森村誠一ノンフィクション【新版】 悪魔の飽食 - 日本細菌戦部隊の恐怖の実像! より抜粋
三千人以上におよぶ「丸太」
(=捕らえられた多くの中国人・朝鮮人・ロシア人ら)
を生きたまま生体実験材料として殺し、
非人道的な細菌戦の研究開発およびその実行をした第731部隊。
実験順番の回ってきた「丸太」にはペスト、コレラ、チフス、
赤痢、梅毒スピロヘータ、などの生菌が注射され、
あるいは飲み物、まんじゅうなどに混入して与えられ、
あるいは人為的に移植された。
凍傷実験や銃殺実験、ガス壊疽実験もあった。
「丸太」には、およそ人間の考えつくありとあらゆる物質が注入された。
・・・この中には医学的にすでに判明している無意味な実験も
含まれていたという。
また、「丸太」を逆さ吊りにした場合、何時間何分で死に至り、
体の部分はどのように変化するのかがテストされた。
「丸太」を大きな遠心分離器に入れ、高速で回転させる実験は、
「丸太」が死ぬまで繰り返しおこなわれた。
強力な冷凍庫の中に、両手両足に手錠足枷をかけられたまま
パンツ一枚の裸体で放りこまれて・・・
全身の皮膚が青黒い凍傷におおわれ、組織を壊死(えし)されながら
悶絶していく「丸太」の一部始終を
16ミリ撮影機で撮影していくのである。
真空室に「丸太」を入れ、少しずつ真空にしていくのである。
・・・眼球はとび出し、顔面は異様に膨れ上がり
ビーチボールぐらいの大きさとなる。
全身の血管がみみずのように隆起し・・・
解剖室に一人の中国人少年が連れ込まれた。
隊員らの話によると少年は「丸太」ではなく、
どこからか誘拐してきたのではないか
ということであったが、正確なことはわからない。
「解剖したのは、健康な少年男子の臓器が欲しかったためと
あとでわかった。
少年はそれだけのために生きたまま腑分けされたんや・・・・・・」
眠っている少年の体内から・・・各種の臓器が取り出され・・・
計量器に載せられた各臓器は、まだ蠕動を続けているために
計量器の針がふれ、隊員は目盛りを読みとるのに苦労した。
「おい、まだ生きとるやないか」・・・人間の生き造りであった。
・・・頭皮が切り落とされたあと、鋸(のこぎり)がいれられ
頭蓋骨が三角形に剥ぎ取られた。
・・・豆腐でも取り出すように少年の脳を取り出した。
ホルマリン液を入れたガラス容器が棚にずらりと展示されていた。
ホルマリン液の中には人間の生首が浮いていた。
切断された首がカッと目を開いたまま、あるいは閉じて、
頭髪を藻のようにゆらめかせながらガラス容器の中にたゆとうていた。
顔面をザクロのように咲かれて割られた生首がある。
刀剣で頭頂部から耳の後ろまで断ち割られた生首がある。
あるいは鋸(のこぎり)で切断され、脳を露出させ・・・
・・・大腿部から切断された人間の足があった。
首、四肢を捥がれただるまの胴体だけのものもあった。
膵臓や腸が液体の中にとぐろを巻いている。
女性の子宮や胎児もあった。
およそ人間のありとあらゆる部分(パーツ)が
大小の容器の中に浮いていた。
標本の数は大小一千個を超えたという。
特別班員の多くは田舎からポッと出の若者たちで、
純朴な小心者もいた。
そのため『度胸をつけるための特別訓練』を受けた。
特別訓練とは「丸太」を六角棒でなぐり殺すことだ。
「石井部隊長は徹底したエリート意識の持ち主だった・・・・・・
唯我独尊の選民意識と、当時の日本人が持っていた
『アジア諸民族の中では日本人が一番えらいんだ、優秀なんだ』という
排外的な民族意識が結びついた・・・・・
731部隊の残虐行為の根っ子には度はずれた選民意識がある」と
元隊員の一人はいう。