「現実とは幻である。」神経科学者が論じる“現実とはすなわち人々の間で共有された幻覚にほかならない”
「我々は常に幻覚を見ている」――。
この4月に開催された「TED 2017」の登壇者の1人、アニル・セス氏が発したこの言葉が、世界中で話題を呼んでいる。セス氏によれば、“現実”とはすなわち“人々の間で共有された幻覚”にほかならないというのだ。
■意識は我々が生存するために存在している
英・サセックス大学の神経科学部教授であるアニル・セス氏は、この春にカナダ・バンクーバーで催された「TED 2017」の壇上で今なおサイエンスにとっての難題である人間の「意識」の問題を深く掘り下げている。
「私たちの脳の小さな生物機械である数十億のニューロンが織り成す活動――それこそが意識を生み出しています。では、意識はどのように引き起こされているのでしょうか?この謎に挑むことはとても重要です。この答えがない限りは世界もなければ自分も存在せず、何もないことになりますから」(アニル・セス氏)
セス氏は「意識は我々が生存するために存在している」と定義している。睡眠は別としても、確かに知覚機能に加えて意識がなければ、我々は飛んでくるボールをキャッチできないし、鳴り響く電話に出ることもできない。危険に満ちたこの世界をサバイブするために必要不可欠な「意識」だが、一方でセス氏によれば意識が見ている世界は“幻覚”でもあるという。意識とは「脳が予期したものの総体」。つまり幻覚によって取り込まれた情報を用いて脳はさまざまな予測を行い、その数々の予測によって“現実”が形成されていると説明している。そう考えると我々は、自分の脳が見たいものを見て、聞きたい音を聴いていることになる。「そこにある現象を理解するということは、知覚された情報をもとに脳が予測したものであるか、こうであるはずだという信念に基づく推測のプロセスであると説明できます。脳自体は音を聴くこともできなければ、光を見ることもできませんから」(アニル・セス氏)/">ff0000">“幻覚”でもあるという。意識とは「脳が予期したものの総体」。つまり幻覚によって取り込まれた情報を用いて脳はさまざまな予測を行い、その数々の予測によって“現実”が形成されていると説明している。そう考えると我々は、自分の脳が見たいものを見て、聞きたい音を聴いていることになる。「そこにある現象を理解するということは、知覚された情報をもとに脳が予測したものであるか、こうであるはずだという信念に基づく推測のプロセスであると説明できます。脳自体は音を聴くこともできなければ、光を見ることもできませんから」(アニル・セス氏)