【閲覧注意】自殺者の死体回収・兄妹・恐怖の踏切【怖い話】
恐怖の踏切
「ここ、危ない…」友人はそう言ったきり、立ちすくんだ。
買物帰りに踏切の近くを歩いていたときのことだ。
「ここね、よく事故が起きるんだ。この前も自殺した人いたよ」
「…ひきずり込まれてる」
この踏切で亡くなった人が霊になって、人をひきずりこんでいるという。
その話を聞いて怖くなり、私はその日以来、遠回りしてでも踏切を避けて家に帰るようにした。
そんなある日、私は踏切のある道を歩いていた。
その頃は、ささいなトラブルがきっかけで精神的に参っている時期だった。
家に引きこもって毎日を過ごしていたが、その日はいつも以上にぼんやりしていて、気が付くとあの線路のところに来ていたのだ。
どのくらいの時間かわからないけど、何本も列車が行き交うのを見ているうちに、ふらふらと踏切の近くに歩いていった。
その時、何者かに腕と腰をぐっとつかまれて、踏切の中にひきずり込まれた。
「痛い!」
急に意識がはっきりして、裸足だったことに気づいた。
割れたガラスを踏んづけて、すごく痛くて意識が戻った。
カーン、カーンという音が響き渡り、遮断機が降り切る間際に踏切の外に飛び出した。
私の姿を見て心配して、病院に行こうといってくれたおばさんもいた。
私は腰が抜けたようにそこから動けなかった。
電車が通り過ぎて踏切のほうに目を向けると、腕のない人や血だらけの人が私をすごい形相でにらんでいた。
もうイヤ。絶対に踏切には近づかない。
でもつい先日、どうしても踏切を通らなければならなくなって、すごく緊張しながら踏切を通っていると、後ろを歩いていたおじさんにふいに肩を叩かれた。
「こんどは、いつ、くるんだ」
振り返ると、誰もいない。
私は一目散に走って逃げた。
兄妹
中学の修学旅行に行く朝、かわいがっている妹が行かないでと言って泣き出した。「またかよ」
前にもあったことなので、特に理由を聞くこともなかった。
「俺が行ってる間、ジョン(犬)の世話を頼むな」
そう言って、僕は出発した。
1日目の夕方、有名な神社の境内を歩いているとき、ふと妹に呼ばれた気がして振り返るが、もちろんいるわけはない。
なんとなく心配になって、宿舎から家に電話をかけたら妹が出た。
「何か変わったこと、なかったか?」
「昼寝をしている時、お兄ちゃんの夢を見た」
不思議だったけど、双子とか仲の良い兄妹ってある種のテレパシーのようなものがあるらしいし、それみたいなもんなのかな。
2日目の夕方、観光中に僕は友達とふざけあっていて、つい道路に飛び出してしまった。
クラクションに驚いて振り返ると、大型トラックが目の前まで迫っていた。
「ああっ」
次の瞬間、体が突き飛ばされたような感じがして、轢かれた!と思って目を閉じた。
しかし、気がつくとなぜか歩道に戻っていた。ケガはすり傷程度。
「はねたかと思ったぞ!」トラックのドライバーが窓から怒鳴った。
その夜、家に電話すると妹が出て
「またお兄ちゃんの夢を見た」と言った。
「どうろに、とびだしたらいけないよ、はねられると、すごくいたいんだよ」
事故のことは何も言っていないのに。
ほんとに俺たちには目に見えない絆があるのかも。
だが、翌日帰宅した僕を待っていたのは、病院のベッドに横たわっている妹の姿だった。
母親の話によると、前日の夕方買い物から帰ってくると妹の部屋からうめき声が聞こえたそうだ。
何事かと思って見に行くと妹が苦しんでおり、あわてて抱きかかえると異常に痛がった。
救急車を呼び、病院で検査をすると、結果は全身打撲だったそうだ。
だけどうちはベッドじゃないから、落ちて身体を打つなんてこともないし、母も混乱していた。
僕は、あの時助けてくれたのは妹なんだと直感した。
僕は付き添って看病することにした。
翌日、身の回りのものを母に持ってきてもらおうと家に電話をかけると、妹が出た。
なんで?と思っていると、母親の声に変わった。
聞き間違いか。
病室に戻ると、妹の容態が急変していた。
その日の夜、妹は息を引き取った。
高校に入って僕は家にあまり帰らなくなった。
妹のことを思い出すのが嫌で、夜遊びばかりしていた。
ある日、いつものように遊び歩いていると家から電話がかかってきた。
また母親のお小言か。
でも、そのときばかりはなぜか出てみる気になった。
聞こえてきたのは妹の声。
「おにいちゃんはやくかえってきて、わたし、ジョンとあそんであげられないよ」
あわてて家に帰ると母は電話中で、僕に電話がかかってきた時刻も話していたと言う。
だけど僕の携帯の通話履歴にはちゃんと『自宅』の表示が。
……妹からだったのか…。
玄関から追いかけてきたジョンがじっと僕の顔を見ていて、その顔を見ているとむしょうに泣けてきた。
僕はジョンに謝りながら一晩中泣いていた。
今はジョンもかなり老犬になってしまったが、最後まで俺が面倒を見るつもりだ。
今も家に電話をかけると、時々最初に妹の声が聞こえることがある。
自殺者の死体回収
「もう何年も自殺者の遺体回収をしていると、怖いものってなくなるね」「最初から怖くなかったの?」
「初めは怖かったけど、慣れるものだよ。でも実はたった一つだけ、思い出すと震えがとまらない話があるんだ」
有名な観光地の消防署を定年退職した叔父は、市内の有名自殺スポットS湖で自殺があるたびに駆り出され、死体回収を何年もやっていた。
そんな叔父が、一つだけ思い出したくないことがある、と言って次のような話を語り始めた。
ある晩のこと、たまたま家中に誰もいなくて一人で寝ていると、玄関を叩く音がする。確認したが誰もいない。
すると今度は窓を叩く音がする。
窓を開けてみたが誰もいない。
誰かがいたずらしているのだと思って、怒りながら寝床につくと今度は部屋のフスマを叩く音。
勢いよくフスマをガラッと開けても誰もいない。
さすがに怖くなり、布団を頭からかぶった。
今度は布団のまわりの畳を叩く音がした。
叩く音はだんだん強くなり、しまいには枕もとをドンドンと叩かれる。
叔父は恐怖でいっぱいになり、布団をかぶったまま身動きできなかったそうだ。
そのうち、叩く音がだんだん弱まってすうーっと叩く音がやんだ。
すると、いきなり電話が鳴り響いた。
勇気を出して布団から出ると、もう夜は明けていた。
「またS湖で自殺があったから来てくれ」という同僚からの電話だった。
自殺者はまだ若い女性だったが、崖の上から飛び降りたものの、湖面まで落ちることができず、崖の途中の松の木に引っかかった。
片目に松の枝がささり、崖の岩で打ったのか前身打撲でもうすでに死亡していた。
しかし即死ではなく、何時間も松の木にぶら下がって、こと切れたようだ。
遺体のそばには、まだ動く片腕で何度も何度も岩を叩いた跡が血まみれで残っていた。