全国の自動販売機に農薬を混入したジュースを設置!「パラコート連続毒殺事件」とは

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パラコート連続毒殺事件

全国各地の自動販売機の商品受け取り口に、農薬を混入したジュースなどが置かれていた無差別殺人事件。毒物の混入された飲料を置き忘れの商品と勘違いさせる手口が使われ、当時のキャップは現在と違って見た目では一度あいたものかどうか区別することが困難だった。

またパラコートは除草剤で当時24%濃度の液剤が市販されており、18歳以上で印鑑さえ持っていけば農協などで買うことができた。


使われたのは、オロナミンC6件、コーラ2件、リアルゴールド2件、不明2件。毒物はパラコートが多いが、1件のみジクワットが使用されている。

出典:

	

出典 www.agrochemical-pesticide.com パラコート

パラコートは除草剤。当時24%濃度の液体
液剤が小売 市販されており、18歳以上で印章 印鑑さえ持っていけば農業協同組合
パラコート (Paraquat) はビピリジニウム系に分類される非選択型除草剤のひとつで、イギリスのインペリアル・ケミカル・インダストリーズ (ICI) 社が開発した。既に1882年に発見、合成されていたが、除草剤としての特性は1955年になるまで認識されておらず、元々はメチルビオローゲン(methyl viologen)という名前の酸化還元指示薬であり、パラコートは商標名であったが今日では一般名として使われる。葉だけを枯らして、木や根は枯らさない。即効性は強いが持続性はない。散布後はすぐに土壌に固着して不活性化するため、すぐに作物を植えることが出来ることや、安価で経済的という点から、広く用いられてきた。

活性酸素を発生させる力が強いため、活性酸素の研究に使われることもある。

日本ではパラコート原体がイギリスから輸入されて製剤化されているが、1999年までは製造ライセンスを得て国内生産されていたこともある。毒性が強く、自殺や他殺事件を数多く引き起こして問題になったことがある農薬でもある。また非農耕地用として農薬登録を受けずに販売された製剤もあったため、農林水産省はなるべく登録するように指導したことがあった。

出典:パラコート - Wikipedia

	

ジクワット

ジクワット (diquat) はビピリジニウム系に分類される非選択形除草剤の1つ。イギリスのプラント・プロテクション社が開発した。除草剤としての利用のほか、ジャガイモの収穫前の蔓枯らしにも使われることがある。原体がイギリスから輸入されて製剤化されている。英語読みにより、ダイコートと発音することもある。臭素塩であるためジクワットジブロミドとも呼ばれる。

土壌に付着すると直ちに活性を失い、木や根は枯らさないため、すぐに種をまいたり作物を植えることができる。

パラコートと同じくアルキルビピリジニウム塩に分類される。化合物としての名称は 1,1"-エチレン-2,2"-ビピリジニウムジブロミドである。

経緯

昭和60年9月14日夜、大阪府泉佐野市のAさん(当時52歳)が、パラコート入りのドリンク剤を飲んで「急性心不全」で死亡した。Aさんは、10日早朝、和歌山県に釣りに出かけた。途中の国道沿いの自動販売機で牛乳、缶コーヒ、栄養ドリンク剤(オロナミンC)を購入した。硬貨を入れ取り出し口からドリンク剤を取ろうとした時、2本あったため間違えて余分に出てきたと思い2本を取り出した。釣りを終えたAさんはドリンク剤を飲まず、自宅に持ち帰った。

11日午後3時、Aさんは自宅でドリンク剤2本を飲んだ。この時、2本目のドリンク剤を飲んだところ異臭がした。その後気分が悪くなり午後6時頃病院に搬送された。13日になると呼吸困難になり14日に急性心不全で死亡したのだった。


一方、三重県松坂市ではBさん(22歳)が11日午後11時過ぎ、自宅近くの自動販売機でドリンク剤(リアルゴールド)を購入した。取り出し口には2本あったため、やはり間違えて余分に出てきたと思ったBさんは自宅に持ち帰る。

自宅で飲んだBさんは、吐き気と激痛により病院に運ばれたが14日に死亡した。


このオロナミンにはパラコート(除草剤)が混入していた。リアルゴールドにはパラコートではないが同種の劇薬が混入していた。

10日と11日に連続して自販機に毒入りドリンク剤が置かれていた為、同一犯人の疑いもあるとみて警察は捜査を開始した。


本事件の2ヶ月前にも京都・福知山市で同様の事件が発生していた。Cさん(当時48歳)が国道沿いの自販機でリアルゴールドを買って飲んだところ、急に苦しみだして1ヵ月後に死亡している。

さらに、毒入り無差別殺人事件は全国に広がっていた。

9月19日福井県で30歳の男性が毒入り缶コーラで死亡。同月20日宮崎県で45歳の男性が毒入りリアルゴールドで死亡。10月6日埼玉県鴻巣市で44歳の男性が毒入りオロナミンCで死亡。同月21日宮城県で55歳の男性が毒入りドリンク剤で死亡。11月17日埼玉県浦和市で43歳の男性が毒入りオロナミンCで死亡。同月17日17歳の女子高校生が毒入りコーラで死亡。このコーラ瓶には「毒入りに注意」の警告書があった。

出典:

	

毒物混入のドリンク剤があった自販機

			

確認されている犠牲者

全12件。死者は12名。

使われたのは、オロナミンC6件、コーラ2件、リアルゴールド2件、不明2件。毒物はパラコートが多いが、1件のみジクワットが使用されている。

いずれも自販機(自動販売機)に置いてあったドリンク(飲料)に、毒物が混入されていた。取り出し口が最も多いが、「自販機の上」、「自販機の下」というケースもある。


■4月30日、広島県福山市の自販機

トラック運転手(45歳)がドリンクを購入した際、自販機の上に置かれていたオロナミンCを飲む。

5月2日に死亡。運転手の嘔吐物から、除草剤であるパラコートが検出。


■9月11日、大阪府泉佐野市の自販機

男性(52歳)が釣りから帰る途中、オロナミンCを購入。取り出し口にすでに同じ商品があることに気づき、2本とも持ち帰る。

帰宅後に飲み、9月14日に死亡。飲み残しのオロナミンCからパラコートを検出。


■9月12日、三重県松阪市の自販機

大学生(22歳)が、自宅近くでリアルゴールドを購入。取り出し口にすでに同じ商品があることに気づき、2本とも持ち帰る。

帰宅後に飲み、14日に死亡。検出された毒物はジクワット。


■9月19日、福井県今立町(現:越前市)の自販機

男性(30歳)が自販機の下にあったコーラを飲んだところ、気分不調を訴えて病院に駆け込んだ。

9月22日に死亡。胃洗浄、飲み残したコーラの両方から、パラコートを検出。


■9月20日、宮崎県都城市の自販機

男性(当時45歳)が自販機で飲み物を買おうとして、取り出し口にリアルゴールドが2本あるのを見つけて持ち帰る。

帰宅後に飲んだところ、気分不調を訴える。9月22日に死亡。飲み残したリアルゴールドから、パラコートを検出。


■9月23日、大阪府羽曳野市の自販機

男性(50歳)が飲み物を買おうとして、取り出し口にオロナミンCを2本見つけ、持ち帰る。

9月25日の午前中に飲む。翌日に容態が急変し、10月7日に死亡。


■10月5日、埼玉県鴻巣市の自販機

男性(44歳)が飲み物を買おうとして、取り出し口にオロナミンCが2本あるのを見つけて持ち帰る。

翌日飲み、10月21日に死亡。飲み残しのオロナミンCよりパラコート検出。


■10月15日、奈良県橿原市の自販機

男性(69歳)が、取り出し口にドリンクが2本あるのに気づき、持ち帰る。

帰宅後に飲み、11月13日に死亡。飲み残しのドリンクからパラコート検出。

10月21日、宮城県

男性(55歳)が同様に死亡。


■10月28日、大阪府河内長野市の自販機

男性(50歳)が、取り出し口のオロナミンCを見つけて飲み、死亡。

11月7日、埼玉県浦和市(現:さいたま市)の自販機

男性(42歳)がオロナミンCを購入。取り出し口に2本あることに気づき、両方とも持ち帰る。

帰宅後に飲み、11月16日に死亡。


■11月17日、埼玉県児玉郡の自販機

女子高校生(17歳)がドリンクを購入した際、取り出し口にあったコーラを見つけて持ち帰る。

コーラを飲んだ一週間後に死亡。飲み残しのコーラからパラコート検出。


この時は、業者から「事件についての注意書き」が自販機にしてあった。

事件を受け、オロナミンCを販売する大塚製薬は、瓶容器の形状をねじ回し方式からプルトップ方式に改良した。類似・パロディ品のミンナミンCドリンク、リアルゴールドに関しては変更無し。

出典:パラコート連続毒殺事件 - Wikipedia

	

自殺の可能性もある犠牲者

■7月11日、京都府福知山市

男性(48歳)がパラコート入りのドリンクを飲み、死亡。

出典:パラコート連続毒殺事件 - Wikipedia

	

模倣犯

いずれも東京都。死者は無し。

■9月17日、港区

画廊に勤める女(34歳)が、画廊の経営者と支店長に青酸化合物入りのコーヒーを飲ませ殺害を図ったが、未遂に終わり、逮捕された。

女は会社の金を使い込んでおり、事実が発覚するのを恐れたため、犯行に及んだ。


■9月25日、世田谷区上北沢の自販機

ドリンクを飲んだ大学生が、「変な味がする」と警察に訴える。

石灰硫黄合剤が含まれていたことが判明。犯人は不明。


■9月27日、北区の自販機

ドリンクを飲んだ女性(44歳)が、「変な味がする」と警察に訴える。

石灰硫黄合剤が含まれていたことが判明。犯人は不明。

出典:パラコート連続毒殺事件 - Wikipedia

	

自演

■9月27日、東大阪市の自販機

中学生が、ドリンクを飲んで「変な味がする」と警察に訴えて入院。

後に、自らが殺虫剤を混入し、飲んだことが判明。

動機は、「連続事件の犠牲者として入院すれば、同情したクラスメイトらが見舞いに駆けつけてくれる」というもの。しかし誰も見舞いに来なかった。


■9月30日、福井県の自販機

男(22歳)が、「変な味がする」と警察に訴える。

世間から同情してもらいたくて、自らが殺虫剤を混入していたことが発覚し、逮捕される。


■12月11日、群馬県沼田市の自販機

ドリンクを飲んだ中学生が、混入していたパラコートにより倒れる。

後に、自ら飲む寸前にパラコートを入れ、自殺を図っていたことが判明。

出典:パラコート連続毒殺事件 - Wikipedia

	

迷宮入り

全国に広がった毒入り連続殺人事件は、国会でも取り上げるところとなり警察も大規模な捜査を続けたが、犯人逮捕には至らなかった。犯行の地域的な部分(主として埼玉県、大阪周辺)、使用したドリンク剤に共通項(オロナミン、リアルゴールド、コーラ)があり、犯人像にある程度絞り込めるのではと推測されたが、当時は防犯カメラが設置されていた自販機は皆無で、結局事件は迷宮入りとなった。

もし、自販機の取り出し口に購入した同種のドリンクが余分にあったら、軽い気持ちで持ち帰るだろう。犯人は、この心理に付けこんで毒入りドリンクの取り出し口に置いて無差別殺人を実行した。この行為は完全にテロである。

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