働き方改革=残業代ゼロの奴隷労働制を広げること

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「日本人の働き方を変えて生産性を高めていく」として、与党自民党が今国会での成立を目指して審議を進めている働き方改革関連法案には、「裁量労働制」(*調査データのねつ造により提出見送り)と「高度プロフェッショナル制度」があります。

どちらも労働者にプラスになるような響きではありますが、その内容を詳しく見ていくと・・・

裁量労働制とは?

実際の労働時間に関係なく、労働者と使用者の間の協定で定めた時間=「みなし時間」だけ働いたとみなす制度。仕事の段取りや時間配分を自分で決められる働き手が対象となり、SEやデザイナー、メディア関係者などの19業務が対象となる「専門業務型」と、企業活動の企画や立案、調査業務などを行う「企画業務型」の2種類に大別される

出典: IT業界にはびこる「裁量労働制」の闇――どんな...

	
一見すると、会社にしばられず自分のペースで仕事できたり労働環境が良くなるかのように錯覚するこの制度。しかし、実際は労働者側に選択の余地はなく長時間労働を助長している批判があり、裁量がない人にまで拡大される恐れがあるとして野党は反発しています。


政府は「企画業務型」の対象業種への拡大を法案に明記する考えだそうです。

それって、専門的な業務に携わるから収入はいいんでしょ?と思いきや

裁量労働制なんて高収入のエリートでしょ?という現実を見ない発言はこの記事を読めば二度とできなくなるはず。裁量労働制ユニオンで現在対応中の事案では、基本給10万円台・時給900円台(都内)の、最低賃金水準の事案が複数あります。この記事でも2つが紹介されています。

	
基本給10万円台が67%、25万円未満が90%!

出典:裁量労働制で月給25万円以上はわずか1割! 低賃金でも「残...

 ハローワークで提示された求人票を調べたNPO法人POSSE代表の今野晴貴氏の話では、15万円未満の求人すら存在したそう。これは、一般的なフルタイムの月の就業時間で計算すると最低賃金以下になり、最低賃金法違反の可能性さえあると。
これでは、「残業代ゼロ」「定額使い放題」に値した労働の対価はまったく払われていないといわざるをえない。専門性のある高度な労働者だけでなく、ごく普通のサラリーマンや契約社員にまで適用されるとなると、過重労働をしいられた上に実質的な賃金の低下を招く可能性が高いように思われます。

私が労働者側代理人だった、専門業務型裁量労働制の適用を違法とした事例、京都地判平29.4.27労判1168号80頁の事件では、原告4名のうち3名は年収200万円台、月給は少ない人で額面16万円程度だった。

	

過労死の事例を見ると、ただ長時間労働になるだけではなく、証拠が隠滅されやすくなり、労働時間の特定が難しくなるなど、過労死認定が困難になる構図にある。きわめて危険の高い制度だ

「働き方改革」最大の焦点・裁量労働制 「過労死促進法」の構図(今野晴貴) -Y!ニュース

	

ただえさえ非正規労働者は

・賞与が無い
・社会保障が完備でない
・いつ解雇されるか分からない
・賃金が最低賃金かそれに近い金額

こんな人がザラにいるのに、さらに事実上「定額働かせ放題制」と化してる残業代なし&長時間労働の裁量労働制を適用しようとか酷過ぎる。

	

派遣が減って、契約社員が増えそう。残業代ゼロにできるし> 契約社員も裁量労働に 「適用可能」と政府答弁書

	

俺がなぜ裁量労働制や残業代ゼロに反対するかというと、労働というものは「お金を時間(=労働に充てる)と交換するもの」だからだ。

仕事の報酬は時間ではなく生み出した価値だとも言われるが、これはあくまで経営者や上級管理職の話。

	

実際に裁量労働が取り入れられている職種はどうなっているか

編集プロダクションで働いていた元会社員の30代女性は、コンピュータ機器の専門誌などの編集・レイアウト・記事作成を担当。基本給18万1000円、固定残業代4万5000円。週6日間、繁忙期は早朝6時から深夜1時まで働き、残業時間は100時間にも及ぶことも。

激務の末に会社で倒れて入院。そのまま退職の後、残業代を請求した際に裁量労働制が「適用」されていたと初めて知らされた。

Dさんのケース:専門業務型裁量労働制を適用。一日10時間8分を“みなし労働”とし、ゲーム用ソフトウェアの制作を担当。ところが『ゲームの体験イベントの開催』、『ゲーム宣伝用のサイトおよびSNS運用』など、裁量労働制が禁じられている仕事もさせられたりして、時間外労働が100時間を超える月もあるなど、長時間労働を強いられた

出典: IT業界にはびこる「裁量労働制」の闇――どんな...

	
裁量労働制の対象業務の規定自体が曖昧でザルであるため、ITやデザイン、ゲーム開発などの業界を中心に、裁量労働制が悪用される例が後を絶ちません

出典: IT業界にはびこる「裁量労働制」の闇――どんな...


ブラック企業ユニオンのプロジェクトで「裁量労働制ユニオン」も担当する坂倉昇平氏によると、Dさんは上司の指示で徹夜仕事を余儀なくされることもあったという。

本来、裁量労働制では労働者が裁量するので上司が指示すること自体がおかしい。

しかも、企業側は労働時間の記録すらしないことが多いので、仮に過大な仕事を押し付けて労働者が過労死しても、その責任を立証することが難しくなるといいます。

厚生労働省は、2017年から裁量労働制の労働者の過労死・過労うつの労災認定の数を公表しています。

それによると、裁量労働制での過労で労災認定された数は2011年3人、2012年15人、2013年15人、2014年15人、2015年11人、2016年2人。うち亡くなった(自殺未遂も含む)のは、2012年4人、2013年2人、2014年2人、2015年5人(あくまで公式の数字)

2013年7月、裁量労働制を適用されていた証券アナリストの男性(当時47歳)が心疾患で亡くなり、2015年3月に労災認定された

出典:「働き方改革」最大の焦点・裁量労働制 「過労死促進法」の...

	
2004年2月、専門型裁量労働制を適用されていた江東区のシステムエンジニアの男性(当時20代)が、過労による精神疾患に罹患し、労災認定をされている

出典:「働き方改革」最大の焦点・裁量労働制 「過労死促進法」の...

	
いずれの事例においても、裁量労働制であるにも関わらず、肉体的・精神的に病んでしまうほどの長時間労働を強いられていました。これは結局のところ、裁量権が労働者側にはなかったことを表しています。

光文社の編集者の過労死、小松製作所のレーザー開発者の過労自死、証券アナリストの過労死、システムエンジニアの精神疾患など、裁量労働制の長時間労働による事例が複数紹介されています。裁量労働制は過労死申請・訴訟が極めて難しく、これらは氷山の一角にすぎません。

	

裁量労働制の経験がある皆さん必読です。皆さんの裁量労働制に違法の可能性があるか確認できる「専門業務型裁量労働制違法チェックシート」(制作:ブラック企業対策プロジェクト)を公表しました!裁量労働制ユニオンも協力しています。ぜひチェックしてみてください。

	
上記のチェックシートには以下のような項目が含まれているそうです(一部を抜粋)


・仕事のやり方やスケジュールを上司から指示されて、働き方を自由に決められない(例えば、ミーティングへの出席義務がある、上司から締め切り間近の業務を急に指示されるなど)。


・出勤退勤時刻を守るよう指示されていて、遅刻・早退したら注意されたり、給料が差し引かれる。


・残業や休日出勤を指示される。


・「みなし時間」と実際の労働時間に1日2日程度、またはそれ以上の差がある。


・休日出勤しても、休日手当(割増賃金)が支払われない。


・休憩を取ることすらできない。

もう一つの目玉「高度プロフェッショナル制度」。これにも大きなワナが仕掛けられていた

裁量労働制はデータねつ造問題によって、今回の「働き方改革」法案から外されました。しかし、「高プロ」と呼ばれるもうひとつの制度は「裁量労働制」よりさらに労働者に危険性の高いものでした。


この制度の要点としては、以下のような点があげられます。

・年収1075万円の労働者が対象

・労働時間の規制なし

・休憩なし

・残業代なし

・年間休日104日

出典:高プロ制度の解説をします(佐々木亮) - 個人 - Yahoo!ニュース

	
働き方改革法案の中では、時間外の労働時間は1カ月平均80時間までという規制がありますが高プロは適用外となるなど、通常の労働者に対する規制を大きく取っ払った勤務形態が提案されています。

4週のうち4日の休日を最後の4日に偏らせると、

24日連続24時間勤務(休憩なし)でも違法にならない

出典:高プロ制度の解説をします(佐々木亮) - 個人 - Yahoo!ニュース

	
制度上は休日を偏らせることで、このような労働も合法となりますので、適用する企業が出ることはまず必至と言っていいのではないでしょうか。

このようなハードな勤務での健康を確保するために、以下のような措置が講じられていますが・・・

1 勤務間インターバル制度と深夜労働の回数制限制度の導入


2 労働時間を1ヵ月又は3ヵ月の期間で一定時間内とする


3 1年に1回以上継続した2週間の休日を与える


4 時間外労働が80時間を超えたら健康診断を実施する

出典:高プロ制度の解説をします(佐々木亮) - 個人 - Yahoo!ニュース

	
企業側は上記のうちから1つのオプションを選べばいい、と現状ではなっているのです。

「自分には関係ない」と思っているうちに、年収・業務の対象枠は広がる可能性大

年収1075万を稼ぐ人はわずかなのが実際のところですが、経団連がゆくゆくは残業代込で年収400万円を超えれば対象にしたいとの考えを示していたり、塩崎厚生労働大臣が法案をとりあえず通すと発言しています。


また、対象となる業務についても、金融系の高収入を得られる専門職種が例としてあげられているものの、実際は広げられるのではないか・・・?過去の派遣法改正の経緯を見ても明らかではないでしょうか。

むしろ、裁量労働制の代わりになってしまう危険がある。それが、高度プロフェッショナル制度。

これは、ホワイトカラー全体に拡大する覚悟をしないといけない。

	

あらっ!
高プロってまだ対象職種も
決めてないの!?

しかも、契約したときに
支払うとした額面上の金額を
基準にするから
実際にその収入額をもらってなくても
制度対象になるのね…

マジでか…

	

高プロは「時間ではなく成果で評価する」制度だと喧伝されたけれど、「時間ではなく」だけが法案の中身で、「成果で評価する」は法案にはない。
成果が適切に評価される保証など、何もない。むしろ、仕事ができる人の仕事量が増えて歯止めがなくなり、成果も適切に評価されず、になるのでは。

	

給料据え置きでも、休みが減れば実質的な賃下げになる。裁量労働制や高プロもまったく同じ発想。ようするに賃金を上げたくないばかりか、下げるだけ下げるのが経営者にとっての理想で、自民党もそれを支持しているわけ。そしてデフレの原因は、賃金が平均的に低いこと。おそろしくシンプルでしょ

	

働き方改革について各党の対案が出揃ったので表にしてみました。

	

まさか、日本維新の会が、もう高プロの年収要件を下げようとしているって表明してくるとは思わなかったよ。

	

高プロのモデルとなる「ホワイトカラーエグゼンプション」を日本に導入すべしと政府の諮問機関が最初に提言したのは、2001年7月小泉内閣の総合規制改革会議『重点6分野に関する中間取りまとめ』と思われる。この当時から、労働者代表が一人もいないところで議論されていた。

	

週刊報道LIFE
高プロのモデルとなる米のホワイトカラー・エグゼンプション。当初の対象者は数%だったが、徐々に適用される範囲が拡大され物価は上昇していたにもかかわらず基準となる給与額は据え置かれたためホワイトカラーの9割まで対象者が広がった。三浦直子弁護士。
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派遣も1985年の導入時は自ら労働条件を取引できるハイクラス労働者だけが対象とされていたが、30年後には対象の制限はなくなった。最初からそれが狙い。高プロも同じだ。1075万円という年収要件はあっという間になくなるだろう。騙されてはならない。

	

首相「世界一、企業が活躍しやすい国に」 労働側不在 安倍ブレーン主導

政府は6日にも「働き方」関連法案を閣議決定し、国会に提出する方針だ。「残業代ゼロ制度」と批判される高度プロフェッショナル制度(高プロ)の創設は堅持し、今国会での成立を目指す。
東京新聞

	

高プロ! 強行採決の場面。。。

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ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます。

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著者プロフィール
Sharetube