カイコガだけじゃない!飛べない&食べない蛾(ガ)【生き物の不思議】
夏と言えばキャンプ。キャンプと言えばテント。
テントと言えばいつの間にか張り付いている蛾。
虫好きの筆者にとっては蛾と友達になる絶好のチャンスなのですが
そうでない人にとってはただの「目障りないきもの」に過ぎません。
蛾について(おさらい)
「蛾」という言葉で真っ先に想像するのが地面や木、電柱などいたるところにペタッと張り付く姿ではないでしょうか。
しかもその翅はたいてい茶色とか灰色とか「汚い」を連想させる色・模様。
虫が苦手な人の認識は、おそらくこんな感じでしょう。
チョウ=綺麗・美しいガ=汚い・害虫(とくに毛虫)そもそも、「ガ」の名称がイメージの悪さを助長している、という考えには賛成してくれる方もいらっしゃるはず。
気持ち悪がられる虫の名前には、なぜか濁点が付きがちですよね。
ガ、ゴキブリ、ゲジゲジ、カメムs、あっ……。
蛾も蝶の仲間(屁理屈)
私がチョウは綺麗でガが汚い!という考えに反発するのは、チョウもガも同じ「チョウ目」に分類されるからなのです。つまりどちらもチョウだということ。
これは屁理屈極まりないですが、もし本屋に出かけることがあれば
ぜひ昆虫図鑑を手に取って見てみてください。
パラパラと流して見てみると、チョウ類の項目はすぐさまガ類に切り替わるはず。
そしてガ類の項目はなかなか終わりません。
そう、チョウ目のほとんどが「ガ」に該当するのです。
さらに、蛾だからと言ってみんな汚い色をしているわけではありません。
世界には数えきれないくらいの蛾が生息していて、なかには目を疑うほど美しいものもいるのです。
もっとも、世界一美しいのがモルフォ蝶であることは否めませんが…。
顔は絶対に蛾のほうが可愛い(自論)
たしかに、翅の色や模様はガよりチョウのほうが綺麗です。
これについては異論はありません。認めざるを得ない悲しい事実です。
翅や口を持たない蛾
蛾にたいする愛を一方的に振りかざしたところで本題に入りましょう。日本国内だけでも覚えられないくらい多くの種類のガが生息していますが、
その生態については知らない人も多いのではないでしょうか。
不思議な蛾として有名なのはカイコガ。
大昔から、カイコガの幼虫が作った繭を頂戴していることはご存知でしょう。
無防備すぎるカイコガ
カイコガの特徴と言えば、成虫の天使感。可愛いというか、もう愛くるしい。まさに天使です。
このカイコガの生態が実に奇妙で、
彼らは人間の助けがないと生きることができません。
つまり自然界には生息していないということ。
少々乱暴な言い方になってしまいますが、
カイコガの幼虫を育てようと思えば通販で購入することができます。
もちろんしっかり整った飼育環境が必要ですが、準備さえできれば簡単にわが家へ迎えられるのです。
しかし、仮に飼育を始めて「窮屈そう…かわいそう…」という感情が芽生えても、決して外に放してやってはいけません。カイコガは想像を絶するほど体が弱く、一瞬で鳥の餌or風に吹き飛ばされてしまうからです。
さらに、整った飼育環境で無事に蛹になっても油断は禁物。繭の中から、先ほどの写真のような天使が顔を出すわけなのですが
成虫は飛べないし餌も食べないのです。
モフモフとした体に翅はついているのですが、飛ぶための力が備わっていないのです。
指にとまらせるとバサバサ羽ばたくような動作をするものの、実際に飛び立つことはできません。
さらに口吻(くちばしにあたる部分)は
形あるのみで機能しないという…まさに生存能力を放棄した生き物。成虫になってからは飛ばず食わずで、1週間~10日ほどで一生を終えます。
彼らは、彼らの一生をすべて人間に託したのです。なんて健気なんだ、カイコガよ。
人間にすべてを託した昆虫「カイコガ」の可愛さ&か弱すぎる生態まとめ
http://sharetube.jp/article/8405/
カイコといえば白い幼虫 「カイコ」というと、白くてモソモソしたガの幼虫。実物は見たことがなくても、なんとなくどんな虫かは知っている方も多いでしょう。では、その白い幼虫...
【飛べない】蛾
天使のような外見でつかの間の一生を終えるカイコガ。この事実がネット上で有名になったことで知名度は一気に上がりました。
ところが、カイコガのように飛ばない・食わない蛾がほかにも存在することはあまり知られていません。
例えば、冬期に出没する蛾で有名な「ウスバフユシャク」。
寒い季節の夜、白くて小さな蛾が飛んでいるのを見たことがある方も多いでしょう。
こんな季節に蛾?と驚くでしょうが、その正体はおそらくコイツです。
ものすごく蛾っぽい飛び方をする蛾。
苦手な人からすれば蛾の飛び方なんてどれも同じに見えますが、ウスバフユシャクのメスは飛びません。
いや、飛ばないのではなく翅がないから飛べないのです。
その姿を見て「ガ」と分かるのは、虫好き人間以外にいないでしょう。
【食べられない】蛾
ウスバフユシャクのメスは物理的に飛ぶことができませんが、オスはもちろん元気に飛びます。
みんなが冬に見る小さい蛾はウスバフユシャクのオスというわけですね。
そしてなかには「餌を食べない」蛾も存在します。
それがイラガ科に分類される蛾たち。
幼虫は小さく特殊なビジュアルをしていますがモリモリと植物の葉を食べるし、人間に激痛を見舞う毒だって持っています。
(画像は自重。ウミウシに似ているとだけ…)
まったく愛想のない幼虫ですが、成虫は打って変わって餌をまったく食べません。
カイコガのように口吻があるにも関わらず食べない…のではなく、
口吻が退化しているために食べられないのです。ともすると、イラガ科の蛾たちは
成虫期間は婚活のことしか考えていないのかもしれません。というかほぼ確実にそうでしょう。
やはり蛾は魅力的…!
そして可能なら、蝶の顔と見比べて果たして蛾は本当に気持ち悪いのかを再考してみましょう。