山梨キャンプ場殺人事件とは

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山梨キャンプ場殺人事件

平成12年5月14日、山梨県都留市の朝日建設(平成15年8月倒産)の社長・阿佐吉広(当時50歳)は、従業員で土木作業員の横田大作さん(当時50歳)、多賀克善(当時51歳)ら3人を、当て逃げ事故を起こした制裁として元暴力団組長や社員などと共謀して暴行を加えた。制裁を受けた3人のうち、横田さんと多賀さんは尚も態度を変えなかったため、阿佐が経営する同市の朝日川キャンプ場に連れ込んで殺害。遺体を同キャンプ場に埋めた。

更に平成9年3月にも、労働条件に不満を抱いて反抗的な態度をとった男性に阿佐と腹心の社員は暴行を加えて同様にキャンプ場に遺体を遺棄していた。また、従業員が交通事故で負った際の保険金約2400万円も横領していたことが発覚した。

出典:

	
同キャンプ場を経営する建設会社では、宿舎を逃げ出した従業員が付近の民家に「助けてくれ」などと駆け込む騒ぎも相次ぎ、住民とのトラブルを抱えていたという。

出典:「埋められた」ビラ出回る 都留の事件(山梨日日新聞) − ...

	
キャンプ場は同市の山あいにあり、夏場には首都圏から行楽客が訪れ、キャンプや釣りを楽しむ光景がみられるが、地元住民らの利用はほとんどなかったという。

出典:「埋められた」ビラ出回る 都留の事件(山梨日日新聞) − ...

	

朝日川キャンプ場の看板

			

過酷な違法労働

阿佐は、大阪市西成区のあいりん地区や東京などから失業者らを言葉巧みに勧誘し都留市の飯場に集めてピークには100人以上の土木作業員を有していた。だが、その労働条件は完全な労働基準法違反であり過酷なものだった。6畳間に4人以上を詰め込み、一日の労働賃金から大半を搾取して作業員に支払う日当は事実上1000円程度。

また、月労働時間を15日以下に抑えて医療費は自己負担させていた。また、作業員が飯場から逃げないように暴力団の組員や阿佐の腹心社員が24時間見張っていた。平成10年頃から、都留市やあいりん地区の労働基準監督署には「給料を払ってもらえない」など苦情が多数寄せられており、当局も注目していた矢先の事件だった。

出典:

	

山梨キャンプ場殺人事件

			

阿佐吉広


事件当時年齢 54歳(逮捕当時)

犯行日時 1997年3月/2000年5月14日

罪 状 殺人、逮捕監禁、傷害致死、横領

事件名 都留市従業員連続殺人事件

裁判焦点


阿佐被告は1997年に従業員を死なせた傷害致死について、逮捕時は関与を認めたが初公判では無罪を主張。

 2000年の事件については、会社事務所に監禁したことは認めたが「キャンプ場でけがの手当をしろと指示しただけで、自分は行っていない」「殺害したのは知人の(死亡した)元暴力団組長」と殺人について無罪を主張した。阿佐被告の長女と長女の友人も法廷で「5月14日には母の日の贈り物を買いに行くために一緒にいた」とアリバイを主張したが、検察側はこの日、「買い物をした際の領収書など、客観的な証拠が残っていない。被告人にも確定的な記憶が残っていない」とアリバイの不成立を主張した。

 検察側は「共謀者の供述が重要部分で一致しており、信頼性は極めて高い」とし、公判で十分に裏付けられていると主張した。

 検察側は補充論告で「阿佐被告のアリバイは成立せず、共謀者の供述が重要部分で一致している」と主張したのに対し、弁護側は「懲罰的な暴行はしたが、死因とつながらない」「検察側証人の証言は二転三転しており全く信用できない」として傷害か暴行罪が妥当だと主張した。

 阿佐被告は最終陳述で、「私はキャンプ場には行っていない。無実で冤罪です」と訴えた。

 判決で川島裁判長は「当日午後から夕方は多くの証言により阿佐被告らが被害者らに暴行を加えた時間帯で、時間的な信用性に大きな疑問がある」などと被告のアリバイ主張を退けた。また、阿佐被告による殺害を証言した共犯者の供述について「具体的で不自然な点はなく、一連の経過が大筋で一致している。阿佐被告は責任を免れようと関係者に口裏合わせをしようとした」と認め、主導的な役割を果たしたことを認定した。そして「殺害の実行を最終的に決定し、実行した中心的立場にあった」「意に添わない者には命をも奪う人命軽視の態度が甚だしい」と厳しく糾弾した。


 2008年2月18日の控訴審初公判で、弁護側は殺人について、阿佐被告の長女らが「当日は一緒に買い物に行った」と証言しており、アリバイの成立を主張。一審で「殺害直前の時間帯に阿佐被告をキャンプ場で見た」と証言したキャンプ場管理人(当時)による「証言はウソで、検事から言わされた」との書面を新たに提出した。そして「殺人時のアリバイ成立は明らかで、傷害と死亡の因果関係にも合理的疑いが残る。一審判決は事実誤認」として、殺人と傷害致死の罪について否認し、一審判決破棄を主張。

 一方、検察側は「アリバイ証言に客観的な証拠はない」と指摘。「一審判決に事実誤認はなかった」などと主張し、控訴棄却を求めた。

 3月19日の第2回公判で、弁護側は阿佐被告が当日キャンプ場にいなかったことを証言する証人への尋問などを申請したが、却下された。これを受け、弁護側は「裁判所の対応は特異で不当」として、裁判官3人の忌避を申し立てたが、「裁判の遅延のみが目的なのは明らか」として却下された。

 一方、「検察の取り調べに対し、阿佐被告を当日キャンプ場で見たと話したのはうそだった」とするキャンプ場の管理人の話を弁護士が聞き取った書類や、阿佐被告の主張をまとめた書類などは採用された。

 4月2日の最終弁論で弁護側は、前回公判で証拠採用されたキャンプ場の管理人の陳述書を挙げ、「検察の取り調べにうそをついていたとする管理人の話は信頼性が高く、管理人の供述に基づいた原判決は破たんしている」などと主張した。検察側は「管理人の供述には具体性がなく、不自然極まりない」と反論。前回公判で弁護側から証拠提出された阿佐被告の陳述書についても「虚偽の弁解を蒸し返しているだけ」とし、「控訴には理由がない」と主張した。


判決で中川裁判長は、2人殺害については共犯者の供述の信用性を認め、阿佐被告側の主張を退けた。傷害致死についても「阿佐被告の暴行が死亡の唯一の原因」と認定した。そして「被告にアリバイがあるとする長女らの証言には裏付けがない。殺人への関与を一切否定しようとする被告の供述は到底、信用できない」と述べた。弁護側は判決前に「元管理人の証人尋問は事実認定に必要不可欠」として弁論の再開を申請したが、退けられた。

 阿佐被告は身じろぎせずじっと聞き入っていたが、被告に不利な元社員らの証言を採用した部分に差し掛かると、「うそばっかりじゃないか」と声を荒らげ、退廷を命じられた。


 2011年12月20日の最高裁弁論で、弁護側は共犯とされる男性受刑者(懲役9年が確定)が「阿佐被告ではなく、病死した元暴力団組長が犯人だ」と新たに証言したことを明らかにし、殺人について無罪を主張した。受刑者は一審公判では阿佐被告が現場に来て2人を殺害したと証言していた。弁護側は、受刑者にはうそをつくメリットがなく、新証言は信用できると主張。阿佐被告には事件当日のアリバイもあり、無罪は明らかだと訴えた。

 検察側は、アリバイには客観的な裏付けがなく、一審公判での受刑者らの証言は信用できるとして上告棄却を求めた。新証言については改めて意見を述べるとした。

 検察側は改めて上告棄却を求める補充書を2012年4月27日付で最高裁に出し、5月8日付で弁論再開を請求した。最高裁第三小法廷(田原睦夫裁判長)は5月21日付で、検察、弁護人双方の意見を聞く弁論の再開を決定し、期日を10月16日に指定した。

 10月16日の最高裁弁論で最高裁は、弁護側が提出した男性受刑者の陳述書2点と、検察側が新たに取り調べた男性受刑者の供述調書1点の事実調べを行い、改めて結審した。

 判決で小法廷は「新供述は、提出の経緯や内容、検察官提出の供述調書などに照らすと、一審証言の信用性を左右しない」として、弁護人主張を退けた。そして「強固な殺意に基づき、自ら冷静に残忍な殺害に及んだ。共犯者の中で最も重い責任を負う」と述べた。

出典:asay"

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備考


2004年9月16日、甲府地裁は従業員2人を殺害した共犯者の元社員に対し懲役9年(殺人、逮捕監禁 求刑懲役15年)、逮捕監禁罪に問われた元従業員に懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役5年)、元労働者に懲役2年、執行猶予3年(求刑懲役2年)、関連会社の元従業員に懲役1年、執行猶予5年(懲役1年)。逮捕監禁と横領罪に問われた元従業員に懲役2年、執行猶予4年(求刑懲役2年)を言い渡した。判決理由で川島利夫裁判長は「会社の非人間的な体質から起こるべくして起きた事件」とし、「いずれの被告も阿佐被告の指示の下、従属的立場で犯行に関与した」と指摘した。5人はいずれも犯行を認めたため、犯行を否認している阿佐被告とは分離して公判が進められていた。いずれも一審で確定している。

出典:

	

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