72歳・元ボンドガールの「ちょっと男前」なライフワーク~いまの充実感はコレを毎日続けた結果です・・・浜美枝『孤独って、素敵なこと』
キッパリとした決断を重ねてきた
先日、「浜さんって、男性的なんですね。そこが好きです」という内容のメールが、ラジオ番組『浜美枝のいつかあなたと』(文化放送)のリスナーから届きました。前身の番組『浜美枝のあなたに逢いたい』から数えて18年、ラジオのパーソナリティを続けてきましたが、こうした言葉を頂戴するのははじめてでした。メールを読み返しながら、この52歳の女性リスナーと心の深いところでつながっているように感じ、しみじみと嬉しさがこみあげました。確かに、私には男性的ともいえるような、ものごとをスパっと決断をする、思い切りの良さがあると自覚していたからです。
振り返ると、私の人生は、たくさんの幸運な巡りあわせとチャレンジ、決断の連続でした。
戦争で我が家はすべてを失いましたので、小学1年生にあがると、忙しく働く両親のために、かまどでご飯を炊き、夕食のおかずを作るのが私の役目になりました。そのころから、自分の未来は自らの手で切り開くしかないとわかっていたように思います。早く大人になり、働いて自立するというのが当時の私の夢でした。
先生は進学を勧めてくださったのですが、中学を卒業して、すぐにバスの車掌として働き始め、翌年、スカウトされて女優としてデビュー。演技の勉強をしたわけでも、女優になりたいと願ったわけでもなかったのに、突然、華やかなスポットライトを浴びることになりました。
「クレージー映画」で植木等さんのマドンナ役を、そして007シリーズ『007は二度死ぬ』ではボンドガール役を演じ、さらに、『小川宏ショー』や『日曜美術館』などのテレビ番組の司会や、ラジオ番組のパーソナリティもつとめさせていただきました。
また仕事の傍ら、民芸の世界に魅せられ、古民家12軒の柱や梁をすべて使って再生させた箱根の家で、4人の子どもを育てました。
出典:72歳・元ボンドガールの「ちょっと男前」なライフワーク~いまの充実感はコレを毎日続けた結果です 浜美枝『孤独って、素敵なこと』 私は本当に不器用な人間なのでしょう。私が選ぶのは決まって平坦ではない道でした。失敗やつまずきもいっぱいありました。それでも、楽な道を歩むことをよしとしない自分がいて、そんな自分にいらだったこともあります。 そうした日々の中で、どんなに忙しくても、夜、ベッドに入る前に一日を振り返り、明日のことを考え、自分に向き合うひとりの時間を持つことが習い性になりました。それは自分自身に様々なことを問いかけ、考える孤独な時間でした。私が、今の私であるのは、この時間があったからです。 そんな思いがあったからなのか、朝日新聞のあるインタビューの中でふと「孤独って、素敵なこと」とつぶやいてしまいました。そのフレーズを記者の山田佳奈さんが耳に留め、タイトルにしてくれ、その記事に目を留められた講談社の間渕隆さんが「本を書いてみませんか」と声をかけてくださいました。 けれど、孤独は私にとっては、いってみれば生きる相棒のようなものであり、特別なものではありません。ですので、いったい何を書けばいいのか、一瞬、戸惑いましたが、思い切ってお引き受けしました。そして『孤独って素敵なこと』をまとめ終えた今、本当にいい機会をいただいたと感謝しています。 「孤独だからこそ、自由でいられる。自分を知り、自らに優しくも厳しくもなれる。何より家族や友人をより深く愛することもできる」と実感していますし、自分のことを再確認できたのも大きな収穫でした。生きている限り、私は自分と向き合い、考え、可能性を信じ、変化し続けることを望んでいる人間であると納得できたのです。 72歳の私の中にどんな新たな芽が潜んでいて、これから何に夢中になるのでしょう。今、ちょっとわくわくしています。 孤独は怖いものなどではなく、むしろ、自分らしく生きるために不可欠なもの。女性であることを楽しみつつ、ある意味、ちょっと男前に、孤独の先にこそ幸せがあると信じて、これからも私は一歩一歩進んでいきたいと思っています。 出典:72歳・元ボンドガールの「ちょっと男前」なライフワーク~いまの充実感はコレを毎日続けた結果です 浜美枝『孤独って、素敵なこと』 読書人の雑誌『本』より 読書人の雑誌『本』より