【人体実験】思い込みって恐ろしい…独・米で映画化「スタンフォード監獄実験」の一部始終

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恐ろしい人体実験

人体実験…恐ろしい言葉のようにも聞こえるが、それがなければわからなかったこともたくさんあるだろう。

が、やはり目立つのは歴史的にも問題視されている実験。ナチスでの実験も有名だし、日本でも昔行われたりしていた。今回はそのなかから「スタンフォード監獄実験」についてまとめていこうと思う。

スタンフォード監獄実験とは

1971年の8月14日、アメリカのスタンフォード大学心理学部がある実験を開始した。その内容は、一般人21人に囚人と看守という役をそれぞれ与え、実際に本物のように行動するというもの。看守は囚人に命令できるし、当然囚人はそれに従わなければならない。

”リアルさ”を追求した

- Wikipedia

実験指導したフィリップ・ジンバルドー氏

実験を行った場所は大学の一部だったが、地下室を改造して”刑務所っぽく”なっていた。被験者に選ばれた11人の看守役と10人の囚人役は、その閉鎖空間で2週間過ごすことを予定としていた。
	
ジンバルドーは囚人達には屈辱感を与え、囚人役をよりリアルに演じてもらうため、パトカーを用いて逮捕し、囚人役を指紋採取し、看守達の前で脱衣させ、シラミ駆除剤を彼らに散布した。

出典:スタンフォード監獄実験 - Wikipedia

	
さらに囚人役には女性用のスモック(あるいはワンピース)を下着ナシで着用させた。足には常に重たい鎖がつけられたりしたが、これらがすべて「囚人役を再現」したかというとそうでもないらしい。

独房への監禁、バケツにトイレ

いきなり「君は看守ね」「あなたは囚人よ」なんて言われたら始めは”仲良く2週間を過ごせばいいや”と思うのだろうか。しかし看守が看守らしく変貌するのは早かった。誰かに指示されることのまいまま囚人を罰しはじめ、拒否した囚人役を独房(に見立てた倉庫)へ監禁した


さらに看守は囚人に「トイレはバケツで」と行為を強要したりもした。もちろん誰もそうしろとは言っておらず、あくまで看守風の一般人が囚人風の一般人(無実)に下した罰則だ。恐ろしい。

精神錯乱で脱落

ただでさえ地下の冷たい空間に閉じ込められているのにもっと暗い独房へ放り込まれたり、バケツにトイレしろって言われたり…。耐えかねた囚人役は次第に精神を錯乱させて離脱した。この時点で実験を中止すればいいものを、ジンバルドー氏は「リアルやん、すげえ」ということで続行させた。
実験中に常時着用していた女性用の衣服のせいかは不明だが、実験の日数が経過するにつれ日常行動が徐々に女性らしい行動へ変化した囚人も数人いたという。

出典:スタンフォード監獄実験 - Wikipedia

スカートだしノーパンだし暴力的な男たちに命令されるし…これはよく分かっていないらしいが、行動の女性化までたった数日間でみられるとは、いやはや恐ろしい。

6日間で実験中止

当初2週間の予定だった監獄実験は、1週間にも満たないまま中止された。被験者の変貌ぶりからするとじゅうぶんというかむしろ遅いくらいだが、ジンバルドー氏はのちに「あまりのリアルさにのめり込んでしまった」と語ったそう。
牧師がこの危険な状況を家族へ連絡、家族達は弁護士を連れて中止を訴え協議の末、6日間で中止された。

出典:スタンフォード監獄実験 - Wikipedia

牧師さんものめり込んでいたらどうなっていたのだろうか…。

実験で何がわかった?

ここで恐ろしいのは、看守が実験続行を訴えたということ。「閉じ込めたりトイレ掃除素手でやらせたり楽しいヒャッハー!」みたいになってたのだろうか…征服感というのは恐ろしい。突然他人を支配する優越感のようなもの得るとこうなるのか。
この実験でわかったのは”権力への服従”だ。権力や地位を与えられた者(看守)とそうでない者(囚人)が閉鎖的な空間でともに過ごすと理性を失っていく。権力を振りかざして暴走するそれは、しかも元の人格は関与しないという恐ろしさも含んでいる。

ドイツで映画化『es エス』

この恐ろしい実験はマリオ・ジョルダーノによって小説化された。そしてそれを原作にドイツで映画化。日本では2002年に公開されて”胸糞映画”として有名になった。再現率は低めだが精神的にキツイ映画。

アメリカでリメイク『エクスペリメント』

ドイツで公開された9年後の2010年、アメリカでもリメイクを果たした。日本でも同年に公開。こちらも映画色が強いが胸糞は否めない。

さらに2015年『プリズン・エクスペリメント』

これはほとんどフィクションみたいになってしまっているが、メインはスタンフォード監獄実験をもとにした映画。

心は思っているより単純…

たった2週間の実験で高額な報酬が!と言われるとちょっと話だけでも…とセールスマンの上手い口に乗せられそうだが、心の動きはきっと私たちが考えているよりも単純なのかもしれない。少なくとも結果は出たのでまったく無駄な実験ではなかったのかもしれないが、子どもの頃に流行った(?)囚人ごっこ程度に留めておこう。
	

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Sharetube