二階堂「原子爆弾のことだけに執着しすぎるのは違うなと近年は思うようになって。広島の放送局の被爆70年プロジェクトのテーマソングとして『伝える花』という曲を作ったんですけど、2番に出てくる歌詞『受けた悲しみは 決して返しはしない』という部分が一番言いたかったメッセージです。報復の連鎖から抜け出す道を模索していきたいという思いを込めました」
後藤「そうですよね」
二階堂「同じ2015年に韓国やハワイで唄わせてもらう機会があったのですが、どちらとも、歴史的に悲しい過去がある。それに対して、どちらかが『謝る』『許す』という一方向のものでもない。『決して返しはしない』が、国内ではすんなり自分が主語に聞こえても、ともすれば「日本のやったことを許すべきだ」
みたいにきこえちゃわないか、と。今までもいろんな立場の人が聞くことは想像しながら作ってきたけれど、そういう政治外交的な立場とかまで考えて詞を書いたことはなかったので」
後藤「取り上げる人によっては悪意を持って取り上げたり、言葉の端っこだけを切り取ったり」
二階堂「そこを説明しないのが歌の良さだと思うんです。野暮なMCを入れるのはやめよう、と思ったり。入れれば入れるほど、誤解を生みやすくなるんじゃないかという気がして」
後藤「たとえば、海外ツアーに行ったときに、MCで『宗教も文化もいろんなことが違うけど、僕ら音楽が大好きなことだけは共通してる』って言うと、大抵みんな『オー!!』となりますよね」
二階堂「そうなのそうなの」
後藤「音楽はずるいなぁ、ってなりますけど」
二階堂「なりますよね。でもとにかく、武器を持つことは絶対、平和には繋がらないんだというのは、どこに照らし合わせていても間違ってないと思ってるんです。音楽でも普遍的なところを伝えたいというか。どちらの国のライブでも自分の唄とともに、ルイ・アームストロングの『What a Wonderful World』を歌わせてもらいました」
後藤「音楽にそういう力はありますよね。月並みですが、フィーリングのようなところへ戻せるというか」
二階堂「祝島へ最初に歌を歌いに行かせてもらったときも、それをすごく感じた。きっかけは、原発の推進派と反対派で島が割れてしまい、昔からのお祭りができなくなって楽しみがなくなった話をテレビで見たことです。せめて歌謡ショーみたいなもので楽しんでもらおうと思って」
後藤「公民館ですよね、YouTubeで見ました。僕もいとうせいこうさんと行ったとき『何かやれ』と言われてやらされましたけど(笑)」
二階堂「何をやったんですか?」
後藤「僕が横でギターを弾いて、せいこうさんがラップするっていう」
二階堂「おー、フリースタイルで!」
後藤「途中からレキシの曲になったり。口ロロ(くちろろ)の曲もやりましたね。『ヒップホップの初期衝動』とか。最後、せいこうさんのラップは歌に変わって、ブルースみたいになって、ヒップホップから先祖帰りしちゃった。楽しかったな」
二階堂「いいですね(笑)。私も今までは同じ思いの反対派の集まりでしかやらせてもらったことはないけど、同じことを推進派の方の集まりでやったっていいんだよな、と思ったんです。講演会というと無理でも、歌の会なら、違う意見にも耳を傾けてもらえるかもしれない。心を動かせるかもしれない。音楽はいろんな立場、考えの人にも接してもらえるチャンスがあるから、何かを担えるはずですよね」
人生の成功への階段社会的に恵まれない
多くの人たち
君の人生は
疑いなく素晴らしいかい?
04. The Sun Is Not Down
The borders mean nothing to music
But soldiers are fighting around the world
Consumers push the employees around
Her daughter was beautiful without a doubt
Barack Obama, I don’t know him well
And Damascus, I haven’t been there yet
When a famous prophet died of suffocation
Was your life wonderful without a doubt?
She was swindled out of her life
Oh, they wondered how they got arms
The bound founders of the country began
They broke her everything
A climber steps up the status
The ladder of success in life
A lot of people who are the less fortunate in society
Is your life wonderful without a doubt?
Do the borders mean nothing to music?
But soldiers are fighting around the world
Consumers push the employees around
Her daughter was beautiful without a doubt
She was swindled out of her life
Oh, they wondered how they got arms
The bound founders of the country began
They broke her everything
But she swung back and forth to and fro
Through the number, an Arabian song
The fine players were healing for her
As if inside a dream
The song, it charmed her wounds
The light turned a little down
But her daughter was down there
All that I might have known
The sun is not down,
The sun is not down yet
Yes, she swung back
I know she swung back
I know, I know..
<和訳>
音楽にとって国境は何の意味もない
でも戦士たちは世界中で戦っていて
消費者が従業員をこき使っている
彼女の娘は疑いなく美しかった
バラク・オバマのことはよく知らないし
ダマスカスには一度も行ったことがない
有名な預言者が窒息死したとき
君の人生は疑いなく素晴らしかった?
彼女は人生をだまし取られた
彼らはどうやったら武器を取れるか心配していた
この国の縛られた創始者たちが
彼女の全てを壊したんだ
権威を上り詰めるひと
人生の成功への階段
社会的に恵まれない多くの人たち
君の人生は疑いなく素晴らしいかい?
音楽にとって国境は何の意味もない?
でも戦士たちは世界中で戦っていて
消費者が従業員をこき使っている
彼女の娘は疑いなく美しかった
彼女は人生をだまし取られた
彼らはどうやったら武器を取れるか心配していた
この国の縛られた創始者たちが
彼女の全てを壊した
彼女は前後あちこちに揺れていた
アラブの歌のあいだ中ずっと
演奏をはじめた素敵なミュージシャンたちが
夢でも見せるように彼女を癒したんだ
その歌は彼女の傷に魔法をかけた
照明が少し落ちて
彼女の娘がそこにいた
すべては僕が思った通り
太陽は沈んでいない
太陽はまだ沈んでいないんだ
そう、彼女は揺れた
彼女はゆらゆらしていたんだ
僕は知ってる