日本で起きたバスジャック事件
バスジャックとは
バスジャック(和製英語:busjack)とは、運行中のバスを乗っ取る行為のことである。
バスジャックの目的はハイジャック同様、亡命やテロリズムなど目的意識の明確なもの、あるいは精神的錯乱、心理状態の異常といったものなど、様々である。日本では亡命目的でバスを乗っ取った例はなく、ほとんどのバスジャック事件が心理状態の異常による事件である。1970年によど号ハイジャック事件が発生し、「ハイジャック」という言葉が日本で使われるようになった際に、「ハイ」は高空を飛ぶ航空機を指すという語源俗解から、「ジャック」は乗っ取り行為を指すという逆生がなされ、バスを奪取する行為は「バスジャック」、列車の場合は「トレインジャック」(trainjack)という和製英語が生まれた。元の英語では、航空機・鉄道車両・バスなどの別を問わず、交通機関を暴力等で奪取する行為はすべてハイジャックと呼ぶ。もっとも、英語でも航空機のハイジャックは skyjack ともいい、また自動車の場合の「カージャック」は carjacking 、船舶の場合の「シージャック」は seajack ともいうので、まんざら奇矯な造語でもない。
日本で起きたバスジャック事件
2011年(平成23年)11月16日 千葉中央バス
16日午前9時40分ごろ、千葉市中央区中央2丁目の路上で、「ナイフを人に突きつけた男がバスの中にいる」と110番通報があった。千葉中央バス(本社・同市)が運行する路線バスで、男が乗客の女性を人質にとり、運転手の男性も取り残された。千葉県警が約40分後に男の身柄を確保、人質強要処罰法違反容疑で現行犯逮捕した。逮捕されたのは、自称荘司政彦容疑者。
県警の調べによると、荘司容疑者はバスの車内で、女性に果物ナイフのような刃物を突き付けて立てこもり、「マスコミを呼べ」などと要求した疑いがある。車内には運転手の大野貴光さんも取り残された。荘司容疑者は刃物のほかに封筒を手にしていたという。
通報から約40分後の午前10時20分、警官隊の説得に荘司容疑者が応じ、身柄を確保された。女性と大野運転手にけがはなかった。
路線バスはJR千葉駅前を午前9時36分に出発、JR鎌取駅(同市緑区)に向かっていた。県警によると、荘司容疑者は千葉駅前で乗車して最後部の座席にすわった。女性は最後部から2列目の座席にいたという。車内には当時、ほかに複数の乗客がいたが女性と大野運転手を残してほかの乗客は降ろしたという。
千葉中央バスへの取材によると、大野運転手が携帯電話で「果物ナイフのような刃物を持った男が立てこもっている」と営業所に連絡してきたという。
現場はJR千葉駅から約650メートルで、周辺にデパートやホテルなどが立地する繁華街。一帯の道路が封鎖され、警官隊がバスを取り囲む様子を大勢の通行人が見守るなど騒然とした。
2011年(平成23年)3月2日 遠州鉄道路線バス
中日新聞・静岡新聞・朝日新聞などによると、2011年3月2日(UTC+9)午前11時20分頃、浜松市中区砂山町の浜松駅バスターミナル15番のりばにて、遠州鉄道バス(以下「遠鉄バス」)の40気賀三ヶ日線 気賀駅前行き(エアロスターKC-MP747M・35号車)がバスハイジャックされた。犯人は殆どの乗客を降ろした後、「細江営業所へ行け」と指示し、バスは運転手と、障がいがあり浜松駅バスターミナルで降車出来なかった乗客1人を乗せ発車。この1人の乗客は途中の浜松北高バス停付近で降ろされている。
バスを降ろされた乗客が110番通報した他、11時35分頃に遠州鉄道社員が浜松駅前交番に届け出ている。
約30分後に浜松市西区大山町の奥大谷バス停付近にてパトカーがバスを包囲。遠鉄バス乗務員が扉を開け、細江警察署署員により犯人は取り押さえられ逮捕された。犯人は「刑務所に入りたかった」と供述しているという。また、この事件でのけが人はいなかった。
2008年(平成20年)7月16日 東名ハイウェイバス(愛知バスジャック事件)
7月16日午後0時50分ごろ、愛知県岡崎市の東名高速道上り線で、ジェイアール東海バスの運転手が「ナイフを持った若い男が立てこもっている」と携帯電話で通報する事件があった。県警はバスを同高速美合パーキングエリアに誘導し、男を説得。
同日午後1時56分、監禁、銃刀法違反容疑で男を現行犯逮捕した。
車内には運転手のほか乗客10人が乗っていたが、乗員にけがはなかったという。
男は取り調べに対し「自分は14歳だ」などと話しているようだ。
ジェイアール東海バスによると、バスは名古屋駅発東京駅行きの高速バスで、同日正午に名古屋駅を出発した。
東名高速上り美合パーキングエリアは同県岡崎市保母町にあり、駐車場と飲食店などがある。
逮捕された男は愛知県警の調べで、山口県宇部市内の市立中学2年の少年と判明した。動機について「親に怒られ嫌がらせでやった」などと供述している。
少年は、犯行時に果物ナイフを2本所持していたが、「ナイフは愛知県内の100円ショップで買った」という。東名高速名古屋インターに入ってからナイフをちらつかせていた。
その後、少年は運転手にナイフを突きつけ、「東京までノンストップで向かえ」などと要求したが、愛知県警の捜査員が現場付近に到着すると、バスは捜査員の説得と誘導に応じて高速道路脇から、美合パーキングエリア内に入っていったらしい。
動機については、他に「女の子のふられた」などとも話している。
少年は家出中だった。
バスは大型車用の駐車スペースの手前で停車。すぐに4、5人の警察官が運転席側に、反対側の乗降口にも5人前後の警察官が張り付いた。
少年はバスの男性運転手の首にナイフを突き付けるなどしていた。
しかし、警察官の説得に応じ、近くの席に持っていた2本のナイフを置き、乗客を解放したという。その瞬間と思われる時間帯に、乗降口側の警察官が次々と中に入り、車内で身柄を確保した。
7月11日に少年の担任教師らが少年の自宅を家庭訪問して、親と話し合いがもたれた。
少年が同じ中学校の友人に「現金10万円を貸してくれないか」と頼んだことだった。友人の保護者から学校側に金銭問題について相談が寄せられたことから家庭訪問が行われた。このことで14日夜に少年は親から厳しく叱責される。
「友人に借金を申し込んだことなどを親にしかられ、嫌がらせでやった」
動機についてこう供述している少年。逮捕直前に説得にあたっていた警察官にも「お金のことで親ともめて、『死んでしまえ』『児童相談所に行け』と言われた」と親への不満を述べたという。
愛知県警の調べに、金銭トラブルについて「友人から10万円を借り、交際したいと思っていた女子生徒に渡したかった」と供述しているというのだ。
捜査幹部は「少年が好意を寄せていた女子生徒にしつこく交際を求め、困った女子生徒があきらめさせるためにわざと高額の話をしたことを真に受けたのでは」と分析している。
少年の両親は「交際相手との付き合いをしかったのが家出の理由だろう」と山口県警に語ったとされる。だが、一方で学校関係者は異性問題について「少年の一方的な思い」としている。少年は「少女ともう一度付き合いたい」と話したという。
2007年(平成19年)11月19日 横浜市営バス
2004年(平成16年)4月3日 秋田駅前行秋田中央交通
秋田駅前行秋田中央交通の路線バスが秋田市手形付近を走行中にバスジャックされる。信号停車中に乗客らが犯人を取り押さえ、逮捕。
2004年(平成16年)1月5日 遠州鉄道路線バス
5日に静岡県磐田市内で遠州鉄道が運行する路線バスを乗っ取り、運転手を一時車内に拘束したとして人質強要処罰法違反容疑で送検されていた42歳の男に対し、静岡地検浜松支部は26日、同容疑での起訴を見送り、さらに厳しい強盗と銃刀法違反の罪で起訴したことを明らかにした。「模倣性の高いバスジャック犯は厳重に処分する」という流れがすでに定着しており、これに従ったものと思われる。
この事件は今月5日に発生している。同日の午後4時5分ごろ、磐田市内を走行していた遠州鉄道バスが刃物を持った男に乗っ取られた。男は先に乗っていた客2人にバスから降りるように促すとともに、新たに乗り込もうとした乗客に対しては「危ないから乗るな」と告げた上で運転手には「富士市まで走れ」と要求していた。
男は40分後に車内へ突入した警察官に銃刀法違反と逮捕監禁の現行犯で逮捕されたが、後の取り調べで「交通事故の罰金10万円が払えなくなり、懲役に変えてもらう交渉をするため静岡地検富士支部に行こうと思った」と供述。
「当初から逮捕されることを目的としていた」ともほのめかすなど、通常のバスジャック事件とは異なる一面を見せていた。
後の調べで、この男は昨年5月に交通事故を起こし、7月に静岡地検富士支部から罰金10万円の略式命令を受けていたことがわかった。
ところが男は支払い困難を理由に納付を行わなかったことから、この日の午前中に担当者が「懲役に切り替えて、労役場で働いてもらうしかない」と告げた。男はこれが原因で自暴自棄となり、バスジャックを企てたという。
検察では男の罪状について慎重に検討してきたが、逮捕容疑の人質強要処罰法違反では懲役期間が6カ月以上10年未満と比較的短く、バスジャックという重大犯罪にはふさわしくないと判断。より罪が重く、刑罰も5年以上の懲役と長い強盗と銃刀法違反に切り替えることにした。
男はバスジャックしたのみで、乗客や乗員から現金を奪うことは無かったが、「威力(刃物)によって脅した上で運転手を降車させ、バスを強奪したこと」が強盗に当たると検察では判断したらしい。
長野県内の上信越自動車道で走行中の路線高速バスを乗っ取り、人質強要処罰法違反と銃刀法違反の罪に問われた21歳の男に対する初公判が21日、長野地裁で開かれた。被告は容疑を全面的に認めている。この事件は今年7月28日の午後6時40分ごろに発生している。新宿発長野行きの高速バス(運行会社:川中島バス)が長野県坂城町内の上信越自動車道下り線を走行していたところ、乗客の若い男が運転手に刃渡り22cmのナイフを突きつけ、「このバスを今からジャックする。次のパーキングエリア(PA)まで走れ」と命じた。
運転手は男の指示通り、最寄にある松代PA(長野市篠ノ井東福寺)までバスを走らせたが、男はさらに「バスジャックされたと110番通報してもいい。警察官とパトカーをできるだけたくさん集めろ」と命令した。
運転手は男を説得し、午後7時前までに乗客33人を解放する約束を取り付け、実際にそれを実行させた。車内に残った運転手は世間話をしながら今度は投降を呼びかけ、事件発生から54分後の午後7時33分に運転手も車外へ脱出。男は直後に突入した警察官に取り押さえられ、銃刀法違反の現行犯で逮捕された。
21日の初公判で被告の男は起訴事実について全面的に認めるとともに、バスジャックに至った動機として「当日の朝に母親と口論し、自暴自棄になってやった。警察の突入直後に自殺するつもりだった」と陳述した。
警察側も「被告は事件を起こして世間の注目を自分に集めることが目的であり、全ての行為が自暴自棄を理由に引き起こされた」と指摘している。
京都市交通局は18日、13日に起きたバスジャック事故の解決に協力したとして、第一発見者である阪急バスの運転手に感謝状を贈ったことを明らかにした。事件が発生したのは13日の21時35分、京都市伏見区の横大路車庫を出発し、竹田駅東口に向かっていた路線バスが刃物を持った男に乗っ取られ、乗客の女性一人を人質に、運転手へ「大阪へ向かえ」と命じた。
このバスを帰宅途中の阪急バス運転手が京都府乙訓郡大山崎町内で発見。バスが「竹田駅東口」行きの方向幕を出したまま、全く見当違いの場所を通っていることに疑問を感じ、勤務先の阪急バスに「おかしな市バスが大阪に向けて走っている」と連絡。知らせを聞いたバスの営業所が警察に通報した。
知らせを受けた大阪府警の茨木署の捜査員が国道171号線を大阪方面に向かうバスを発見。22時25分に機動隊員が茨木市内の交差点で停止させ、犯人を確保。運転手や人質の女性にケガはなく、事件は無事に解決した。
この結果を受け、市交通局の幹部が伏見区横大路にある阪急バスの支社を訪ね、運転手と支社代表に「迅速な判断で一人のけが人も出すことなく解決できた」と感謝状を手渡した。
愛媛県八幡浜市で宇和島自動車の路線バスがバスジャックされる。なお本件は、1997年(平成9年)に発生した伊予鉄南予バス特急バスのバスジャック事件の犯人と同一人物による犯行。
2000年(平成12年)7月22日 西日本鉄道の高速バス
2000年5月3日午後0時56分、佐賀駅バスセンターから出発した福岡・天神行きの西日本鉄道高速バス「わかくす号」が、17歳の少年に乗っとられた。東に向かって走りつづけるバスの中で、少年は3人の女性客を切りつけ、1人を殺害した。2000年5月3日午後0時56分、佐賀駅バスセンターから福岡・天神行きの西日本鉄道高速バス「わかくす号」が出発した。乗客をは15~16人ほど。ゴールデンウィークということもあり、祖父母に会いに初めての1人旅をする少女、買い物に行こうとする若者、法事を終えて福岡に帰る人などがいた。
「天神には行くな。このバスを乗っ取ります」
午後1時30分、九州自動車道大宰府インター付近に差しかかった頃、運転手の真後ろの席に座っていた少年が突然立ち上がり、落ちついた声でそう言った。手には刃渡り30cmほどの牛刀を持っており、平野忠運転手(当時56歳)に突き付け、東に向かって走りつづけるように指示した。
「言うことを聞かないと、殺します」
少年は続いて、21人の乗客(途中で5人が乗りこんできた)の荷物を前に集めるように言い、全員を後ろの席に下がらせた。この時、真ん中の方の座席で、少年に気づかず眠り続けている女性がいた。東京在住の高取千佳さん(当時34歳)である
少年は高取さんの方に近づいていって、「あなたはふて腐れていますねえ」と言うと、その首筋に牛刀を突き立てた。
「あなたたちが行くのは、天神ではなく地獄です」
少年の指示は続き、荷物から携帯電話などをかき集め、カーテンの窓も閉めさせたうえ、女性客を前に、男性客を後ろにまわした。さらに座席の間の補助席を倒すようにも指示し、腕力のある男性客が少年を取り押さえようとしても、すぐには前方に来られないようにした。
平野運転手は「1人で乗ってきた少女がいるので、この子だけでも降ろしてやって欲しい」と提案してみたが、少年はあっさり却下した。
バスは走りつづけ、本州・山口に渡る関門橋が目前に迫った頃、少年は乗客に向かってトイレに行くことを許可した。バスを路肩に停めさせ、「逃げたりしたら、残っている乗客を全員殺します」と脅したうえで1人ずつ降ろした。
1人目は小型犬を抱いた女性(当時40歳)だった。少年はバスの昇降口から身を乗り出し、様子を伺っていたが、女性は戻っては来なかった。
「あいつ、帰ってこない。裏切りやがった。許さない。絶対に殺してやる」
少年は初めて興奮した様子を見せ、平野運転手にバスを発車するように命じた。
一方、女性は高速道路沿いにある非常電話から、バスが乗っ取られたことを道路公団に通報している(午後2時47分)。道路公団は「わかくす号」がまだ福岡に着いていないことを確認、すぐさま福岡県警に通報した。連絡を受けた山口県警が緊急配備を敷いたのは3時9分のことだった。
「僕は約束は守ります。見せしめです。1人殺します」
少年は山口由美子さん(50歳)の席に近づき、首めがけて牛刀で何度も刺した。山口さんはおびただしい血を流しながら通路に倒れこんだ。少年が足でつついて、「生きてるか?」と確認したところ、山口さんは「はい・・・」と答えた。
「連帯責任なんだから、逃げようと思うなよ。逃げるたびに刺すぞ」
少年はそう言った。
午後3時35分、中国自動車道を走る「わかくす号」を確認した警察は追尾を開始。
同じ頃、乗客の女性(当時30歳)が、走行中のバスの窓を開け、飛び降りた。この女性は右足骨折の重傷を負ったが、バス内ですでに2人が犯人に刺されたという情報を伝えている。
少年は女性が窓から逃げたことにはしばらく気がついていなかった。だが、窓が開いているのを見つけると、近くに座っていた塚本達子さん(68歳)に「逃げようとしているんですが」と、首を牛刀で刺した。牛刀はネックレスに触れたことから、刃こぼれしていた。少年はそのことを気にして、全員にネックレスをはずさせた。
3時45分、少年はなぜか携帯電話から自分で110番している。ヤマダと名乗り、「こっちには人質がいる」と忠告した。
4時9分には、山口県警に「拳銃を用意してください」という要求をしている。
この頃、少年は1人で乗っていた少女・Y子ちゃん(当時6歳)を近くに座らせ、盾にし始めるようになっていた。
4時18分、NHKが初めてこの事件の第一報を報道、各メディアも続いた。この時は犯人について「高校生風の若い男」と報じられていた。
上空には報道機関のヘリ10数機が、バスを探して追い始めた。
バスは山口県の下松SAに近づいていたが、先ではコーンと、県警のパトカー7台が道路をふさぐかたちで停められていた。バスは一旦停まり、パトカーとにらみ合う形となったが、警察はすぐに封鎖を解除、目の前を通過された。
4時21分、バスが走り始めた直後、後ろに座っていた男性(当時52歳)が窓から飛び降り、軽傷を負った。
すでに3人に逃げられた少年は、すでに弱っていた塚本さんの首に再び牛刀を振り落とした。塚本さんはしばらく息が荒い状態が続いた後、それも聞こえなくなり、出血も止まった。誰もがこの女性の死を悟った。少年はさらに2人連れの女性客(ともに当時18歳)に向かって「次はあなただ。その次はあなた」と殺人予告までしている。
5時24分、広島県の武田山トンネル内で、少年は平野運転手にバスを停めさせた。男性客4人を全員降ろしたのである。男性が降りる間は少年はずっとY子ちゃんの首に牛刀を突きつけていた。男性客の中には妻と一緒だった人もいて、妻を残して降りるのは辛いことだったが、すでに3人が殺されている(ように見えた)、下手に逆らうことはできなかった。
この頃には、すでに容疑者を「佐賀県在住の、通院歴のある17歳」と報道するメディアもあった。警察も少年の自宅に電話し、確認している。
5時50分頃、広島県警は「わかくす号」を山陽自動車道・奥屋PAに誘導し、バスは警察車両に取り囲まれるかたちで停車した。
警察の交渉が始まると、少年は拳銃と防弾チョッキとスタンガンを差し入れることを要求した。交換条件で、少年は負傷していた山口さんと高取さん、そして塚本さんを解放し、防刃チョッキを受け取った。
搬送された3人のうち、塚本さんの死亡が確認され、高取さんは首に、山口さんは顔や頭部など数ヶ所に傷があり、ともに重傷だった。
少年と警察の間では3時間半ほど膠着状態が続いていたが、午後9時37分、バスはパトカーに先導されて再び走り始めた。
少年によると、「東京・霞ヶ関に行きたい」らしく、燃料の補充を要求した。このためバスは給油のために、小谷SAに入った。
10時34分、最高齢の女性客を解放。この女性客は「おねがいだから、子ども(Y子ちゃん)も一緒に出してあげて」と頼んだが、少年は聞こうとはしなかった。
バスの外には駆けつけてきた少年の両親と担当医がいた。だが、母親の方は「説得する自信がない・・・」と泣き崩れる。代わって医師が説得するも、少年は興奮するばかりだった。
日付が変わってまもなく、まくらと食料が差し入れられた。少年は女性客におにぎりやウーロン茶を配らせたが、それを口にしようとする人は少なかった。
午前5時頃、特殊急襲部隊「SAT」は少年がY子ちゃんと離れた瞬間を狙い、左右の窓をわり、「フラッシュバン(閃光手投げ弾)」を投げ入れ、取り押さえた。救出の際に1人が負傷したものの、当時乗っていた人は全員無事だった。
別名「ネオむぎ茶」事件
「ネオむぎ茶事件」とは2000年5月3日に発生した西武鉄道高速バス、バスジャック事件のことである。2chにおいて犯行予告がされたことから話題となった。またこの事件の実行犯をネオむぎ茶と呼ぶことがある。
1977年(昭和52年)10月15日 西肥自動車の路線バス(長崎バスジャック事件)
-経緯-昭和52年10月15日午前、長崎県平戸口発長崎行きの西肥バスが国道206号の大村市付近で「アソレンゴウ セキグン」と名乗る2人組の男に乗っ取られた。2人は乗客と運転手に向かって銃や爆弾(模造)を見せて脅した。途中、バスの燃料が無くなりガソリンスタンドに立ち寄った。給油中、運転手から「バスが乗っ取られている」ことを告げられたスタンド従業員は直ちに警察へ通報した。
連絡を受けた長崎県警は午後1時30分に給油中のバスを発見。直ちにバス後部にあるエンジンルームを開けてエンジンコードを切断。走行不能にした。犯人側も乗客5人の解放と引きかえに食料・水を要求し長崎県警は応対した。だが残る10数人の人質解放には強く拒否した。
犯人側は10数人を人質に捕ったままバスのブラインドを降ろさせるなど長期戦の構えを取った。また、「瀬戸山法務大臣(当時)、新自由クラブ代表・細川隆元(当時)を連れてこなければ交渉には応じない」とコメント。これには長崎県警も<赤軍派とは無関係では>と疑問を持った。
が、おりしも17日前の「日航機・インド・ダッカハイジャック事件」で日本政府は人質の解放と引きかえに身代金16億円と釈放犯6人の解放を実施して国内はもとより世界中の非難を浴びたばかり。これ以上、犯人の要求を聞き入れる訳にはいかないと強行策の検討が始まった。
-強行突入-
長崎県警は同型バスを用意して機動隊が何度も突入訓練を行った。事件から18時間後の16日午前4時25分、長崎県警は人質の体力が限界とみて強行突入を命令した。機動隊は一斉射撃をしながらバス内に突入し主犯の川崎久之(当時31歳)を射殺。共犯のA(当時39歳)は重傷を負ったものの一命は取り留めた。人質は全員無事に救出された。
犯人が警察によって射殺されたのは「ぷりんす号・シージャック事件」に続いて2件目。だが、生き残ったAはその後の裁判で懲役6年が確定。川崎が生きていれば懲役8年程度と推定され、強行突破で犯人を射殺しなければならなかったのか?と疑問を呈する声もあった。すなわち、赤軍派による凶悪犯罪(ダッカハイジャック・よど号ハイジャック事件など)に対して警察(政府)の強行姿勢を内外に示す行為として「政治的判断の強い救出策」と言われたのは、このような背景があったからだ。
バスジャック対策
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