愛知交際2女性バラバラ殺人事件の「兼岩幸男」とは
愛知交際2女性バラバラ殺人事件
兼岩幸男
桑名市で生まれ育ち、高校卒業後自衛隊に入隊し飲食業界へ転職そこで管理職まで登りつめた。私生活において何らかのボタンの掛け違いがあって犯罪を犯したのだろうか?
裁判焦点
被告は2003年10月の初公判で一宮市における殺人事件の起訴事実を全面的に認めている。しかし2004年11月8日の公判で1999年の事件の殺人を否認、死体遺棄は認めた。12月13日の公判で、女性は自殺していたと主張した。さらに「警察官による自白の強要など黙秘権の侵害があった」と訴えた。弁護側は2006年3月24日の公判で、情状鑑定の実施を申請したが、岐阜地裁は却下した。
検察側は「二人の殺害は確定的殺意に基づく計画的かつ残虐な犯行」「執拗かつ残虐な犯行で反省の態度も認められない」と断じた。
最終弁論で弁護側は、「パート従業員は自殺。事前に殺害や遺体の解体、遺棄を計画したこともない」と改めて無罪を主張した。共同経営者殺害については「衝動的、突発的犯行で、犯罪の発覚を恐れて慌てて遺体を処理した」と計画性を否定した。
兼岩被告は最終意見陳述で「いかなる事情があっても、人をあやめたり自殺をさせたりする状況になってしまったことについて釈明はない」と述べた。
土屋裁判長は「短絡的、自己中心的で身勝手な犯行で、情状酌量の余地はない」「確定的殺意に基づく残酷かつ冷酷な犯行。社会に与えた影響は大きく、極刑をもって償うしかない」と述べた。被告側の自殺主張に対しては、「遺体を切断して遺棄し、誰にも言わないことが、自らの行為を隠ぺいするためであるのは社会通念上明らか。捜査は供述を強制するものではなく、信用性に疑いを生じさせない」と起訴事実を認定した。また「黙秘権の告知も受けず、警察官に自白を強要された」として争っていた捜査手法については、「黙秘権の告知がなくても任意性に問題はない」とした。
2008年2月20日の控訴審初公判で、弁護側は、被害者の女性のうち1人は自殺で、犯行時間などから被告に殺害は無理だったなどとして「一審判決は事実誤認」と主張、量刑も不当と訴えた。検察側は控訴棄却を求めた。
7月9日の弁論で、弁護側は1人目の殺害時間について、「認定があいまいで、殺害に合理的疑いがある。自殺をうかがわせる客観的証拠もある」と主張。2人目の殺害も「相手が包丁に手をかけたので、やむなく首を絞めた。正当防衛か過剰防衛だ」「被害者は包丁を持ったまま体当たりしており、殺害行為を招いた落ち度があった」と訴えた。また取り調べの違法性を指摘し、「自白の証拠能力は認められない」と述べた。
一方、検察側は自殺だったとする供述に、「自然な供述変遷ではない。罪を免れるための虚偽」と反論。2人目の殺害も、「包丁を持っていたとは控訴審まで言わなかった。卑劣、狡猾で、更生の可能性はない」と主張した。「刑事責任を免れるために虚偽の供述を繰り返しており、一審の時よりも反省心が欠如した」と控訴棄却を訴えた。
片山裁判長は判決理由で「3年9カ月の時を経て1度ならず2度までも交際中の女性を殺害しており、自己保身のためには手段を選ばず、他人の生命を軽く見る態度が顕著。社会にとって極めて危険な犯罪的傾向を有している」と指摘した。そして「遺体の損壊にまで及ぶなど、その態様は確定的殺意に基づき冷酷かつ残忍」と述べた。2003年の事件における正当防衛主張に対して片山裁判長は「重要な事柄を控訴審でようやく主張し始めること自体不自然極まりない」と退け、捜査段階の自白調書も「任意性が認められる」とした。被告側の無罪主張に対しては、信用できないと退けた。
2011年11月1日の上告審弁論で、兼岩被告の弁護側は蟹江町の女性について「殺害ではなく自殺だ」と主張。一宮市の女性についても「刃物を持って襲ってきたため首を絞めた。正当防衛か過剰防衛が成立する」と訴え、無期懲役が相当とした。検察側は上告棄却を求めた。
判決で那須裁判長は「不倫関係にあった女性を殺害し、3年9カ月後に再び同様の事件を起こしており、犯罪傾向は顕著だ。いずれも冷酷、残忍な犯行で動機に酌量の余地はなく、2人の命を奪った結果も重大。被害者に特段の落ち度もなく、死刑はやむを得ない」と指摘した。
出典:kaneiway"