【洒落怖】祖母の日記(名作・中編)

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『祖母の日記』

866 :1:2008/05/22(木) 20:13:26 ID:IUcgnRkm0

私は大変なおばあちゃんっ子で、

中学になってもよく祖母の家に遊びに行っていました。

父方の祖母なのですが、

父親は私が幼いころに不慮の事故で死去していました。

祖父を早くに亡くした祖母は、唯一の血縁者だと言って、

私をとても可愛がってくれました。

しかし、母親はあまり祖母と仲が良くなかったのか、

一度も一緒に祖母の家に入ることはありませんでした。


私は毎週日曜日の午前中に、

祖母と神社にお参りに行くのを日課としていました。

大変信心深い人だったので、雨の日でも必ず行き、

父が他界して間もないころから欠かすことはありませんでした。

祖母とつないだ手はとても温かく、私はお参りが大好きでした。


867 :2:2008/05/22(木) 20:23:05 ID:IUcgnRkm0

祖母はいつも手を合わして、深々と礼をし、

ずいぶん長い間目を閉じてお祈りをしていました。

私はいつも単純なお祈りだけをし、祖母の真剣な横顔を眺めていました。

終わってからいつも、「何をお祈りしてたの?」と聞くのですが、

祖母はニッコリ笑うだけで、一度も答えてくれませんでした。

私は気にすることなく、毎回帰りに買ってもらうアイスを楽しみにして、

祖母とおしゃべりをしながら帰りました。


話は急に変わってしまうのですが、私は幼いころから霊能力が強く、

いつも霊障に悩まされていました。

金縛りは毎日で、眠れない日々が続き不眠症でした。

寝ていても足を触られたり、お腹を針のようなもので刺されたりと、

年々エスカレートしていきました。

母と霊能力者のところにも何度か訪れたのですが、

高いお金を請求され、しかも何をやっても効かないので、

もう私もあきらめていました。


868 :3:2008/05/22(木) 20:30:07 ID:IUcgnRkm0

中学3年になるころには、さらに霊障はひどくなり、

交通事故も何度も経験し、

毎晩繰り返される金縛りや、霊によってみせられる幻のようなもので

(ご飯の上に髪の毛や虫がのっていたり)精神を病み、

不登校になりました。


祖母は母が仕事に出ている時間、うちに来てくれて、

いつも手を握っていてくれました。

祖母といる時間が、私にとって唯一安らげる時間でした。

母親は仕事で帰りが遅く、あまり口をきく時間がありませんでした。

毎日の嘔吐、拒食症になったと思ったら過食症になり、

常に体調も精神も不安定で、自殺未遂も何度か起こしました。

その度に失敗し、生きるのも辛い、

しかし死ねないという最悪の状態が続きました。

祖母とのお参りにも行けなくなりました。


870 :4:2008/05/22(木) 20:40:28 ID:IUcgnRkm0

中学を卒業してすぐのころ、唯一の支えだった祖母が他界しました。

私は大泣きしました。

しばらく祖母の使っていた部屋に引きこもり、

祖母が使っていた洋服などを抱きしめながら、泣く日々が続きました。

そんな時でも、母親は平然とした顔で仕事に行っていて、

それで食べさせてもらってはいるものの、

少し母に対して怒りも芽生えました。


祖母が他界してから2週間ほどたったころ、

だんだん私の周りで、霊障が起こらなくなってきたことに気が付きました。

私の4人だけいた友だちの一人が、

「○○(私の名前)の痛みを、

 おばあちゃんが全部天国へ持って行ってくれたんだよ」

と、電話で言ってくれました。

そのときも私は、電話口で大泣きしました。


一年後には霊障が全く無くなり、精神も体調も回復した私は、

通信制の高校にも行けるようになり、

バイト仲間たちに支えられて楽しい日々を送っていました。

祖母の家が引き払われることになったので、私は荷物の整理に行きました。

もう気持ちも落ち着いていて、毎日墓参りに行っていました。


871 :5:2008/05/22(木) 20:49:44 ID:IUcgnRkm0

押し入れの中を整理していると、祖母の古い日記が何冊か、

風呂敷にくるまれて出てきました。

その日記は、毎週日曜日に付けられていました。

私は日記を読んで唖然としました。


まず初めのページは、父が死んだ日でした。

不慮の事故と聞かされていましたが、

実は自殺だったということが書かれていました。

原因は母の浮気だったそうです。

ショックでした。涙が出ました。

しかし、次のページを捲った時に、一瞬で全身が冷たくなりました。

そこには祖母の、私に対する怒りが書かれてありました。

端から端までギッシリと。

私が『浮気相手との間にできた子だ』という文章から始まり、

『殺してやりたい』『しねばいい』などという、

今までの祖母とまったく違う顔がそこにはありました。


私が苦しみながら死ぬように、神社で祈っていたのです。

あんなに長い間、毎週毎週、長い時間。

隣にいる幼い私を、呪い殺すことだけひたすら願い続けていたのです。

祖母の熱心な祈りが通じたのか、私は大変苦しみました。

そして祖母も、苦しみながら死んでいきました。


日記は燃やしました。

長い年月がたった今でも、忘れられない出来事です。

誰にも言ったことはありません。

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