料理人が飲食業で独立したいなら今知っておくべき基礎知識と市場の動向:2017-2018年

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好きなことで成功するのは、とても達成感がありますよね。

その中で、飲食業で成功したい人は多いと思います。

ただ、ビジネスの世界は常に競争なので、開業しただけで終了とはいきません。継続するには、それなりの収益を出し続けることが重要です。

日本の労働人口の7%が飲食業に従事する飽食時代の現代で、勝ち残るためには情報とアイディアが要ります。

その基盤になる知識をこちらに書いていきます。

1.外食産業の動向

 1-1 外食から中食へ

 1-2 総合店から専門店へ

 1-3 不祥事を起こしても大手外食企業が潰れない理由

2.飲食業で自立するために

 2-1 素人でも飲食店は開業できる

 2-2 経営者の目線で

 2-3 様々なニーズがある

 2-4 様々なツールがある

3.なぜ飲食業を選ぶか考える

4.飲食業界の情報を仕入れるには

1.外食産業の動向

1-1 外食から中食へ

 外食産業は1980年代にピークを迎え、それ以降は減少の一途をたどっていますが、

飲食業全体の市場規模で言えば大きく衰退はしていません。

飲食業界はおおよそ5兆円の市場と言われています。最新データが4.86兆円なので、大きくはブレていないと思います。その理由としては、大手チェーン店がしっかりと利益を出しながらも、個人が参入しやすい(自営業で出店しやすい)ジャンルだからです。


そのため、競争も激しい業界です。

新規店舗が10年後に経営を続けている確率は、業界内でおおよそ2%と言われています。現在は消費者の節制が目立つので、それ以下の数字かもしれません。

 飲食市場の中でも、外食産業が年々縮小しています。不況や増税の影響で節制に励む消費者が多く、節約の削りどころで真っ先に上がるのが『外食費』だからです。


それに乗じて、中食(テイクアウトやお惣菜)産業が10年前頃から市場を拡大しています。中食は20年前に比べてクオリティが大幅に上がっているので「ちょっ贅沢な食事を自宅で手軽に食べられる」というメリットがあります。自宅での食事は家族とのコミュニケーションにもつながりますので、共働きの家庭や核家族に人気があります。


これはあくまで低所得層に見受けられる傾向なので、高所得層には該当しません。外食産業で独立するなら、高級店であることが安全な経営にはもってこいでしょう。

1-2 総合店から専門店へ

 昨今の外食産業は総合居酒屋が閑散とし、○○専門店がどんどん増えてきています。これは外食だけでなく小売業などにも同じことが言えます。


世界的な消費の傾向として「好きなものにはお金をかけて、それ以外は必要最低限に削る」というのが年々顕著になっているので、メニューが何でもある安い店より、多少高価でも絶対美味しい単一ジャンルのメニューがある特化型の店を選びます。外食は本来『非日常』なので、お金をかける価値があるお店が選ばれるのです。


また、インターネットやスマートフォンが普及して一般人が情報を手に入れるのが簡単な時代になりました。そのため、お店の情報を調べるのも簡単です。値段が安い店はそれ相応の商品の生産地・食品ブランドや流通経路・調理方法や原価なので、それが条件に合わず、消費者から見限られることも少なくありません。


昨今は「選択肢が増える」「専門性が高い」ことが消費者の満足度に繋がるので、多岐のニーズに応えるためにも専門店が増ているのです。


また、予めジャンルを絞っていれば元々関心度の低い顧客が来ないので、風評のリスク回避にも繋がります。

専門店の例

1-3 不祥事を起こしても大手外食企業が潰れない理由

外食チェーンやファストフードの大手企業は、異物混入などがあるとすぐにニュースで報道されますね。


飲食業界では、自営店や中小企業が不祥事を起こすと一発アウトの事例が大半を占めますが、大企業は簡単に倒産しません。


大手チェーンはTV・広告業界と結びつきが強く、特にCMには年間億単位のお金が動いています。

大手企業が潰れると一番困るのは、広告業界の人達なのです。

2.飲食業で自立するために

2-1.素人でも飲食店は開業できる

個人で飲食店を経営するにあたり、調理専門学校や有名店で修行し技術を学ぶ人が多くいます。

料理の技術があるに超したことはないのですが、日本の法律では食品衛生責任者防火管理責任者(甲種)の資格を持っていれば飲食店を出せます。


上記の資格は食品衛生が1日・防火が2日間講習を受けるだけで取得できるので、端的に言うと3日あれば飲食店は開業できます。各市区町村によって調理スペースの規定などが若干違いますが、上記の資格と既定の調理・提供スペースがあれば、料理経験や料理を勉強した場所は関係ありません。


更に言うと、外食企業のオーナーのように潤沢な資金があれば、店を構えて上記の資格を持っている人材を雇えば開業できます。だからこそ、新規参入がしやすく、競争も激しいのです。

2-2.経営者の目線で

個人のお店を開業すると、そこからいち料理人ではなく『経営者』になります。

経営者の目線で物事を考えるように出来ないと、せっかくのお店もあっという間に潰れます。


仮に1~2人で運営できる規模のお店を開業する場合は、開業資金は運転資金も含めて平均600万、東京都内だと最低1,000万円必要になります。資金調達の手段はどうあれ、まずはその出資分を利益として追う形になります。

そのため”副収入を作りながら店を安定的に経営する”という考え方が増えてきています。


初めに料理人出身の経営者が陥る最も多いカン違いは

『料理が美味しかったら勝手に客は増える』です。

音楽業界にも似たようなことが言えますが、腕が立っても顧客の心を掴むことができなければ事業として成り立ちません。それには料理はもちろんですが、接客やサービス等が重要になります。

飲食業で働く人にとっては”日常”でも、飲食店を利用する人にとっては”非日常”です。感動の基準値は人それぞれということを考えて行動しなければなりません。


また、今は飲食店の情報がネットで簡単に共有できる時代なので、端に待っているだけでは客は来ません。集客・宣伝能力も必要になってきます。

2-3.様々なニーズがある

1-2項でも述べたように、今は専門店のニーズが需要拡大しています。単一料理専門というだけでなく、ベジタリアン/ヴィーガン向け料理の店やグルテンフリーなどの健康志向の専門店も国内外問わず増えていく傾向にあります。


また、都市部は自宅でパーティーを行う人や個人のイベント主催者が多いため、出張シェフやデリバリーの需要があったり、料理教室の講師も美容系や減塩系など人によってジャンル特化しています。

す。


育ち方・好み以外にも収入や年齢・居住地・健康状態等で飲食のニーズは大きく変わります。なので、自分がやりたいことに時代のニーズを両立できるかが経営の明暗を分けます。

2-4.様々なツールがある

外食需要の多様化に合わせて、現在は料理人の独立を助けるツールも増えています。


出張シェフと顧客のマッチングを仲介するマイシェフや、料理人のいるスペースと顧客をマッチング仲介するKitchHikeなどの会社があります。また、イベンターの増加に比例するようにキッチン付きの貸しスペースも都内近郊各所に点在しています。未だに市民会館等の共用調理スペースの方がレンタル料は安いですが、スペースの雰囲気やインテリアの充実度・話題性から、ワーキングスペースを利用する人も多いです。


個人でイベンターと繋がるには主催のイベントに行くのが手早いですが、coffee meeting等の人と会うアプリを使って探す手段もあります。

3.なぜ飲食業を選ぶのか

飲食業で独立と言えば”お店を出す”が真っ先に思い浮かびますが、はたしてそれは本人がやりたいことと直結するのでしょうか?


『シェフとして有名になる』『私の料理を広めたい』などの夢や野心を持つことは良いですが、『料理が好きだから』『自分には料理しかないから』だけでは経営はできません。

一度店を開けばレシピや営業の決定権は持てますが、長時間労働や早朝・深夜営業・開業資金の返済や収支・責任等々と半永続的に付き合っていくことになります。初めは覚悟があっても、それがストレスになり飲食業から身を引く人は非常に多いです。


今は飲食業の働き方も多岐にわたるので、一度、やりたいことを実現するための手段を見直してみましょう。

4.飲食業界の情報を仕入れるには

飲食業界は競争が激しいので情報の流動が激しいですが、職場に籠りきりで社内の情報しか把握していない人が殆どです。休暇が少ないのも原因の一つでしょう。


飲食業に関する情報は「業界の動向」「顧客の注目(流行)」「技術」の3つに分けられます。

「業界の動向」はニュース新聞・月刊食堂に主に取り上げられています。

「顧客の注目」はdancyu東京Walker等の最新グルメ案内誌に、

「技術」は月刊料理通信月刊専門料理に多く取り上げられています。


これらの料理専門誌を読むことがオススメですが、読み聞きするより体感の方が強く記憶に残るので、気になった店には食べに行くことも重要です。また、人気店の料理のレシピをおさめた書籍も多く発行されています。

最後に

何事でも大成するには経験値と計画が必要です。

2年経てば記事の情報とは違う経済状況になるかもしれませんが、今後の独立計画にお役立てください。

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著者プロフィール
Sharetube