、金縛りにもよくあっていたようです。
実は、彼女はこの部屋に住みだしてから何度か妙な体験をしたそうですが、僕にはそれを話していなかったのです。
霊の通り道。
どこかで聞いたことがありましたが、彼女はそれをこの部屋で体験していたのでした。
翌朝彼女は僕にこう打ち明けました。
「1ヵ月ほど前に占い師に見てもらったの」
「それでどうだったの?」
「あなたの彼はあなたを救う星の位置にあります、って」
彼女は引越しましたが、そのマンションは今でもあるそうです。
このさきのへや
それからはもう、その場所に近づいていない。あまりの恐怖から廃墟の2階から飛び下り、大ケガをしたからだ。
私が住んでいた町に廃墟があった。
それはアパートのような2階建ての建物で、壁がコンクリート。
ガラスがほとんど割れていて、壁も汚れてボロボロだった。
地元の人間でも、あまりこの場所に近づくことはなかった。
まだ小学生だった私は、この廃墟で友人と肝試しをすることになった。
まだ昼間の廃墟は明るかった。
私たちはふざけ合いながら建物を探索した。
歩き回っていると、なにか文字が書いてある扉を見つけた。
友人と近づいて見てみると、扉にはこう書かれていた。
「わたしは このさきの へやに いるよ」
少し不気味だったが、私は友人と扉を開けて中に入り、先に進んだ。
歩いて行くと行き止まり。
そこから廊下がふたつに分かれていて、壁に
「わたしは ひだり に いるよ」
もうやめようか迷ったが、好奇心が勝って私たちは左に進むことにした。
すると両側に部屋があるところに突き当たった。その壁には、
「あたまは ひだり からだは みぎ」
と書いてあった。
その瞬間、友人が叫び声を上げて逃げだした。
しかし、私は勇気を出して、ひとりで右の部屋に行くことにした。
部屋に入って進んでいくと、突き当たりの壁に
「わたしの からだは このしたにいるよ」
と書いてあった。
下を見ると
「ひだりの へやから わたしの あたまが きてるよ うしろ みないでね」
私は恐怖に耐えられず、その部屋の窓から思わず飛び降りた。
そこが2階で大ケガをしたことは、病院のベッドで知った。
トイレの鏡
「すみません、トイレに行きたいんですが」「ちょっと離れているので、ご案内しますね」
「え?すぐあそこにWCって書いてありますよ」
「いえ、向こうに新しいトイレがありますのでそちらをご利用ください」
「いいですよ、あそこで。すぐに終わりますから」
「それでは私もご一緒します」
私は山口にある某大手メーカーの従業員家族慰安旅行の添乗員として、温泉地に来ていた。
急に尿意を催し、添乗員控室にあてられていた応接室からトイレに行こうとした。
応接室を出ると、廊下に係員が待機していた。
トイレに入った瞬間、嫌な空気がした。
ホコリが積もり、普段使われている様子はなかった。
便器は4つあったが一番手前で用を足し、ふと見ると一番奥の便器で男が小便をしている。
あれ?足音もしなかったのにいつ入ってきたんだ。変だな……。
不思議に思いながら手を洗い、鏡を見ると男の姿がない。
「そんなはずは…」と思って振り返ると、男はまだ用を足している。
また鏡を見てみると、今度は男がはっきり映っていた。
「何だこれは!」
私は外に飛び出し、待っていた係員に聞いた。
「誰かトイレに入りました?」
「誰も入ってませんよ」
「おかしいな。ちょっと中を見てもらっていいかな」
係員がのぞき、「誰もいませんが」と答える。
「いや、絶対いたんだ。鏡見てみてよ、映ってるから」
「添乗員さん、このトイレ、鏡ありませんよ」