自主避難者の住宅支援を打ち切る政策決定は被災者の切り捨て、露骨な棄民政策。

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露骨な棄民政策を急ぐ政府の真意を明らかにしたかった。

──原発事故後、国による避難指示のない地域から避難している多くの「自主避難者」にとっては、借り上げ住宅の無償提供(注)が避難の命綱です。しかし、福島県は今年度末に無償提供打を打ち切ると発表しています。

(注)借り上げ住宅の無償提供……災害救助法により、被災者に無償で提供される住宅。応急仮設住宅(プレハブなど)と違い、既存の民間仮設住宅や公営住宅などがあてられるため“みなし”仮設とも呼ばれる。国の避難指示を受けて避難している強制避難者の多くが福島県内の仮設住宅で避難生活を送る一方で、自主避難者の多くは県外のみなし仮設で避難生活を送っている。

日野 しばらくの間は家賃の何割かを国庫負担するという移行制度が打ち出されましたが、そもそも原発事故の避難者は自分の都合で避難したわけではない。賠償もほとんどない自主避難者にとっては、借り上げ住宅の無償提供は避難生活のたった一つの後ろ盾であり、避難者としての証です。なのに、それを取り上げようと言うのです。

 避難者としての証をとりあげられようとしているのは、強制避難者も同じ。国は2017年度末をめどに、年間被ばく線量20ミリシーベルトを下回る地域の避難指示を解除する方針を打ち出しました。すでに、田村市都路地区、川内村、楢葉町、葛尾村で避難指示が解除されました。7月12日には、南相馬市の一部でも避難指示が解除される見通しです。解除の見通しのつかない地域からの避難者に対しては、賠償金による住宅購入や、復興公営住宅への住み替えが進められています。国が重視しているのは、避難者が新しい住処を得ることではありません。仮設住宅から退去させることです。 2013年9月に東京五輪の開催が決定した後、自公政権は復興加速化指針を発表しました。それ以降、国はあからさまに避難の強制終了へ向けて動きだしたのです。

出典:毎日新聞記者・『原発棄民 フクシマ5年後の真実』著者・日野行介さんインタビュー|通販生活®

	

「未曾有の東電福島第一原発事故から5年。政府は、原発避難者を消滅させようとしている」。

国と福島県は2017年3月末までに、原発避難者の住宅支援を打ち切ると表明。約11万人とも言われる福島県内外の避難者たちに、事故前に住んでいた自宅に戻るのか、あるいは新天地で生きるのかを選ぶよう迫っている。これは避難という状態にとどまることを認めず、実質的に避難者という属性自体を「消す」ことを意味している。


2015年春夏、政府は「復興加速化」そして「自立」を前面に、原発避難の終了を迫る政策を打ち出した。最も線量の高い「帰還困難区域」(年間50ミリシーベルト超)を除いて、2017年3月末までに避難指示を解除し、その1年後までに月10万円の精神的損害賠償を打ち切る方針を決めた。


そして福島県も同じ2017年3月末までに、自主避難者や解除後の区域からの避難者への住宅提供を打ち切る方針を示した。さらに自主避難者の支援を目的とした「子ども・被災者生活支援法」についても、支援を「撤廃・縮小」する方向性を打ち出した。原発事故は自然災害とは異なり、原因者(加害者)が存在する人的災害である。避難生活を支える住宅と収入を提供する責任があることに異論はあるまい。


原発避難について考えるとき、もちろん当事者一人一人がどう考えているかは大事だ。だが政治、そして社会が一人一人の意思、選択を大事に取り扱っているか、避難者の意向をくみ取り、制度として反映しているかを見定めていく必要がある。それが伴わないのは「棄民政策」に他ならない。原発避難者の生活基盤である「住宅」について、政府がどう決めてきたのか、そして避難者たちの思いがいかに踏みにじられてきたのか。政治家や役人たちによる被災者切り捨てのあざとい実態を、気鋭の記者が徹底追及する。

【目次】●序章 避難者漂流●第1章 原発避難者とは誰か●第2章 避難者を苦しめる不合理な住宅政策●第3章 みなし仮設住宅―無責任の連鎖●第4章 官僚たちの深い闇●第5章 打ち切り―届かぬ声●終章 終わりになるのか

出典:Amazon.co.jp: 原発棄民 フクシマ5年後の真実 eBook: 日野 行介: Kindleストア

	




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Sharetube