「79歳で死刑判決」広島・岡山独居老人強盗殺人事件の「片岡清」とは
広島・岡山独居老人強盗殺人事件
片岡清
事件当時年齢 72歳(逮捕時)犯行日時 2003年9月28日/2004年12月10日
罪 状 住居侵入、強盗殺人、道路交通法違反、道路運送車両法違反、自動車損害賠償保障法違反
事件名 広島・岡山独居老人強盗殺人事件
裁判焦点
片岡被告は捜査段階で殺意を認めた。2005年4月18日の初公判で、片岡被告は岡山の事件の起訴事実を認めた。
検察側は冒頭陳述で「被告は広島での強盗殺人事件で警察に逮捕されるのを恐れ車で放浪生活をしていた。事件当日、タイヤがパンクし、修理代などを得て放浪生活を続けるため犯行を決意した」と指摘した。
6月10日の公判で、片岡被告は広島の事件の起訴事実を大筋で認めた。
検察側は冒頭陳述で「同居していた元妻の実母の介護のため外出できず収入が無くなり、借金して生活費に充てるようになった。2003年9月末の支払資金が無くなり、被害者を殺害し金を奪うことを決意した」と動機を明らかにした。
片岡被告はその後の公判で、広島の事件について「被害者を脅して金を借りようと思っただけで、殺すつもりはなかった」「首を絞めた後、『落ちた(気を失った)』と思い、すぐ手を離した」と主張を変更、殺意を否定した。
2006年1月25日の論告求刑で検察側は、広島の事件について、内妻が購入した健康器具の支払いができず、金を奪おうとした犯行動機を明かし、「被害者の首を絞めた後、ビニールひもでしばり、布団をかけて発見されるのを防いだ」など確定的な殺意があったことを強調。さらに岡山の事件では、犯行後にもバールなどを購入していたことを挙げ、「人命軽視の傾向が見られ、第3、4の事件が起きていたかもしれない」と再犯可能性を示した。そして「犯罪史上まれに見る凶悪事件」などと約30分にわたり、犯行の残忍性を指摘。「人命軽視の傾向が強く、矯正は不可能」と述べ、死刑を求刑した。
弁護側は同日の最終弁論で、広島事件の殺意を否認した上で、極刑回避を求めた。
松野裁判長は広島での事件について「被害者を一時的に気絶させるつもりだった」などとして殺意を否定し、強盗致死罪を適用。「金銭目当ての自己中心的な動機で二人の命を奪い、広島、岡山両県の高齢者を不安に陥れるなど社会的影響も大きい」としながらも「責任は極めて重大で死刑の求刑にも相当な根拠があるが、被害者の遺族に謝罪の手紙を送るなど、参酌すべき事情もある。矯正措置が全く不可能とまでは言えない」と理由を述べた。
量刑不当を理由に検察側が控訴。
控訴審で検察側は、「犯行の下見をした際に被害者に顔を見られており、殺すつもりで1分以上、両手で首を絞めた」と改めて強盗殺人罪が成立すると指摘。これに対し、弁護側は「当初は被害者を脅して金を借りようと思っていた。騒いだ被害者を黙らせようと思い、片手の指で数秒間、首を絞めただけだ」として殺意や計画性を否定していた。
判決で、小川裁判長は「被告は自己に有利なように供述を変遷させており、一審での供述は信用性に欠ける」と指摘。殺害状況について「被告は被害者が抵抗しても、2~3分にわたり首を両手で強い力で絞め続けた。その後も救命救護の措置を取らず、毛布を頭からかぶせ金品を物色した」と明確な殺意を認め、「強盗致死とした一審判決には事実誤認があった」とした。そして2件の事件は「いずれも経済的窮境を脱するために他人の生命までも踏みにじったもので、動機は理不尽で極めて身勝手かつ自己中心的。同情すべき点はいささかもない」と指弾した。そして「極刑をもって臨むほかない」とし、一審を破棄した。
2011年2月28日の最高裁弁論で弁護側は一審が強盗致死、二審が強盗殺人と認定した広島の事件について「確定的殺意どころか未必的故意さえも認められず、著しい事実誤認がある」として無期懲役が相当と主張。検察側は上告棄却を求めた。
判決理由で桜井龍子裁判長は「金品目当ての犯行動機に酌量すべき点はなく、人命軽視の態度は強い非難に値する。犯行態様も執拗、残虐で、落ち度のない2人の命を奪った結果は誠に重大だ」と指摘、「高齢で、反省や謝罪の態度を示している点などを考慮しても、死刑はやむを得ない」と述べた。
出典:kataokak"