元マネージャーが明かす 天才・横山やすしの素顔とダウンタウンの悔し涙
早いもので、横山やすしさんが亡くなって今年でちょうど20年になる。1984年の春、わたしは創業以来3人目の女性マネージャーとして、吉本興業に入社した。
新卒で担当したのが、なんと横山やすしさん。
押しも押されもせぬ大御所芸人、芸能界やテレビ局の偉い人からも恐れられていた人物だ。
大声で怒鳴りつけられる、朝も夜中も関係なく電話で起こされるなんて当たり前。とくに相方の西川きよしさんが参院選に立候補したときは、横山さんが荒れて荒れて、大変だった。
番組に泥酔状態でやってくる。
わたしが何を言っても「じゃかましい」と怒鳴る。
しまいには、吐いて倒れる。
突然、マネージャーのわたしが大勢のマスコミを前にして記者会見に出ることもあった。書けないような苦労もたくさんあった。
とはいえ、やすしさんは、表舞台に立ったら天才で、怖い面もあったけど、素顔はとてもかわいいトコロのある人。わたしは大好きだった。
ただ、機嫌がいいときと悪いときの差が激しかった。みんなに恐れられていた。
最後のほうは、人が寄り付きにくくなってもいた。
ある事故をきっかけに吉本をやめると、潮が引くように人が去っていった。
一方、相方のきよしさんは、初めて会った新入社員の女の子であるわたしにも、「よろしくな」と深々と頭を下げて握手してくれるような人だった。
「こんな大物が、わたしに」と感激したことをいまでも覚えている。
やすしさんが仕事に遅れてきたり、暴言を吐いたりしてまわりに迷惑をかけても、きよしさんが代わりにおおらかに「すまん」と言えるような、そんな人だった。
きよしさんは、社員やタレント、年下年上、ほんとうに誰からも好かれていた。
この二人は、日本の芸能史に残る突出した才能をもっている人たち。だから普通の人と同じではない。ただ、それでもなお、思う。
人は、不機嫌な人には近づきたくないのだ、と。
やすしさんのように特別な才能がある人や抜きんでた力のある人は、たしかに人は機嫌をとってくれる。
ただそれだって、不運が訪れ、不遇のときは、機嫌をとってくれなくなる。
基本的に、他人は自分の機嫌をとってはくれないのだ。
このことは、忘れがちだが覚えておきたい。
ましてや、わたしたちの99パーセントは、ふつうの人間だ。
「不機嫌な人に近づきたくない」
「他人は自分の機嫌をとってくれない」
このことは、肝に銘じておいたほうがいい。
そして吉本興業で、もう一つ大切なことを教わった。
それは、不運や苦労は自分しだいで「笑い」に変えることができること。
たくさんの芸人さんを間近で見てきた。
売れている芸人さんでもみんないろんな経験をしていた。
初めて出たテレビの役がうつむいて死んでいる死体の役だった明石家さんまさん。
売れていない時に横山やすしさんにボロクソに言われて涙ぐんだダウンタウン。
「女性だから」といっぱい嫌がらせをされた今いくよ・くるよさん。
本当は、みんなつらいことや悲しいことがいっぱいあったはずなのに、ごきげんだった。
不幸を「笑い」にしていた。
わたしは、不幸は自分しだいで「笑い」に変えることができることを教えられた。
だから、わたしは人生において「笑い」って大切だと感じている。
「笑い」は、希望だと思っている。
人が笑顔でいてくれたら、安心や愛情を感じる人は多い。
つらいとき、苦しいときでも、笑顔でいることが苦境を脱するきっかけになったりもする。
だから、意識して、努力して笑顔でいること、ごきげんな自分をつくることが大事。
自分で自分の機嫌を取る力、言い換えると「ごきげん力」が大切なのだ。
わたしは、医者でもカウンセラーでもない。
けれども最初に入った吉本興業で、このことを教えてもらったことは、今も大きな財産。
出典:元マネージャーが明かす 天才・横山やすしの素顔とダウンタウンの悔し涙〈dot.〉 (dot.) - Yahoo!ニュース
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元マネージャーが明かす 天才・横山やすしの素顔とダウンタウンの悔し涙〈dot.〉(dot.) - Yahoo!ニュース http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160304-00000010-sasahi-life …