足立区首なし殺人事件の小野悦男とは

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首都圏で女性ばかりを狙った連続殺人事件が発生し、犯人として小野悦男が逮捕された。しかし17年近くに及ぶ裁判で出た判決は無罪。マスコミは冤罪(えんざい)のヒーローとして報道した。だがその5年後、小野は逃れようのない事件を起こす。


足立区首なし殺人事件

1974年7月3日夜、帰宅途中の千葉県松戸市の信用組合勤務・S子さん(19歳)が行方不明となり、8月8日に自宅近く同市馬橋の区画整理地の土中に彼女の全裸死体があるのをブルドーザー運転手が見つけた。S子さんは強姦されたうえ絞殺されていた。加害者の血液型はO型とされた。

 さらにその2日後、同じ造成地から近くの主婦H子さん(30歳)の遺体も発見された。さらに市内では1人暮らしのOLが殺害され、放火されるという事件も起こっていた。

 この頃、松戸市のほか、東京都葛飾区、埼玉県草加市などでも、1人暮らしの女性が深夜、強姦されたうえで殺害されるという事件が11件起こっていた。被害者の大半は20代で、殺害方法は暴行焼殺9件、暴行穴埋め2件と、同一犯によるものという見方が強かった。


▽首都圏女性連続殺人事件(68年~74年の10件。被害者12人)は以下の通りである。


・68年7月13日、足立区綾瀬のテニスコート近くの草むらで、会社員の女性(26歳)が暴行後焼殺される。


・73年1月26日、東京・北区東田端のアパートで火災があり、会社員の女性(22歳)が暴行されたうえ殺害されているのが見つかる。


同年2月13日、杉並区高円寺のアパートで火災、家政婦(67歳)と男性店員(22歳)が放火により焼死。


・74年6月25日、松戸市の主婦・H子さん(30歳)失踪。


・7月3日、松戸市の信金職員S子さん(19歳)失踪。


・7月10日未明、松戸市の常磐線馬橋駅近くのアパート2階から出火、室内で小学校教員の女性(21歳)が強姦され殺害されているのが見つかる。加害者の血液型はO型。ガス栓が開けられ、放火したと見られる。


・同年7月14日、葛飾区四つ木の小料理店で火災、同店経営の女性(58歳)と手伝いの女性(48歳)が暴行されたうえ殺害される。


・7月24日、埼玉県草加市のアパートで火事。薬局店員の女性(22歳)が強姦されたうえ殺害されていた。加害者の血液型はO型。ガス栓が開いていた。


・8月6日、足立区綾瀬で火事。2階で会社員の女性(24歳)が殺害されていた。やはり強姦殺人で、棟と腹に刃物の傷。加害者はO型からB型。


・8月8日、松戸市馬橋の宅地造成地で、S子さんの遺体が発見される。


・8月9日、埼玉県志木市幸町のアパートで火災。女性(21歳)が強姦されたうえ殺害されていた。加害者はA型かAB型と見られた。


・8月10日、6月から行方不明だったH子さんの遺体が、S子さんの遺体発見現場近くから見つかった。やはり強姦殺人とされた。現金3万円入りのハンドバッグは傍に置かれていた。


このうち葛飾区の事件では後に犯人が検挙されたが、後は未解決である。

 松戸市における連続殺人事件については、土地カンのある建設労働者ら約400人がリストアップされ、疑わしい人物が7、8人いたという。


 9月12日、別件の窃盗罪で足立区清掃作業員・小野悦男(当時38歳)が逮捕される。彼の容疑は6月初めに松戸市内のマンションからカラーテレビ、ネックレスなど50万円相当、また同所の書店から1万円相当の本29冊を盗み出したというものである。この時には、各社とも小野が首都圏連続女性殺人事件の犯人だとして報道していた。小野には放火暴行の前歴があったし、血液型もO型だったからである。また6月から8日にかけて、足立区綾瀬の工事現場で働き、7月初めには松戸市の殺人現場近くで職務質問を受けていたこともわかった。また7月10日の松戸の事件現場近くで発生した同様の手口の未遂現場で見つかった足跡は、彼のものと一致した。


 6年前の事件でさえ、小野の関与が疑われたのは、小野はいずれの現場にも出入りしていたことがあり、手口が似ているという点だった。ただ加害者の推定血液型はO型ではない事件もあり、狙われた女性も年代にもばらつきがあるため、この10件を「同一犯によるもの」と纏めるのは疑問が残る。

出典:小野悦男事件

	

小野悦男逮捕

小野悦男は1936年6月、茨城県行方郡北浦町で6人兄弟の次男として生まれた。兄弟はそれぞれ父親が違うという複雑な家庭で育った。小野の実父は、彼が幼い頃に死んだと聞かされ、顔も知らないという。

 小野が初めて逮捕されたのは16歳の時。無免許運転でだった。それからも窃盗、詐欺などで14回の逮捕と13回の服役を経験した。


 首都圏女性連続殺人事件が起こった74年の5月2日に網走刑務所を出所した小野は、すぐ東京に出た。東京には結婚した姉や妹、弟がいたためで、彼らの家に泊まらせてもらっていた。その後、塗装業や大工仕事を転々とし、清掃職員として働きはじめた。9月12日の逮捕時は妹に家に身を寄せていた。


出典:小野悦男事件

	

出典:YouTube

小野悦男

足立区首なし殺人事件
	

冤罪(えんざい)のヒーローに

事件現場の付近で発生した女性暴行未遂事件現場から発見された足跡の一致、信金OLの遺体から検出された犯人の血液型がO型だったことから、小野を犯人と特定、9月12日に窃盗の別件逮捕に踏み切り、殺人容疑で再逮捕する。逮捕時、マスコミが連続女性暴行殺人事件の犯人であると誤報。その後、検察が殺人事件としては松戸事件の1件しか起訴されなくても、連続女性殺人事件の犯人であるかのような報道を続けた。これが後の冤罪支援運動の火種となる。

逮捕後、物証能力に乏しいと判断した地検はいったん小野を釈放するも、警察は彼の自白によって被害者の所有物が発見できたことや、犯人と小野の類似性(血液型や毛髪など)を強調して再逮捕。1975年3月12日、小野を信金OL殺人で起訴。この起訴と時を同じくして、冤罪支援運動のため浅野健一などの文化人、宗教関係者、弁護士らが「小野悦男さん救援会」を結成。小野の弁護人を担当した野崎研二は代用監獄など自白の信用性そのものを突き崩す弁護戦略を行った。

1986年9月4日、千葉地裁松戸支部で無期懲役判決。

1991年4月23日、東京高裁で松戸市の殺人事件において、自白に信用性が乏しいと無罪判決を言い渡し、松戸市殺人事件の無罪が確定した。別件の窃盗罪と婦女暴行で懲役6年判決が出ていたが、未決勾留日数が参入されたため刑務所に服役することはなかった。16年ぶりの釈放であった。未決拘置期間6068日のうち別件で有罪となった6年を差し引いた3871日を対象として総額約3650万円が小野に支給された。


1991年に無罪が確定した小野は代用監獄や自白偏重捜査を批判する冤罪のヒーローとして冤罪被害の集会などで講演をしていた

出典:首都圏女性連続殺人事件 - Wikipedia

	

冤罪のヒーローから殺人者へ


高裁判決から5年、96年1月9日午前9時45分頃、「足立区六月町の駐車場にマネキンのような黒い物がある」という通報があった。署員がやって来ると、その黒い物は布団にくるまれた女性の首なし焼死体だった。遺体の陰部は切り取られており、パジャマを着ていた。近所の人によると、この駐車場では6日夜から7日未明の間に何かが燃えているのが目撃されていたという。

「小野さんと同居していた女性の姿が最近見えない」

 まもなく、出所して平穏に暮らしているはずの小野の近くに住む人はそう証言した。

 しかし、警察はなかなか手が出せなかった。下手に接触すれば、支援者を中心に再びバッシングを浴びる恐れがあったからだった。このため布団に付着していた体液との照合のために、捜査員は廃品回収業者や日雇い労働者に扮して、小野の吐いた唾液を採取しようとマークし続けた。


「国から大金をせしめたんだ。何年だって飲んでいられる」

 飲み屋でそう話す小野の姿がそこにあった。


 さらに4月21日、都内の公園で遊んでいた女児(当時5つ)が男に首を絞められ失神するという事件があった。男は「もっといい公園に連れていってあげるから自転車に乗りなさい」と別の公園に連れて行った後、いたずらしたという。

 26日、目撃証言から、少女殺人未遂の容疑で小野が逮捕される。小野は犯行を否定していたが、同じ頃、小野の首なし焼死体に付着していた体液と小野のDNAが一致していた。


 5月1日、足立区一ツ家の都営東栗原住宅の小野の部屋の裏庭から腐敗した頭部と切断につかったと見られるノコギリが発見される。切り取られていた陰部は冷蔵庫の冷凍室に入れられていた。

 もはや小野に言い訳はできなかった。支援者たちは裏切られた結果となり、彼の元を離れていった。


 焼死体は茨城県出身の女性(41歳)で、家出をしてきて足立区内の公園で偶然小野と知り合い、同居するようになったという。

 ところが、1月5日に小野は家事をしない女性と口論となり、頭を物で殴ったところ死亡したため、リヤカーでゴミ類と一緒に駐車場へ運び、火をつけて頭部を切り取ったという。

出典:小野悦男事件

	

無期懲役

平成10年3月27日東京地裁は小野に無期懲役を言い渡した。翌年2月9日東京高裁は控訴棄却で無期懲役が確定した。小野は62歳になっていた。この事件で、「22年前の首都圏連続殺人の犯人は小野だったのではないか」とマスコミは連日報道し、無罪判決した裁判官や弁護士にまで、「殺人鬼を野放しにした責任を取れと」との声も高まった。

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