ヒトラーがモノマネ芸人として大スターに?ショッキングな風刺映画「帰ってきたヒトラー」
ギャップに笑い、まっすぐな情熱に惹かれ、正気と狂気の一線を見失う―。
ヒトラーの姿をした男が突如街に現れたら? 「不謹慎なコスプレ男?」顔が似ていれば、「モノマネ芸人?」。 リストラされたテレビマンに発掘され、復帰の足がかりにテレビ出演させられた男は、 長い沈黙の後、とんでもない演説を繰り出し、視聴者のドギモを抜く。自信に満ちた演説は、かつてのヒトラーを模した完成度の高い芸と認識され、 過激な毒演は、ユーモラスで真理をついていると話題になり、 大衆の心を掴み始める。しかし、皆気づいていなかった。 彼がタイムスリップしてきた〈ホンモノ〉で、70年前と全く変わっていないことを。 そして、天才扇動者である彼にとって、 現代のネット社会は願ってもない環境であることを―。
ストーリー
1945年に自殺したアドルフ・ヒトラーは、自殺直前の記憶を失った状態でベルリンの空き地で目を覚ます。ヒトラーは戦争指導に戻るため総統地下壕に向かおうとするが、ベルリンの人々が自分を総統と認識していないことに疑問を抱く。ヒトラーは情報を得るために立ち寄ったキオスクで、自分がいる時代が2011年のベルリンであることに気付き衝撃を受け、空腹と疲労が重なりその場に倒れ込んでしまう。倒れ込んだヒトラーは、キオスクの主人に介抱され目を覚ます。キオスクの主人はヒトラーを見て「ヒトラーそっくりの役者かコメディアン」だと思い込み、「店の常連の業界人に紹介するから、しばらく店で働いてくれないか」と頼み込んだ。地位も住処も失ったヒトラーは、生活の糧を得るため仕方なくキオスクで働き始めるが、数日後、キオスクの主人に紹介されたテレビ番組制作会社のゼンゼンブリンクとツヴァツキのスカウトを受け、コメディアンとしてトーク番組に出演することになる。ヒトラーはトーク番組でトルコ人を罵倒する演説を打つと、その映像がYouTubeにアップロードされ、一躍人気コメディアンとなる。
現代に蘇ったヒトラーが笑わせ、ドイツ社会の現実をえぐる傑作風刺劇
私をいちばん驚かせたのは、おそらくこの作品の大胆さだ。現代にタイムスリップして来たアドルフ・ヒトラーが、モノマネ芸人として大ブレイク!? このアイディアでどれだけ笑わせてくれるのかと疑ってかかっている人も多いと思う。しかし、これがもう全面降伏するしかない、いろいろな意味でとんでもなく面白い傑作なのだ。ドイツ人が書き、ドイツでベストセラーとなったことで世界中を驚かせた原作は、ヒトラーの一人称で展開される意欲的で強烈、勇敢にして芸の細かい風刺小説。これはこれですごいのだが、このまま映画にしても小説は超えられない。監督は賢明にも映画という媒体の特性を最大限に活用し、小説の本質を映像的視点からエンターテイニングに語り直すという策をとった。
とりわけ理に適っているのが、物語にドキュメンタリーとロードムービーのレトリックを取り入れるというアイディアだ。ドイツの各地に実際、このヒトラーを放り込み、崖っぷちのTVマンが撮っているという設定で大衆のガチなリアクションをゲリラ撮影。すると、ナチのトラウマから自由な若い世代が大勢、「ハグして~」「まじウケる~」などと言いつつ自撮り&ツイート!
【「帰ってきたヒトラー」本日公開!21世紀の諸君、ヒトラーが帰ってきましたよ】現代にタイムスリップしたヒトラーが、まさかのモノマネ芸人として大ブレイク!?笑えるけど、笑いごとじゃない→ http://eiga.com/l/iDeyA pic.twitter.com/XAseWxTuwZ