動物はなぜ冬眠する?冬眠しない動物は?熊・カエルの冬眠の仕組みと人間の可能性【生き物の謎】
春と言えば、冬眠中の動物たちが活動を始める季節。みなさんの近くの田んぼでも、アマガエルが鳴き声を響かせ
クビキリギスが「ジーーーーーーーーッ」と存在をアピールしているのではないでしょうか。きっと山奥では、ヤマネやツキノワグマが例年より暑い春に驚いていることでしょう。
そんなことを考えているときにふと生まれる疑問。
シカって冬眠するんだっけ…?というか、カエルと熊の冬眠って仕組みは同じ?
…というか冬眠ってなに???
冬を越すための生態であることには間違いありませんが、もし純粋な子供に「冬眠ってどうやってるの?トイレとかどうしてるの?」なんて聞かれても絶対に答えられません。
ということで、生き物たちの冬眠(越冬)について詳しくまとめてみました。
動物はなぜ冬眠するのか
動物が冬眠する理由は簡単です。
冬のあいだは餌が激減するから。木の実が育たない冬、それを食料にしているリスは確実に飢えてしまいます。
雑草なんかは1年中食べられますが、木の実は決まった時期にしか実りませんよね。
寒いしご飯もないし…という状況下なら、冬眠をしたほうが良いのは当然(とリスが思っているわけではありませんが)。
つまり、寒いからだけではなく
寒さによって食糧難に陥るから冬眠という手段を選ぶのです。
熊は「冬眠」でカエルは「越冬」
まず、熊とカエルの冬の過ごし方には根本的な違いがあります。私たちが生き物に対して「冬眠」と言うのは、非常に広い意味で解釈したときの話。
リスや熊、カエルも冬に姿を見せないのは「冬眠」しているから。
“冬に眠っている”のは間違いないし、筆者は今でも「カエルが冬眠している」と表現します。
しかし冬眠という言葉の意味を狭義で捉えると、根本的な意味が違ってくるのです。
実は、冬眠と言われる生態が該当するのは、厳密には恒温動物だけ。
※恒温動物とは、私たち人間のように
外の気温によって体温が変化しない、一定の体温を保つことができる動物のこと。
恒温動物以外の変温動物(カエル・魚など)が冬を乗り越えるのは、冬眠ではなく「越冬」というのが正解なのです。
むかしむかし、
カエルは冬の気温につられて体温が下がるから冬眠をするんだよ!なんて教えられたことがあると思いますが、これは厳密には間違っていたということなのですね。
冬眠をする動物は少ない
リスと冬のコラボレーションといえば、山が秋色になるころ冬眠に備えてせっせと木の実を集めている姿ではないでしょうか。
熊も同様に、冬眠中に餓死しないようたらふく詰め込むだろうしその他の動物たちも、来たる冬に立ち向かう準備をしていることでしょう。
このように、リスや熊=冬眠というイメージが強烈ですが
なにもすべての恒温動物が冬眠をするわけではありません。
リスはリスでもエゾリスは冬眠をしないし、
熊は熊でも冬眠しないツキノワグマの発見例もあります。
我が地球には4,000種類以上の恒温動物が生息していますが、
そのなかで冬眠が確認されているのは200種類に満たないのです。
○○リスは冬眠するけど○○リスはしない
というように、リス=冬眠とは一概に言えないのが難しいところですね。
ちなみに、ペットとして人気なゴールデンハムスターは冬眠をするようです(見たことない)。冒頭で挙げたシカは、冬眠せずに冬を越します。
そして私たち人間も「冬眠しない恒温動物」のうちのひとつなのです。
冬眠の仕組み
では、冬眠とはいったいどのような仕組みになっているのでしょうか。簡単に説明すると、
生命活動を極端にゆっくりにするというイメージ。
呼吸数・心拍数を減らし、排尿・排泄も減らすorまったくしません。体温に関しては種によって大差があり、
38~40度から2度前後まで大幅に下げるシマリスなどに対して
熊の体温は降下度が小さいことが知られています。
一定の体温を「切り替える」
恒温動物が外界の気温に影響されないのは前述しした通りですが、では、なぜ冬眠中に自身の体温を降下させることができるのでしょうか。
シマリスの冬眠を例に挙げると、通常38~40度の体温をキープしているにも関わらず、冬眠中は3度前後まで下げてそれをキープしています。
これは、どうやらシマリスは「冬眠用の体温設定」にしているようなのです。
そして呼吸数などの活動量を著しく低下させ、暖かくなるのをじっと待ちます。
人間にはこの能力が備わっていないので想像がつきませんよね。
冬眠中のシマリスが何を思っているのか、普通に「寝る」ことと何が違うのか…。
カエルの「越冬」は?
とても大雑把な言い方になってしまいますが、カエルは体温を保てないから動けなくなるのです。リスは(意識的か否かは分かりませんが)自ら体温を低下させます。
しかしカエルは、気温にあわせて勝手に体温が下がってしまうからじっとしておくほかないのです。
下がった体温に従うしかないということなのですね。
「仮死状態」と言うと分かりやすいかもしれません。気温が下がりすぎて死んだわけではないのに、通常の活動とはまったく違います。
自力で土を掘れないアマガエルは草陰に隠れて越冬するものもいますが、触っても動かないので本当に死んでしまったように見えるでしょう。
リスもカエルも、低体温でなるべく体に負担をかけないようにしている点では同じです。
体温を下げるのか、体温が下がるのかそうしたところに大きな違いがあるのだと言えます。
人間も頑張れば冬眠できる?
人間は「冬眠をしない恒温動物だ」と前述しましたが、絶対に、確実に、100%冬眠ができないのか?と言うとそうでもありません。
なぜかというと、前例があるからです。
過去に、雪山で遭難した男性が何十日も経ってから保護された事例をご存知でしょうか。そのときの状態は、普通なら死んでいるくらいの低体温だったのだとか。
これには医者も驚いたようですが、遭難者の状態を診た結果「冬眠のような状態だった」と推測したといいます。
このような稀な現象こそが人体の不思議なのですね。
ここでひとつ間違えてはいけないのが、ふつうなら死んでいたということ。
それなら今年の冬は山で冬眠しよう!というのは自殺行為以外の何物でもありません。
・・・しかし、少なくとも事例はあるので
冬眠のような状態になることができるのは確かでしょう。自然界の冬眠・越冬を経て、私たち人間の可能性すら広がっていくのです。