【閲覧注意】タイムカプセル・落ちた手鏡・バスルームの恐怖【怖い話】
バスルームの恐怖
私たち姉妹は上京して別々に暮らしていたのですが、2人の家賃を合わせると一軒家が借りられることに気付きました。都心に出るには多少時間がかかりますが、広くて綺麗な一軒家を借りることにしたのです。
ある日、風呂場から妹の「ギャアア」というものすごい悲鳴が聞こえました。
ゴキブリでも出たかと思ってテレビの前を離れて一階に下りると、妹は裸のまま、髪をぐっしょりと濡らして廊下に立っていました。
何があったにせよ、いくらなんでもその格好はまずい。
「どうしたの?」と聞くと、妹は血の気が引いた顔で答えました。
「お願い、バスルームを見て来て。」
バスルームを見回しましたが、特に変わった様子はありません。
妹は何が起こったかを話し始めました。
お風呂に浸かっていると「ヒューヒュー」という誰かの呼吸する音が聞こえたというのです。
周りを見渡しても誰かがいるわけないし、風の音かなと思って気にせず髪を洗い始めたそうです。
バスタブに浸かりながら、上半身だけバスタブの外に身を乗り出し、前かがみになりました。
シャンプーを泡立てて地肌にのせ、髪を揉むようにして洗っていたとき、おかしなことに気づいたそうです。
髪が、長い!
妹が洗っている髪の毛は、彼女自身の髪よりも数十センチ長かったそうです。
そして、もう一つの事実に気が付いた時、妹は思わずバスルームから裸で飛び出してしまいました。
後頭部に、誰かの鼻が当たってる!
それ以来、妹がお風呂に入るときには、私が浴室の外で待機するようになりました。
妹はあのとき確かに、自分でない誰かの髪を洗い、その感触がいまも指に残っているといいます。
落ちた手鏡
「チリン」という鈴の音が、風に乗って聞こえたような気がした。まわりがざわついていたら気がつかないほどの微かな音だった。
なぜかその音が気になって、無意識に耳を澄ますようになっていた。
やはり、気のせいではなく鈴の音が聞こえる。しかもその音はゆっくりと近づいてくる。
ここはマンションの12階だから、そんなことはないのだが。
その夏の夜は蒸し暑かった。
クーラーの調子が悪く、仕方がないのでベランダの窓を開けたまま本を読んでいた。
このマンションは郊外のこの辺りでは目立つせいなのか、実は飛び降り自殺が多いことで地元では有名だ。
その年もすでに2件飛び降りがあって、一人は住人の中年男性、もう一人は隣町に住む若い女性だった。
飛び降りのほとんどが夜というのも、奇妙な感じがした。
「昼は下が見えるから怖いのかしら」近所の住民がそう話していたのを聞いたことがある。
「チリン」 微かだが、鈴の音はやはり近づいている。
ちょうど2、3階下の辺りで鳴っているように聞こえる。
どうしても気になるのでベランダに出てみようと、私は怖気をふるって立ち上がった。
そのとき、本当に偶然だったが近所の薬局でもらった鏡が目に入った。
その薬局の名前が入っていて、安っぽいプラスチックの枠がついている手鏡。
田舎の祖母の「鏡にはこの世ならざるものが映る」という言葉をふと思い出し、サンダルをはいてその鏡を持ってベランダに出た。生ぬるい風が気持ち悪く感じる。
鈴の音がもうほんの足元近くから聞こえてくる。
私は左手でベランダの手すりの上をつかみ、下の様子が映るように鏡を斜めに持った右手を外に向かって伸ばした。
その瞬間、鏡がもぎ取られるように手から離れていった。
びっくりして家の中に逃げ込み、ガラス戸を閉める前に下の方でガシャンという鏡の割れる遠い音が聞こえた。
私はベットの中で夜が明けるまで震えていた。
手すりから突き出した鏡に暗闇の底から伸びてくる無数の真っ白な手が写っていたからだ…。
今では夜になると全ての窓に鍵をかけ、カーテンを引く生活が続いている。
もしあのとき身を乗り出して下を覗いていたら、私が地面に叩きつけられていたかも知れない。
「鏡にはこの世ならざるものが映る」祖母の言葉が忘れられない。
タイムカプセル
山本たちは20年ぶりの小学校の同窓会で居酒屋に来ていた。出席者は12人。「もっと集まるかと思ったよ」
「ま、仕事もあれば家庭もあるから」
「そりゃそうだな」
山本に同窓会の手紙を出したのは魚住。
懐かしいな~、あのイジメられっ子だった魚住、いまどうしてるんだろ。
そういえば、卒業式の日もタイムカプセルに閉じ込められて泣いていたっけ。
山本は久々に同級生に会いたくなり、同窓会に出席することにしたのだ。
しかし、同窓会の幹事である魚住の姿が見えない。
魚住からのメールが届いたのは、すっかり酔いも回った頃だった。
「今日は忙しくて飲み会には参加できないので、タイムカプセルを置いた防災シェルターで待ってます」
タイムカプセルのことを思い出した面々は、さっそく車を走らせて20年前通った小学校の校庭の一角にある防災シェルターを目指した。
20年間使用されることのなかったシェルターのカギを酔った勢いで壊すと、中から異様な臭いが漂ってきた。
臭いの元とタイムカプセルはすぐに見つかった。
タイムカプセルのそばにはフロパンガスの缶が転がっており、青白い顔をした少年がその横に立っていた。
「魚住!」
20年前とまったく変わらない魚住の姿がそこにあった。
少年は手にもっていたマッチに火をつけた。
後日談として、この事件は検死の結果、死後約20年が経過している13名の遺体が発見されたそうだ。
現場で発見された証拠により、少なくとも1名がガスを吸引し自殺した事が判明しているが、残り12名の死因は不明のようである。