アメリカ初の女性連続殺人鬼と呼ばれた「アイリーン・ウォーノス 」とは?
アイリーン・ウォーノス
アイリーン・ウォーノス(Aileen Wuornos、1956年2月29日 - 2002年10月9日)はアメリカ合衆国の連続殺人犯である。1989年から1990年にかけてフロリダ州で7人の男性を殺害したが、その全てについて、娼婦として働いていた時にレイプされた、またはされそうになったためと主張した。彼女は、有罪判決を下され、6件の死刑宣告を受け、2002年に薬物注射によって死刑が執行された。
アイリーン・ウォーノスの人生
ここで、逮捕されたアイリーン・ウォーノスの半生を振り返ってみる。彼女は1956年2月29日ミシガン州ロチェスター生まれである。
15歳の母親ダイアン・ウォーノスは、アイリーンを出産した時には、すでに夫と離婚していた。父親レオ・ピットマンは精神に障害があり、少女に対する猥褻行為で入退所を繰り返している男だった。そして、69年に刑務所内で首を吊って自殺した。
母親のダイアンがアル中になって育児を放棄した後、アイリーンは兄のキースと一緒に祖父母に預けられたが、祖父は激しい暴力を振るった。アイリーンはベルトのバックルで殴られたことを始め、ライターのオイルをかけられ、火をつけるという虐待を受けたこともあった。
そして、兄のキースと近親相関関係になった。
1971年3月には、14歳の若さで男子を出産してもいる。
出産後、アイリーンは祖父の家を家出した。そして、近くの森のなかに廃材で家を立てて住み、雪の日には近くにとめてあった廃車のなかに寝泊りした。
その後、祖母の病死、高校中退などを経て、ヒッチハイクをしながら売春で生計を立てるようになった。
74年には、酒に酔って車から銃を乱射して逮捕された。
76年、アイリーンが20才の時、ヨットクラブを経営する富豪ルイス・フェル(69)とヒッチハイクで知り合い結婚した。しかし、バーで暴力事件を起こすなど粗暴な性格が露見し、4週間で離縁されている。
77年に、21歳の兄が咽頭ガンで死亡した。アイリーンは1万ドルの保険金を手にした。冬の寒さの厳しいミシガン州を出て、フロリダへと向かった。そして、その地で売春をして暮らすようになった。
81年の5月には、ボーイフレンドと別れた精神的ショックから、酒に酔ったまま下着姿でコンビニ強盗をする。3年の実刑判決を受け、1年半服役した。84年には、マイアミで偽造小切手を使って逮捕された。
86年、ティリア・ムーア(24)という女性と知り合い、同性愛関係になる。性と犯罪にまみれながら売春を続けたが、30才をすぎて客が少なくなったため、ティリアと強盗を繰り返すようになった。自動車窃盗、公務執行妨害、偽証、武器の不法所持で逮捕された履歴がある。
この頃の遍歴におけるエピソードが元になって、リドリー・スコット監督の『テルマ&ルイーズ』という映画が生まれたといわれている。
殺人
1989年、アイリーンを車に乗せたリチャード・マロリー(Richard Mallory)というTV修理業を営む51歳の男性が最初の犠牲者となった。後に次々と5人の男性の遺体が発見された。マロリーを除いた被害者は下記の通り。デイヴィッド・スピアーズ(David Spears 重機オペレーター、43歳)
チャールズ・キャルズカドゥーン(Charles Carskaddon ロデオライダー、40歳)
ピーター・シームズ(Peter Siems キリスト教系新興宗教団体の伝道師、65歳、車は発見されたが遺体は見つからなかった)
トロイ・バーレス(Troy Burress トラック運転手、50歳)
ディック・ハンフリーズ(Dick Humphreys 元警察署長、ソーシャルワーカー、56歳)
ウォルター・ジーノ・アントニー(Walter Jeno (Gino) Antoni トラック運転手、60歳)
アイリーンとティリアは、犠牲者の一人ピーター・シームズの車の運転中に事故を起こしたことから捜査線上に浮かび、数ヶ月後に潜入捜査官の手により逮捕された。アイリーンはマロリーの件に対して、彼が彼女をレイプしようとしたと正当防衛を主張したが、1992年に有罪判決を受けた。ティリアは警察に協力するようになっていた。同年11月にマロリーが別の州において暴力的なレイプ行為により10年服役したことが明らかになったが、彼女に再審の機会は与えられなかった。
1992年3月、アイリーンはディック・ハンフリーズ、トロイ・バーレス、デイヴィッド・スピアーズを殺害した容疑を認めた。6月にチャールズ・キャルズカドゥーン殺害容疑も認め、5つ目の死刑判決を受けた。1993年2月にはウォルター・ジーノ・アントニー殺害容疑も認めた。ピーター・シームズに関しては遺体が見つからなかったために起訴されなかった。
アイリーンは彼女の犯した犯罪に関して、つじつまの合わない供述をしている。7人の男性を別々の機会に殺害したことを語っている。アイリーンは彼らにレイプされたと主張したが、後にその主張を撤回している。
逮捕後の当初、アイリーンは自白する気はなかったが、ティリアに嫌疑が及ぶと、これをかばうように自白を行った。殺害はすべて正当防衛と主張した。マスコミの取材が殺到、アイリーンはあることないことを織り交ぜつつ自白を続けた。法廷で検事に中指をたてたり、陪審を「クズ野郎」と呼んだ。
ティリア・ムーアは警察に協力するようになり、法廷ではアイリーンと目を合わせなかった。
当初、物証が弱く状況証拠と本人の自白が柱となっていたため、死刑とはならなかったが、92年、検察の控訴後に死刑判決が出た。
アイリーンはこの頃から「最初から殺して、金品を奪うつもりだった」と供述しはじめた。また「私は連続殺人犯で、機会があればまた殺す。私の中には憎しみがうごめいている」とも証言する。
そして「これ以上、私を生かし、税金を使って裁判を長引かせるのは無意味」とし、州最高裁に上訴する予定の弁護人を解任するよう裁判所に求めた。
自分の意志とは無関係に裁判を長引かせようとしている弁護人を解任するよう求めた裁判で、フロリダ州高裁は早く処刑して欲しいと望む申し立てを認めた。
弁護人は判断能力が疑わしいと反論したが、州巡回区裁のハチソン判事は、責任能力を認め、上訴棄却を望む意向を州最高裁に申し送ると決定した。
この決定によって死刑執行の期日が早まると判事に言われると、「怖くない。自分が何をやっているのか、十分承知している」と答えた。
7つの殺人で6つの死刑判決を受け、2002年10月9日午前9時47分に、薬物注射により死刑が執行された。46歳だった。1976年に死刑が復活してから、女性としてはアメリカ全体では10人目、フロリダ州では2人目の死刑執行だった。
死刑執行前に「神と共に戻ってくる」と最後の言葉を述べたらしい。
7人の殺人は、いずれも物証が弱く、状況証拠と本人の自白が柱となっていたため、本人が弁護士の指示通りに無実を主張し続ければ、死刑は回避できた可能性が高いが、死刑の早期執行へのアイリーンの意志は強かった。供述によれば、過去にも数回の自殺未遂歴があった。
彼女が裁判途中で積極的な自白に転じ、死刑を望むようになったのは、唯一信頼していたティリアが裏切ったことが大きな要因となっていたようである。
専門家によれば、反社会性人格障害の犯人は、自分が絶対的に正しいという自己イメージを持つと同時に、生きるに値しないゴミであるという矛盾したイメージも持っている。すさんだ人生の中で唯一信頼していたティリアに裏切られたことにより、自分の絶対性というイメージがもろくも崩れ去ったということなのであろうか。
91年には早くも、ティリアとアイリーンの車強盗とその逃避行をモデルにしたといわれる映画『テルマ&ルイーズ』が製作されている。
強姦されかけている相方を救うために人を殺してしまうのだが、それをきっかけに2人の女性が旅のなかで自己を解放していく姿が、フェミニストたちからも熱烈な支持を受けたらしい。一般には90年代の『俺たちに明日はない』『ゲッタウェイ』だと、傑作ロードムービーとして評価された。
2003年には、ティアラとアイリーンの恋愛関係を中心に描いた映画『モンスター』が製作されている。アイリーンを演じたシャーリーズ・セロンはこの役で見事オスカーを手にした。
映画化
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