新語・流行語大賞の歴史

新語・流行語大賞は、1984年(昭和59年)より自由国民社がその一年間に発生した言葉の中から世相を映し多くの人々の話題に上がった新語・流行語を選定し、その言葉の発案者や関わった方や団体などを顕彰するとされている賞です。

新語・流行語はどう選ばれるの?

候補となる言葉は『現代用語の基礎知識』(自由国民社・刊)の読者アンケートの結果から編集部によって選出された50語が候補としてノミネートされ、その中から新語・流行語大賞選考委員会(選考委員7名)によってトップテンと年間大賞が選定される。

出典:新語・流行語大賞 - Wikipedia

	

歴代の受賞語

第一回 新語部門・金賞

■オシンドローム

超人気番組だったNHKの連続テレビ小説『おしん』に因んだ新語。

凄まじい苦労の連続を必死に耐え、それでも明るさを失わず他人にやさしい主人公おしんの姿は、戦後を働きぬき、豊かさを手に入れた日本人の心情に“良質の日本人”像として共感の嵐を巻き起こした。

その状況を、全国民の勘定が同一にシンドローム化しているとして、『タイム』誌上で「おしんドローム」として表現した


第一回 流行語部門・金賞


■まるきん まるび

まるきんは『お金持ち』まるびは『貧乏人』。

渡辺和博が著書『金魂巻』で、現代の代表的職業31種に属する人々のライフスタイルや服装、行動などをお金持ちと貧乏人の両極端に分けて解説した。

それを〇金、〇貧とネーミングしたことが注目を受け、著書はベストセラーになりこの言葉自体も日常会話の中やマスメディアで頻繁に使用されるようになった。

第二回 新語部門・金賞

■分衆

経済的絶頂期目前の日本社会の自信を表した新語。日本人の価値感は多様化・個性化・分散化してきたとし、従来の均質的な“大衆”ではなく“分衆”が生まれたとした。


第二回 流行語部門・金賞


■「イッキ!イッキ!」

今でもよくやる、若者たちが酒を飲むときに周囲の者がはやしたてるかけ声。以前から学生サークルのコンパなどで行われていたが、その年代の若者たちが実社会に出てきて、背広姿で“いっき飲み”をする様子は“若者の幼児化”の象徴との見方もある。受賞は慶応義塾大学体育会が最初に始めたという説をもとにした。

第三回 新語部門・金賞

■究極

新語でもない「究極」が選ばれた理由は、本来の意味とは別のニュアンスで使用したことによる。あらゆる料理に究極を求める、いわゆる“グルメブーム”の火付け役となった言葉である。ほかにも「究極の温泉」のようにつかわれ、マニアックな日本人を表現する語としては、ピッタリであった。


第三回 流行語部門・金賞


■新人類

古い世代とは違う、まったく新しい価値観のもとに行動する若者群を新人類と名付けたのは、『朝日ジャーナル』編集長の筑紫哲也。旧人類からすると、新人類は自分勝手、無感覚、シニカルというような、マイナスイメージが強かった。ところが、物おじしない、クヨクヨしない、明るい部分だけを見るというような新人類らしいパーソナリティで大活躍したのが、ライオンズの3選手。これにより、新人類のイメージは一新された。

第四回 新語部門・金賞


■マルサ

国税査察官は、査察の査を○で囲った“マルサ”と通称される。映画「マルサの女」は女性査察官を主人公にして大ヒットした。土地投機、株高、財テクと、大企業から個人まで、マネーゲームに参加することが当たり前のような社会風潮の中、それができない庶民は、悪賢く儲ける人物を摘発するマルサに拍手喝采した。


第四回 流行語部門・金賞


■懲りない○○

安部譲二の『塀の中の懲りない面々』は、刑務所という特異なモチーフと登場するユニークな人物群によりベストセラーとなった。この題名に触発されたわけではないのだろうが、この年も多くの“懲りない”事件が続発。汚職、詐欺から盗難事件まで、新聞を飾る事件の数々を目にすると、人々は“懲りない○○”と言うようになった。

第五回 新語部門・金賞


■ペレストロイカ

ソビエト共産党のゴルバチョフ書記長が打ち上げたソ連の改革政策(ペレストロイカ)は、世界中から好感をもって迎えられ、その成否は注目を集めた。日本においても、一日として新聞に「ペレストロイカ」の文字が無い日はなかったほど。国内改革にも「行政のペレストロイカ」というように使われ、外来語としては異例の定着ぶりであった。


第五回 流行語部門・金賞


■「今宵はここまでに(いたしとうござりまする)」

この年、大ウケした流行語。会社の会議、学生のサークル、宴会、はては教室でも、時間の終了を婉曲に告げる時に好んで使われた。発信元はNHK大河ドラマ「武田信玄」。番組の最後に、若尾文子が語るモノローグの締めのセリフであった。

第六回 新語部門・金賞


■セクシャル・ハラスメント

欧米ではすでに社会問題化していた「セクシャルハラスメント」だが、日本では“西船橋駅転落事件”の判決が出たこの年、一気にスポットライトを浴びた。この事件は、酒に酔った男性がしつこく女性にからみ、避けようとした女性がはずみで酔漢を転落死させてしまったものだが、その酔漢には、そして多くの男性の中にも、抜き難い“女性軽視”の発想があることが判決で指摘された。日本で初のセクシャルハラスメント裁判と言われ、河本は弁護人として活躍した。


第六回 流行語部門・金賞


■オバタリアン/オバタリアン(旋風)

ホラー映画の『バタリアン』とオバサンを合成したマンガ「オバタリアン」(堀田作)とは“ずうずうしく、羞恥心がなく、自分勝手”なキャラクターなのだが、そう名指しされた「オバタリアン」に受けるという不思議な現象を見せた。この年の参議院選挙では、社会党がずらりと並べた「マドンナ」候補と、それを応援する女性有権者が発揮した「オバタリアン」パワーが圧勝し、その底力をみせオバタリアンの名を世に認知させた。

第七回 新語部門・金賞

■ファジィ

「ファジィ」とは“あいまい”という意味の言葉で、カリフォルニア大学のザデー教授が開発した「ファジィ工学」で一躍有名になった。「経験」や「勘」といった、コンピュータでは処理できないといわれていた“あいまい”なものをプログラミングする理論で、日本でこの理論を家電製品に応用・実用化したのは、松下電器の洗濯機が第1号。ブームのきっかけをつくった。以来、各メーカー入り乱れて盛大なファジィマーケットができあがった。


第七回 流行語部門・金賞


■ちびまる子ちゃん(現象)

漫画「ちびまる子ちゃん」が米紙ワシントン・ポストに“日本人の心とマーケットをかっさらった漫画”として紹介された。30年前の地方中小都市を舞台に平和で平凡な日常生活を描いたこの漫画が、なぜ日本で大ブームになっているかをレポートしたものだが、そこにはテーマソングのように“ピーヒャラ、ピーヒャラ”と浮かれる日本人の実像が浮かび上がっている。

第八回 年間大賞


■「…じゃあ~りませんか」

とぼけた表現と演技力、抜群の間合いで、この年最大の流行語となった。30年の“芸歴”から生まれた、計算し尽くされた“ギャグ”との高い評価もあるが、驀進を続ける吉本興業の芸人だから、との皮肉な見方もあった。


第九回 年間大賞


■きんさん・ぎんさん

1992年の[年間大賞]は、百歳になる双子の姉妹「きんさん、ぎんさん」が受賞した。『通販生活』やダスキンのCMに起用されたのをきっかけに、あれよあれよというまに“国民的アイドル”になってしまった「きんさん、ぎんさん」。絶妙な、漫才のような二人の会話、“金”と“銀”というおめでたい名前など、人気の理由はいくつも考えられるが、なによりそのチャーミングな笑顔と愛すべきキャラクターを、日本中が好感をもって迎えた。


第十回 年間大賞


■Jリーグ

あっという間に、日本国中をサッカーファンだらけにしたJリーグ旋風。その育ての親が川淵である。大胆な地方分散のフランチャイズ制導入、アントラーズ、ヴェルディ、ガンバ、エスパルスなど耳慣れぬネーミング、競技場に轟くオーレ!オレ!オレ!の大合唱など、わが国に“新しい文化”を根付かせる壮大な実験が始まった。


第十一回 年間大賞


■「すったもんだがありました」

タカラ「カンチューハイ」のテレビCMで宮沢が言うセリフ。本格的な景気後退が続く世相から、さまざまな「すったもんだ」があった一年であったが、視聴者は宮沢の私生活を連想した。大関(当時)貴ノ花との婚約とスピード解消、ともすれば暗く深刻になる事実を逆手に取り、さりげなくサラリとクリアした。ここは巧みで、したたかなCM制作サイドの作戦勝ち。


■イチロー(効果)

1994年、プロ野球に新星が華々しく登場した。イチローこと鈴木一朗。右足を大きく振る“振り子打法”をひっさげ、前人未踏の年間200本安打を達成。この年、スポーツメディアはイチローの安打数を報道し続けたといっても過言ではない。イチローの活躍により波及効果が生まれ、これを「イチロー効果」と言った。


■「同情するならカネをくれ」

日本テレビ「家なき子」で、主役の少女(安達)が言うセリフ。建前で生きる世間に対し、少女が放ったこの一言は強烈なインパクトがあり、話題騒然の流行語となった。“パクリ”だとかの批判も多かった野島伸司の脚本だが、1994年の話題を独占したことは間違いない。


第十二回 年間大賞

■無党派

東京・大阪の知事選挙で、組織力、財力、権力の圧倒的基盤を持つ政党推薦候補を、無所属の青島、横山ノックが破り、メディアはこれを「無党派」パワーと呼んだ。数合わせだけの政党連合を拒む、新しい有権者層の出現に、既存の政党は大慌て。


■NOMO

日本野球を飛び出し、米大リーグ・LAドジャースに入団、チームを地区優勝に導き、自身は新人王を取る大活躍をした野茂英雄を、米世論は温かく見守った。野茂の演じる奪三振ショーに熱狂し、「NOMO」の大声援を贈った。NOMOは、観客増員、キャラクターグッズ売上増など、メジャーリーグ人気の回復に多大な貢献をした。また日本でも、メジャーの野球を日本の茶の間に一挙に持ち込んだ。


■「がんばろうKOBE」

1995年1月、神戸・淡路大震災が発生した。復興に起ち上がる市民を力付けたのが、このスローガン。地元球団オリックスは、スローガンをユニホームに縫い付け、リーグ優勝を勝ち取った。神戸市民への励まし効果は絶大と、評価は高かった。

第十三回 年間大賞


■「自分で自分をほめたい」

アトランタ・オリンピック女子マラソンで三位に入賞し、バルセロナに続いて連続メダル獲得という快挙を成し遂げた有森のレース後の言葉。バルセロナ以後のスランプ、故障を乗り越えた有森の努力はスポーツマスコミによって広く知られていた。そのため「自分を誉めてあげたい」のセリフは素直に国民の間に受け入れられ、この年一番の流行語となった。


■友愛/排除の論理

新しい政治と政党のスタイルを言葉の上からも斬り込んでいった鳩山は、数々の新語を生み出した。なかでも「友愛」は中曽根元首相に「ソフトクリームのようだ」とからかわれても「夏にはおいしい」と切り返し、政治理念を守り通した。一方、安易な寄り集まりを排除した「排除の論理」は、感情的な批判に屈することなく貫き通す冷厳さを見せ、株を上げた。


■メークドラマ

“英語の達人”長嶋監督の造語。数々の長嶋語録の中でも、もっともポピュラーで“感動的”なセリフとなった。7月6日、首位カープとのゲーム差は11.5と開き、優勝は絶望かと思われた。ところが翌日からは、あれよあれよの快進撃。7月16日には「メークドラマ」宣言を発し、ついには奇跡の大逆転優勝を飾った。まさに、“ドラマ”を“作った”長嶋巨人の戦いぶりであった。


第十四回 年間大賞


■失楽園(する)

日本経済新聞に連載された『失楽園』は連載中から評判となっていたが、映画化されたことにより、日本中の話題をさらった。50代の妻子ある男と40代にさしかかる人妻との悲しくも激しいラブロマンスなのだが、一般的な受け止め方は「私も、不倫をしてみたい」だった。「不倫」を「失楽園する」と言うようになり、まるで不倫がブームのようになった。


第十五回 年間大賞


■ハマの大魔神

マシンガン打線を引っさげて、横浜ベイスターズは38年ぶりのセ・リーグ優勝、余勢を駆って日本一になった。最大の殊勲者がストッパー佐々木で、ついたあだ名が「ハマの大魔神」。マウンドに仁王立ちし、打者をバッタバッタと打ち取る姿は日本国中を熱狂させた。最優秀選手、最優秀投手、最優秀救援投手、ベストナイン、ファイアマン、プレーヤー・オブ・イヤー、正力松太郎賞などの栄誉を独占したばかりでなく、神社まで“建立”されてしまった。


■「凡人・軍人・変人」

この年一番の切れ味鋭い“論評”で、メディアはいっせいにこの言葉に飛び付いた。自民党総裁選に立候補した三氏に対し、「どうせ在庫一掃、ガレージセール」と切り捨て、返す刀で「小渕は凡人、梶山は軍人、小泉は変人」。あまりにも三氏の本質を言い当てた名文句に、当の三氏も苦笑するばかり。


■「だっちゅーの」

老人から子供まで、日本国中を席巻した久々の流行語「だっちゅーの」。かわいい女性のお笑いコンビが、ひとしきり凡庸なギャグを飛ばしておいて観客のしらけを誘った末、決めのポーズ(両腕で胸をはさみ、谷間を強調するの類)で“落とす”際に発するセリフが「だっちゅーの」である。

第十六回 年間大賞


■雑草魂

1999年のパ・リーグが松坂なら、セ・リーグはもちろんこの人、上原。連日投手記録を更新した大型新人。とは言っても華々しくデビューした松坂に対し、東海大仰星高校時代は控え投手で、チームも甲子園とは無縁だった。マスコミは地道にはいあがってきた新しいヒーローの心意気を「雑草魂」と表現した。


■ブッチホン

突然、「もしもし、ケイゾーです、オブチです。」と、官邸から電話がある。いたずらだろうと、みな疑ってかかる。が、電話の主は小渕恵三首相その人。それも閣僚や議員、大企業の社長など公人相手ならわかるが、雑誌の書き手やら、首相あてに電子メールを送った一般の人にまで直接電話がゆく。山藤章二は週刊誌の似顔絵特集で首相から感謝の言葉をいただいたという。「冷めたピザ」「真空総理」「人柄の小渕」…この人ほど短期間にあだ名が増えた例も珍しいが、ブッチホンはみずからが命名。


■リベンジ

鳴り物入りで西武ライオンズに入団したスーパールーキー松坂。150キロ台の速球と切れのいいスライダーで、16勝5敗、防御率2.60の高卒新人最多勝記録を打ち立てた「平成の怪物」。強気で負けず嫌いの彼が敗戦したゲームのあとに残したのがこの言葉。「復讐、仕返し」の意味で、巷でもさかんに使われた。「リベンジ」は格闘技K-1で以前より使われていた言葉。


第十七回 年間大賞


■「おっはー」

朝の挨拶「おはよう」の短縮形。もともとテレビ東京系列の子ども番組『おはスタ(おはようスタジオ)』(月~金午前6時45分~)で使った「おーはー」を、SMAPの香取慎吾扮するキャラクター「慎吾ママ」が、フジテレビ系列の人気番組『サタ★スマ』(土曜午後7時~)で使用したことで人気がでた。「おっはー」を使った調子のいい歌『慎吾ママのおはロック』も大ヒット。男女世代の枠を超えた国民的な流行語となった。


■IT革命

情報技術(Information Technology)分野での革命が、経済の新たな成長を担うとともに、国家・社会・企業等の組織を変えていく現象。コンピュータの高性能化、低価格化と通信の大容量化、高速化を二つの柱とするIT革命はインターネット利用を急速に普及させ、電子商取引の比重を大きく高め、企業間および企業-消費者間の直接取引を増やしている。一方、IT革命の波に乗る者とこれに乗り遅れる者の情報格差(デジタル・デバイド)が問題となっている。IT革命のもたらす光と影については九州・沖縄サミットでも注目された。


第十八回 年間大賞


■米百俵

■聖域なき改革

■恐れず怯まず捉われず

■骨太の方針

■ワイドショー内閣

■改革の「痛み」


所信表明演説で使われた「米百俵」「恐れず怯まず捉われず」、首相のスローガンである「聖域なき改革」、それにともなう「改革の『痛み』」、首相を議長とする経済財政諮問会議の「骨太の方針」、小泉政権に名付けられた「ワイドショー内閣」。2001年4月、第87代(56人目)の総理大臣となった小泉純一郎首相は、空前の国民支持を背景に、説得力あるキャッチフレーズを駆使することで01年最多の「流行語生みの親」でもあった。


第十九回 年間大賞


■タマちゃん

北極圏に生息するアゴヒゲアザラシが、北海道近海に流氷とともにやってくることはしばしばあるが、本州、しかも東京あたりにやって来ることはきわめて珍しい。そんなわけで、8月7日に東京都と神奈川県を分ける多摩川丸子橋付近で“突然”発見された「タマちゃん」には、大勢の見物客が詰めかけ、夏いちばんの話題となった。川が汚い、温度が高いなど人間の勝手な心配をあざ笑うかのようにいったん消えたのち南下して横浜・鶴見川、帷子川、大岡川に再出没。国土交通省は世論を気にして保護会議を開くが、扇千景大臣の「自然のものは自然に」発言で手出しせず。


一方、9月19日には、宮城県歌津町の伊里前川にワモンアザラシの子ども「ウタちゃん」が現れた。


受賞者の佐々木裕司さんは、多摩川で泳ぐアザラシを発見してビデオ映像をテレビ局に持ち込んだ。同じく黒住祐子さんはビデオ映像を持ち込まれたスーパーニュース(フジテレビ)のレポーターで「タマちゃん」の命名者。


■W杯(中津江村)

正式名称「2002 FIFAワールドカップ(2002 FIFA World Cup Korea/Japan)」。参加32チーム。2002(平成14)年5月31日のソウルでの開幕戦に始まり、6月30日横浜での決勝で大成功裡に終了。観客動員は日本143万8637人、韓国126万6560人の計270万5197人であった。大会前に心配されたテロ、フーリガンの騒動もなく、FIFAをはじめ関係者のすべてから「完璧な組織・運営」と賞賛され、ブラッター会長からは「微笑の大会」と命名された。


日本で予選を行う16ヵ国(日本チームを含む)が、日本各地でキャンプを張ったが、たくさんの自治体が、“経済効果”をねらってその誘致を行った。なかでもっとも成功したと思われるのがカメルーン・チーム誘致に成功した大分県中津江村。選手の待遇問題で到着が4日も遅れたことでの騒動、またその辺鄙な村の健闘を面白がって長期取材を断行したテレビ局、遅れはしたものの地元との友好に努めたカメルーンチームの気さくな人柄等々がプラスにはたらいた。

第二十回 年間大賞


■毒まんじゅう

2003(平成15)年9月の自民党総裁選で、政界引退を決意した野中広務元幹事長が、小泉首相支持に回った一部の政治家を非難する際に使った言葉。具体的には小泉再選後に密約されたポストをさし、自己の功利にはしる政治家の実態にこの一言で警鐘をならした。


■なんでだろう~

ジャージ姿に身を包み、開いた手を顔の周りで振り回しながら歌うテツandトモの当たりギャグ。あらゆることが解説されるTVのなかで、日常生活の細かさに潜む矛盾をついたコントはオーソドックスともいえるが、ハイスピードな踊りがもたらす開放感は独自のもの。テレビアニメ「こちら葛飾区亀有公園前派出所」のエンディングテーマ「なんでだろう~こち亀バージョン~」で子どもたちにも大ウケ、幅広い世代に浸透した。


■マニフェスト

通常は「政権公約」と訳される。期限、財源、数値目標、プロセスなどが明らかにされた具体的な公約のこと。“はっきり示す”というラテン語にその語源がある。イギリスの総選挙で行われており、書店などでマニフェストが売られている。日本でも、2003(平成15)年の春の統一地方選で多くの候補者が有権者にマニフェストを提示し、同年秋の衆院選でも各党が冊子を作成して「マニフェスト選挙」などともいわれた。長年マニフェストの必要性を提唱してきた受賞者の北川教授は、授賞式で「流行で終わっては困る」と話した。


第二十一回 年間大賞


■チョー気持ちいい

2004年8月15日のアテネ五輪2日目。男子100メートル平泳ぎで金メダルを獲得した北島康介選手がプールから上がって述べた感想。優勝を確実視されたプレッシャーからの解放感を素直に吐き出したものだが、ゴール直後には1位かどうかわからず「応援席の盛り上がりを見てとりあえずガッツポーズ」と裏話を披露。


第二十二回 年間大賞


■小泉劇場

2005年9月の衆院選は、小泉首相の意図するせざるに関わらず「造反」「刺客」「くのいち候補」の登場、郵政民営化問題に絞られた単純な争点などにより、さながら「小泉劇場」の態をなした。その結果「小泉一人勝ち」。


■想定内(外)

ライブドア堀江貴文社長が、その負けず嫌いな性格からフジVSライブドア騒動の中で連発した。簡単な言葉に翻訳すれば「そんなことわかってますよ」。

第二十三回 年間大賞


■イナバウアー

トリノオリンピックのフィギュアスケート金メダリスト、荒川静香の得意技。上体を反らした独特のポージングが話題に。本来は両足の爪先を外側に大きく開いて横に滑る技。体を反らせることをさすわけではない。


■品格

藤原正彦著『国家の品格』の爆発的な売行きとともに広まった。氏は「論理よりも情緒を」と、日本人が備えていたはずの品格について説き、「儲かれば何でもよい」というマネーゲーム全盛の世の中に一石を投じた。


■エロカッコイイ(エロカワイイ)

ボンデージにバニーガール、下着など、際どい衣装で一気に人気者になった倖田來未。彼女のセクシーな衣装やスタイルは、「カッコイイ・カワイイ」ファッションとして認知され、肌を露出する女性が増加した。

第二十四回 年間大賞


■(宮崎を)どげんかせんといかん

東国原英夫・宮崎県知事が県議会での所信表明で、「停滞のもととなった古いしがらみからの解放が必要」と方言を交えながら説いた。また、「テゲテゲ(いい加減)では地域間競争に勝ち残れない」とも述べた。


■ハニカミ王子

男子プロゴルフツアーに15歳8カ月の最年少記録で優勝した杉並学院高校1年の石川遼選手の愛称。名付け親は優勝したマンシングウェアオープンKSBカップでアナウンサーを務めた多賀公人(瀬戸内海放送)。


第二十五回 年間大賞


■アラフォー

天海祐希主演の金ドラ『Around40』から広まったことばで、40歳前後のこと。特に女性を指す。CD業界など、アラフォー世代に的を絞ったさまざまな商品がヒットしているのもまさに今の時代を反映している。


■グ~!

女優、コンピューターインストラクター、マナー講師など異色の経歴をもつ新人お笑い芸人エド・はるみによるギャグ。フォーマルな出で立ちで両手の親指を突き立て、突然「○○グ~!」と声を上げる。


第二十六回 年間大賞


■政権交代

8月30日の第45回衆院総選挙。自民党は300から119へと議席を激減させ惨敗。一方、民主党は115から308へと議席を大きく伸ばして圧勝した。投票率は69.3%。総選挙の結果を踏まえて、9月16日、鳩山由紀夫を首班とする民主党内閣が発足した。選挙による政権交代が実現したのは初めてのこと。


第二十七回 年間大賞


■ゲゲゲの

いまやマンガ界の大御所たる水木しげるの妻、武良布枝(むら・ぬのえ)による自伝『ゲゲゲの女房』。この本が今年春からNHK朝の連続ドラマになって評判を呼んだ。初回視聴率は歴代最低の14.8%だったが、回を追うごとに人気はうなぎ登り。最終週の平均は23.6%とV字型回復をみせた。二人をめぐる超極貧物語は、週刊連載のマンガ『墓場の鬼太郎』を『ゲゲゲの~』と改題したころから、サクセスストーリーへと転じて行く。


第二十八回 年間大賞


■なでしこジャパン

サッカー日本女子代表の愛称。7月17日、女子W杯ドイツ大会で、日本は2―2からのPK戦で優勝候補のアメリカを3―1で振り切り、初優勝した。国際サッカー連盟(FIFA)主催大会での日本の優勝は男女通じて史上初。大会MVPと得点王には澤穂希が輝いた。8月、なでしこジャパンには日本政府から国民栄誉賞が授与され、震災に沈む日本を元気づけた。

第二十九回 年間大賞


■ワイルドだろぉ

デニムのノースリーブと短パン。今年のお笑い界のスターはピン芸人のスギちゃん。その勢いにまかせた取り返しのつかない行動を「ワイルドだろぉ」と称して自虐的に語るネタがじわりじわりとウケた。「ワイルドですね、とか、ワイルドだね、じゃダメだったんだろうなぁ」とは、ご本人の弁。


第三十回 年間大賞


■今でしょ!

林修が自身が所属する予備校・東進ハイスクールのテレビCMに出演。ふてぶてしさを感じさせる表情の林が「いつやるか?今でしょ!」と言い放つ授業シーンがお茶の間に流れた。コント番組がパロディを制作、またトヨタ自動車はコント番組さながらのパロディCMを放映したことで大きな流行の波になった。


■お・も・て・な・し

そもそもは「とりなす、処置する」「取り扱う、待遇する」という意味の日本語。2013年9月7日の国際オリンピック委員会(IOC)総会。最終プレゼンテーションでは、フリーアナウンサーの滝川クリステルが登壇してフランス語でスピーチ。日本社会に根付く歓待の精神を「お・も・て・な・し」とPRしたシーンは五輪招致決定のニュースとともに強烈なインパクトを残した。


■じぇじぇじぇ

岩手県三陸地方の方言で、驚いたり戸惑ったりするときに発する言葉。NHKの朝ドラ『あまちゃん』の中で多用され、ビッグな流行語になった。ドラマのストーリーは東京出身の女子高生アキが三陸で海女を、やがて東京でアイドルを目指す人情喜劇で、熱狂的なファンを生んだ。ロケ地となった岩手県久慈市には観光客が殺到。朝ドラでは初めて東日本大震災を描いたことでも注目された。


■倍返し

バブル末期に大手銀行に入行した半沢直樹(演じるのは堺雅人)が組織内外の圧力と戦う勧善懲悪のドラマ『半沢直樹』が高視聴率を記録。。「上司の失敗は部下の責任」など企業社会にありがちな悪習を取り上げ、半沢が反撃するときのセリフ「やられたらやりかえす。倍返しだ!」が大流行した。


第三十一回 年間大賞


■ダメよ~ダメダメ

戦後も70年を迎えようとしているのに日本人はやっぱり相変わらずの日本人で、NOときっぱり言えないというか、はっきり言わないで済ましましょうという人間関係。いきなり「ダメよ!」とでも言おうものなら、相手は驚いて「号泣」し出さないとも限らない。そんな昨今だからと、そこまで気を使う細やかさが日本人のたしなみなのかどうかは知らないが、ユルい空気ゆえにリベンジポルノがネットに流れたり、公の議会でセクハラやじが横行するのかもしれない。あげくの果てが「壊憲」と言われる7月の閣議決定。「ダメよ~ダメダメ」と高まる声を前にして、「いいじゃ~ないの~」とするすると受け流して、気がついたら憲法が解釈だけで変更されてしまったのだが、この国では、争点をしっかり掲げて投票でハッキリさせようなんて決定方法がありえないんじゃないかと思えて、こりゃあ「号泣」もしたくなる。そんな日本の不条理な現実を、最高にシュールなコントで「大爆笑」に変えてくれたのが「細貝さんと朱美ちゃん」こと、今年一番の人気コンビ、日本エレキテル連合であった。


■集団的自衛権

不法な侵害を受けた国家と密接な関係にある国家が、共同して防衛に当たる権利。この言葉は「しっかりと、丁寧に説明」という表現とセットになって使われた。しかしいくらアベさんに説明されてももう一つはっきりしないままの状況が続いた。集団的自衛権という用語は30数年前の『現代用語の基礎知識』からすでに収録されており、ずっとそれは現憲法下では「違憲」だと紹介されてきた。それが今年、安倍政権の下でいきなり解釈を変更されて、限定容認だが、その行使が可能となったのだから、これは大事件だ。


文化庁の「国語に関する世論調査」で「***的には」は“ぼかし言葉として若者層に広がっている”と指摘されたことがあるが、「集団」と「自衛権」をつなぐ「的」がどこか煙にまくような機能を果たしているのと無関係ではなかろう。

第三十二回 年間大賞


■爆買い

オタク文化の発信地、東京秋葉原に外国人観光客が目立ち始めるようになってから、あっという間に京都・浅草などの定番観光地はもちろん、三重県伊賀でのニンジャ体験など日本人が気付かない日本を楽しむ外国人が見られ、2015年は「日本再発見」がブームとなった年でもあった。


増加を続ける外国人観光客のなかでも中国からの訪日客は他を引き離し、ドラッグストアで、家電量販店で、スーパーマーケットで、百貨店で、化粧品、医薬品、お菓子など一人当たり17万円以上を「爆買い」し、「大人買い」が精一杯の日本人を圧倒し、世間を驚かせたのだった。


世界に目を向ければ、中国企業が6400人でフランスに4泊6日で爆社員旅行、習近平国家主席はアメリカで旅客機300機を爆買い。中国人の消費パワーを見せつけられた年でもあった。


物が売れない昨今、日本の商品は信用できる、「日本通」だと自慢できる、と嬉々として買いまくってくれるのはうれしいが、日本は信用できるよい国だと、まるごと爆買いされる将来がきたりして…


■トリプルスリー

今年、野球界はセリーグではヤクルトが14年ぶりの優勝、パリーグはソフトバンクが2年連続優勝。その優勝チームの中で、プロ野球ファンのハートをわしづかみにしたのが、二人の選手だった。鍛え上げられた強靭な体が描くパワー溢れるバッティングフォームで3割6分強の高打率を残し首位打者となった福岡ソフトバンクホークスの柳田悠岐選手。そして気負いしない表情で飄々として見えるのに、バランスの良い体で打てばホームラン王、走っては盗塁王を獲得した、東京ヤクルトスワローズの山田哲人選手であった。1シーズンで打率3割、ホームラン30本、30盗塁以上の成績を記録するトリプルスリーを13年ぶりに達成、チームをリーグ優勝へと牽引したのだ。パワー、スピード、テクニック三拍子そろった選手は来年も野球をもっともっと面白くしてくれるであろう。さてこの9月、永田町では新三本の矢が用意された。アベノミクスも第2ステージ、トリプルスリーにあやかって、希望を生み出す強い経済・夢をつむぐ子育て支援・安心につながる社会保障で日本も勢いづいていきたいものだ。

これまでの歴代受賞語を振り返ると…

過去の受賞語を改めて見てみると、その一年の動きやその時の流行など、様々な時代背景が見えてくる気がしませんか?

毎年12月に発表される新語・流行語大賞、その一年間を振り返りながらどんな言葉が選ばれるのかを考える機会でもあり、こうして過去の言葉を改めて見返してその年の出来事を振り返るいい機会にもなりますね。




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Sharetube