【解説①】映画「メメント」テディはなぜ殺されたのか?時系列で振り返る【ネタバレ】

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クリストファー・ノーラン監督の話題映画「メメント」。


筆者は単純に面白い!と感じましたが、どうやら賛否両論あるようです。


時間の流れが逆さまになっているのが本作の特徴。

しかし時系列に並べるとストーリー自体は非常につまらない…というもの。


いや、これはおそらく時系列がややこしいからおもしろいのでしょう。

ストーリー云々ではなく、ストーリーがストーリーとして成り立つように

ジグソーパズルのように組み立てていくのがおもしろいのです。

テディ殺しのきっかけを時系列で見る

というわけで、今回は難解映画「メメント」のネタバレを

時系列を整理しながら解説していきます。

(すべてを説明するには膨大な量になってしまうので2記事に分けて…)


まず、時系列を整理するためには2つのストーリーを分断して考える必要があります。

本編113分のなかで、1番初めに持ってくるべきはモノクロで写るシーンです。

さらに、時系列を整理する前に知っておきたいことは以下の4点。


・主人公レナードは何者かに妻を殺された

・妻を助けようと犯人を射殺したが、もう1人の犯人(ジョン・G)に殴られ気絶

・そのときの衝撃で記憶障害になる

・妻と時間を失われたことから、復讐するためジョン・G探しをしている


ここからは時系列で解説してみますが、今回はモノクロのシーンにとどめています。


本編冒頭でレナードがテディ(ひげ面の男)を射殺するシーンからスタート。

テディを殺すきっかけがここで分かるのですが、いわば「メメント」の核となる部分です。

レナードのジョン・G探しがはじまる前のストーリー。

モーテルで目覚めるレナード

保険調査員としての過去

レナードは、正体の分からない電話の主に"サミー"という人物の話を持ち掛ける。


レナードには保険調査員として勤務していた過去がある。

そのとき初めに調査したのが"サミュエル・ジャンキス(通称サミー)"という58歳の男だった。

調査を重ねるうち、レナードはサミーの記憶障害に違和感を感じはじめる。

①数分前のことは忘れているが、妻へのインスリン注射の手順は覚えている

②忘れているはずのレナードを見る目が、知っている人を見ているようだった


この2つの疑問によって、レナードはサミーが記憶障害を偽っているのではないかと疑いはじめる。

そしてサミーにあるテストを受けさせ、機能的な記憶障害ではなく心因性であることが判明した。


保険会社は、心理的な病気には保険金を払うことができない。

サミーの妻に「嘘をついているようだ」とは言わなかったが、

妻は「心の病なら治るはずだ」とサミーの記憶を取り戻そうとしていた。

電話の相手からの情報

サミーの妻

明かされない電話主の正体

サミーと妻の話をしているとき、腕に刻まれた【電話には出るな】の文字を見つける。


すかさず「誰だ?」と訊ねるが、途端に切電。

しかしその後何度もかかってくるため、フロントへ電話は部屋に繋がないよう頼む。

そしてもう1度電話の主と話をはじめる。


レナードは「誰も自分を信じてくれない」と話す。それがサミーを信じなった罰であることも。

ジャンキス夫婦の愛

電話主が教えた犯人

レナードは電話の主から

妻殺しの犯人がヤクの売人であることを教えられる。


その名を「ジミー」と言い、麻薬で近づく作戦を決行しようとしていた。


フロントへ向かうと、ひげ面の男が。ギャメル刑事だ。

記録に残すため写真を撮り、愛称である「テディ」と綴った。

テディから向かうべき住所のメモを受け取り、1人で現場へ向かう。

しかしレナードは首を絞めて殺す

写真に撮って記録に残し、ジミーが着ていた服に着替える。

テディが明かした真実

自分自身を殺させたテディの嘘

出典:メメント (字幕版)

動画
今回整理したモノクロシーンにおいては登場人物が少ないですが、本編全体ではもっとたくさんの嘘つきが登場します。

最後の最後でテディを殺した理由が解き明かされました。

しかし同時に、テディが1年間レナードに嘘をつき続けていたことも分かるでしょう。


テディは、事件後記憶障害になったレナードを"利用"していたのです。

警察官であることの真意は分かりませんが、おそらく麻薬取引と何らかの関わりがあるはず。


麻薬取引では常に大金が動きます。

そこにジョン・G探しをしている、10分以上記憶を保てない男はイイ道具になるのです。


レナードを利用したテディの理想はこんな感じではないでしょうか。


レナードに電話で「ヤクの売人でジョン・Gという奴がいる」と吹き込む

 ジミーと、麻薬と20万円を交換する約束を交わす

 麻薬の取引を理由にジミーを廃屋へ呼ぶ

 ジミーはテディから麻薬を買い取るつもりで廃屋へ訪れる

レナードはジミーが妻殺しの犯人だと思い込んで絞殺

 テディはジミーの車から20万円を奪う

レナードはジョン・Gに復讐して満足


この通りにいけばテディは手を汚さず報酬を得られるし、

レナードは念願のジョン・G殺しが叶います。こうして2人とも満足して終える予定だったはずです。


しかし、レナ―ドに殺されそうになったジミーは大金の存在を告白してしまいました。


レナードは当然おかしいと気付きますよね。

直後にテディに問い詰めていますが、テディは簡単に麻薬の取引を暴露します。


これもやはり"すぐに忘れるから大丈夫"という確信があってのことなのでしょう。


テディの「1年前に殺したのに忘れた」という言葉があるということは、

ジョン・Gへの復讐はジミーが2人目であるとも限りません


おそらくテディはこの1年の間に何度もレナードを利用して、

それらしい情報を吹き込んではヤクの売人を殺すよう誘導していたのです。


これまでのジョン・G探しは、すべてテディの目論見のうえで成り立っていました。


しかしこれからのテディ殺しに関してだけは、レナードの嘘によって作り上げられていくのです。

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Sharetube