事故・不祥事
日本国内では2006年以降、シンドラー製エレベーターの事故や不具合が多く報道されている。報道されたものを以下に記す。
2003年12月17日午前8時半頃、別府競輪場において当社製のエレベータに乗降中だった競輪選手の前反祐一郎がエレベータ内に閉じ込められた。そのエレベータは、同競輪場最上階の4階を通り越し、エレベーター室内の天井部分に衝突していた。前反は発生後約40分後に救出されたものの、精神的ダメージが大きく、同日のレース出走を取りやめた。原因はエレベーター上部にある上昇用スイッチの誤作動によるものだった。なお報道では、上記事例は後述する2006年6月3日の高校生死亡事故が発生した後に明るみになった。
2006年6月3日東京都港区にある区営の特定公共賃貸住宅「シティハイツ竹芝」に設置されていたシンドラー社製エレベーター2基のうち1基で、自転車に乗ったまま乗降中の小山台の高校生が、扉が開いたまま突然上昇したエレベーターのかご部分と建物の天井との間に挟まれ折りたたまれて圧死する事故が発生した。
事故発生直後、国土交通省はシンドラーに、国内にある同社製エレベーターの全リストの提出を求めたが、当初は「個人情報保護」を理由に国交省へのリスト提供を拒否した(6月9日にリストを提出)。また、スイスのシンドラーグループ本部は6月9日、「(事故は)欠陥ではなく他社の不適切な保守点検か、閉じ込められた乗客による危険な行為が主因」とする声明を発表した。当時、保守は同社と資本関係のない競合会社が受注していた(2005年度は日本電力サービス、2006年度はエス・イー・シーエレベーター)。
事故当初より、シンドラーは再三の住民説明会や記者会見の要請を拒み続け、初めて記者会見を開いたのは、事故から9日経過した6月12日であった。この会見で、同社による保守業者への情報の提供が不充分であったことが明らかになった。翌日の6月13日に、初めて住民説明会を開いて、ケン・スミス社長が謝罪した。
エレベーターは後に、同じ建物内にあった3基のシンドラー社製エレベーターも含め、5基とも三菱電機製に交換された。なお、保守点検は、交換時から同社の子会社である三菱電機ビルテクノサービスが実施している。
死亡事故の発生を受け、広島市は、被害を防止する観点から市有建築物のエレベーターの緊急点検を行った。これに伴い、市有建築物における過去のエレベーター誤作動調査結果がまとめられた。他社製品は457基中35基(7.7%)が過去にトラブル・故障があったのに対して、同社製のエレベーターは41基中14基(34.1%)であった。
2006年11月17日国土交通省は、全国の同社製エレベーター6273基の緊急点検結果を発表した。同社製エレベータは、過去1年に閉じ込め175件を含む1294件の不具合があり、1基あたりの1か月の不具合の発生率は1.7%であった(大手5社の不具合発生率は1.2%)。国土交通省は、同社製エレベータに構造上の問題はないが、保守管理が充分でないとして、重点的に検査を行うよう注意喚起する方針であるとした。
また、シンドラーエレベータ死亡事故後に、東京工業大学すずかけ台キャンパス内にある同社製エレベータが、ドアに15cmの隙間が発生したりと何度も不具合を起こしていたことが話題となり、このエレベータに対し取材陣が殺到した(やじうまWatchより)。その後も、不具合は修復されていない様子であることが、報告されていた。現在は三菱電機製に交換されている。
2007年1月1日同日付でケン・スミス社長は退任し、ゲアハルト・シュロッサー(ヘンケルジャパン前社長)が新社長に就任。また、これと同時に失敗学で知られる畑村洋太郎氏や弁護士などで構成される「独立アドバイザリー委員会」を設置し、同委員会のアドバイスの元に、日本での事業を行うこととした。これは、シンドラー社が社会的要請に応じた事業活動のありかたや、安全な製品を供給することを目的としている。
2007年3月エレベータの法定検査に必要な国家資格(昇降機検査資格者)を、資格取得に必要な実務経歴を偽装することで、53人に不正に取得させていた事が発覚した。同社は、直ちに詐称していた者の資格を国土交通省に返納した。また、それと同時に、国土交通省は経歴詐称した検査資格者が行った法定検査を無効とし、正規な検査資格者による再検査を指示した。
2007年4月5日シンドラー社は、同社製品やサービスの向上や信頼回復を図るべく、前述の独立アドバイザリー委員会の存続延長を決定した。
2007年5月23日シンドラー社が保守点検を行っている東京都杉並区にあるマンションで、住民からの通報により、エレベータを吊るすワイヤーの一部破断が発見された。国土交通省は、直ちに同社が保守点検をしているエレベーターについて緊急点検を指示。なお、前月である4月4日に、日本オーチス・エレベータが同様の不具合を起こしたばかりであった。
2007年6月30日前述の独立アドバイザリー委員会が解散した。
2007年7-8月東京都港区が事故機と同型のエレベーターの電磁ノイズ耐性を調べる実験を行った(タクラム・デザイン・エンジニアリングとノイズシールドジャパンが実験)。同型機で、制御回路が電磁雑音に極めて弱いことが判明した。この実験以前は、「ブレーキの磨耗」や「保全の不良」が事故原因と推測されていたが、事故機の予測不可能で多彩な動作不安定性は単純なブレーキ磨耗だけでは説明が付かない。一方「指示なしで勝手に走行」「急停止」「閉じ込め」など、事故機の設置されていたビルの住人などがかねてより指摘していた動作不良は、制御回路の電磁雑音脆弱性で再現が確認された。また、同実験で、ブレーキ磨耗・ソレノイド不良により事故と同様の戸開上昇が認められた。制御回路の電磁雑音脆弱性とブレーキ磨耗、ソレノイド不良の因果関係に関しては、現時点では不明。一方シンドラー社は、「ノイズ対策は正常であった」という見解を出しているものの、具体的にどう正常であったかの回答は出していない。
2007年9月12日大阪府堺市西区浜寺石津町西の娯楽施設「とこりん」石津店で、シンドラーエレベータ社が保守するエレベータ(旧日本エレベーター工業製、1970年製造)が4階に上がる途中で2階まで降下し、エレベーター内に一時的に閉じ込められた乗客が気分が悪くなるなどの症状を訴える事故が発生した。
2007年10月16日神奈川県平塚市の西友平塚店で、エスカレーターから大きく身を乗り出した小学生の男児が、手すりと危険防止用の保護板の間に首を挟まれ重体となった(後に回復)。この保護板の製造・設置をしたのはシンドラー社で、形状が建築基準法に違反していた。19日に国土交通省大臣が同社を批判。
2007年10月22日大阪府の西成警察署で、署内に2基あるエレベータのうち1基が、無人のまま最上階の7階まで上昇し、天井に衝突して停止した。20日に点検した際には異常はなかったという。
2010年4月23日東京都渋谷区のJR渋谷駅東口の歩道橋に設置されたエレベータがメインロープ3本のうち1本が破断し緊急停止状態になった。ロープ1本の金属線束8本が全て切れた。国土交通省は全て切れたケースは聞いたことがないとコメントした。
2010年11月16日千葉県柏市の東京大学柏地区キャンパスで、学生18人が乗り込んだ定員19人のエレベーターが扉が開いたまま1階から地下1階まで下降。脱出を試みた学生2人のうち男子大学生1人がひざに軽い打撲を負った。
2012年10月31日石川県金沢市のアパホテル金沢駅前の4階で63歳の女性清掃員が挟まれて死亡。1階へ降りるためにエレベーターに乗り込もうとした際、急にかごが上がり始めたためにつまずいて倒れ、上半身のみかごに入ったまま上昇を続けてかごの床とフロア側のエレベーターの枠に体を挟まれた。その場に居合わせた同僚女性が足を引っ張るなどして救出を試みたが女性清掃員は挟まれたまま動かず、45分後に救出されたものの死亡が確認された。事故が生じたのは2006年6月の事故と同型のエレベーター。
2012年12月20日大阪府大阪市立桃陽小学校(大阪市天王寺区)で小学6年の男子児童2人が約40分間閉じ込められる事故が発生。下降中のエレベーターが途中で停止し、缶詰に。2人にけがはなかった。このエレベーターは国土交通省の指導で前日に特別点検したばかりだった。シンドラー製だが、10月に起きた金沢の事故機とは違う機種だった。しかし、後に、停止の原因はエレベーターの異常ではなく、男子児童2人が下降中に内側から扉を手で開けたことだったと分かった。安全装置が作動して緊急停止したとみられる。
2013年1月5日JR三郷駅(埼玉県三郷市)駅前にあるビルで、「1階でエレベーターのドアが開かなくなった」と119番通報。ビルに入居する耳鼻科医院や美容室の利用者らが約30分間、閉じこめられた。消防隊員が駆けつけ、閉じこめられていた5人を救出。エレベーターはシンドラー社製で、2012年12月4日の定期点検では異常はなかった。
2013年1月6日静岡市駿河区にある高齢者施設「用宗老人福祉センター」で、男性が17分間、閉じ込められた。エレベーターはシンドラー社製。男性にけがはなかった。同エレベーターは2012年8月にも閉じ込め事故が起きている。
2013年2月6日金沢市のマンションで、エレベーターが階の間で停止し、男性が閉じ込められた。男性がシンドラー社に救助を求め、点検会社がドアを手動で開けて救出。男性にけがはなかった。点検会社によると、モーターの回転を制御するセンサーに不具合があり、過去の落雷が原因の可能性があるという。
2013年7月13日午後5時50分過ぎ、 横浜市の横浜市営地下鉄横浜駅に設置されたシンドラー社製エレベーターが故障して、乗っていた5人(男性3人、女性2人)が約2時間閉じ込められた。横浜市消防局などが午後7時50分過ぎに全員を救出。横浜市は、このエレベーターは1998年10月に設置されたものである事と、この事故を受けて当面の運転を停止する事を発表した。