【洒落怖】ヒグマとキツネ(山・中編)

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『ヒグマとキツネ』

505 :本当にあった怖い名無し:2008/12/06(土) 07:40:54 ID:dLboMENMO

おれはいま北海道に住んでいます。

知り合いに趣味で狩りをしている方がいまして、

その方から聞いた山での不思議なお話を書きます。


506 :本当にあった怖い名無し:2008/12/06(土) 07:48:00 ID:dLboMENMO

彼は趣味といえど狩歴20年のベテランで、

主に道東(北海道の東のほう)をホームグランドに鹿狩りを行っており、

狩猟期間が解禁になると、毎週のように山に分け入る生活をしています。

ある秋に体験したお話になります。


507 :本当にあった怖い名無し:2008/12/06(土) 07:59:33 ID:dLboMENMO

早朝から山に入り、慣れた森林に踏み入りました。

散弾銃と鉈と少しの食料と、

秋といえど北海道は寒いので防寒対策は怠らず、

2日前より風呂に入らない(これは、げんかつぎと、

石鹸臭さで野生動物に臭いで感づかれないためらしい)。

足跡などの痕跡を見逃さぬよう、

そしてなるべく音をたてないよう、慎重かつ大胆に。


508 :本当にあった怖い名無し:2008/12/06(土) 08:13:02 ID:dLboMENMO

一時間に2km歩く速度で移動します。

痕跡はみつかるが古いものばかりで、そうこうするうちに、

昼近くになるころ、足跡とは違う痕跡を見つけました。

獣臭がする。間違いなくヒグマの臭いです。やばい。

彼に言わせれば、ヒグマは特に珍しいものではないのですが、

秋口と春先のヒグマは冬眠前後で、

凶暴になる可能性が高いので困るらしい。


509 :本当にあった怖い名無し:2008/12/06(土) 08:26:22 ID:dLboMENMO

ほどなくして、獣臭の元を見つけました。

木の袂に土を掘った形跡があり、キツネが中途半端に埋められていました。

木には、爪を研いだ跡とヒグマの体毛と糞尿らしき形跡。マーキングです。

これは警告です。ここは俺様のもので、

近づくことまかりならん、ということだそうです。


511 :本当にあった怖い名無し:2008/12/06(土) 15:51:25 ID:dLboMENMO

そして、まずいという理由がもうひとつありました。

彼はヒグマに対抗する手段をもっていません。

散弾銃は持っているが弾は四発だけです。

重くなるのを嫌い最小限の装備で、さらに鹿用の散弾しか所持してません。

ヒグマのぶ厚い皮膚と筋肉を貫通し、致命傷を負わせるには心もとない。

彼はあきらめて帰ることにしました。


512 :本当にあった怖い名無し:2008/12/06(土) 16:02:43 ID:dLboMENMO

ほどなく、帰り道で正午をむかえました。

昼食のため彼は適当な場所を探すと、座れそうな倒木をみつけました。

ここで座って食事となりました。


リュックからパンと麦茶を取り出します。

もぐもぐごくりとやっていたところ、突然あしもとに気配を感じました。

みると子ギツネが二匹、靴にじゃれついていました。

どうやら倒木の根元に巣穴があるらしく、そこから出てきたようだ。

まだ産まれてまもないのだろうか、ころころのもはもはである。


513 :本当にあった怖い名無し:2008/12/06(土) 16:14:30 ID:dLboMENMO

パンをひとつまみして子ギツネにあたえてみると、ひと嗅ぎしてむさぼる。

サバ缶も開けてあたえてみると、なかなかの食いつきであった。

そのとき、横目に映った。

しまった油断しすぎた。

約5m先のやぶからヒグマが現れた。

風下から接近されたので、臭いで気づくことができなかった。

しかも成獣だ。


514 :本当にあった怖い名無し:2008/12/06(土) 16:25:48 ID:dLboMENMO

銃は手元にはない。

一足等の距離にあるが動けない。

いや、動いてはいけないのである。

急激な動作はヒグマを刺激する。

この距離で飛びかかってきたら、銃を手にした時にはズタズタにされる。

それ以前に弾がこめられていない。左胸ポケットに四発おさまっている。

まず目が離せない。

ヒグマもこちらに目を合わせいる。

子ギツネがキューと鳴く。

まずい(冷や汗)

そのとき、いきなり背後に気配を感じた。


515 :本当にあった怖い名無し:2008/12/06(土) 16:38:33 ID:dLboMENMO

なんだこの気配は?今まで感じたことのない寒気がはしる。

背後を見たい衝動にかられたとき、

「動かないで」

女性の声がした。

心臓が口から飛び出すかと思うぐらい驚いた。

そのとき、ヒグマが立ち上がった。

体長2.5mはあろうか。

威嚇している。

鼻からブフーッと息をもらし、興奮しているようだ。

背後の気配がいきりたつ。

周囲の気温がいっきに下がったように感じた。

ヒグマが四つ足をつき目を離した。おびえている。


516 :本当にあった怖い名無し:2008/12/06(土) 16:45:02 ID:dLboMENMO

子ギツネがキューと鳴いた。

ヒグマは回れ右で、再びやぶの中に消えていった。

しかし、彼はまだ動けない。背後の気配がまだ消えない。

「たのみます」

また女性の声がした。

同時に気配も消えました。

子ギツネが靴ひもにじゃれついている。

彼はその場にへたりこみました。


517 :本当にあった怖い名無し:2008/12/06(土) 17:11:34 ID:dLboMENMO

彼は混乱する頭をかかえ、そして空気的に二匹の子ギツネをかかえて下山。

帰りのクルマの中で、子ギツネが癒やします。

二匹を養うことに決めました。

そうしなければならないと感じたそうです。


そんな彼ですが、定職はありません。

この事件のあと、パチプロとして生計をたてています。(現在も)

不思議とギャンブル運に恵まれるようになり、

バカ勝ちしないが、1日の儲けは地味ながら五千円~一万円で、

その事件以降は、パチンコで負けたことはないそうです。


おれも二匹のキツネには合わせてもらいました。

同居して五年くらいになるそうです。

キツネなのにかなりデブちんで、人なつっこいやつらでした。


518 :本当にあった怖い名無し:2008/12/06(土) 17:18:40 ID:dLboMENMO

追伸

すこし説明不足でした。

おそらく埋められていたキツネは、親ギツネだったのでしょう。

彼は幽霊とか信じるタイプではありません。

でもキツネは可愛がります。溺愛してますよ。

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