【閲覧注意】3つの顔・母の願い・クローゼットの女の子【怖い話】
クローゼットの女の子
「なんでオレのとこに出てくるのかな?」彼は金縛りの最中にそう考えていたらしい。
しょっちゅう金縛りにあう彼は、もはや怖いというのではなく困っていた。
格安マンションに引っ越した彼の部屋はいつも汚く、クローゼットはいつも開きっぱなし。
仰向けに寝ていると突然金縛りにあい、体が勝手にクローゼット側に横向くそうだ。
そしてクローゼットの中から女の子が出てくる。
彼に何かを訴えようとするが、声がまったく出ないらしい。
あるとき彼は、クローゼットを閉めていると女の子が出ないことに気づき、それからはずっと閉めていた。
うっかりクローゼットを閉めるのを忘れて寝てしまったある日、例のごとく金縛りにあい、体がクローゼット側に向いた。
中から例の女の子が現れ、聞こえない声でしきりに訴えている。
「もしかして自殺でもしたのかな?」
その瞬間、突然体がすごい力で仰向きになった。
仰向きの彼の顔の真ん前に怒った女の子の顔。
動けない体で、数分にらみ合っていたそうだ。
そのとき突然、携帯のメールの着信音が鳴った。
その瞬間に金縛りは解け、同時に女の子も消えた。
メールをしてくれた奴に感謝しながら、携帯を手に取った。
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ちがう、ちがう、ちがう
ちがう
わたしはころされた
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後日、不動産屋に問い合わせると、やっぱり過去に事件が起きた部屋だったそうだ。
母の願い
「アイツには数年も前から恋人がいて、父さんと里香を捨てたんだ」私が高校に入学してすぐ、母親が失踪しました。
とてもショックを受けている父の姿を見て、これからは私が父を支えなくちゃ、と決心したのです。
母の失踪後、不思議なことが起き始めました。
ちゃんと閉めていたドアが開いていたり、棚の上のものが落ちていたり。
家全体も何となく、ゾワッとするような異様な雰囲気がありました。
「ひょっとして母は失踪したんじゃなく、死んでるのでは?」
私はそう直感したのです。
母の失踪後、玄関に置いたままにしてある母の靴を調べました。
もし母が出ていったとしたら、靴が一足なくなっているはずだと思ったからです。
母の靴は全部揃っていました。ということは、母は家の中で死んだことになります。
まさか、父が?
父を問い詰めたい衝動にかられましたが、やめました。
父は母を愛していましたし、父が警察に捕まってしまったら私は一人ぼっちになります。
気付かなかったふりをしようと思いました。
しかし、奇妙な現象は相変わらず続きました。
ある日、私が寝ていると、ピト・・ピト・・と誰かが家を歩き回る音で目が覚めました。
父の足音でないことは確かです。
「来ないで」そう念じながら蒲団に潜っていると、足音がだんだん近付いてきて、私の部屋の中にまで入ってきました。生ぬるい息が頬にあたります。
「出・・・て行・・・け・・・」
私をのぞき込んで耳元でささやいた者は、凄い形相の母でした。
霊を見るのは私だけで、父は何も感じていないようでした。
母がいなくなってからというもの、私の面倒を見るために父は在宅の仕事に切り替え、家事をしてくれています。
私は何を見ても見ないふりをして、日々を過ごしていました。
ある冬の夜、コタツに入ると「ガリッ」という音がして、足の小指に激痛が走りました。思わずコタツ布団をめくると、そこに母がいました。
コタツの中で、母が横になっていたのです。
キッチンで食事の支度をしていた父が「どうした?」と聞いてきましたが、
「宿題があるの忘れてた!」と言ってどうにかごまかしました。
「もうすぐできるから、食卓でやるといいよ」
食卓でカバンを開けると、教科書と一緒に四つ折になった便箋が出てきました。
何かと思って開いてみると、そこには母の字でこう書かれていました。
「父さんは狂ってる、里香、逃げて」
今まで母は、私を逃がそうとしていたのでした。
キッチンにいた父は私に背を向けたまま、包丁を取り出していました。
3つの顔
「そうだ、残りのピザは上の階の子どもたちにあげよう」4階に住む山田さんはエレベーターで5階に向かった。
自動車事故にあって鞭打ち症になった山田さんは、この状態では仕事もできないので、一週間ほど会社を休むことにした。
奥さんは朝から仕事に出ていて、昼間は一人で過ごすことになった。
最初の数日は平日休みが嬉しく感じたが、4日目くらいから暇をもてあましてきた。
ある日の昼過ぎ、テレビを見ながらダラダラしていると、上の階の部屋からドスンドスンと音がして、子どものはしゃぎ声が聞こえてきた。
変だなと思いながらも、学校が休みなのかなと思い直した。
翌日も、昼頃から子どもの声が聞こえてきた。
どうやら、上の家には子どもが2人いるようだった。
その翌日、昼食を作るのが面倒で、山田さんは宅配ピザを注文した。
30分ほどでやってきたピザは、サイズを間違えて注文したらしく、食べきれずに半分以上残ってしまった。
普通なら奥さんのために取っておくのだが、ふと階上の子どもたちのことを思い出し、持っていくことにした。
呼び鈴を押すと、人の気配を感じたが応答はない。再び呼び鈴を押した。
なんだか、のぞき窓から見られているような気がする。
「どなたですか・・・」
かすかな声がドアのむこうから聞こえた。
「下の階の山田ですけど、ピザがあまったのでよかったらお子さんたちに…」
ドアがかすかに開いた。
家の中はやけに暗く、5センチほどのすきまから女性が顔を半分のぞかせた。
「ありがとうございます。でもけっこうです」
女性がひややかに答えた。
うす暗くて、どんな表情をしているのかよく見えない。
ドアのすきまから生あたたかい空気が流れてきた。嫌なにおいがする。
その時、女性の顔の下に、子どもの顔がふたつ並んだ。
2人の子どものうつろな目が私をじっと見ている。
3人の顔が縦一列に並んでいる。
「じゃあ、いただくわ」
山田さんはドアのすきまからピザの箱を入れると、真横からすっと手がのびてきた。
ドアのすきまから、3つの顔が山田さんを見つめている。
「ありがとう・・・」消えそうな声が聞こえた。
山田さんは一刻も早くその場を離れたく、そそくさと退散した。
なにしろ気味が悪かった。何かが変だった。違和感が頭の片隅にあった。
子どもの顔が頭に焼き付いている。
顔?
背中がぞくぞく震えだした。
そういえば、顔だけが、ならんでいた…?
早く自分の部屋に戻りたくて足早になる。
しかし、エレベーターがこない。
・・・ならんだ・・・縦に・・・顔だけが・・・
ボタンを何度も押すがまったく来る気配がない。ひどく頭痛がした。吐き気もする。
非常階段にむかう。
非常階段の重い扉を開けて階段を下りようとしたとき、山田さんは背中に視線を感じた。
ふりむくと、10メートルほどむこうの廊下の角に、3人の顔があった。
ドアのすきまから見たときと同じように、顔を半分だけだして、うつろな目で自分を見つめている。
山田さんはギブスもかまわず非常階段をかけ降りた。
縦にならんだ顔・・・・・・からだがなかった・・・
そして、顔のうしろにあった奇妙なものは・・・確か・・・
頭を支える・・・手・・・
山田さんは恐ろしくなり、近くのコンビ二に駆け込んで警察を呼んでもらった。
すぐさま警察の捜査が入った。
そして、その家の母親と子どもの死体が浴槽の中から見つかった。
死後3日が経っており、死体には首がなかった。首はのこぎりで切断されていたそうだ。
その日のうちに警察は夫を指名手配し、やがて同じ建物内で隠れているところを逮捕した。
母親と子どもの首はその男が持っていた。
警官が血痕をたどったところ、犯人は山田さんの家の押入れの中にひそんでいたという。