【閲覧注意】消えたおじさん・ヤバい部屋・襖【怖い話】
襖
ある日、和室の寝室の襖が10センチほど開いていることが妙に気になった。ついさっき干した布団をしまったばかりで、ちゃんと閉めたはずなのに。
…変ねえ。
子どもが産まれて郊外に引っ越したのだが、2LDKの家は日当たりもよく子育てには最高の環境だった。
「あれっ、きょうも開いてる」
子育てに気をとられて、閉めるのを忘れがちになっているのかしら…。
気づいたら閉めているのだが、忘れた頃にまた襖が10センチほど開いている。
それにしても、毎回10センチ閉め忘れるなんて…。
ある日再び10センチ開いていたのを見つけたとき、
「はい、今閉めた!よし、閉めた!」
指さし確認までしてしまった。
ちょっと恥ずかしいことをしたな、などとひとりで照れながら子どものもとへ向かい、抱っこして振り返ると、襖が全開していた。
ヤバい部屋
ここは四国のある地方都市のラブホテル。おそらく4階だったと思うが、部屋に入るとすぐに寒気がしたのだ。
エアコンが効きすぎなのかと思ったが、どうも違う。
断続的なラップ音がする。しばらくその部屋にいたら頭痛がしてきた。
なにかがおかしいと、僕も彼女も感じていた。
「お風呂がやばい、女の人が立ってる。」
浴室に行った彼女が、すぐに青ざめて出てきた。
浴室をのぞいてみたが、僕には女の人が見えなかった。
すぐにこの部屋を出て行こうかとも思ったが、好奇心が抑えられず、しばらく2人で部屋を観察することにした。
テーブルの上に落書き帳があった。おびただしい数の書きこみだ。
全部違う筆跡。でも書いてることは同じだ。
「この部屋まじヤバい」
「ラップ音がする」
「早く出たほうがいい」
とりあえず俺たちも
「浴室に女の人を見た」と書いて、部屋を後にした。
消えたおじさん
僕は渓流釣りに没頭し、そろそろ帰らなければと腰を上げた頃は、辺りはもう真っ暗だった。絶好のポイントだったのだが、土手は急でうっそうとした薮にはばまれており、途中で帰り道が分からなくなってしまった。
しばらくうろうろしていると、おじさんが一人で夜釣りをしていた。
「釣れますか?」
「今日はだめやぁ。もう帰るわ」
しめた!一緒について行けばもう迷わないと思い、僕はおじさんの後に続いた。
しかしこのおじさん、歩くのがものすごく早い。
必死についていったが、やがて見失ってしまった。
おろおろして「おじさーん」と叫んでいる僕に「おーい。こっちだぁ」とおじさんの声がする。
声の方へいくと、おじさんの姿はない。
「こっちだぁ」その声は、土手の薮の中から聞こえてきた。
「こっちだ。はやくしろぉ」
「おじさん、ここから上に出られるの?」
返事がない。
「おじさんいるの?」
「ああ、こっちだぁ」
「この道で出られるの?」
返事がない。
「はやくこいぃ」
「もう土手の上なの?」
返事がない。
「おじさん!?」
「はやくこーい」
なんだか変な感じがした。
土手の上に出られるのかと尋ねると口を閉ざす。草が倒れていない様子からして、人が通ったとは思えない。
恐ろしいものを感じた僕は、転がるように土手を降りた。
“ちっ”
上の方で舌打ちが聞こえた。
僕は背筋の凍る思いで、とにかくがむしゃらに走った。
何とかバイクにたどりつき、エンジンをかけた。
ホッとしながらしばらく走って、なにげなく薮の方を見おろした僕は、薮の合間にある無縁仏の脇でこっちを睨んでいるおじさんと目が合った。