【洒落怖】山で女性の悲鳴が聞こえた(山・中編)

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『山で女性の悲鳴が聞こえた』

12 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/02/20 00:44

知り合いの話。


彼のお爺さんが、連れと一緒に山で猟をしていた時のことだ。

いきなり遠くから「助けて!」と甲高い女性の悲鳴が聞こえた。

慌てて答えようとするお爺さんを制した連れは、ひどく緊張した顔をした。

強引にお爺さんを連れて、すぐさま走って山を下り始めたそうだ。

背後からは引き続いて「助けて!」という声が繰り返し聞こえてきた。

助けを求める人を見捨てるのかと、お爺さんはしばらく葛藤したというが、

山を下るうちに奇妙なことに気がついた。

助けてという叫びが、段々大きくはっきりと聞こえるようになっていたのだ。

自分たちが走る以上の速さで、叫び声の主は自分たちに近づいてきている!

二人は必死に足元の悪い山道を走ったのだそうだ。


唐突に開けた場所に出た。

誰が安置したのか、そこにはお地蔵様が何個も並ぶ小さな祠があった。

どうやら連れの猟師は、最初からここを目指して走っていたらしい。

彼らが足を止め一息入れた途端、背後の茂みから、奇妙に間延びした声が聞こえた。


 たぁぁすぅぅけぇぇてぇぇぇぇ・・・


思わず銃を握り締める二人の耳は、何かが遠ざかって行く音を捕らえていた。

それ以降、助けてという叫びは聞こえなくなった。


13 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/02/20 00:45

連れがぽつりと言う。


 あれは鬼だ。

 この山に伝わる昔話で、助けに来た人を襲って喰らう鬼の話があった。

 声が聞こえた途端、これが熱くなったんで危ないとわかったんだ。


そう言って連れが出したお守りは、かすかに焦げて燻っていたという。

無事に山を下りられるように、その祠に祈った。

言い伝えによるとそこは、その山の鬼を鎮めるために建てられたのだという。

そのおかげか、それ以上の怪事には遭わず下山できた。

二人ともしばらくは、その山に近寄らなかったということだ。


彼の息子(知り合いのお父さん)が町に出て定職に就くと言った時、

まったく反対しなかったのも、この経験のためだったらしい。

あんな物に捕まったら洒落にならないからな。

そう言ってお爺さんは煙草をふかしたのだそうだ。

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