刑事事件における犯罪~個人的法益に対する罪について~
刑法における犯罪は大きく分けて「個人的法益に対する罪」「社会的法益に対する罪」「国家的法益に対する罪」の3つに分けることができる。
個人的法益に対する罪
個人的法益(こじんてきほうえき)とは、法益の帰属主体が個人であるものを指す。
「生命に対する罪」
殺人罪は文字通り「人」を殺すこと。客体の違いや殺害状況の違いにより様々な種類がある。例えば、1995年に改正され削除されたが、尊属殺(親殺し)や、卑属殺(子殺し)m嬰児殺(産まれた直後等の赤ちゃんの殺害)等がある。
なお、殺害状況においては、他人を傷害し、それにより相手を死亡させた場合、殺人の故意がなくてもただの傷害罪より重い傷害致死罪が成立することもある。強盗、強姦や放火等重罪を伴う殺人も単純な殺人よりも加重され、強盗殺人罪や、強姦致死傷罪など罪が重くなる。
日本では殺意をもって保護を必要とする相手(幼児、老人等)を放置して殺害した場合は通常の殺人罪が成立し、殺意が認められない場合は遺棄致死罪ということになる。
また相手方の同意に基づき人を殺した場合、同意殺人罪という犯罪が存在する。一応犯罪は成立するが、法定刑は通常の殺人罪より軽い。
「身体に対する罪」
傷害の罪は、他人の身体に対する侵害を内容とする犯罪であり、身体に対する罪とも言われている。
傷害罪と暴行罪があるが、暴行罪は、暴行を加えたが傷害が生じなかった時に成立し、暴行を加えて傷害(けが)が生じた時には、傷害罪が成立する。傷害罪になってしまうのは力の行使によって傷害(生理機能の障害)を負わせた時に限られる。つまり、傷害という結果が生じたか否かが暴行罪になるか傷害罪になるかの分かれ目。ちなみに暴行罪は、「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する」と定められているのに対し、傷害罪は、「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と定められている
「自由に対する罪」
こちらは相手を畏怖させることで成立する脅迫罪、生命、身体、自由、名誉もしくは財産に対し害を加えることを告知し脅迫、または暴行を用いて人に義務のないことを行わせることにより成立する強要罪、他にも逮捕・監禁罪、略取・誘拐罪、住居侵入や退去を拒否すること成立する住居侵入罪、不退去罪がある。更に性的なものに関連した「性的自由に対する罪」として、強姦罪、強制わいせつ罪などがある。
「秘密・名誉に対する罪」
名誉に対する罪は、人の名誉を保護するため公然と他人の名誉を棄損し、または侮辱する行為を犯罪としており、名誉毀損罪、侮辱罪がある。秘密を犯す罪は個人の秘密を侵害する行為のことで信書開封罪、秘密漏示罪がある。
「信用及び業務に対する罪」
信用毀損罪とは、虚偽の風説を流し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損する犯罪。虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の業務を妨害すること(偽計業務妨害罪)。または威力を用いて人の業務を妨害すること(威力業務妨害罪)を内容とする犯罪である。
「財産に対する罪」
財産に対する罪は多く、他人が占有しているものを盗む窃盗罪、暴行、または脅迫を用い、他人が占有しているものを盗む強盗罪、人を欺き、その占有するものを交付させる詐欺罪、人を恐喝し、占有するものを交付させる恐喝罪、自己が委託されて占有しているものを奪う横領罪、他人から任されていた仕事や任務に背き、自己の利益を図り損害を与える背任罪、盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物の譲受け、運搬、保管、有償処分のあっせん行為をする盗品等関与罪、他人の財物を物理的に損壊するなどの財産毀棄罪とある。
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