地震、伊方原発近くの断層で発生も 予測覆す震源域拡大で懸念高まる
▽関連は不明
「過去100年間、日本の内陸で起きたM6・5前後の地震は(大きな地震の後、小さな地震が続く)本震―余震型だった。今回もそう推移すると思った」。16日午後の記者会見で、気象庁の橋本徹夫地震予知情報課長は語った。気象庁は14日の会見で「1週間は震度6程度の余震に注意を」と呼び掛けたが、「阿蘇や大分に拡大するとの想定はなかった」と橋本課長は振り返る。
震度1以上の地震は15日朝から1時間に4回以下まで減っていたが、16日未明に急増。午前4時台には14回に達した。午前中に震度6強が2回、6弱が2回と、大きな地震が起きた。
熊本、阿蘇、大分。震源は布田川断層帯を北東方向に延長したほぼ一直線上に並ぶ。青木元・地震津波監視課長は「何らかの関係はあると思うが、どういう関連かは分からない」と話す。
▽導火線
なぜ地震の発生は拡大したのか。産業技術総合研究所の吾妻崇主任研究員(変動地形学)は「大きな地震が起きると、地殻変動や地震波によって、周辺で地震が誘発されることがある」と説明する。名古屋大の鷺谷威教授(地殻変動学)も「もともと力がたまっていて、(動く)準備はできていた。その導火線に火が付いたような形だった」とみる。
大分の地震を引き起こしたのは「別府―万年山(はねやま)断層帯」とみられる。熊本側の断層帯とどの程度強い関係にあるかははっきりしないが、一続きの構造だとみられている。
一方、熊本―大分の延長線上には、本州を横切るように走る中央構造線断層帯があり、四国電力伊方原発が立地する愛媛県の佐田岬半島と並走している。
地震の連鎖が四国まで及ぶかどうかについては、吾妻研究員は「16日未明のM7・3の地震が直接影響するとはあまり考えられない」と否定的だ。だが「別府―万年山断層帯でもっと大きな地震があれば、連鎖が起きる可能性はある」とする。
▽小規模噴火
もう一つの懸念は阿蘇山への影響だ。16日は午前4時前に周辺で震度6強が発生。午前8時半には小規模噴火があった。
気象庁は現状について「周辺の火山活動に特に活発化している様子はない」と説明する。ただ、阿蘇火山博物館(熊本県阿蘇市)の須藤靖明学術顧問(火山物理学)は「今のところ灰を出すだけだが、それで済むかは分からない」と危ぶむ。
須藤顧問は「熊本から大分まで、九州を横切る大きな断層の一つで地震活動が活発化したように見える。その真ん中にあるのが阿蘇山だ」と指摘。一連の活動の影響により「中岳第1火口で昨年まであった活動がぶり返す可能性がある。2年ほど前に見つかったマグマだまりには、まだマグマが残っており、それが出てくるような噴火になるかもしれない」と話す。
出典:地震、伊方原発近くの断層で発生も 予測覆す震源域拡大で懸念高まる