<・・・改憲勢力の分析になるのか?> 参院選 「改憲勢力3分の2」が焦点? メディアが報じない5つのファクト、1つの視点・・・まだまだ改憲までの遥かな道程・・・憲法改正の4つのハードルのうち、1つも超えていない

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「改憲勢力が3分の2を上回るかが焦点」ー参院選でメディアがまた横並びで、こんな決まり文句を唱えている。

たとえば、毎日新聞は7月6日付朝刊1面トップで、参院選終盤情勢として「改憲勢力2/3の勢い」と題した記事を掲載。記事の冒頭には「安倍晋三首相が目指す憲法改正に賛同する自民、公明両党、おおさか維新の会などの改憲勢力は・・・」と書かれていた(毎日新聞ニュースサイト)。

一体いつから、どんなファクトに基づいて、公明党が「安倍晋三首相が目指す憲法改正に賛同」したと報じているのだろうか。自民党とおおさか維新の改正草案を読み比べたことがあるのだろうか

まだまだ改憲までの遥かな道程・・・憲法改正の4つのハードルのうち、1つも超えていない

憲法改正のハードルは、「各議院の総議員の3分の2以上の賛成による発議」と「国民投票での過半数の賛成」の2つある、と一般に解説されている。しかし、国民投票に付する「改正発議」に至るまで、少なくとも2つの大きなハードルがあることを押さえておかなければならない。「審議する改正項目の確定」と「改正案の作成、提出・発議」である。

現在は、このうち1つ目もクリアしていない。参院選後の憲法改正論議は、文字通り一からのスタートとなる。

なお、改憲プロセスを安倍政権が主導できるかのような印象を与える報道も目立つが、内閣は、憲法改正原案を提出できないなど実際に関与できる部分はほとんどない。(*4)

(1) 改正項目の確定

まず、どの条文について改正発議の対象とするのか、を決めなければならない。各党や憲法審査会で議論が行われるとみられる。

(2) 改正原案の作成~提出・発議(第一発議)

改正項目が決まれば、原案を作成し、審議入りのための発議が行われる。

具体的には、「合同審査会」の設立→改正原案「骨子」の作成→憲法審査会への勧告→原案の条文起草→憲法審査会長が原案提出→憲法審査会で審議入りというルートか、議員の原案提出→衆院100人以上または参院50人以上の賛成での発議→審議入りというルートが考えられる。

(3) 改正原案の審議・修正を経て、国民への改正発議(第二発議)

原案は衆参の憲法審査会の審議を経て、本会議に上程される(衆参の同時審議はできない)。最終的に衆参それぞれの総議員の3分の2以上が改正案に賛成すれば、国民投票に付される。

(4) 国民投票

2~6ヶ月間のキャンペーン期間を経て国民投票が行われる。有効投票の過半数が賛成すれば、改正となる。

出典:参院選 「改憲勢力3分の2」が焦点? メディアが報じない5つのファクト、1つの視点(楊井人文) - 個人 - Yahoo!ニュース

	

公明のスタンスは民進に近い 生活の改憲案は具体的

メディアが当たり前のように使っている「改憲勢力」という表現。自民党、公明党、おおさか維新の会、日本のこころを大切にする党(以下「こころ」)の4党を指しているが、それぞれ憲法改正に関する立場にはかなり違いがある。まず、各党が改憲に積極的かどうかは、参院選公約に限らず、党是や過去の発表も含め、具体的な改憲案を示しているかどうかを見なければならない。

自民、こころ、おおさか維新の3党は、それぞれ具体的な改正案を提示しており、改憲に前向きな勢力といえよう。ただ、おおさか維新の改正案は、教育無償化、統治機構改革、憲法裁判所の設置の3項目であり(マニフェスト、憲法改正草案)、自民党の憲法改正草案とも、こころの憲法改正草案とも共通項がない。

公明党は、従来から「加憲」という立場だが、具体的な改正項目は示していない。むしろ「改正ありき」「期限ありき」ではないとわざわざ強調し、慎重なスタンスだ(参院選:憲法改正)。自民党よりむしろ民進党の立場に近いのではないか。

民進党は、参院選の公約では「平和主義を脅かす9条改正に反対」と掲げているが、もともと基本政策合意で憲法改正を目指すと明記しており、公約でも「未来志向の憲法を国民とともに構想する」と言っている。具体的な改正項目には言及せず、早期の改憲に積極的でないとみられるが、「改憲自体に反対」の立場でないことも明らかだ。(*1)


一方、生活の党と山本太郎となかまたち(以下「生活」)は、政策項目として「時代の要請を踏まえ、国民の合意があるならば、国民の権利、国連の平和活動、国会、国と地方、緊急事態等の関係で一部見直し、加憲する」と6つの改正事項に踏み込んでいる。「国連の平和維持活動に自衛隊が参加する根拠となる規定の整備」と9条改正にも言及している。ホームページにも「時代や環境の変化に応じて必要があれば改正すべき」と明記し、詳細な考え方が示されている(憲法改正についての考え方、Q&A)。もともと改憲論者だった小沢一郎共同代表の考えが表れていると思われるが、党是としては、憲法改正について多くを語らない公明よりも生活の方がよほど前向きにみえる。(*2)

新党改革も党是に「新しい時代にふさわしい憲法改正を行う」とあり、公約では憲法改正が必要な「廃県置州」を提唱し、「時代にふさわしい憲法改正を まずはもっと議論を」と訴えている(改革八策、改革の公約p.42)。

こうしてみると、憲法改正に積極的といえるのは自民、こころ、おおさか維新の3党。具体案を出している勢力は生活を含めて4党。民進、公明、改革は、具体案は出していないが必要とあれば何らかの改憲を認める立場であり、これらを含めて広義の「改憲勢力」と呼べば、とっくに衆参両院で「3分の2」を超えている。改正項目や内容について一致点が見出されておらず、改正発議の前提条件が整っていない点では、広義の「改憲勢力」7党も、メディアが「改憲勢力」と称する4党も、同じなのである。

出典:参院選 「改憲勢力3分の2」が焦点? メディアが報じない5つのファクト、1つの視点(楊井人文) - 個人 - Yahoo!ニュース

	

宮崎:憲法審査会の前に自公維で改憲案が作成される。松井氏も自民党改憲案に反対と明言。安倍氏は自民党案をたたき台にすると仰り意見の違いが明確に。憲法審査会が長いプロセス
山口:自民がどこまで譲るか。道行きが長いから敢えてスタートを手前に引いて見せた

	

国民投票法が比較的近年になってできた時、煽動で改憲されてしまうことについて懸念は表明されていたが、国民からのコンセンサスを得たとは言い難いプロセスで決まったのは記憶に新しい。直接民主制は欠陥のあるシステムだ。やるならデマゴーグを犯罪として厳罰に処せる形にしなければならないだろう。

	

反対派の改憲に国民投票というプロセスがあるのを理解していない人の多さ

	

国民投票で雌雄を決した方がよいというのも一理あるし、どちらにせよ今からは嫌でもそうなるのだろうけど、そこに至るプロセスが容易に想像できるから怖い。あの手この手で微妙に文言を弄り、改憲案と実質的な中身は変わらないが器が違うように見えるものを提示してくるかもしれない。怖いなあ。

	

今、改憲プロセスを知りたい方はぜひ。三分の二という言葉のマジックに踊らされず、何を見るべきかがわかる良記事。
選挙の結果を経て、危惧するのは、すぐに改憲になるとか、そういったことではなく与党内の多...

	

今回、国会の改憲勢力が2/3超えたって憲法がすぐに変わる訳じゃない、憲法審査会もあるし、国民投票もあるから大丈夫と言う人もおられるが、民主主義を軽視する勢力が権力を握っている中で、民主主義というプロセスを楽観的に捉えすぎるのは余りにもナイーブで危険だと思う。いつか来た道、だ。

	
	




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Sharetube