【洒落怖】風を呼ぶ力(家・中編)

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『風を呼ぶ力』

245 :本当にあった怖い名無し:2006/06/10(土) 17:24:39 ID:I9HU9MYrO

家の女系は風を呼べる。

自分でも胡散臭い話だと思うので、今まで一度も誰にも話したことはない。

蒸し暑かった空気の入れ替えをしたいときに、風を呼んだりする程度だ。

小さい頃はよく使えたが、今ではまったくなんの力もない。

と言うのも、この力は母から娘に伝わるものらしく、

祖母はそれこそ自由自在と言った感じだったが、祖母の子は息子ばかり。

祖母の姉妹たちも、女の子には恵まれなかった。

祖母がこの話をしてくれたときは、

(ここには書いていない話もあります。

 希望していただければぼつぼつ書きます)

お伽話のように聞き入ったものですが、

その祖母も今年他界してしまいました。

祖母の「○○(私の名前)ちゃんだけは幸せになってほしい」

という言葉が忘れられません。


246 :本当にあった怖い名無し:2006/06/10(土) 17:28:23 ID:sDqWMIWm0

>>245 是非是非。


250 :本当にあった怖い名無し:2006/06/10(土) 17:49:44 ID:I9HU9MYrO

では…


風を呼ぶ力は昔からあったようで、

祖母の家系は江戸や平安の頃から重宝されていたようです。

ただ、風が吹いたからといって、

作物が実ったり富が築かれたりするわけではないので、

崇められるようなことはなかったそうです。

また、力が強ければ強いほど美くしく、

時の権力者の側女として不自由のない暮らしをしていた。

各言う祖母も若い頃の写真も晩年も大変きれいな人で、

(身内びいきではなく)

気立てもやさしく求婚者が絶えなかったそうです。

(祖母の葬儀の時に聞きましたが、

 求婚者には将校や華族などもいたそうです)

ただ、祖母には思い人(銀行員だった祖父)がいて、

すべて断ってしまったそうです。

当時のことですから、恋愛結婚なんてとんでもなく、

(祖母の家は大地主だったからなおさら)

親には反対もされたのでしょうが、たぶん不憫に思われたのでしょう、

結婚は許されました。

この力には黒い一面があるのです。


262 :本当にあった怖い名無し:2006/06/10(土) 23:51:11 ID:I9HU9MYrO

祖母の家系は皆、不可解な亡くなり方をしていたそうです。

ある日から衰弱しはじめ、

一月を待たずに元の面影を残さずやつれ果ててなくなるのです。

祖母もそうでした。

祖母は町医者にかかっていたのに、ガンで亡くなりました。

臓器の外側にガンができ、通常の15倍もの速さで進行していき、

なすすべもなかった…

医者も首を傾げていました。

こっちも死なせてやりたくなるほど苦しんでいました。

ただ、祖母は苦しいとか、そんなことは一言も言いませんでした。

ただ、あまりにも苦しそうな最後でした。


263 :本当にあった怖い名無し:2006/06/11(日) 00:00:07 ID:I9HU9MYrO

祖母は「みんなそんな風に死んでいくんだ」ということも

私に話していました。

だからその理由がガンだと言うことも、

通常では信じられないくらい進行が速いということも、

そんなことよりずっとずっと、

変わり果てた祖母の姿は私には恐ろしかった。


そして、祖母の葬儀の日はやってきた。

小春日和、気持ちいい風が不意に強く吹いて、祖母の骨を舞上げた。

あぁ送っているんだと思いました。よくわからないけどそれは確信できました。

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