【洒落怖】山にまつわる話(Part3)
『収録話』
■.人柱伝説 | /">人柱伝説">人柱伝説■.藁人形 | /">藁人形">藁人形■.おじさん | /">おじさん">おじさん
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■.赤トンボ | /">赤トンボ">赤トンボ■.記念写真 | /">記念写真">記念写真■.山の上の火葬場 | /">山の上の火葬場">山の上の火葬場
■.葦の生い茂った砂洲 | /">葦の生い茂った砂洲">葦の生い茂った砂洲■.火葬の死体 | /">火葬の死体">火葬の死体■.お不動さんの小さい像 | /">お不動さんの小さい像">お不動さんの小さい像
『人柱伝説』
89 :1/2:04/01/21 16:38
地名は忘れたし、うろ覚えなんだけど、どこかの民話。
山の上の池の主だか化け物だかが、洪水を起こし近くの村を沈めて、
自分たちの住処を広げようと相談をしていた。
崩れない堤にするには人柱を埋めるしかないが、人間は知らないから安心だなどと笑っていた。
しかし、旅の坊さんにそれを聞かれてしまう。
坊さんは逃げようとするんだが、気づいた主達は坊さんを捕まえて、
「命が惜しければ誰にもしゃべるな」と脅して解放する。
坊さんは逃げようとしたが、次第に村が不憫になり、村人にすべてを話してしまう。
大慌てで堤の補強を始めたが、主の言うとおりなら村を守るには人柱を立てるしかない。
村人が悩んでいると坊さん自身が、
「私は主との約束を破った為助からないだろう。ならば人柱になってこの村を救いたい」
そう言って、自ら人柱になる事を申し出た。
堤は完成し、村は助かり、坊さんは村人によって祭られた。
しかし時がたつにつれて、その場所がどこだったのかは忘れられてしまった。
概ねこういった話。
90 :2/2:04/01/21 16:39
そんな昔話が伝わる土地で、ある時大きな工事をすることになった。
地面を何メートルも掘り進むうち、大きな甕が見つかった。
甕の中には人骨が。一緒に僧侶の物らしい持ち物も納められていたらしい。
これは言い伝えにある村を救った僧侶の骨じゃないだろうか、ということになり、
今では下からライトアップして、博物館だかに展示されているそうだ(死)
長々と駄文すいません。
こんな話もあるから、人柱伝説ってのも、あながち御伽噺じゃないんだろうなと思いまして。
まぁ実際にこんな感動的な事があったのかは分かりませんが。
坊さん、ライトなんかあてられて可哀想だ。
それに写真いりだったんで、お化け屋敷に飾ってある骸骨みたいでした・・・。
『藁人形』
117 :ノブオ ◆x.v8new4BM :04/01/22 10:32
前にも書いたんですが、(捨てられた女リンク)
俺は建設会社で現場作業員をしています。
ある年の年末に、道路工事の現場で働いている時のことでした。
1日の作業を終えてプレハブの現場事務所へ戻ると、
ミーティングなんかに使う折り畳み式のテーブルの上に、新聞紙が拡げてありました。
真ん中が微妙にふくらんでいて、何か置いた上に新聞紙を被せてあるような感じ。
なにコレ?とか思って、何気なく新聞紙の端を持ってめくりました。
藁人形でした。しかも髪の毛付き。
「っじゃー!!」
けったいな声を上げた俺を見て、人が集まってきました。
「なんやなんや」「うわぁ!これワラ人形やんけ」「こんなん始めて見たわ」「やばいなー」
いつの間にか人だかりができて、ちょっとした騒ぎになりました。
そこへ、近くの砂防ダムの現場で働いているオッさんが入ってきました。
この現場事務所は、道路工事と砂防ダム工事の共用だったんです。
「ああ、コレな。松本んとこのオッさんが、木切ってるときに見つけたらしいわ」
松本というのは、下請けの土建屋だったんですが、
そこの作業員が見つけたのを、捨てるのも気持ち悪いということで、
事務所まで持ち帰ったのです。
「山に行ったら藁人形かて、タマ~にあるらしいぞ。ワシも何回か見たことあるで」
「人形は、明日にでも近くの神社へ持っていく段取りだ」という話でした。
118 :ノブオ ◆x.v8new4BM :04/01/22 10:34
翌朝、朝礼に出るために現場事務所へ行くと、入口のあたりに人が集まっていました。
「どないしたん?」
「夜のうちに誰かが事務所に入ったらしいわ」
見ると、入口のサッシが開いています。
そこから中を覗くと、荒らされている室内の様子がわかりました。
人里離れたところにある事務所だったし、セコムは付いていなかったしで、
朝イチのオッさんが第一発見者でした。
入口には鍵が掛かっていたのですが、無理矢理こじ開けられていたようです。
事務所の中には、パソコンや測量道具など値の張るものが置いてあったのですが、
そういったモノは何も無くなっていませんでした。
ただ、例の藁人形だけがどうしても見つからないそうです。
「ちょっとアレ見てみ」
俺の前にいたオッさんが指差す方を見ると、
床や壁の至るところに、泥だらけの足跡や手形が残っています。
「あの足跡な、あれ、素足やな…」
それを聞いて、俺は背筋が急に寒くなるのを感じました。
『おじさん』
146 :<< コピペ1話目 1/3 >>:04/01/23 15:21
数年前の夏、バイクでG県のK川に釣りへ出かけた。
土手を走りながらポイントを探して、いいポイントを見つけたのだが、
土手は急で鬱蒼とした薮に阻まれ、辿り着くには、
更に進んだところから降りて戻るしかなかった。
ポイント迄、巨大な岩に阻まれ何度も後戻りしながらも、辿り着いた。
絶好のポイント!僕は釣りに没頭し、日暮れかけているのも気付かなかった。
辺りは真っ暗。さて帰るかと思ったが、困った。真っ暗で何も見えない。
後ろを見ると、おじさんが一人夜釣りをしてる。
「釣れますか?」と尋ねると、「今日はだめやぁ。もう帰るわ」。
しめた!このおじさんに付いて行けば、土手の上に出られる。
帰り支度を素早く済まし、おじさんに訳を話し、後に続いた。
147 :<< コピペ1話目 2/3 >>:04/01/23 15:21
しかし、このおじさん、歩くのがもの凄く早い。
必死についていったが、やがて見失った。
おろおろしてる僕に、「おーい。こっちだぁ」とおじさんの声。
助かったぁと声の方へ。
しかし、おじさんの姿はない。
「こっちだぁ」と再びおじさん。
どうやらその声は、土手の薮の中から聞こえる。
最初に降りた場所より、遥かに及ばない所だ。
近道なのかな。と声のする方へ、僕は急な土手を上っていった。
しかし、そこは道というにはあまりにお粗末な道。
ふと静かなのに不安を感じ、「おじさん」と問いかけると、
「こっちだこっちだ。はやくしろぉ」とおじさんの声。
ほっとして進むが、あまりに道が酷いので思わず尋ねた。
「おじさん、ここから本当に上に出られるの?」
・・・・・・
?返事がない。
148 :<< コピペ1話目 3/3 >>:04/01/23 15:22
「おじさん?いるの?」
「ああ、こっちだぁ」
「この道で出られるんだね?」
・・・・・・
「おじさん、この道でいいんだね?」
「そうだぁ。はやく来いぃ」
「もう土手の上に、いるの?」
・・・・・・
「おじさん!?」
「はやく、こぉぉ~いぃぃ」
間延びした嫌な声…何か変だ…
「土手の上に出れられるのか」と尋ねると口を閉ざす。
人が通ったにしては草が倒れていない。蜘蛛の巣にもひっかかる。
嫌なものを感じた僕は、急に恐ろしくなって転がるように土手を降りた。
すると「ちっ」。上の方で舌打ちが聞こえた。
僕は背筋の凍る思いで、とにかくがむしゃらに走った。
何とかここへ来たとき降りた場所に辿り着き、急いで駆け上がり、
バイクに乗り来た道を帰った。
土手の上を走るバイクの軽快な音。
もう大丈夫とほっとして、なにげなく薮の方を見降ろした僕が見たものは、
薮の合間にある無縁仏と、その脇でこっちを睨んでいるおじさんの姿だった。
『老人達と穴』
149 :<< コピペ2話目 1/3 >>:04/01/23 15:23
友人と2人で車でスキー旅行に行った帰り、真夜中3時過ぎ、
東北の某村を、近道して通り抜けようと車を走らせていました。
土地勘が無い上に街灯の無い真っ暗な道で、2人共かなり不安でした。
両脇の畑は残雪で真っ白でした。
不意に脇から松明を持った老人が、何か叫びながら私たちの車に向かってくるのが見えました。
老人の表情が尋常で無いのが怖かったのですが、何を言ってるのか聴く事にして、
車を止めて窓を開けました。
方言で聞き取りにくかったのですが、怒った口調で先に行くなと言ってるようでした。
150 :<< コピペ2話目 2/3 >>:04/01/23 15:23
しかし、今から来た道を戻る気になれなかったので、
どうしてこの先に行けないのか聞き返しました。
ですが老人は、この先に行くなの一点張り。
こちらも意地になって、窓を閉めて車を発進させました。
するとまたその先で、松明を持った別の老人が雪原から現れました。
同じ事を言われるのがイヤだった私たちは、車を止めずに行き過ぎました。
ところが、今度はいきなり道が無くなっています。
急ブレーキで止めた車のヘッドライトの光線は、
何も照らし返すことなく、ホントに漆黒の闇です。
何事かと思い、2人で車を降り立って見た光景は信じられないものでした。
凄まじくデカイ穴が雪原に開いているのです。
151 :<< コピペ2話目 3/3 >>:04/01/23 15:25
その穴はクレーターの様な形で、穴自体には残雪がありませんから、
昨日今日に出来たような感じです。
底には鳥居が立てられて、鳥居の廻りで松明を持った数人が、何か儀式らしい動作をしています。
2人共、同時にコレはマズイと感じて、大急ぎで車に乗り込み、もと来た道を戻りました。
道の途中で、十数人の老人がこちらを睨み付けている横を通り抜ける時には、
ホントに冷や汗が噴き出しました。
山を1つ越えて街灯の灯った町中に入った瞬間に、友人も自分もやっと口が開きました。
後日、あの穴は何だったのか確認しようと、昼間同じ村に出かけたのですが、
穴は無く、道も全く途切れていませんでした。
ただ、ゴルフ場を作る工事の告知の看板だけがそこに有りました。
『モスグリーンのジャンパーの男』
152 :<< コピペ3話目 1/2 >>:04/01/23 15:25
春の新緑の中、単独で下山していました。
山は登る時は意気揚々としていますが、下りは虚しいものがあります。
また、単調な下りは疲れるものです。ただ新緑の林の中を黙々と降りて行きます。
気づくと10m程先に、自分と同様に単独で下っている人がいます。
人間、単調な中にも目標があると元気づくものです。
よし、追いついて声をかけてみるか。と考え、ペースを少し上げました。
相手もそれに気づいて、ペースアップしたようです。
もう少しペースを上げてみましたが、相手との差は縮まりません。
とうとう疲れて立ち止まり、小休止を取ることにしました。
すると、前にいる人も休んでいます。
顔は見えないのですが、モスグリーンのジャンパーを着ている男性でした。
その時、以前誰かから聞いた話しが頭をよぎりました。
『山に住む霊に付いていくと行方不明になる』という話でした。
153 :<< コピペ3話目 2/2 >>:04/01/23 15:26
聞いたときにはバカにしていた怪談話ですが、
このときばかりは、思い出した途端に全身から冷や汗が噴き出してきました。
とにかく出立する事にして、立ち上がりました。
前方のモスグリーンのジャンパーの男も、立ち上がって歩き出そうとしています。
前方の男を見ないようにして、歩き出しました。
1時間以上は歩き続けた頃、前方から人の声がしました。
一瞬ドキッとしましたが、見ちゃいけないと思い、なるべく下を見つめて歩き続けました。
声は段々近づいてきて、何を言っているか分かるようになりました。
どうやら、登山途中の二人連れが声を掛け合っているようです。
顔を上げて声の方向を見ると、ジャンパーの男ではなく初老の夫婦でした。
すれ違いざま挨拶を交わし、何人くらいの下山者と会ったか聞きました。
パーティーが二組、単独は自分が初めてと言っていました。
前方を見ると、もう誰もいません。
時計を見ると、最初にモスグリーンのジャンパーの男を確認してから、
10分しか経っていませんでした。
『林を縫う光』
154 :<< コピペ4話目 1/2 >>:04/01/23 15:27
高校の山岳部で、飯豊連峰を縦走した。
下山日に、高度を下げ最終宿泊地へと向かった。
林の脇に川筋を見る細い道を進み、モッコ渡しを渡り、
(水面から十分な高度を取った)河原の一角の大きな木の根本に三張りの天幕を張り、
幕営を始めた。
夕食の準備と帰路の偵察を行い気分は最高。皆で歌を歌い大いに盛り上がった。
時刻は9時前後。山行としては、かなり遅くまで騒いでいた事になる。
残った食料を平らげ、さあ寝るかと準備を始めた時、OBの1人が不思議そうな顔をした。
「どうしたんですか」と問いかけると、「遭難者かもしれない。静かにしろ」と言う。
聞き耳を立てたが、川のせせらぎ以外に聞こえない。
OBが見つめている先を追うと、懐中電灯の光が林を縫うように近づいてくる。
ヘッドランプを付けた登山者と同じぐらいの高さを、
林の木々に遮られながらモッコに近づいてくる。
自分達は次に起こるであろう事を想像し、静まり返った。
155 :<< コピペ4話目 2/2 >>:04/01/23 15:28
すると光が消え、あたりは漆黒に染まった。
モッコ渡しは渡れば大きな音がする。異常があれば見に行き助ければいい。
静寂の中、数分暗闇を見つめていた。
突然3年生が大きな木の梢を見つめ、「何だこれは」と叫んだ。
全員が立ち上がり、彼の見つめる梢を眺めた。
そこには、先ほど梢に隠れながら近づいてきた明かりが輝いていた。
10mほどの高さに、かなり明るい光があった。
懐中電灯を点灯し梢を照らすと、突然明かりが消えた。
「何だ今のは」「化け物か」「何かの発光現象か」
「あれを見ろ」
誰かの叫びが聞こえた。
彼の指さす方向、川に沿って20mほど下流。
今迄梢で輝いていた光がそこにあった。
光は凄い早さで川を下るように移動し、やがて見えなくなった。
光の大きさは20cmほど、丁度ヘッドランプの光のような色だった。
あれから随分時がたつが、あれが一体何だったのか未だに判らない。
『赤トンボ』
221 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/01/26 00:03
友人の話。
一人で秋の山野をハイキングしていた時のこと。
午前の爽やかな空気の中、草原をゆったりと歩いていたそうだ。
彼の目の前に、赤トンボの大群が姿を現した。
次の瞬間、彼はトンボの群れに包まれてしまったという。
右も左もトンボしか見えず、彼らの羽音しか耳に聞こえなかった。
ひどく幻想的な情景だったと彼は言う。
唐突に赤トンボの群れは過ぎ去り、あたりを見渡した彼は驚いた。
見事な夕焼けが目に入ったからだ。
トンボに包まれていたのはわずかな時間のはずなのに、半日以上の時間が過ぎていた。
「虫も人を化かすことがあるのかな」
彼は不思議気にそう語ってくれた。
今、その草原は切り崩され、大きな大学が建設されている。
トンボもその数をすっかり減らしてしまったそうだ。
『記念写真』
249 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:04/01/27 02:47
神奈川県丹沢。写真部の貴重な財産は保存されてる膨大な量のネガフィルム。
その中でも忘れることができないものもある。
私が駆け出しの昭和45年6月。
西丹沢を縦走中の東京の高校生グループが遭難し、女生徒1人と、
引率の先生が沢に転落し死亡する事故があった。
豪雨で現場へ入れず、ふもとで足止めされていた時、
支局の記者が救助された生徒から1本のフィルムを入手した。
直ちに写真店の暗室を借りて現像処理したが、
プリントした写真を点検しているうちに背筋が寒くなった。
というのは、山頂での記念写真、途中のスナップ、
いずれも亡くなった2人の表情は悲しげだった。
1コマも笑顔がなかった。
さらに遭難直前、鍋割峠の草つきを下るところでは、
その女生徒だけが祈るような姿でたたずんでいるではないか。
単なる偶然の一致なのか、それとも私の思い過ごしだったのか。
今もってわからない。
『山の上の火葬場』
299 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:04/01/31 03:10
親父から聞いた話を思い出した。
オレの故郷にあった火葬場に、昔勤めていた爺さんの話。
その火葬場は小高い山の上に建っていたんだけど、
遺体が運ばれてくる前日に、魂が生前の姿で火葬場に続く坂道を登ってくるのが見えたらしい。
「……この方は突然心臓麻痺か何かで亡くなられたんじゃないか。
坂道を元気に駆け登って来たからな、苦しそうに胸を押さえてらっしゃった。結核だろうな」
そうやって死因を言い当てたそうだ。
『葦の生い茂った砂洲』
392 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/02/04 02:45
知り合いの話。
配達業をしていた彼が、よく通っていた山道があった。
その山道は途中で川と面しており、葦の生い茂った砂洲が見える。
いつの頃からか、その葦の繁みの中に女性が立つようになったのだという。
彼が言うには、腰までの黒い髪に白いワンピース姿で、かなりの美人だったそうだ。
最初は怪訝に思っていた彼は、そのうち彼女を眺めるのが楽しみになった。
なぜか夕刻にしか現れないのが気にはなったが。
一月ほど経つと、彼女の方も彼を意識したらしい。
彼が通ると微笑みかけるようになったのだ。
彼は手を上げて挨拶を返し、すっかり有頂天になっていた。
「次は車を止めて、直接話しかけようと思うんだ」
ドライバー仲間うちで飲んだ時に、彼はこう打ち明けた。
しかし仲間たちは皆、困ったような何ともいえない顔をした。
「車から降りるのは止めた方がいいよ、絶対に」
「どうしてさ?」
仲間たちが渋々といった感じで順番に口を開く。
「その彼女が立っているあたりな、3年前まで小さな火葬場があったんだ」
「一番近い民家でも山一つ向こうなのに、彼女はどこから来てるんだ?」
「砂洲へ渡る橋も、今は落ちてなくなっているはずだよ」
皆の酒を飲む手が止まっていたという。
393 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/02/04 02:47
それ以来、彼は夕方にその山道を通るのを避けていた。
しかしある夜、急な配送が入って、仕方なく彼はこの道を通ることにした。
もう何も出ないだろうと、高をくくっていたせいもある。
砂洲のあたりまで差しかかり、彼は悲鳴を上げそうになった。
暗黒の中に、白い立ち姿がぽつんと浮かび上がっていたのだ。
ライトも届いていないのに、なぜかくっきりと見えたのだという。
急いで通り過ぎようとする彼に向かい、女は顔を上げた。
目元は見えなかったが、口元は怒りに歪んでいるのが分かった。
人間のものとは思えない鋭い尖った犬歯が覗いていた。
いきなり彼女は走り出し、葦の中を車に並んでついてくる。
アクセルをベタ踏みすると、その姿はあっという間に小さくなって背後の闇に消えた。
幸い、彼女はどうやら川を渡れない存在らしかった。
彼は金輪際、その山道には近寄らないことにしたそうだ。
次に逢ってしまうと、何かもうひどいことになりそうな気がするのだという。
395 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/02/04 02:55
え~、長文にて今夜は一話だけでありやんす。
こうして文に起こして見ると、どことなく牡丹灯篭みたいな気もします。
ということは、捕まったら一緒に連れて行かれる・・・?イヤア!!
でも彼以外には見えていなかったようなんですコレが。
波長ってのはこういう類のにもあるのですかね。
ちなみにこれもうちの地元だったりします。イヤア!!
『火葬の死体』
637 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/02/08 23:56
知り合いの話。
彼の実家では少し前まで、山頂の小さな野原で火葬をおこなっていた。
山奥の集落ゆえ、死人が出ると村内で埋葬するしかなかったのだ。
火葬をする夜は、村の家々は固く扉を閉め、物忌みをしていた。
何でも、その山には性質の悪い何かがいて、時々死体に入って暴れたのだという。
なぜか取り憑かれるのは、人間の死体だけだったらしい。
死体が村に入り込んで奇声を上げる様は、とても正視に耐えなかった。
また遺族も、そのようなことには我慢ができなかった。
そのため死体は灰にし、取り憑かれないようにして埋葬していたのだ。
土葬するなど以ての外だった。
しかし時には、生焼けの死体が村に殴りこむこともあったらしい。
そんな事態を防ぐため、火葬の際は五人がかりで見張ったのだそうだ。
悲鳴を上げて飛び出す死人を火中に押し返すのは、とてもおぞましかったという。
大きな市に合併されると、道路も引かれ合同の火葬場も使えるようになった。
同時に、死体の心配もせずに済むようになったという。
そんな昔ではなく、まだ昭和の始め頃の話なのだそうだ。
『お不動さんの小さい像』
722 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:04/02/11 03:36
祖父から聞いた話。
山歩きが日課で、常にお不動さんの小さい像を持っていた。
ある日、熊に出会い、襲われ、気がつくと病院のベッド上だった。
肺の1センチ上まで切り裂かれていたが、たまたま助かったらしい。
命が助かったのはお不動さんのおかげ、と祈りをささげようとしたら、
持っていたお不動さんの胸部に、刃物で切ったかのような傷跡がついていた。
その傷跡は、自分の怪我と全く同じ位置にあり、後ろの炎まで達していた。
お不動さんが自分の身代わりになって、ぎりぎり助けてくれたと咄嗟に思ったそうな。
「熊の爪が振りかぶられた瞬間、初孫見るまで死ねんのじゃ(゚Д゚)ゴルァ!と思ったら、
電波受信したように頭が真っ白になった」
と語っていた。
ちなみに熊はその後猟銃で撃たれたが、なぜか銃弾以外の穴のような傷跡もついていたそうだ。
祖父は「お不動さんの独鈷杵攻撃に違いあるまい」と言っていた。
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