芸能人だけではない、一般人も不謹慎狩りの対象になって批判されてしまう
災害時には、人の神経が過敏になっているせいか、攻撃性が高まってしまうこともあるようです。不謹慎狩りが、目立つのもそのせいかもしれません。
不謹慎狩りとは
不謹慎狩りとは、災害が起こった後の自粛ムードの中、ネット上の言論に対して「今、それは不謹慎だろ」と批判する行為のことです。中には叩かれても仕方のない言論をしている方もいるかもしれませんが、その多くは災害とは無関係なSNSやブログへの投稿についての批判です。
災害とは関係ない話をしても叩かれるとなると、SNSそのものを利用できなくなってしまいますので、行き過ぎた不謹慎狩りは大きな問題となるかもしれません。
最初のターゲットは芸能人たち
・藤原紀香さん⇒応援のコメントを書き込んだところ「自分に酔ってる」「地震は天罰と言いたいのか」と反発を招き、問題箇所を削除・長澤まさみさん⇒笑顔の写真をインスタグラムにアップしただけで「不謹慎だ」の大合唱
・矢口真里さん⇒募金活動についてつづっただけで「出しゃばるな」
・西内まりやさん⇒軽いノリのツイートが炎上。「不快な気持ちにさせてしまっている方々ごめんなさい」と謝罪
モデルの紗栄子の場合、被災地に500万円寄付したことを銀行の振込受付書の画像つきでインスタグラムに掲載したところ、「自分の好感度上げたいだけだろ」「金額を言うのは下品。偽善と売名のにおいがする」などといった批判の声が殺到。中には「(前夫の)ダルビッシュ有からむしり取った月500万の養育費の一部だろ」と誹謗中傷する意見もあった。芸能人や有名人を標的にした「不謹慎狩り」は他にもある。歌舞伎俳優、片岡愛之助と結婚したばかりの女優、藤原紀香は16日のブログで「どうかこれ以上、被害が広がりませんように 火の国の神様、どうかどうか もうやめてください」とエールを送ったが、このブログを読んだ一部のネットユーザーから「自分に酔ってる」「地震は天罰と言いたいのか」と反発を招き、ブログの一部を削除した。
不謹慎狩りをされる方の意見
「何気ない言動が、熊本の人にはダイレクトに捉えられる。豪華な食事をアップすることなどは、一般人から見ると考えられない。『常識がないんだなぁ』と思ってしまう。東日本大震災の時は、ずっと同じCMが流され、全体的に自粛感が感じられた」(44歳/女性/大阪府)「災害時に楽しむことを注意するのは当たり前」(39歳/男性/東京都)
「今の状況で笑顔の写真を撮ることは、思いやりがない。見た人が不快になると思う」(36歳/女性/愛知県)
「売名行為や偽善にしか見えないタレントのわざとらしい行動は、見え透いていて不快極まりない」(56歳/男性/大阪府)
「人の不幸を喜んでいるように見える」(32歳/男性/東京都)
「笑顔の写真を撮ること自体は構わないと思うが、それを誰でも見ることができるネットにアップするのは理解しがたい」(36歳/女性/北海道)
「自分が被災者と同じ立場なって考えることが大切だと感じる。不謹慎な言動は、相手の状況や大変な思いをされている方々に対して、失礼だと思う」(21歳/男性/大阪府)
出典:「不謹慎狩り」約3割が理解、災害時に自粛しないと炎上するわけ|あなたを悩ます「めんどい人々」解析ファイル|ダイヤモンド・オンライン
一般人も不謹慎狩りの対象になってきた
2016年4月22日、ニュースサイト「ハーバービジネスオンライン」にこんなQ&Aが掲載された。質問を寄せたのは、東京都に住む27歳の読者。【『ここはあえて平常心で』と思って、フェイスブックにケーキの写真を投稿をしたら、友達からメッセージで『被災地の人が苦しんでいるときに、そんな投稿をするなんて信じられない! 人格を疑う!』と罵倒されました。自分としては『それは違うだろ』という思いがあるので削除はしていませんが、友達を不愉快にさせたのは悪かったと思ってます。でも、どう謝ればいいのかわかりません。その友達は、被災地に身内や友達がいるわけではないようです】
ケーキの写真を投稿しただけなのに、被災者の存在を理由に批判される。しかし、批判をする人に被災者の知り合いがいるわけではない。大きな災害の後、ネット上でよく見られる「不謹慎狩り」の典型的な例と言えるだろう。これに対し、コラムニストの石原壮一郎さんは、「友達」は平常心を失っていると分析し、
【『何もできない自分』がもどかしくて気が立っていたのでしょう。あなたにしてみれば完全にとばっちりです。なのによくわからないけど謝らなきゃと思っているあなたは、きっといい人に違いありません。とくに謝る必要はないと思います」】
とアドバイスした。
「不謹慎狩り」をするネットユーザーは、揶揄の意味も込めてしばしば「不謹慎厨」と呼ばれる。熊本地震の直後、芸能人のSNSやブログに執拗な批判を加えていた「不謹慎厨」。一般人同士でもそうしたやり取りが広がっているようで、ツイッターで「『焼肉食べ放題行ってきた~』とか載せるの今この状況でやめようよ」との声もみられた。
反射的に謝ってしまうと、自粛ムードに拍車がかかる可能性がある
やめたほうがいいのは、反射的に謝ってしまうことだ。不愉快なことを言ってごめんなさい。先ほどの写真と投稿は削除します。もちろん悪いと思ったなら謝るべきだが、非がないなら謝らないほうがいい。謝ってしまうと、"自粛ムード"に拍車をかけてしまうからだ。笑顔の写真が叩かれて有名女優が謝った。そうすると、笑ってはいけないことになってしまう。認めてしまう。
出典:「不謹慎狩り」を引き起こしているのは、悪意ない小さなつぶやきかもしれない しかし、残念ながら世界は一つではないわけですが、そのことを、公に表明することが、嫌われるようなのです。 「不謹慎狩り」のターゲットになることを避けるためには、今、世間がどのような空気の中にいるか、ということを察知し、それに合わせればいいのですが、そのようなことをできない、ある意味ではナイーヴな、「よい人」こそが、「不謹慎狩り」のターゲットになってしまっているような気がしてなりません。
行き過ぎた不謹慎狩りは、イジメと同じかもしれない
記事ではITジャーナリストの井上トシユキさんが下記コメントをされていました。「“不謹慎狩り”ですね。東日本大震災の時にもありましたが、有名人の不謹慎発言を狙って攻撃する人がいるんです。だから反応が早い。書き込んでいる人は意外と普通で、出勤途中や休憩中にネットをチェックしては『いい格好しやがって!』と、ウサ晴らしに書き込んでいることが多いんです」
「不謹慎狩りはヘイトスピーチと同じで、放置すればつけ上がる。ひどい書き込みには運営側に情報開示請求を行い、書き込んだ人物を特定し、法的措置を講じるなど何らかのアクションを起こすことが有効かもしれません」
あまりにひどい場合は、法的措置も視野に入れるべきかもしれません。一方で、「不謹慎狩りをする人の根底には優しさがあるかもしれない」という意見もあるようです。
不謹慎狩りの根底には優しい気持ちがあるかもしれない
爆笑問題の太田光さんは、以下のように仰っているようです。
太田は「ちょっと、みんな気が立ってる」「『自分は、なんにもしてないな』っていう気持ちになるのもわかる」と理解を示した。続けて、太田は「こういう若い子たちって、一日中テレビ見て『自分もやんなきゃいけないのかな?』って思うけど、『自分には何もできない』っていう気持ちがどんどん溜まっていくと、どっか吐き出したくなるっていうか」と中傷する理由を推測したのだ。
太田は「でも本当は大半、なんにもできないで当たり前じゃないですか? 自分の生活で目一杯なわけだから、みんな。誰もがなんかやってるワケじゃない」「根底には優しい気持ちとか、日本人って真面目だから、できない、もどかしい自分を責めてる気持ちが他に行っちゃってるような気もして。ちょっと切ないような気持ちもある」と神妙な面持ちで語っていたのだった。
不謹慎狩りをしてしまう人の心理状態
○ともかく誰かを攻撃したい人一種の遊びでしょう。乱暴な言葉で、誰かを攻撃したいと思っている人がいます。相手は、本当は誰でもよく、みんながそれに乗ってくれて、騒ぎ、祭りになれば大喜びです。
○自称正義の味方
今は、自粛すべきだ、我慢すべきだ、それこそ正義だと感じている人がいます。そこには、さまざまな心理が働くでしょうが、人にも押し付けます。自粛に反している人には、攻撃します。ネット上でトラブルを起こす人は、しばしば「正義の味方」です。
○共感疲労
膨大な報道を見ているうちに、被災者に共感しすぎて心身の不調をきたすのが、共感疲労です。不眠、頭痛、食欲不振、抑うつ気分などに襲われます。さらに、他の人がまるで全く共感していないように楽しく振舞っていたり、普通にしていると、怒りが湧いてきます。
出典:過剰な自粛と「不謹慎狩り」の心理:本当のチームジャパンとは:熊本地震(碓井真史) - 個人 - Yahoo!ニュース
最も肝心な被災地の方々の声
「(芸能人の支援は)よかもんはよかもん。嬉しかですよ」(益城町の70代女性)「(被災地で)コロッケさんに会ったんですよ! そうやって気遣って回ってくれるって本当に嬉しい。熊本の人、誰も売名なんて気にしてないですよ」(阿蘇市の30代女性)
「子供たちが地震でかなり落ち込んだんです。だけど、昨日、中居クンがきとったらしいけど、子供たちは大喜びでしたよ。被災者が芸能人を叩くんだったら筋が通りますけど、よそ者には関係ない。“叩くな、バカヤロウ”って感じです」(東区の40代男性)
一般の方々の考え
最後に
意見が偏らぬように、不謹慎狩り賛成の声をTwitter上で探しましたが、私には探し出せませんでした。一方の不謹慎狩りを批判する声は無数にあったことから、多くの方は「過度な不謹慎狩り」は止めるべきだと考えているのかもしれません。